2012年02月20日

農連市場哀歌

2012年 2月19日(日) 晴れ

北の風 波あり
 
 めちゃんこ冷えこんだ……………。

 狭い室内をエアコンで暖房しているはずなのに、夜が更けるとともにやたらと寒くて寒くて、風邪でもひいたかな??と思ったら、沖縄全体が風邪をひいていたらしい。

 名護で9度って。

 おそらく本島最北部あたりは5度くらいだったに違いない。
 感覚的に本島最北部と同じくらいと思われる水納島も、同じくらい冷えこんでいたはず。

 だからだろう、日差しが出ていると朝はフツーに表に出てくるガメラ君なのに、今日は昼前になってようやくおうちから登場。
 それでも今朝方までの超冷え込みがこたえていたようで、昼過ぎまで日向ぼっこ態勢から微動だにせず。

 いくら小屋の中に保温用スポットライトを備え付けてあるとはいえ、あと2、3度低かったらガメラ君はやばかったかもしれない。

 やばかったといえば、この冷えこみが数日早まっていたら、我々は那覇の片隅で凍死していたに違いない。

 というのも。

 16日の夜……というか17日未明の我々は、こういうところを彷徨っていたからだ。

農連市場哀歌


 午前2時過ぎに農連市場の一画にたたずむなちゅらる院長。
 すでに記憶を無くしている酔っ払いのポーズにはとても見えない………。
 それにしても、なんでこんなところに??

 話はちょこっと遡る。

 人生初の牛のセリ市を体験し終えた我々は、もとぶ牧場での豪華な昼食を済ませたあと島のみなさんと別れ、所要をこなしつつ一路那覇を目指した。

 行き先は治療院ナチュラル。
 昨年の運動会で転倒した際に痛打した肩がその後ずっとおかしくて、これはさすがにいっちょ揉んでもらわねば………という事態になっていたのだ。

 ……というのは実はあくまでもついでの話で、本来の目的は、毎年恒例のなちゅらる院長主催那覇美味いもんツアー♪

 ゲストの皆様がもたらしてくださる、全国津々浦々の様々な美味いものや旨い酒、獲れたての魚に採れたての野菜など、おかげさまで島にいながらにして美味しいものをたらふく味わっている我々。
 けれど島に住んでいると、どうしても味わえないものがある。

 夜の街だ。
 こればかりはどうあがいてもどうしようもない。

 そんな我々に那覇の夜の街の味わいを、ということで、なちゅらる院長が毎年企画してくれるのが「美味いもんツアー」。

 で、いろいろもたらしてくれる院長の情報の中でも、とりわけ我々が気になっていたのが、栄町のとある店。
 昨シーズン、かのごっくん隊が院長を拉致して案内してもらったという店なのだけど、すでにその時点で記憶が飛んでいた隊長はさておき、その店からスタート、つまりシラフ状態だったリーダーがとんでもなくシアワセになったとおっしゃていた店である。

 サラリーマンの天国・新橋の飲み屋街を隈なく知り尽くしている酒飲み大王リーダーが「スバラシイ!!」というのだから、その実力は日本屈指といってもいいに違いない。

 そこに行ってみたい!!

 というわけで、治療院でいっちょ揉んでもらい鍼も打ってもらい、おまけに後片付けまでさせられてから、やる気満々で参上したのがここ。

農連市場哀歌


 ……って、ここ、お店??

 と思うでしょ。
 いやホント、これ絶対に一見さんだったら入れないっす。たとえ店だとわかっても、何屋さんかわかんないし、扉を開けるには相当の勇気を必要とする。

 お店のほうも「大人の隠れ家」的存在でいたいようなので、あえてここでは名を伏せる。

 かつて知ったる院長に案内されてともかく入ってみると……

農連市場哀歌


 一見すると2軒目3軒目に立ち寄るタイプのお店に見えるたたずまい。
 お酒も各種揃っていて、なおかつ弱い暖色照明のみ。たしかに酒メインのバーのスタイルではある。
 が、1軒目からここに来る理由は、その肴にある。

 ともかく美味いッ!!

農連市場哀歌


ちゃんとお店に断ってから撮ってます。

 これ、野菜の盛り合わせってメニューなんだけど、焼き茄子のマリネちっくな手前の茄子といい、オリーブオイルで和えてあるらしき人参といいトマトといいキノコといい、完全無欠のアンティパスト。

 街で飲むとなったらなにはさておき生ビールであるはずの僕も、このアンティパストを味わってしまってはワインに突入しないわけにはいかない。

 で、例によって無節操にも赤と白とを同時に頼み、もうしわけないことにそれぞれグラスを用意していただいて、黄金時間の幕が開いた。

 この至福の黄金メニュー、特筆すべきはその量とお値段。
 どんなに美味しくて安くても、一品一品が大量になってしまうと、もっといろいろ食べたいのにもうお腹一杯……なんてことになってしまう。
 ところがこのお店は、一人で飲みに来る客を対象にしているからだろう、少しずつ味わってみたい人にとっては一品一品がすこぶるつきに適量で、しかもそれぞれが一冊の文庫本を買うよりも遥かに安い。

