› 徒然海月日記~つれづれくらげにっき~ › 2017年04月
2017年04月30日
Beauty and the Beast 。
2017年 4月29日(土) 晴れ
北の風 おだやか 水温22~23度
我々世代の男性に、意外なほど人気があることが判明した西村知美。
その後チラと耳に入った話によると、ロケにはよゐこの濱口も来ていたのだとか。
知る人ぞ知る、彼はその昔まだ芸能人でもなんでもなかった頃、島の民宿やふそ(現在は休業中)でアルバイトをしていたことがあるのだ。
「獲ったどぉ~!」の元をたどれば、民宿でのアルバイト時代にリョウセイさんから手ほどきを受けたワザなのである。
それもあって彼は宿の女将さん(つまりリョウセイさんの奥様)にも挨拶に来ていたそうで、なにげに律儀な芸人さんのようだ。
さてさて、本日からついにGWに突入、おかげさまで当店にもゲストの姿が。
シーズン開幕を欠航で吹き飛ばされた当店にとって、今シーズン初ゲストである。
といってもお馴染みの方々ばかりで、なんだか老舗の居酒屋みたいだけど、夜はホントに飲み屋のようになってしまう。
そんななか、この日記念すべき600本目のダイビングを無事終了されたのがこちらの方。
おめでとうございます!
実はアネモネフィッシュさんの600本記念は、昨シーズンの終了間際に達成されているはずだった。
ところが季節風のせいで連絡船の運航がアヤシクなり、当初の予定より1日早く島を発たなければならなくなったため、無念の断念とあいなった次第。
この600本目は、足掛け2年に渡る長い道のりだったのだ。
それを祝うべく某氏から贈られてきたスパークリングのマグナムボトルとともに。
片手じゃ注げない巨大なボトルである。
このような大きなモノを強調する場合にはオタマサが適任なのだけど、では小さなモノを強調したい場合には……
もちろんこの方。
チビホッシーとのツーショット。
手のひらに乗るサイズとかピンポン玉くらいとか、チビホッシーの小ささを表現する方法はいろいろあるけれど、この場合は、
そのままパクッと食べられるほど…
というのがピッタリかも。
まさにBeauty and the Beast 。
2017年04月29日
変わらぬ声。
2017年 4月28日(金) 晴れ
北東の風 波あり
時化を予想してあらかじめ渡久地港に避難させてあった船を島に戻すため、朝イチの便に乗って本島へ。
雑用を済ませ、ただちに島に帰還。
その後は店番だ。
10時過ぎから16時までずっと店を開けていられる場合、だいたい14時頃にオタマサと交代するようにしているのだけど、この日のメインイベントは、その交代後に起こってしまった。
いいお天気で絶好の行楽日和だというのに、相変わらず閑古鳥が群れ飛んでいる当店だから、3時のお茶タイムなどを過ごしていた時のこと。
数名連れの来店者が訪れたのである。
当店敷地内を見渡しながら、一言一言きれいな声で感想を述べながら歩いているおねーさんがお1人いて、母屋の方に居た我々に網戸越しにも挨拶をする愛想のいいヒトでもあった。
あれ?この声はひょっとして??
でもまさか。
店番担当はオタマサだから、すぐさま接客へ。
そしてその一団が去られたあと、オタマサはのたまった。
「どこかで観たことがあるようなヒトだったんだけど……」
もしかして、西村知美じゃないの??
「あッ、そうそう!!」
普段テレビを観ない弱点がこんなところで……。
バラエティ番組なんてまず観なくなった我々にとって西村知美といったら、その昔さんまのからくりテレビをたまに観ていた時以来かもしれない。
それにしても。
その頃からもう10年以上経っている気がするのに、まったく変わらないその声!!
お顔は網戸越しにしか見えなかったから雰囲気だけしかわからなかったけれど、いやはや、テレビで聞くのとナマで聴くのとでは、同じ声でもステキ度は断然ナマですな。
それはともかく、瞬時に正体がわかったオタマサは、さらに脳内回路が接続され、「そういえば、朝アヤコさんが何かの撮影があるって話をしてた」という。
いろんな情報に触れてはいても、けっしてそれらが有機的には繋がらないヒトなのである。
結局なんの撮影だったのかはわからずじまいながら、他にもタレントさんがいるわりと大がかりなロケだったようなので、いずれそのうちテレビに出てくるでしょう。
ところで。
有名芸能人初来店に沸いた(?)当店、さすが芸能人、とんぼ玉製品を右から左まで全部!!くらいのお買い上げ………
……かと思いきや。
シャコガイスタンド1個。
チーン。
「イヤリングとか置いたらカワイイかも♪」
とあの美しい声でおっしゃっていたそうだ……。
あ、でもこれでシャコガイスタンドのセールスポイントがひとつ増えたかも。
あの西村知美さんも使っているシャコガイスタンド♪
え?ダメ??
2017年04月28日
復興完了。
2017年 4月27日(木) 雨
北の風 時化模様
荒れ模様にはなるけど、そこまでは時化ないよ、と天気予報は告げていた。
でもこの場合、ともするとナニゴトも無かったかのごとく後刻に手の平を返した予報を出すことも多い沖縄気象台。
天気図的にも、予報より吹きそうな気配がある。
そこで船長カネモトさんは、朝の1往復のみ運航し、以後欠航することに決定。
この日は新任の先生方の歓迎会が予定されていて、そのためのオードブルは夕方島に届く手はずになっていたから、午後欠航となればそれらの注文はキャンセルということになる。
だから欠航しているのに午後からみるみるうちにおさまっていったら、それはそれで船長としても困ったことになるところ。
しかし風は、予報以上に進化した。
ホッと胸をなでおろす船長なのであった。
というか、運航していたら夕刻の1往復あたりは大変なことになっていたはずだから、船長大正解なのである。
一方オードブルは届かなかったかわりにその日獲れた海の幸で食事は事足りて、歓迎会も無事終了。
先生方も島の人たちも美味しいものを食べた代わりに、本部町内のオードブル業者はわりを食ってしまったのだった。
さて。
イソギンチャクが白化を引きずっているという話は何度も触れた。
一方サンゴたちは、傷んだり死んでしまったりしたものはともかく、白くなっていたものたちはほぼほぼ復活している。
昨夏、住まいが真っ白になってしまい、↓このように悪目立ちしていたセダカギンポも、
住まいのヘラジカハナヤサイサンゴが復活したおかげで、アップにしても目立たないようになっていた。
ストロボを当て、なおかつ写真の真ん中にいるとそれなりに目立つように見えるかもしれないけれど、実際にはもう少し色味が抜けて見える海中の様子を極端にモノクロで例えるとこうなる。
サンゴの枝の一本みたいでしょ。
こうして見ると、彼らの体のドット模様がいかに役立っているかよくわかる。
水温が上昇気配の今、彼らも産卵し始めていて、サンゴの枝間を覗くと産みつけられている卵が見える。
産みたて卵(黄色)をケアするオス。
彼らの産卵行動についてはこちらで詳しく触れているので、興味がある方はどうぞ。
白化の度合いがひどければ、今頃根無し草だったかもしれない彼ら。
幸いにもギリギリのところで壊滅は免れ、復興もほぼ完了。日々の暮らしはすっかり元に戻っているようだ。
そしてセダカギンポは、今日ものどかに空を見上げる。
2017年04月27日
みはま食堂。
2017年 4月26日(水) 雨のち曇り時々晴れ
南東のち西の風 波あり
GW前に買い出しをしておかなければならないので、それをこの日に予定していた。
ついでに北谷町にも行く必要があって、用が済むとちょうどお昼時になりそうだったから、久しぶりにこのあたりのそば屋情報を事前にリサーチしてみた。
近頃はもはやどこの国かわからないくらいに様変わりした美浜~砂辺一帯には、コジャレた飲食店も数多いけれど、沖縄そばということになると筆頭に出てくるのは、今もやはり浜屋そば。
本島西海岸のメジャーダイビングポイントでもあるこのあたりに訪れるダイバーのみなさん御用達の店でもある。
我々も過去に何度も訪れているから今さら感があるので、他を当たってみる。
ところが、コジャレた店は増えたのに、これといった沖縄そば屋情報に出会えない。
そんななか、ひときわ輝いて見えたのがこちら。
みはま食堂。
連日地元の方々でにぎわう店となれば、名店確実。
骨汁が看板メニューのようで、各種沖縄そばのほか、定食もいろいろ揃っているようだ。
これはなかなか良さげである。
するとオタマサは……
「以前にも来たことあるよ?」
へ?
そうだったっけ?
入店してテーブルに座ってみたものの、ダメだ、まったくお思い出せない。
オタマサによると前回訪れたのは、今のように沿道が建物で埋まっていなかった頃からあるこの店はずっと気にかかっていたから、物は試しで入ってみようという動機だったらしい。
その際座ったテーブルはそこで、これを注文して……と、明確に記憶に残っているという。
おそらく4、5年前というけれど、2011年11月から当ブログサイトを利用し始めている拙日記にその記事が無いということは、5年半以上前のデキゴトであることは間違いない。
近頃は記憶のリピートを写真かブログの内容に頼ってばかりいるせいか、一度も脳内でリピートしたことがないデキゴトに関する記憶は、片っ端から欠落しているような気がする。
なので「10年前に一度日帰りで体験ダイビングをしました!」とおっしゃられても、まったく覚えてませんからあしからず……。
さて、その再訪みはま食堂にて。
そばを食べるつもりで来はしたものの、定食メニューも充実している食堂のこと、うーん、久しぶりに食堂のトンカツも食べたいなぁ。
最近はそばの上に野菜炒めやらゆし豆腐やら牛肉もやし炒めやらが乗っかっている変化球系メニューが増えてきた沖縄そばとはいえ、トンカツが載っている品はまだ見たことがない。
となると二者択一。
うーん、うーん…………
あッ!!
さすが食堂、この手があった。
そばセット♪
軟骨ソーキそば一人前に、とんかつ(とご飯と漬物)がついて850円。
そばに加えてご飯という、ライザップ信奉者が思わず顔をそむけそうな怒涛のデンプン攻撃。
このところGYAOで「孤独のグルメ」を観ていたせいで、井の頭五郎の勢いに呑まれてしまった感あり。
この場合、メインイベントはカツなのかそばなのか微妙なところながら、やはり主役は軟骨ソーキそば。
なにしろ前回の記憶がまったくなく、何を食べたかすら覚えていない身にとっては、初めての実食である。
おお、やる気に満ちた濃いめの豚&カツオ出汁!!
どこの製麺所かは知らないけれど、自家製麺か三角屋製麺所製が99パーセントを占める北部ではまず味わえない麺が新鮮だ。
近頃の上品系に比べるとはるかに濃い目ではあるけれど、ソースをかけたトンカツと並行していただくとソース味になってしまうから、前菜のスープ的にそばをいただき、しかるのちにトンカツをご飯とともに。
いやはや、この食堂トンカツの味が懐かしい……。
一方オタマサは……
例によっててびちそば@700円。
なんとも盛りだくさんのてびちが、レタスを添えて丼を覆っている。
前回はたしか中身そばを食べたはずというオタマサにとっては、このお店のてびちは初めてのこと。
塩と出汁のみで煮られているっぽいてびちは、それはそれで美味しく、小でもなんでもない通常の量をペロリと平らげたオタマサである。
地元の方々でにぎわうと聞いていたこのお店、なるほど12時前から賑わいをみせていた店内は、地元率が90パーセントを占めているようだ。
そしてさすが米軍軍属がたくさん住まう北谷町の店、大柄な4人連れの白人男性がゾロゾロと入店してきた。
風貌といい、前腕部に派手な刺青を入れているところといい、その様子はまるでハリウッド映画でバーに酒を飲みに来たチョイ悪オヤジといった雰囲気なのに、おとなしくテーブルに着いた彼らがオーダーしたのはなんと骨汁。
上手に箸を使って食べる彼らであった。
以前訪れた北谷の漁港食堂も、米軍属や白人のおばちゃんが普段使いしている様子だった。
沖縄在住のアメリカンの中には、頑なにスターバックスかマクドナルドかケンタッキーにしか入らないヒトがいそうな一方で、こうして異文化を楽しむことができる方々もたくさんいるのである。
というか、すぐ近くの「美浜アメリカンビレッジ」にたくさんの観光客が訪れているのと、実に対照的な話であるような気が……。
……なんて呑気にそば屋の話をしているうちにも、朝鮮半島情勢は緊迫の度合いを増しつつある。
各報道を見るにつけ、今回ばかりはカマシではなさそうな気配が濃厚なように思える。
あのオロカな前復興相の瞬殺更迭も、ひょっとするとトランプ氏から電話で「カチコミ入れるぞ」と伝えられているアベ総理の、腹痛発生10秒前の緊張状態がもたらしたヒステリー反応かもしれない。
いずれ攻撃することになるのなら、アメリカ本土が直接被害を受ける可能性が無い今のうちに。
アメリカオンリーを本音で行くトランプ大統領がそう考えるのはむしろ当然で、もちろんのこと韓国や日本が蒙る物理的被害なんかそもそも思慮の外であることは間違いない。
せめて、沖縄で骨汁を食べている同国人のシアワセは思慮の内にありますように……。
2017年04月26日
with ダイコン。
2017年 4月25日(火) 晴れ
南東の風 波あり 水温23度
昨日は軽く憎まれ口を叩いたものの、実を言うとこの時期にお1人お2人お越しいただくのは、体にとってとっても有難かったりする。
というのも、いつの頃からかシーズン開幕をGW直前にして以来、このGW前のお1人、お2人のゲストの対応をすることが、長いオフシーズンを過ごした後の体にとってはかっこうのリハビリになるからだ。
リハビリの対象にされたゲストはたまったものじゃないだろうけど、それはあくまでも1日全体を通した意味での話で、特に寝たい時に寝られない日々になる夜こそが最大のリハビリ対象。いきなり海中でアタフタしてしまうなんて話じゃないのでご安心あれ。
今シーズンはどうやらキャンプを満足に過ごせないまま開幕を迎えるプロ野球選手のように、GWからいきなり本番を迎えることになりそうだ。
夜寝ちゃうかも……。
話しは変わる。
当店で販売しているポストカードは、1枚1枚袋に入れてある。
ポストカードサイズのビニール袋が市販されているのだ。
それはいつもメイクマンの事務用品コーナーで手に入れているのだけれど、先だってポストカードの新作ができるタイミングで買いに行ったところ、そのビニール袋シリーズは多種多様で何種類も棚に並んでいるというのに、例によって必要としているサイズだけが欠品。
仕方なく後日再訪したところ、一週間くらい経っているにもかかわらず相変わらず欠品中だった。
こういうモノはすぐに仕入れないものなのだろうか。
しょうがないのでアマゾンで調べてみると、メイクマンで買うよりも安い価格で売られている。
ただしアマゾンの直売直送ではなく、名も知らぬお店が発送するようになっていた。
1000円以上のお買い上げで送料400円が無料になるというから、5束ほど買ったものがこの日夕方ヤマト便で届いたんだけど、送り主の住所を見て驚いた。
なんと北海道は旭川のお店から届いているのだ。
250円弱のものを5つ買って、その程度で送料400円が無料って……。
旭川から沖縄本島北部まで荷物を運ぶクロネコヤマトが受け取る送料って、実際のところいくらくらいのものなんだろう??
どう考えても値上げ止む無しって気になるなぁ、これじゃ。
その点日本郵政は話が違うような気がする。
いかにも経済ニュースのように伝えられているし、実際経済ニュースなんだろうけど、聞けば聞くほど、読めば読むほど、ようするに勘違いしたエライさんが会社のカネを使って外国でカジノをやったらスッテンテンになっちゃってケツの毛まで毟られました……という話に思えるんですけど。
それで赤字だからさらに値上げ…なんて話になりそうなところがオソロシイ。
ひょっとして、随分早くから告知されている6月からの郵便料金の値上げって、この多額の損失を見越してのことだったりして。
ちなみに6月からハガキの送料は62円になりますからね。
ああ、ポストカードが売れなくなる理由がまた増える……。
さて。
この日もいいお天気だったので、朝のうちに海へ。
水温が安定的に23度になっているようで、ダイコンの水温表示を見ずともそうとわかる「23度の指標」も観られた(科学的データに基づいているわけではありません)。
これ。
4、5日前に産卵されたらしい卵をケアするセジロクマノミのオス。
水温が低い間はまず観られないセジロクマノミの産卵は、春に水温が23度になると何かのスイッチが入るようだ。
水温とはなんの関係も無いけど、それなりの水深の根にオニヒトデが居た。
そこは畳一畳ほどの小さな根で、被覆状に成長するサンゴはあれど、ミドリイシ類のサンゴはまったくいない。
リーフにはまだたくさんサンゴが残っているというのに、なぜにわざわざこういうところに潜んでいるんだろうか。
このところの研究で、どうやらオニヒトデには仲間を誘因する物質が有るという話になっているようだけど、このような場所に彼を誘った物質ってなんなんだろう??
ところで。
以前にも触れた気がするけど、30年くらい前では、オニヒトデがこういう水深にフツーにいるということを知っている研究者は少なかった。
その当時でアカデミズムから身を引いた方がいらっしゃったら、まだご存知ないかもしれない。
なので紛うことなき証拠写真を……。
ね、けっこう深い場所にいるでしょ?
ちなみにこの根からもうしばらく行くと、大きく育った新一本サンゴがある。
そこへ赴く途中だったのか?
到達されたら困るので、彼には申し訳ないけどターミネイテド。
さらに先の根では、ハナヒゲウツボがいた。
ハナヒゲウツボのオトナはそれなりに深い場所で観たことがあるけれど、そこにいるのは黒い幼魚だ。
水納島の場合、ハナヒゲウツボの幼魚はオトナよりも目にする機会が多いとはいえ、たいてい礫が混じるような浅いところで、どんなに深くても水深20メートルを越えて目にしたことはない。
ということはこのハナヒゲヤング、個人的最深記録を更新!!
でまた、その動かぬ証拠写真を……
好奇心旺盛な子でよかった……。
というか、せっかく手にしているキレンジャー、撮る写真といえばwithダイコンばっかりってのもなぁ。
なのでリーフ際では、キレンジャーの得意とする分野(マクロレンズ装備のデジイチじゃけっして撮れないという意味で)でも活躍してもらった。
春ならではの、ツノダシパレード。
普段は1、2匹で暮らしている彼らは、繁殖時期なのか春になるとこうして大集合するのだ。
100匹200匹は滅多に観られないけれど、20匹前後だったら、この季節のリーフ際で出会える頻度は高い。
そういうときに変態御用達マクロレンズのみじゃあつまんないから、ポッケにはやっぱりズゴックorキレンジャーを是非。
2017年04月25日
驕れるものは久しからず。
2017年 4月24日(月) 晴れ
南東の風 おだやか 水温22~23度
クロワッサンの予約的には、いやはやなんともムダにバッチシの海況&お天気。
一昨日がこうだったらなぁ……。
…などと死んだ子の齢を数えても仕方がない。
というか、実はその一昨日は朝イチで島を発たざるを得なくなったゲストの方々が雑貨屋さんにて大人買いをしてくださり、翌日もそしてこの日も、全ての日帰り来島者に占める来店者数でいうなら5パーセントにも満たないにもかかわらず、ちゃんと仕事をしている的売り上げが。
日中の開店時間だけでこれだったら、朝から夜中まで接客が必要なダイビングのゲストお1人様が数日間滞在しているよりいいかも……。
<それを言っちゃあおしまいよ。
と寅さんに言われそうだから口には出さないけど(書くけど)、朝早いうちに趣味のダイビングをして、日中は雑貨屋さんで1万円前後の売り上げがある……なんて日々をずっと過ごせていたら毎日楽だろうなぁ!!
…それは逆に、産まれない子の齢を数えるようなものか。
さて。
昨夏は白化で騒ぎになっていたのはみなさんご存知のとおり。
ひと冬越して、サンゴもイソギンチャクも白化という受難からようやく解放されている………のかと思いきや、イソギンチャクの中には相変わらず白化を引きずっているモノがいる、ということは先日ご紹介した。
では、昨夏このようになっていたセンジュイソギンチャクは、今どうなっているのだろう。
これは岩場のポイントにいるセンジュイソギンチャクで、その存在を知ってからもう20年にはなるから、イソギンチャク自体も相当大きい。
なので白化してはいても、周りのサンゴたちと同じくちゃんと復活するだろうとは思いながらも、それとは別の危惧もあった。
というのも、このセンジュイソギンチャクのすぐそばにシライトイソギンチャクがあって、そこではクマノミ夫婦が仲良く暮らしている。
ところがそのシライトもまた白化の憂き目に遭い、なおかつ白化のダメージでかなり縮んでしまっていたため、住人のクマノミたちは寄る辺を失いかけていた。
そのため、近所のこのカクレクマノミがいるセンジュイソギンチャクまで遠征しては、やたらとカクレクマノミにちょっかいを出しまくっていたのである。
白化が進んで五島うどんのようになったセンジュイソギンチャクの触手の間に見え隠れするカクレクマノミたち。
ちょっと体を外に出すと、たちまちクマノミがいじめに来るからずっと隠れ潜んでいなきゃならない。
本来クマノミはセンジュイソギンチャクをマイホームにはしないから、あくまでもちょっかいだけだったかもしれないけれど、白化で住環境が悪くなってしまってストレスが溜まっていたからだろうか、カクレクマノミたちに対する嫌がらせは執拗で、バブル華やかなりしころの地上げ屋もかくやというほどだった。
こうして見ると、まるでクマノミが住人であるかのよう。
オトナのクマノミに比べれば遥かに小さなカクレクマノミはかなうはずはなく、立派なメスもかなり疲れ気味になっていて、秋ごろには見るからに精も根も尽き果てているかのようだった。
各ヒレのボロボロ感、おわかりいただけるだろうか。
あれから半年経ち、果たしてセンジュイソギンチャクは、そして住人のカクレクマノミたちはどうなっているだろう。
久しぶりにその岩場のポイントに訪れてみると……
復活!!