 あらかじめたくさん作っておいたものを惣菜形式で出すというシステムではあろうけれど、出てくる料理はどれもこれも本格派のスペシャル料理ばかり。
 美味い美味いと食っているうちに酒が進むこと進むこと。

 あっという間に3本空いてしまった……。

 3人でけっこう食って、ボトル3本空けて、総額………

 1万1千円余。

 ………安すぎ。

 安ければなんでもいいという価値観ではないものの、ここは間違いなく安くとも美味かろうの店。ごっくん隊リーダーが絶賛するのももっともなお店であった。

 オーナー夫妻はとても気さくな方々だったので、みなさんなんとか自力でたどり着いて、このお2人に至福の時間を味わわせてもらってくださいね。

農連市場哀歌


 一人じゃ行けない……って方は、治療院ナチュラルで1時間コースを5回くらい受けたうえで、院長に案内してもらってください。

 このお店を後にした時点でたいがい酔っ払っていた我々は、気がつくとここにいた。

農連市場哀歌


 ここはどこ??
 いや、ここで飲んでいた記憶はしっかりある。しかし店の名前がまったく思い出せない……。

 箸休めというかなんというか、ちょこっと休憩をかねて寄ったお店はなんだかいい感じのバーで、島にはない夜の街に僕が求めるひとつの形ともいえる。
 で、ガラにもなくシングルモルトのウィスキーなどを頼んでしまった。<正露丸の香り♪

 さっきのお店にしろここのお店にしろ、こういうお店が本部町内に1軒でもあったらなぁ………………。<かなわぬ夢。

 もうこの時点で、実際の時間の経過と豆腐脳内で流れる時間が、ゾウの時間とネズミの時間なみにかけ離れてしまっていたにもかかわらず、次に立ち寄った店がここ。

農連市場哀歌


 知る人ぞ知る、KANAというお店。
 この外観からは想像もできないほどに、垂涎の日本酒と焼酎を数多く揃えているお店で、しかも料理も美味しい。

 そういう店は最初に来るべきではないかという声を無視して訪れたのは、この店が近々この場から消えゆく運命にあるからだ。

 流行の「再開発」である。

 人々に親しまれたいろいろなものを過去のものにして、いったい何が生まれてくるのか我々にはまったくわからないけれど、松田聖子も歌っていた。

 ~♪失うとき初めて、まぶしかった時を知るの………

 といいつつ、店の中ではただの酔っ払い。
 いかにいいコンコロもちだったかという写真があった。

農連市場哀歌


 「バカ」だなんてひど~い!!という声が聞こえてきそうだけど、このあとに起こったことを知れば、そんな声もすっかり影を潜めることだろう。

 さすがに豆腐脳がアルコールで飽和状態になったので、そろそろお開きに。
 そして院長が最後に案内してくれたのが、夜の…というか早朝からの商売に向けてスタンバイ完了の、未明の農連市場である。<冒頭の写真。

 この風景も、

農連市場哀歌


 この場所も

農連市場哀歌


 この人々も

農連市場哀歌


 この異国情緒溢れる景色も

農連市場哀歌



 み~んな再開発の名のもとに消え去ってしまうのだ。
 イオングループとかねひでとサンエーで買い物を済ませる人々にとってはレトロを通り越して時代遅れにさえ見えるかもしれないこの市場も、この地域にお住まいの高齢者、または飲食業者からすれば、今もなお現役の生活に欠かせない市場なのである。

 ああそれなのに………。

 再開発後の、きっとコンビニだらけになるであろう街に乾杯。

 ……などとエラソーなことを言える立場ではなかった。
 アルコールでふやけてはいながらも、幻想的にさえ見える農連市場の風景を眺めながら、院長とともにそれなりの感傷に浸っていたときのこと。
 ふと傍らを見やると……

農連市場哀歌


 欄干にもたれかかって、彫像のように静止している人約一名……。
 眼下のドブ川で暮らす夜行性の魚たちを喜ばせていたうちの奥さんなのだった。

 かくいう僕も、気がついたら船員会館の部屋の床に転がっていた。ベッドまでたどり着けなかったのだ。
 もう若くはないというのに、我々はいつまでこんなことをしているのだろうか。

 那覇市も沖縄県も、捨てがたい街並みの前に、こういう人間をこそ「再開発」すべきでは……。

 ちなみに翌日、4年ぶりくらいに酒を抜いた……いや、抜かざるをえなかったうちの奥さんであった。<日中静かで良かった。

 ところで。
 どう記憶をたどっても、どの店でもお会計をした覚えがないんだけど…………
 院長、ご馳走様です♪


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Posted by クロワッサン at 10:16│Comments(0)街の美味いもの
 
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