そしてカクレクマノミママも、すっかり元気になってヒレもきれいになっていた。
一方、地上げ屋クマノミ夫婦は??
Gone.
うーむ…諸行無常の響きあり。
夏が終わったころには少しずつ体積を取り戻していたように見えたのに、ひと冬越してむしろイソギンチャクが縮み過ぎ、クマノミたちは住んでいられなくなってしまったのだろうか。
大きなクマノミにとっては住めない環境になってしまったのかもしれないけれど、当時は居候だったハナビラクマノミチビターレにとっては手ごろなマイホームのようで、クマノミ夫婦が居なくなれば虐げられることもなくなり、晴れて「先住者特権」を手にしたようだ。
だから居候時代とは違って動きは活発で、イソギンチャクの上で悠然と過ごしている彼なのだった。
このポイントに来るとほぼ必ず訪れるカクレクマノミのすぐそばに居るから、今後の成長をそっと見守ってみることにしよう。
2017年04月24日
時差2週間。
2017年 4月23日(日) 晴れ
北東の風 少々波あり 水温23度
当店はもちろん宿もキャパが極小ということをゲストの皆さんはご存知だから、シーズン中のご予約が年々早くなってきている。
それはそれで有難いかぎり。
とはいえそれを受けてシーズン情報ページにて「いっぱい」としているから、旅程を立てようとしてそれをご覧になった方のなかには、諦めてしまわれるということもあるだろう。
ところがもともと予約を入れてくださっていた方々が何かの都合で変更、キャンセルとなったら、キャパ極小のため他に予約を入れていないこともあって、途端に予約表のエアポケットのようになってしまう。
これが度重なると、キャパ極小店はダメージがデカすぎる。
いっそのことどこぞの航空会社のようにオーバーブッキングしまくり、いざ当日になって船に乗れないほどだったら、ポストカード3枚セットと引き換えに船から無理矢理引きずりおろすしかないか……。
というわけで、半月前と随分予約状況が変わってますので、どうぞ「最新」のシーズン情報をご参照くださいませ。
あ、オーバーブッキングはしませんのでご心配なく(笑)。
さて。
2週間前に生れたチビホッシー。
同時に孵化した兄弟がおらず、飼育水槽に入れてからもなんだかイジケ気味で、卵黄がほぼ収縮しているから本来であれば活発に動き始めてもおかしくないのに、水ひとつ口にしようとしない。
やっぱり一人っ子だと寂しいのかも。
そこで!!
数年前にアザラシ&アシカさんからいただいたホシガメ貯金箱を水槽脇に置いてみたところ、そのおかげなのかたまたまタイミングが合ったのか、その後食欲モリモリ状態に。
モリモリとはいってもまだ食べ方がぎこちなく、観ていてイライラするほどにドンくさい。
ところが、それから2週間ほども経つと、さすがに食べ方にも逞しさが出てきて、むしろふてぶてしさを感じるほどになってきた。
その様子がこちら(音声はありません)。
なかなか「カメ」になってるでしょ?
このチビターレが孵化してから2週間。
同じ日に産み落とされた卵は10個あるけれど、どうやらそこから孵化したのはこの1匹のみってことかなぁ………
…と諦めかけていたところ。
本日2匹目誕生!!
まったく同じ日のほぼ同時刻に産みだされた卵なのに、孵化まで2週間の差があるっていうのも凄い。
この2週間というのもなかなかバカにならないもので、最初に孵化した子は孵化直後と大して変わらないと思っていたところ、比べてみると………
もうこんなに体格差が出ていた。
一日の長どころか14日の長ということか…。
ちなみに。
この最初に孵化した子と、3年前に孵化したチビホッシーとを比べてみると……
さすが、カメの上にも三年。
小っちゃい小っちゃいと思っているうちに、どんどん成長しているんですなぁ。
さらにちなみに、この3歳のチビホッシーと、クロワッサンで生まれたすべての子たち(50匹オーバー)のお母ちゃんであるホシガメホッシーママとを比べると……
さすが十八年の長。
というか、この春に孵化したチビチビは、このホッシーママの頭くらいの大きさでしかないわけだ。
それからほぼ葉っぱだけを食べて大きくなっていくのである。
ドジでノロマなカメなのはスチュワーデス堀ちえみくらいのもので、ホントのカメたちは三日会わなければ刮目して見なければならない生き物たちなのであった。
2017年04月23日
最浅記録。
2017年 4月22日(土) 雨
北の風 時化模様
いよいよ本日からクロワッサンのダイビングシーズン開幕!!
……といいつつ、予約のよの字も無かったので、完全にリラックスモード。
ところが直前になってご新規の方々から予約が入り、開幕と同時にゲストがいらっしゃるという、華々しいスタートが切れる……
……はずだった。
ああそれなのに、それなのに。
数日前からアヤシくなってきたこの日の天気予報は、前日に至ってついに予断を許さなくなり、そして一夜明けたら連絡船の運航すら許さなくなってしまったのだった。
連絡船は朝イチで島を出て、夕方帰ってくるかどうか、という運航予定に。
前日のうちに島にご到着され、一泊してこの日午後に島を発たれる予定だったゲストお二人は、当然ながら朝イチで島を出ざるを得ず。
前日は申し分ないお天気だったし、予報どおりなら翌日もいい感じ。
ホントにピンポイントでこの日直撃である。
それはけっしてこの日のゲストお2人が「持っている」からではないことは、すでにみなさんご存知のとおり。
うーむ、開幕からこれじゃあ、今シーズンも先が思いやられるなぁ……。
というわけでこの日は潜ることができなかったので、数日前の海の中の話。
このところ極端に数を減らしているヤッコエイを、久しぶりに2、3匹を一度に見る機会に恵まれたのだ。
浅いところでなにやら活発に周辺を泳ぎ回っているところをみると、繁殖期か何かなのだろうか。
たくさん産んで、ひところのようにいつでもどこでもヤッコエイ状態にしてね。
エイといえば。
海底に沈むこの物体……
これって、ウシバナトビエイの糞??
3年前に千載一遇のチャンスをなんとかモノにした際、群れなすエイたちが落としていく糞を見たら、こういう形をしていた。
似た種類のマダラトビエイの糞は違う形なのかどうかは知らないけれど、ここ以外でも目にしたほか、オタマサによるとまた違う場所でこの形の糞があったという。
ってことは、この春もウシバナトビエイの大群が大行進しているってこと??
以前目撃したのも4月だったし、ヤッコエイはアヤシイ動きをしているし、春はエイたちが盛り上がる季節なのだろう。
どうせだったらその大群に遭いたいものだけど、開幕日から欠航の憂き目に遭う我々にはせいぜい糞がお似合いか……(涙)。
糞が落っこちている海底には、貝類もあちこちで観られる。
水納島の海底で最も目立つ大きな貝といえば、トウカムリガイだ。国際通りあたりのお土産屋さんでは、千年貝という名で貝殻が売られている貝である。
ヒラタブンブクなどの砂中に潜むウニの親戚を好物にしているから、水深15メートルよりは深い砂底にいるのがフツーだ。
ところが一昨日観たトウカムリガイは、なんと水深8メートルにいた。
これまで観たことがあるトウカムリガイの最浅記録をドドンと更新、しかも通常は観られないガレっぽい海底に。
このトウカムリガイがいたのは、船を停めるブイが繋がっている根の近くだった。
風向きによっては、停めてある船の真下になるであろう位置である。
ひょっとすると、この貝が能動的にこの場に来たのではなく、どこかのお店の心無い客が物欲に負けて船に上げはしたものの、その店の心あるスタッフに諭されて海に還した……ということも考えられなくはない。
うーん、はたして天然の最浅記録なのか、それともヤラセ(?)なのか。
再訪してまだいたら、天然記録ということにしよう。
2017年04月22日
蝦の暇つぶし。
2017年 4月21日(金) 晴れ
北の風 おだやか 水温23度(25m以深は22度)
いつもならとっくに満開を迎えているはずの庭のアマリリスが、ようやく最初の花を咲かせた。
このタイミングだと、アマリリスはGW真っ只中に満開の時期を迎えるかもしれない。
季節が早いんだか遅いんだかよくわからない春になっているけれど、インゲン豆がまだ収穫できたりブロッコリーの脇芽も頑張っているところをみると、野菜といいアマリリスといい、どうやら植物にとっては冬が長かったらしい。
咲いたといえば。
与那覇岳を目指していた国道58号線沿いで、あまり見たくないモノを見てしまった。
これ。
ええ、今年も咲いております、デイゴ。
盛りの時期はすでに過ぎていたけれど、赤い花が青空に映えまくっていた。
アマリリスと同じ赤は赤でも、なんだか悪魔的な色に見える……。
ご存知のとおり、普段咲かないでいごが花を咲かせた年は台風が多い、と言われている。
で、近年になってからのことながらこの木はなにげに我々にとっての指標デイゴで、春にこうして咲いていると、その年はストロングスタイルの台風が多いという経験則があるのだ。
実は毎年咲いているのにその時期に通りかかっていないだけかもしれないけれど、ジンクスという意味ではかなり確率が高いからバカにはできない。
ところで、このデイゴの花を見て愕然としていたとき、突如オタマサが閃いた。
一昔前に一世を風靡した「島唄」、その歌詞にある、
~♪デイゴの花が咲き 風を呼び 嵐が来た……
……って、そういうことだったんだねぇ!!
と。
あ、ホントだ、今まで全然気づいてなかった。
というわけで今年も台風からは逃れられない運命が待ち受けていそうだから、平和なうちに潜っておくにしくはない。
水温が高くなると少なくなる傾向があるウミウシカクレエビは、この時期には随分大きくなった個体に巡りあえることが多い。
この日の子も相当でかかった。
といってもノンダイバーの方に念のために言っておくと、これでせいぜい3センチ超くらいなんですけどね。
カクレエビ系の場合、でっかいのはメスとほぼ相場が決まっていて、このマギーシュリンプのお腹には……
右隅のほうにはみ出しているのもあるけど、甲羅越しにお腹にビッシリ卵があるのわかりますよね??
ウミウシカクレエビといいながらここでもやはりナマコにいたエビちゃん、同じナマコに3匹いて、このマギーシュリンプの連れ合いは中サイズの子だろう。
さらに極小サイズのものもいた。
ナマコの体表の点ポチ模様の間隔は一番上の写真と同じだから、このチビターレがマギーシュリンプと比べてどんだけチビかおわかりいただけよう。
このチビターレ、か弱げにオドオドと暮らしているのかと思いきや、見ていると超余裕のポーズを披露してくれた。
ファインダー越しになんか縮んだように見えたので、あれ?と思ったら、なんと腰を曲げていたのだ。
さらに曲げていく。
なにこれ?
体をまっすぐにしたままでは届かないところを脚で掻きたかったのだろうか。
てことは、これってエビちゃん流「かい~の!」のポーズ?
その後すぐにノーマルポーズに戻ったから、詳細は不明。
ジッとしているだけではつまらないから、たまには違うポーズでも…ってことだったりして。
蝦と暇は、なにげに偏が違うだけだからなぁ……。
2017年04月21日
与那覇の記。
2017年 4月20日(木) 曇りのち晴れ
南東の風 けっこう波あり 水温22度
沖縄本島北部の山をこれまでにいくつか登っている。
山といってもせいぜい標高400メートル前後だから、あくまでも「いい運動」程度で済むからこそではある。
でもそれらの山はたいてい海辺にそびえていて、なおかつ石灰岩主体の山だから、山頂付近になると土壌が無いだけに木々が密生していることはなく、30分~1時間程度でたどり着く頂上からの眺望は抜群なのだ。
ちょっとした運動で達成感を得て、そのあとのビールがまた美味い。
ということをオフシーズンに何度かやってきた我々ながら、沖縄本島の最高峰は未踏のままになっている。
バカと煙の親戚オタマサなら、何をさておいても最高峰に登るだろうというところながら、あいにくその最高峰は山原の真ん中にあって、なおかつ石灰岩露出系の山ではないため、頂上付近も原生林が密生。
眺望はまったくといっていいほど楽しめないという。
山頂からの眺めあってこその登頂&達成感だから、これまでずっと敬遠してきたのだった。
とはいえ三浦雄一郎じゃあるまいし、この先いつまで山登りをすることができるだろうかということを考えると、そろそろこのあたりで沖縄本島最高峰を体験しておいたほうがいいかも。
というわけで。
「このオフのうちに行ってみよう与那覇岳!!」計画が発動されたのだった。
沖縄の山々に興味を持ち始めたオタマサが、十数年前に購入した「沖縄県の山」というヤマケイの本でも、本島最高峰ということもあって最初に登場する与那覇岳。
ただしチラッと読んでみるかぎりでは、これまでのように安易に臨むと迷子になってしまうかもしれない気配が漂っている。
そのあたりも加味し、これまで以上にこの本を頼りにしつつ、まずは駐車場を目指す。
まさか、その駐車場までがまず最初の難関だったとは…。
我が家の場合、時刻表と登山に関してはリサーチ&ガイドはすべてオタマサが仕切る。
というか助手席に座って地図を見ながらなわけだから、運転者的にはその指示通りに車を走らせることになる。
ところが確信をもって告げるオタマサの指示通りに車を走らせてみても、もういい加減目的の場所に着いていてもいいはずなのに、行けども行けどもたどり着く気配が無い。
それもそのはず、いつの間にか大国林道を走っていたのだ。
沿道左側には定間隔で小さな距離表示板があって、そこにはしっかり「大国林道」と書かれてあるというのに、それをいっさい見ることなく、ただ前をのみ見つめて楽しんでいる助手席の女。
ワタシが信じ切ってしまっていたら、危うく大宜味村の国道331号まで出てしまうところだった。
しかしそんな頓珍漢なナビゲーターのおかげで、思わぬ怪我の功名も。
与那覇岳は前述のとおり登山道からの眺めは楽しめそうにないのだけれど、この大国林道の路肩から、この若夏の季節の瑞々しいまでの新緑を眺望できる場所があったのだ。
ここ!!
ブロッコリーがズラリと並んでいるようとも評される、山原の原生林。
こういう景色は実は本部町内の伊豆味の道を通っていてもフツーに観られる。
ところがこれまで20有余年、ただただフツーに眺めてきただけで一度も写真を撮ったことがないことに最近気づき、是非撮っておきたいと思いながらもまたいつもの年のようにこのまま夏になってしまうところだった。
勢い余って大国林道に乗り入れてしまったおかげで、この新緑の季節にこういう景色に出会えてよかったよかった。
また、ここからさらに先へ進んだところでは、軽トラの荷台に山のように積んだペットボトルや水缶に、湧水を汲んでいる年配のご夫婦に出会った。
ここから少し山中に入ったところに細流だか湧水があるそうで、そこからパイプを引いてここで水を汲めるようにされているようだ。
付近沿線にはここのほかに水汲み場が何ヵ所かあるけれど、ここが一番パイプが太いから早く汲めるのだとか。
そのまま飲んだほうが美味しいけど、念のために沸騰させてから利用しているとおっしゃるご夫婦。
聞けば、この大国林道ができたことによってこの水を利用できるようになったそうだ。
大国林道といえば、自然保護の観点からも経済的な観点からも、百害あって一利あるくらいのほとんど無用の長物的に酷評されまくりつつ完成した林道なんだけど、なにげにこうして近隣住民のみなさんの役に立っているらしい。
海辺で暮らす我々にはあまり馴染みが無い、山の暮らしの姿があった。
作業中にもかかわらず、味見してみたい我々のために手を休めてくださったお2人に感謝感謝。
…と、思いがけず面白い体験もできたので、ナビゲーターオタマサの頓珍漢ぶりも、けっして無駄ではなかった。
大国林道からのリカバリーを果たし、本来車を停めるべき場所に車を停めて、いよいよ与那覇岳に侵入する。
ちなみにここが登山道入り口なのではなく、あくまでも駐車場スペースで、ここから30分ほど歩いてようやく登山道入り口に達する、と我々の参考書「沖縄県の山」で紹介されている。
立派な「やんばる国立公園」の看板といい、傍らにあった↓こういう看板といい、
ここに至るまでの道沿いにもあった↓こういう看板といい、
なんだか至れり尽くせりのようで、これだったら山頂までのルートもきっと楽勝に違いない。
……と安心しきっていたのだけれど。
ここから30分ほどでたどり着くはずの「登山道入り口」まで、まさか2時間もかかってしまうとは!!
いや、出だしこそ快調だったのだ。
真下から眺めるヘゴは美しいし、
マイナスイオン放ちまくりの新緑も生命の力に溢れている。
そこかしこから聴こえてくる鳥のさえずり、ひょっとするとノグチゲラのドラミングかもしれない低音連続音、渓流の水音……
そんな山原の大自然に抱かれながら歩く道のりは、気持ちよさこそあれ苦労のくの字もないはずだった。
ところが、随所に微妙な分かれ道があるというのに、そのどこにも「登山道入り口はこちら」的な標識ひとつない。
たとえばここ。
登山道入り口までのルート的には、非常に重要な分岐点だ。
カメラを構えているワタシの側から歩いてきてここにたどり着くんだけど、右に曲がると下り道。そして特にこちらという標識があるわけでもない。
だったらフツーにまっすぐ行くでしょう?
その先はこんな感じの道。
水もチョロチョロ流れているし、なんだか沢筋っぽいね、なんていいつつ、そこらじゅうに歩いているシリケンイモリを踏まないよう気をつけながらも、ルートはこれで間違いなしと確信を持って登っていたところ、さらにその先にも分岐点、さらに分岐点、分岐点…………
なんか、ここ違うんじゃね??
頼りにしている略図と見比べて明らかに違うと分かれば分岐点に戻り、また違ったら戻り、というのを繰り返し、最終的に「与那覇岳雨量観測所」という施設に出くわすに至り、これはどうやらかなり根本的なところで間違っていたんじゃなかろうか、ということにようやく気がついたのだった。
ここはもう手近で誤差修正をしようとせず、大元の大元までリセットしたほうが早いかも。
そしてようやく、先の写真の分岐点まで戻ってきた次第。
最初にここを通った時は、頼りにしている略図でいうところの「旧大国林道へと降りる道なので注意」という道なのだろうと判断してしまっていたのだけれど、実は正しいルートこそがこの道だったのだ。
いや、わかりませんて、フツー。
わからないならわからないまでも、けっこうアテにしていたものもあった。
これ。
道々のところどころに、赤い布きれが木にくくりつけてあるのだ。
迷った先にこのような目印があったら、「あ、この道であってるのね」って安心するじゃないですか。
ところがこの赤い布きれ、どの道に行ってもそこらじゅうにあって、ルートの意味ではまったくなかったのだ。
これはルートの目印ではなく、↓これの目印だったのである。
いつぞや紹介したことがある、マングースの捕獲器。
環境省だかなんだかの職員が、地道に不断の努力を続けておられるのであろう。赤い布きれはその作業のために、捕獲器の存在を示すための目印だったのだ。
どうりで四方八方の道に人が踏み固めたルートがあるわけだ。
この赤い布きれに騙されたおかげで(?)、本来30分で済むところを2時間かけ、ようやく「登山道入り口」に到着。
ここで「←与那覇岳」って標識を掲げてくれるのだったら、あの分岐点でも明確に示してくれたっていいじゃん……。
とにもかくにもようやく登山道入り口。
なんだかもう、この時点で達成感が……。
というか、ホントだったら全行程2時間のルートということだから、フツーに歩いていればもう今頃は登頂を果たしてランチに思いをはせているところだったはず。
それを考えると徒労感が湧いてくるものの、ここから山頂までは、サルでもわかる一本道だという。
30分ほどで到着するというから、2時間歩いた疲労はあれど、いざ行かん!という気にもなった。
さぁスタート!
この最初の部分こそ2メートルほどの崖状の岩場ながら、あとは緩やかな登り道。
登山道入り口までの道とは違って、人1人がようやく通れる程度の隘路が続く。
なるほど、道沿いはずっとこのように木々が生い茂っているから、眺望など楽しめようはずはない。
……そして30分後。
我々はまたロストマイウェイになっていたのだった。
いや、ひょっとすると道は合っていたのかもしれない。
けれど時間的にあと少しで山頂だろうというところで道は急に下りになり、少し降りてみたものの道はさらにどんどん下っていくように見える。
これが最初の迷い道クネクネだったら、物は試しで下るだけ下ってみようと思ったろうけれど、なにしろここに至るまでこの登山道のあやふやさを身に染みて味わっていることもあって、このまま下っていったら取り返しのつかないことになりそうな気配も濃厚だった。
ひょっとしたらここに至るまでに、また見落とした道があったのかも。
という危惧もあったから、これ以上先へ進むことはやめ、ついに引き返すことにしたのであった。
引き返してはみたものの、やはりずっと1本道だったようで、結局登山道入り口まで戻って来てしまった。
うーむ………山頂はあの下り坂の先だったのか。
あの先へ行ってみなかったことにはやや悔いが残るとはいえ、それにしても、である。
登山道入り口までの岐路といい、登山道中の誰もがきっと不安になるであろう場所といい、道順案内の小さな標識ひとつとしてない徹底ぶりがものすごい。
いや、もちろん自然のなかにそういった標識を設けるのはいかがなものか、という話なら理解もできる。
手つかずのまま維持されているのであれば、我々だって駄々をこねたりはしない。
でも駐車場から登山道入り口から、登山道として懇切丁寧っぽい案内板を設けておきながら、肝心の登山道中のこのそっけなさはなぜ??
ひょっとして。
理由はこれか??
登山客の遭難リスクをかけてまで「要ガイド」を徹底したいのか、国頭村役場経済課。
……とまぁ、下調べの足りなさゆえの失態をヒトのせいにしつつ、標高500メートルくらいまでは行っていたはずなんだけど、山頂到達という達成感がないままの下山と相成ったのだった。
なんだかエベレスト山頂まであと50メートル、というところで撤退を余儀なくされた登山家のような気分……。
うーむ……もしかするとこの日は山頂も臨時休業だったのかも?
というわけで山頂にはたどり着けなかったものの、これまで登ったことがある北部の石灰岩主体の山とは違う、山原の原生林そのままの世界はそれなりに堪能することができた。
なにしろ標高500メートルほどといえば、普段暮らしている場所の100倍の高さである。
前日が雨降りだったこともあるのだろう、やたらとたくさんいたシリケンイモリのほか、さまざまな種類のシダ類が印象的な山道でいろんな生き物に出会ったのだけれど、アカヒゲのメスをキチンと観たのは初めてかも。
何かの虫をくわえていた。
虫といえば、さすがにヤンバルテナガコガネというわけにはいかないけれど、初めて目にしたものが2種類。
ひとつはこちらの甲虫。
1センチほどのきれいな甲虫。
そしてもうひとつは……
背中のトゲがやけに戦闘的なイモムシ。
4センチほどで、一生懸命葉っぱを食べていた。
このイモムシ、顔がなんだか悪魔のよう。
帰宅後例のイモムシハンドブックで調べてみたところ、この悪魔くん、なんとイシガケチョウの幼虫だった。
あいにくイシガケチョウは食草の関係か水納島ではあまり観られないけど、本島ではチラホラ目にするチョウで、地味にシブく美しい柄をしている。
その幼虫がこんな姿だったとはなぁ…。
<そんな虫たちに気を取られているから道を間違えるんじゃないの?
……そうかもしれない。
頂上は残念ながら臨時休業だったけれど、これまで登った山の中では最も生物相が豊富で、いかにも「山原の森」な世界は、普段海に囲まれて暮らしている我々にはとっても新鮮だった。
そういう意味では、多少の筋肉痛も無駄ではなかった。
……と信じたい。
2017年04月20日
定休日は正月のみ。
2017年 4月19日(水) 晴れ
東の風 少し波あり
数日ぶりのいいお天気。
絶好の行楽日和である。
そこで、かねてより抱いていた野望を果たすべく、雑貨屋さんは臨時休業にして朝早めに島を出て、一路山原を目指した。
その「野望」の顛末は後日に譲るとして、なんやかんやと時間がかかったために、昼食は我々にしてはかなり遅めの時間になった。
お腹減り減り。
さっそく、この日のために秘蔵しておいた山原のそば屋さんを訪れてみた。
なにしろ定休日は「正月」だけ、しかも営業時間は11時~午後8時までだから、売り切れてさえいなければ遅めのお昼でもなんの心配もない。
そこは昔から国道沿いのドライブイン的な佇まいを見せるお店で、これまで何度も前を通ったことはあっても、利用したことは一度も無かった。
現在はどうかわからないけど、少し前の情報では最高値メニューが600円という、どうしてその価格でコンクリート2階建てのわりと大きなお店を長い間維持できるんだろうと不思議になるほどの安さに、昔ながらの沖縄そばの沖縄そばたる魅力を感じさせる。
空腹絶頂状態でお店に到着!
ん?
んんん????
あ”…………
店の入り口に、読まずとも内容の想像がつくものが。
駐車場に乗り入れて念のために読んでみると………
やっぱり!!
また……またやっちまったぜ。
同じようにこの日「臨時休業」を掲げてある我が雑貨屋さんの前で同じ目に遭った方がお一人でもいらっしゃるかどうかは甚だ心もとないけれど、このお店だったら我々でこの日100人目くらいじゃなかろうか。
それにしても、定休日は正月だけと言い切るお店の休業に当たる率って、いったいどれくらいなんだろう。
まぁしかしオタマサも呆れるほどに「持っている」人生も随分長くなったワタシにとってはこんなことなど日常茶飯なので、ことさらショックを受けるでもなく次善の策を。
あいにく「初めての店」ではないものの、先日訪れたゆいゆい国頭がすぐ近くにあるので、その敷地内にある「わぁ~や~」さんへ。
前回訪れた時には屋外テント下のテラス席だけだったものが、ステキに増築されて立派な室内テーブル席も擁するお店に生まれ変わっていた。
絶品だった猪豚野菜そばも捨て難いところながら、以前は前田食堂の看板メニューだったものが、このところ名護以北の多くの店で急速に一般化しつつある牛肉傍をもメニューにあったので、チェックしてみよう。
これがわぁ~やぁ~さんの牛肉そば@800円。
もちろん牛肉もたっぷり入っているけれど、牛肉そばの場合、なんといってもビジュアル的主役はこのモヤシだ。
マグマ水蒸気爆発でも起こしそうなほどのてんこ盛りがマストである。
こちらのお店の炒め物の味付けは絶品やる気系なので、午前中にかなり体力を消費した体にはなににも勝る疲労回復剤となってくれた。
一方、モヤシ火山の向こうでオタマサがいただいているのは、ソーキそばの「小」。
写真を撮るのを忘れたけれど、小ぶりな丼に大きなソーキがドドンとひとつ乗っていて、絶品やる気系の牛肉そばからすると実に意外なほどに、カツオの風味が効いた出汁がとても上品だ。
小柄なオタマサにとってこの「小」は相対的に「並」なわけで、それを400円でいただけるのだから素晴らしい。
腹もくちて心も穏やかになり、このあとは当初の予定どおり隣接するフードコートのテナントの一つ、ジェラート屋さん「ユイチャーム」へ。
以前も紹介したとおり、ここのドラゴンフルーツアイスが絶品なのだ。
その他各種グラニータも充実しているから、ドライブでこのあたりにお越しの際には是非お立ち寄りくださいませ。
多分「臨時休業」は無いと思います……。
2017年04月19日
Scarlett in the Shell。
2017年 4月18日(火) 雨
南西のち北の風 日中はおだやかに
こぼれ落ちそうだった空からついに雨粒が落ち始め、未明にはけっこうな大雨になっていた。
ダムの貯水率は随分下がっているようだから、肝心の地域にもこの雨が降り注いでいることを祈ろう。
といいつつ、朝になれば雨は止むかな…というのは勝手かつ儚い望みだったようで、結局日中はほぼほぼ雨降りの1日になった。
シーズン中にゲストのいらっしゃる時ならいざしらず、わざわざこういう日に潜りに行くことも無いのでこの日のダイビングはお休み。
そして本来だったら夕方から本島に出て外泊する予定だったのだけど、雨がやむ気配が無いのでそれも中止にし、おとなしくいつものように島で過ごすことにして、先日観てきた映画の余韻を今さらながら楽しんでみる。
でまた余韻を楽しみすぎて、例によって冗長かつおそらく誰もついてこられない話になってしまったから、賢明なる読者はそろそろこのあたりでごきげんよう、さようなら。
スカーレット・ヨハンソンというハリウッド女優の存在をワタシが初めて認識したのは、たしか映画「アイアンマン2」だった。
アヴェンジャー・シリーズにおける主要キャラの1人であるブラック・ウィドーとして、初めて登場した作品だ(たしか)。
しかし彼女のスクリーンデビューは94年。まだ10歳と随分早く、11歳で主要キャラとして出演、13歳の頃には「モンタナの風に抱かれて」という名作でロバート・レッドフォードと共演しているではないか。
なにげにジョディ・フォスターなみのフィルモグラフィを誇る女優さんなのである。
その後も順調にキャリアを積んで、ブラック・ウィドー系のアクション有りの役も多々ある一方で、マット・デイモンと共演した「幸せのキセキ」では、個人経営の動物園の飼育スタッフという、セクスィアクション路線とは真逆の地味な役もできてしまうことを知り、すっかりお気に入りの女優さんの1人になってしまった。
静止画像ではけっして高須クリニック的パーフェクトな美人というわけではないのに、動画になると実に実に魅力的なのである。
だから普段は絶対に観ることがないヤフーのトップページのCM動画も、彼女が出ていたLUXのCMは何度も観てしまったのだった。
ちなみにこの女優さん、どんな役でもしっかり演じているからなかなかわからないのだけど、バラエティトーク番組に出演しているときに見せるほとんど「素」っぽい様子は、飲み屋のカウンターでたまたま隣りに座っていたノリのいいおねーちゃん的なあけっぴろげさなのがまた面白い。
Youtubeで多数アップされている、デビッド・レターマンのレイトショーとかクレイグ・ファーガソンのレイトレイトショーといった番組に彼女が出演しているときの動画は、ヒアリングはできないくせに観ているだけで楽しくなる。
たとえばこれとか。
ワタシの場合映画作品よりもむしろこのテの動画を観たことによって、より彼女のファンになってしまった。
にしても、なんでこんな地声の人が、ああいう役をそれぞれ演じれるんだろう。
役者さんてのはホントにスゴイ。
さて、話は変わるようで変わらない。
「攻殻機動隊~Ghost in the Shell~」という、一部のコアなファン以外にさほど支持されているわけではないアニメーションが始めて世に出たのは、90年代半ばのことだった。
今でこそいくつも映像作品があるけれどもともとはマンガで、映像作品として最初に世に出たのが押井守監督によるこの映画だ。
とはいえまったく守備範囲ではなかったからマンガはもとより映画も公開当時はまったく知らないまま、至極健全に過ごしていたワタシだった。
それなのに映画公開後しばらくたってから後輩が、「これけっこう面白いですよ」とビデオテープを持ってきてくれたおかげで、道を踏み誤ることになってしまったのである。
当時としては画期的なまでに洗練されたアニメーション技術(今観てもまったく見劣りしない)はもとより、コドモが立ち入る隙など微塵もない徹底的なまでのハードなストーリーは、なるほどたしかに後輩が自信を持って勧めてくれただけのことはある。
そしてなによりもワタシがハマってしまった理由は……
何度観てもわかんないッ!!
というところなのだった。
たしかに映画の中には、豆腐脳では一度観ただけではなかなか理解しがたいというものもけっこうある。
名作「ゴッドファーザー」だって、テレビで放映されているのを初めて見た子供の頃は、話の30パーセントくらいしかわからなかったものだ。
でも長じるにつれて理解もそれなりに深まり、いい大人になってから観た頃には、ドン・コルレオーネが長男ソニーに語って聞かせるひとつひとつの言葉の重みが身に染みてわかるようにもなっていた(フツーのヒトはもっと早くにわかっていると思われます)。
ところがこの攻殻機動隊ときたら、何度観ても、それこそもうかれこれ合計10回くらいは観ているはずなんだけど、結局のところ少佐は何がしたくて何のためにあそこまで全身全霊をかけるクライマックスになるのか、共感とともにバシッと脳天まで達する理解が得られないのだ。
所詮、凡百の民にはどうしても踏み込めない領域ということなのだろうか。
なのに、わからないものはわからないながらも、作品が描く舞台や精神世界が妙に魅力的で、続編として公開された「イノセンス」はもちろん、登場人物も声優さんもほぼ同じでありながら、映画とは異なる舞台設定のテレビアニメシリーズも観てみたけれど、やはり映画1作目の「攻殻機動隊」がベストといえる。
ちなみに映画の興行成績自体は当然ながら(?)ふるわず、観客動員は12万人にとどまったようだ。
それをさらにイケズな見方をすると、4万人のコアなファンがそれぞれ3回映画館に足を運んだからこその数字である、という説もある。
興行的にコケた映画の続編として作られた「イノセンス」は、当初は「攻殻機動隊2」として準備が進められていたのだそうだ。
でもそこにプロデューサーとして招かれたスタジオジブリの鈴木敏夫氏が、12万人(実質4万人)しか観なかった映画の続編として売り出して、ヒットするわけがないだろう、という実にやり手プロデューサーらしい冷静な判断をしてタイトルを変更したという。
しかしその「イノセンス」もまた、まったくさっぱりワケがわからない度でいえば1作目を軽く凌駕していて、これはひょっとして他の皆さんの脳が電脳化していく一方で、ワタシの脳の豆腐化がさらに一歩進んでしまったからだろうか…。
そんなワタシを安心させてくれたのは、当時とても頼りにしていた映画評サイトの評者コメントである。
彼曰く、
「4万人の信者が3回ずつ観る映画じゃなくて、本気で100万人クラスの動員を狙うんなら、せめて50万人に解かる映画を作れ」
そうか、やっぱりみんなわからないんだ!!(評者も実はコアなファンらしい)
そんなコアなファンの支持を得つつも、日本ではメジャーになりきれない攻殻機動隊。
しかし1作目公開当初からアメリカあたりではかなり評価が高く、その後の有名ハリウッド作品に多大な影響を与えたというジジツはみなさんご存知のとおり。
ひところ一世を風靡した「マトリックス」なんて、ひと目見るなり「攻殻機動隊だ!!」と思ったものなぁ。
そんな攻殻機動隊が、このたびついに実写で映画化されたのである。
もちろん4万人しか観ない日本ではなく、ハリウッドの製作による。
そしてなんと!!
主役の少佐を演じるのはスカーレット・ヨハンソン!!
このところすっかり映画館から遠ざかっているワタシだから、これが単に攻殻機動隊のハリウッド実写映画化とか、スカーレット・ヨハンソン主演の何かの映画というだけだったら、あとでDVDでも買って観ようっと、で済んでいたことだろう。
ところがスカ・ヨハ主演でしかも攻殻機動隊の実写版ときたら、ワタシにとって今現在最も観たい映画ナンバーワンの座に瞬時に着くのは当たり前。
孔雀楼中華大作戦に際し、なにはともあれまずはこの映画を観ようという流れになるのも当然なのであった。
で、その映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」は……
あぁ、なんてことだ、例によって独りよがり盛り上がりのために前フリで紙数が尽きてしまった。
続きはまた明日。
ごきげんよう、さようなら。
……となるところなのだけど、このテンションを維持して翌日また続きを書くのはどう考えても不可能なので、今日はスポンサーのご好意により、放送時間を延長してお伝えいたします。なにしろ…
ネットは広大だわ…。<4万人以外には意味不明。
さて、さっそく結論から言いましょう。
ハリウッド実写版攻殻機動隊、これはかなり……
面白いッ!!
いや、おそらく4万人のコアなファンにあっては、文句の一つや二つや三つや四つ、溢れるように出てくるのだろう、きっと。
でもかつて「攻殻機動隊」を何度観ても理解できなかった凡百の1人であるワタシにとっては、この映画、50万人にわかる内容になっているのだ。
ありきたりといえばありきたりなテーマとはいえ、「絵」が演じるアニメーションとは違って生身の女優さんが演じるわけだから、ストーリーにも「血」を通わせないと役者が演じている意味がないというもの。
それにこれだったら、クライマックスにおける少佐の全身全霊渾身万力の動機づけも、実にすんなり脳天直撃的に共感できる。
というか、この作品の監督も相当なマニアであろうことは間違いない。
話の内容こそガラリと変えてはいるけれど、押井守作品の印象的なシーンの数々を、ほぼほぼ演出はそのままに実写化しているのである。
まさにリスペクトの塊。
おまけに登場する飛行機や戦車はアニメ映画のままだし、バトーはバトーだし、そのマニアっぷりは、終劇後にクレジットが出始めて流れるエンディング曲にたっぷり現れている。
そしてなんといっても驚くべきは、ホントはLUXスーパーリッチなパツキン女優スカーレット・ヨハンソンのビジュアルが、まさに「少佐」なのだ。
それはもう、冒頭のシーンから。
これまたコアな4万人のファンには賛否いろいろあるんだろうけど、ワタシはもうすんなりそのまま入り込めました。
ちなみに原作もアニメ映画も、主人公の少佐は「草薙素子」という名の日本人という設定である。
でもKUSANAGIにしろMOTOKOにしろ、母音連発の名前をハリウッド俳優が発音できるはずはなし、そもそも主演がスカーレット・ヨハンソンなのだから、アメリカンなファーストネームでの登場となっている。
それはまぁ予想していたことではある。
あの名作「ルパン三世カリオストロの城」だって、アメリカ公開版の不二子ちゃんはたしかローズって名前になってたくらいだから、無理に「MOTOKO」とハリウッド俳優たちが違和感アリアリで発音するのを聴き続けるよりはいいことなのだろうと割り切っていた。
ところが!!
作中でしっかりと「草薙素子」という名が、ストーリー的にかなり重要な必然性をもって出てきたのには驚かされた。
それはこの映画の核といっていい部分で、その際のキーパーソンとなる人物が、まさかまさかのあの日本の有名女優さんとは!!
映画館で観たいと思った時点で、たいていの場合内容についてのあらゆる情報をシャットアウトするものだから、主要キャスト以外で誰が出ているのかなんてことはまったく知らず、もちろん話の内容も微塵も知らなかったから、これには相当驚かされた。
ワタシの場合この映画を観て「面白い」と感じた要素の大きな部分を、この女優さんの存在が占めていると言っても過言ではない。
昔から素敵な女優さんだったけど、今もなお異国の銀幕で輝いて見えるのだからスゴイ。
いろんな情報が溢れているから、映画を観る前に知ってしまったヒトもきっと多いことだろう。
でもこれは知らないまま観た方が絶対にいいので、映画を愛し知性と品位に溢れる当サイトは、固く沈黙を守るのである。
この女優さんと、核を成すストーリーのおかげで、これまでは遥か遠くのハリウッドの女優さんだったスカーレット・ヨハンソンが、にわかに民族的に身近な存在になったような錯覚を覚えたのは言うまでもない。
ブレード・ランナーのテイスト溢れる背景に、日本映画界が誇る名作の素晴らしさを余すところなく(とはいわないまでも最大限のリスペクトをもって)描かれた実写版攻殻機動隊「ゴースト・イン・ザ・シェル」。
これでもう少し通常パートのビートたけしのセリフ回しが上手ければ申し分ないんだけどなぁ……。
こういう映画もまた広くあまねくいろんな人々に……と思いはするものの、公開から一週間も経っていないこの日午後3時20分の回の劇場には、ポツンポツンと観客がいるのみ。
若いカップルや友人連れもいる一方で、我々よりも年齢が上っぽいヒトの姿もやけに目立っていた。
ひょっとして…………コアな4万人の方々か?
観客動員12万人程度のアニメ作品の実写版ということでは、やはり大ヒットは望めないのか。
というか、本国アメリカでもなにげに今のところ興行成績は鳴かず飛ばずというウワサも………。
世界で4万人だったらどうしよう。
余人はいざしらず、ワタシのせいで昔から「攻殻機動隊」を知るところとなっていたオタマサもほぼほぼ同じ感想なので、おそらく今年はこのあと我々が劇場に足を運ぶ機会はまずないであろうことを考えると、本作は自動的に我々の今年度ナンバーワン映画の座を獲得したのであった。
ところで。
外国映画にはつきものの吹き替え版。近年は劇場においても吹き替え版の上映枠を設けるようになっている。
で、この映画の吹き替え版の主要キャストが、なんと押井守作品以来何作かずっと続いていたキャストそのままなのだ。
だからスカーレット・ヨハンソンの声はもちろん、「少佐」こと田中敦子なのである。
そっちもとっても観てみたいッ!!
さすがに吹き替え版のためにもう一度劇場には行ってられないから、どっちも楽しめるDVDを買おうっと。
とにかくそんなわけで、とっても面白いから騙されたと思ってどうぞ劇場へ足をお運びください。
観たことがある方も未見の方も、その直前に押井守監督の「攻殻機動隊」をご覧になっておくことを激しくお勧めいたします♪
2017年04月18日
BISTRO MATTAKA。
2017年 4月17日(月) 曇り
南西の風 やや波あり 水温22度
今にもこぼれ落ちそうな曇り空ながら、南風なので島の桟橋側は穏やかな海。
この日の朝早い時間には流れも無く、それなりに水もきれいだったから、日差しが無いことを除けば快適そのもののダイビング。
そして今日もまた、あまり見かけないタイプのウミウシがいた。
こちら。
チギレフシエラガイと思われるウミウシだ。
チギレフシエラガイはほぼ季節を問わず見かける種類ながら、このような色合いのものを観るのはおそらく初めて。
先日といい今回といい、過去22年間で一度も出会ったことがない色合いのモノに今さら出会えるのだから、まだこの先とんでもない柄のチギレフシエラガイが出てくるかもしれない。
一方、色柄とは違う意味で珍しいのが、砂地とガレ場の境目あたりで出会ったこちら。
ダンダラダテハゼ。
種類が珍しいわけでも、色柄がレアというわけでもないけれど、水納島の場合、砂地のポイントで見かける頻度は限りなく低いのだ。
もっと岩っぽい場所にいる子は体のダンダラ模様が濃く、赤味が強いのに対し、砂地にいる子はこのように薄い色だから、「あ、ヒメダテハゼね…」で素通りしてしまっているヒトもいるかもしれない。
さて、13日の続き。
ケンタローが自らのために設けていた中間地点バラン星とは、こちら。
店を出てから撮ったため、ピントもなにもあったもんじゃないけど、店名はかろうじて読み取れる。
BISTRO MATTAKA。
きっとマッタカと読むのだろう。
これまた58号線沿いにある店で、暖色照明の灯りがこぼれる店内の雰囲気はかなりコジャレたバーといった雰囲気。
しかしながら看板にも「洋食堂」とあるとおり、メニューには洋食屋さんでいただけるような食事メニューもたくさん並んでいる。
ともかく乾杯。
中華で腹が満ちている我々なので、あいにく食事メニューに野望を抱けなかったけれど、酒のアテの品々もなんだかオシャレだ。
メニューでその名がとても気になったのが、鴨肉とナントカのピンチョス。
ピンチョスってなんね??
正体を知るべく迷わずオーダーすると、出された品はこういうものだった。
運んできてくださった物腰穏やかな女将さんの話によると、どうやらスペインではこういう形で串に刺す料理のことを言うそうで、バルが一世を風靡した日本でも、いつのまにやら一般名詞になっているらしい(日本じゃ爪楊枝で済ませてるかも)。
うむ、我々も今宵ひとつ賢くなったぞ。
……覚えていられれば。
翌朝オタマサが覚えているかどうか試しに尋ねてみたところ、
「ピ…ピ……ピン……ピン………あれ、なんだっけ?」
え”―ッ!?
ピンまでたどり着いて後が出てこないんすか???
もっとも、ヒトのことを言っていられる自分でもないので、ここにこうして記しておけば当分忘れることはないだろう。
もう一皿のチーズの盛り合わせも素晴らしかった。
4、5種類のチーズが、オリーブやプチトマト、各種葉野菜に彩られながら、可愛くオシャレに盛られている。
中華料理のように手間暇かけて調理されているというわけではないにしろ、こういうちょっとしたセンスが、酒の味をワンランクアップさせてくれていたのは間違いない。
ここまでなら、街のステキなバーそのものといった雰囲気なのだけど。
入店早々から、カウンター方面には、ずっとテンション高めのハイボリュームでトークしているにぃにぃがいた。
やけに盛り上がっているけど、こういうおシャレな店でそこまで騒いでいいんだろうか。
見るともなしにそちら方面に目をやると、そのエンドレストーキングマシン化しているにぃにぃは…
この店の主人なのだった(爆)。
な~んだ、そういうノリでいいんすか!!
一方、奥のパーティテーブルで楽しげに飲んでいる男性チームは、どう見ても平均年齢古希前後。
聞くともなしに耳に入ってくる話をチェックしていたカヨ夫人によると、なんでもこのあたりの地元の同級生だそうで、卒業後はそれぞれバラバラに過ごしていたけれど、リタイア年代になって再びつるむようになり、こうして楽しい酒の席に集っているらしい。
いいなぁ、そういう老後って!!
そのお父さん方の楽しげな様子は、越してきたばかりの頃の水納島で我々がよく目にした、島のおじぃたちの姿を彷彿させた。
当時の島にはカウンター機能を備えた食堂設備があるバンガローがバブルの名残りで建物だけ残っていて、その管理を任されていた故ヒデオさんの号令のもと、しょっちゅうおじぃたちは飲んでいて、我々もよくご相伴に与ったものだったのだ。
アベノミクスなら、そんなところで酒なんか飲んでばかりいずに働きなさい、総活躍しなさい!!と言うかもしれない。
しかしこういう素敵なシーンを目にすると、どう考えても日本は間違った方向に進もうとしていることがよくわかる。
少なくともアベノミクスでは、老若男女が集って楽しむ街の洋食堂なんて、けっして生み出せないに違いない。
近頃の沖縄本島は、返還された米軍の土地や、有り余る一括交付金を元手に野山を切り拓いたり海を埋め立てたりしてできあがった造成地が、たちまち「街」になっている。
でもそんな街はどこもみな、似たような全国区チェーン店が顔を揃えるばかりで、徐々に金太郎飴化しているように見える。
それはそれで地域住民にとっては便利になってはいるだろうけど、なんだか違うんだよなぁ……
……と常々思い続けているのは、きっとこのMATTAKAさんとか孔雀楼のような店をこそ「ステキ」と思う自分がいるからなのだろう。
ケンタロー夫妻の話によると、このあたりにはこれらのお店以外にも、それぞれ特徴的な飲食店がまだまだあるという。
観光客や周辺市町村から遊びに来る客が多い那覇あたりの繁華街とは一味違う、地元の人々の味がそこにある。
宜野湾市の国道58号沿いならびにパイプライン沿い、侮りがたし。
この日は昼食のカレーから映画から、そして夜のメインイベントと盛りだくさんで、なおかつどれも充実してすっかりいいコンコロもち。
シアワセ気分でケンタロー宅に帰還した。
そして。
明日も仕事だというのにさらに家飲みで付き合ってくれたケンタロー夫妻には申し訳なかったけれど、そのうえ午前零時を越えてめでたくハッピーバースデーを迎えたケンタロー氏から、秘蔵の日本酒をふるまってもらっちゃったのだった。
逆だろ、フツー。
いやあ、その……心臓80代宣告を受けたあとの彼のご家庭におけるアルコールライフをキチンと把握していなかったために、酒系手土産はつい控えてしまったんでございますよ……。
面目ない。
次回は必ずや逸品を持参しますので、これに懲りず頑張って体重を月2キロずつ落としてね。
2017年04月17日
孔雀楼。
2017年 4月16日(日) 曇り
南の風 やや波あり 水温22度
お天気は下り坂のようながら、なんとか今日まではセーフ。
というわけで今朝も海へ。
今冬は水納島では異例の早さでクジラの声が聴こえたのだけれど、沖縄地方を去っていくのも早かったらしく、3月中にほぼほぼみんな揃って北に帰ってしまったという。
水納島でクジラの声が頻繁に聴こえるのは例年なら3月。
ところが3月の我々はなんだかんだあって潜る機会がなかったため、我々にとってのクジラの声は、異例に早かった昨年12月が最初で最後ということになってしまった。
……かと思いきや。
今日はけっこういい感じでホエールソングが。
これはおそらく、フィリピンあたりで冬を過ごしていたザトウさんたちなのだろう。
潜っている最中にBGMでクジラの歌声があると、それだけでなんだか心が豊かになる。
すると余裕の心が視野を広くし、こういうウミウシも自然に目に入ってくる。
ホシゾラウミウシ。
春の潮干狩りシーズンでは、年によっては人が歩いて渡れるくらいの水溜まりでチラホラ見られるウミウシだ。
ところがダイビング中に出会うのは稀で(@水納島)、過去に1、2度ゲストに案内したことがあるかないかくらいで、撮ったのは初めてのこと。
今さらながらの初登場である(多分)。
今さらながらといえば。
先だってはキレンジャーの能力を酷評してしまったワタシなのだけど、どうやら酷評すべきはワタシの理解力のほうだったらしい。
というのも、ここまでずっと、リーフ際の浅いところで自然光のみで撮っていたら……
こんな感じになっていたのだ。
脳内で補正される肉眼の景色と比べても遥かに赤味が足りないから、それをカメラの能力なのだと理解したワタシは大いに不満だったわけである。
でもひょっとすると操作次第で能力を発揮するのかも……
と、どういうわけかこの日安全停止中に突然思い至り、あれこれいじくってみたら……
おお、失われていた赤味が補正されている!!
そうそう、浅いところで自然光でこれくらい撮れてくれれば、ワタクシなんの文句もございませんです。
<そんなの取説読めばすぐわかるじゃん!
…と、取説マニアの方はおっしゃることだろう。
でもコンデジくらい、取説など読まずともだいたいわかるでしょ、フツー。
……わかんなかったけど。
でもその取説も不思議といえば不思議なのだ。
だって、水深30メートルまでOKなんていうカメラといえば、そもそも「通常の使用」は水中でしょう?
だったら「水中写真の撮り方」的なことを、まずは最初にワタシのような豆腐脳でもわかるように書いてくれればいいじゃないのさ。
ところが取説のなかで水中使用に関して特記されていることといえば、使用前の防水チェック、使用後のカメラのクリーニングについて述べられいるのみ。
その他は基本的に陸上使用がノーマルであることを前提にしている説明になっていて、ひょっとすると取説をちゃんと読んでもわからないかも>オレ。
ひょっとしたら…とこの日水中で突如思い至ったのは、ひとえに昨シーズン中にこのカメラをいろいろ試行錯誤されていたゲストの姿を思い出したからこそ。
ワタシの脳内記憶回路は、水圧がかかって初めて全ラインが接続するらしい……。
取説はともかく、そんなわけで今さらながらではあるけれど、カメラとしてのキレンジャーの評価をもう少し格上げすることにした。
なんであれ、モノゴトをキチンと理解していないヤツ(ワタシのことね)の批評ほどやっかいなものはない。
皆様におかれましては、くれぐれもワタクシの無知なるが故のイチャモンに惑わされることのなきよう……。
さて。
話は13日に遡る。
ケンタロー宅は宜野湾市。
メインイベント指定の中華料理店はその近所。
そして中南部でこなす必要がある唯一の所用は北谷町。
となれば。
ミハマセブンプレックスで映画を観れば、わざわざ混雑激しい那覇まで足を延ばさずとも、宜野湾以北ですべて事足りるはず。
ところが。
現在本島中南部に4か所あるシネコンのうちで、我々の目当ての映画を上映しているのは、シネマライカム、シネマQ、そしてサザンプレックスの3か所。
よりによってなんでミハマだけ無いの????
またやっちまったぜ…。
こういう場合、特に映画はなんでもいいという方なら場所を優先するのだろうけれど、現在公開されている映画の中で観たいと思うのはただそれ一本だけだったから、わざわざシネマQまで行くことになってしまったのだった。
もっとも、那覇の名店「ゴカルナ」さんに行き当たったのは、考えてみればそのおかげともいえる。
やっぱり世の中、禍福は糾える縄の如し。
というわけでホテルストークに泊まって以来のおもろまちで映画を観終わり、おもろまちからパイプラインをただひたすら北上してケンタロー宅に到着。
主はまだ仕事中のところ、カヨ夫人に甘えてシャワーまでお借りし、万全の生ビール待機態勢でいるところにケンタロー氏帰宅。
いざ、超久しぶりの中華料理店へ!!
お店はこちら。
昔から58号線沿いにこの店ありと知られている、孔雀楼。
ここだけ切り取って見れば、ブレードランナーか攻殻機動隊か横浜中華街かといった風情だけど、このお向かいは片側3車線の立派な国道58号が通っているフツーの宜野湾市。
宜野湾市周辺は学生の頃から慣れ親しんだ街で、基本的に生活圏内だった。
でもどこに行くにも車に乗っていた当時のこと、このあたりの国道沿いを歩いてプラプラしたことなど過去に無く、今回ケンタロー宅からこのお店までの国道沿いを歩いたのはおそらく人生初だ。
これまで運転中に車窓からさんざん眺めてきた場所なのに、テケテケ歩いてみると、これまでまったく知らなかった魅力的なディテールが見えてくる。
なんとまぁ、魅惑的にもアヤシゲな店が多いことか。
この孔雀楼だって、見方によってはけっこうアヤシイかも。
少なくとも、車でピューッと走って目にするだけなら、ふとしたはずみで訪れてみようなんて思うことはまずないだろう。
しかし我々はすでに久しぶりの中華にウキウキモードだから、二の足を踏むはずもなし。
逸る心を抑えつつ入店すると、そこはホテルのレセプションのようだった。
学生の頃に一度だけ入ったことがあるようなないようなオボロゲな記憶の中では、食事をしたのはたしか1階のフロアだったような気がするのだけど、この日そこから案内されたのは、幅の広い階段を登った先にある2階のフロアだった。
受付といい階段といいフロアといい……
ジャッキー・チェンの映画みたい♪
この1階ロビーから階段へと続く場所の様子を目にするだけでも、ここに来る価値あり。
ただし一見さんでこのエントランスだと、値札のない寿司屋に入ったときなみにたじろぐこと必至である。
老舗ではありながらも平日のディナータイムに満員御礼というわけではないようで、落ち着いた雰囲気のフロアには中華料理店ならではの円卓が並んでいる。
さあてメニューを拝見。
なにをさておいても生ビールをお願いするのはもちろんとして、綺羅星のごとき中華のメニュー、いったい何を頼めばいいのやら。
そうそう何度も来られない我々のためにケンタロー夫妻がオーダーの主導権を譲ってくれるのは有難いものの、だからといって食べ慣れないものがズラリと並ぶなかからコレといったメニューは瞬殺決定できるはずはない。
この店の看板メニューらしき北京ダックに後ろ髪をひかれながらも、ここはおとなしく前菜から順にいろいろ決めていった。
そんななかでとっても食べてみたくなったのが、蒸し鶏の中華料理風の品。
なんか、中華といえば蒸し鶏というイメージがある。
さっそくオーダーしてみたところ……
「すみません、本日は蒸し鶏はご用意できないんです……」
へ?
他の鶏肉メニューはOKなのに、蒸し鶏は不可なんですか??
よりにもよって、綺羅星のごとき数々の料理の中で、この日不可なのは蒸し鶏料理だけなのだった。
またやっちまったぜ……。
無理だと言われてゴネるつもりはないけれど、なぜに蒸し鶏だけがダメだったのか、素朴な疑問としてそこんところを詳しくうかがってみたいところである。
さてさて、気を取り直して中華三昧。
いやはや、やっぱ美味いわ、中華料理!!
しまった、もっと景気よくテーブル状に料理が並んでいる時を選んで撮ればよかった……。
前菜の盛り合わせのチャーシューもクラゲも美味しかったし、小龍包もしっかり仕事をしてくれていたけど、ケンタロー夫妻オススメの餃子がステキで、なんと皮から作っているこの店オリジナルなのだとか。
そのムチムチしつつコシがある皮に包まれた中身は、聞くところによると豚の皮から取った出汁を冷ましてできる煮こごりをミンチにし、他の具材と混ぜられているという。
だから焼きあがった餃子をいただくと、小龍包級のジューシー感、そしてとろけた煮こごりが拡散波動砲級に増幅させる旨味!!
井の頭五郎風にひとことで言うなら……
これは…美味い!!
餃子作りは羽が肝心だとか、本場中国の餃子は水餃子が基本だとか、そんな小うるさいウンチクは、この餃子を一口いただけば3万光年彼方に葬り去られることだろう。
中華料理風あんかけの白身魚が、これまたダークホース的に美味かった。
魚一匹丸ごと出てくる大雑把な料理かと思いきや、ふた口サイズの切り身で調理されていて、その味付けが中華ならではというか家で再現不可的で、なにげないこういう料理に中華料理らしさが迸っている。
その他、ご飯系しめメニューの炒飯シリーズからチョイスした高菜炒飯も素晴らしかった。
高菜炒飯といいながら高菜はあくまでもサブキャラで、主人公は炒飯の上にドンと盛られたシラス炒め。
これを混ぜながらいただくと、香ばしさとほどよい塩加減で炒飯の旨さが激増するのだ。
シラスといえば、ともすれば我々はいかにナマの美味しいモノを手に入れるか、ということに目が行ってしまう。
しかし中華の世界ではやはり、「いかに火を通すか」ということが主眼になるのだなぁ。
豪奢な建物に豪華なエントランス、そして香港映画に出てくるような内装から受けるイメージは限りなく高級店だというのに、中身はフツーに家族で来て楽しく美味しくリーズナブルに本格中華を楽しめるステキな庶民の店、ピーコックこと孔雀楼。
地元の方々に愛され続けてきた理由が、ようやく今わかった。
メニューは豊富だし北京ダックも食べてみたいし、これは再訪決定だ。
ケンタロー夫妻の迷惑は顧みず、毎年恒例の行事にしようっと。
さて。
普段も旅先でも歩き回ってばかりいる我々にとっては、ケンタロー宅からほんの目と鼻の先にある孔雀楼。
しかし四十代半ばにして医者から「あなたの心臓は80代です」と言われたこともあるケンタローにとっては、この徒歩行は生死にかかわる八甲田山級の一大アドベンチャーだった。
なんとか無事に店にたどり着けたのはよかったものの、アルコールも入ってお腹もくちて、このあと生きたまま家まで帰りつくことができるのだろうか。
……という一抹の不安を解消すべく、周到なことにケンタローは、なんと中間地点バラン星を用意していたのだった。
あの浮沈戦艦ですら帰り道では見向きもしなかった中間地点バラン星を復路に用意するあたり、80代の心臓も伊達ではない。
その中間地点バラン星とは……
あ、ここで紙数が尽きてしまった。
続きはまた明日。
ごきげんよう、さようなら。
2017年04月16日
ゴカルナ。
2017年 4月15日(土) 晴れ
南東の風 波あり 水温22度
中5日空いたのでその間に水温がジワジワ上昇しているかと思いきや、何も変わってはいなかった。
来週からまたぐずついた天気が続きそうな予報だから、GW前にバラ色の水温になるかも…という淡い期待はかなわぬ願いになりそうだ。
もっとも、いきなり水温が上がってしまうと、本来この季節に観られるウミウシたちが早送りで居なくなってしまうかもしれないから、正しく季節が推移するためには、GW中の冷たい水も甘受しなければならない。
ウミウシといえば、この日実に久しぶりにこのウミウシを見つけた。
当サイトウミウシ図鑑コーナーでも紹介しているとおり、一昔前の水納島では、毎年春になると決まった場所でフツーに観られるウミウシだった。
ところが近年は、そのポイントに行く機会が減ってしまったからか、そもそも居なくなってしまったためか出会う機会はほとんどなく、デジイチを使うようになってから、このウミウシの写真を撮ったのはこれが初めてかもしれない。
すなわちこの10年で初。
次の出会いはまた10年後かもしれないから、キチンと出会いを楽しんでおいた。
こういう珍系のウミウシとは違い、種類的には当たり前なのに、その1匹だけやたらと目を引くために、おお、今年も元気でやってるね!的な出会いもある。
去年からずっと同じ場所に居ついているこの魚もそのひとつ。
沖縄の海ならどこでもたいてい観られるヘラルドコガネヤッコ。
何があったのか彼は背中を損傷していて、ヒレまでは回復させきれないほどの深手だったためか、背ビレの真ん中が波平の頭のようにになっているのだ。
こんなヘラルドコガネヤッコはそうそういないから、ひと目で識別できる。
おかげで、昨年からここで見かけていた子であることがわかるのだった。
深手ではあってもどうやら生きていくうえでは支障ないようなので、今後もこのヘラルド波平に注目してみたい。
話は変わる。
フトコロに余裕があるときは、普段家で食べられないモノを求め、本島に出て外食することもある。
その場合、居酒屋、割烹、寿司屋にピザ屋、イタ飯フレンチいろいろあれど、なかなかチョイスすることができないのが中華料理だ。
ラーメン店に毛の生えたような食堂で1品モノを頼むならともかく、紹興酒を飲みながら色とりどりの中華料理を各種楽しみたいと思っても、たいていの場合一品あたりの量が多いから、夫婦2人だと「いろんな種類」を楽しむことができないからだ。
ちゃんとした中華料理にこそ、普段家で食べられないメニューが目白押しだというのに。
なので食べたい食べたいと思いつつも、いつぞやの横浜中華街探訪時以来中華料理とは長らくご無沙汰している我々である。
そんなおり。
先月フラッとケンタロー宅を訪ねた際、耳寄りな話を聞いた。
彼の自宅から歩いて行けるところにある中華料理店が、けっこうイケるというのだ。
あれ?ケンタロー、たしかこの当時は中華料理が嫌いだったんじゃ???
ケンタッキーのコールスローサラダに含まれているみじん切り状態のセロリでさえ食べられなかったワタシが、今ではセロリ一本丸々食べられるほどに大好きになっているのと同じく、彼もまたそのあたりはオトナになっているのであろう。
さて、そのイケる中華料理店とは、よくよく聞けば、学生の頃からその存在を知っている、58号線沿いの立派な店ではないか。
かなりアヤシクなってきている記憶を紐解くと、たしか学生時代に一度だけ意を決して入ったような記憶があるものの、その後はたまに店の前を通り過ぎるたびに今もなお健在であることを確認する程度で、この30年近くはまったく我々の生活環境の埒外にあった。
ところがそんなお店が、現在のケンタロー夫妻宅から歩いて行ける距離にあるという。
しかも実際に何名かで食事をしてみたケンタロー夫妻いわく、価格的にもけっして二の足を踏む必要はないらしく、それでいてメニューはたくさんあるからけっこう楽しめるというではないか。
そうだ、2人だけだといろんなメニューを楽しめないけど、4人いれば最少でも4種類、体重0.1トンのケンタローが居れば10種類くらい味わえるに違いない。
おまけに宿泊はケンタロー夫妻宅でOKということで、食事に回す予算はグーンとアップ。話はトントン拍子に進み、一昨日の13日がその決行日となった。
だからといって中華の晩餐のためだけに島から出るわけではないから、本島で軽く所用を済ませつつ久しぶりに映画でも観て、それから中華作戦に突入しようということにした。
本島に出る機会はたびたびあれど、費やす時間が所用や通院よりも娯楽のほうが多いというのはホントに久しぶりのことである。
せっかくだから、ランチタイムも普段ならまず行く機会がないところを目指してみよう。
こちら。
カレー専門店「ゴカルナ」。
ハーバービュー通り沿いの那覇高校の目の前にある。
ハーバービュー通りなんていったら、それこそ30年ぶりくらいかもしれない。
それほど縁が無い地域ながら、スパイスを多用した味は似ている店が他に無いと言われるほどのカレー店を、キレンジャーとしては放ってはおけない。
それに今宵の方向性はすでに決まっているから、カレーなら絶対にかぶらないという安心感もある。
このお店、すっかりメジャーになっているらしいけれど、平日のランチタイムに入ってみたところ、我々以外の客はほぼほぼ近隣の勤め人だった。
地元のみなさんの、普段使いのカレー店。
それだけでもう、期待に胸が躍る。
テーブル席、カウンター席ともにさほどの数ではないので、満席だったらどうしよう…と一抹の不安を抱いていたところ、うまい具合いにカウンター席が2つ空いていた。
さっそくメニューを拝見。
ああキレンジャー、メニューを目にしただけでヨダレが……。
どれもこれも美味しそうなところから、ワタシがお願いしたのは……
この店のド定番だというバターチキンカレー@700円にトッピングとしてドライキーマカレー@200円を足したもの。
スパイシーなバターチキンカレーの海に浮かぶサフランライスアイランド、そこにまるで伊江塔頭のようなドライキーマの山。
こりゃもう、キレンジャーには辛抱たまらんですばい!!
まずは一口。
オイシィ~~~!!
お店でいただく美味しいカレーの中には、材料と時間さえあれば家でも作れそうなものもなにげにけっこうある。
しかしこのお店の美味しさは、ちょっとやそっとじゃ真似できない、まさにここでしか味わえない旨さだ。
一方オタマサは……
バターチキンカレーと、牛肉と茄子のカレー(タイカレー)withたっぷりのパクチーのハーフ&ハーフ。
中央には、両者を左右に分けるサフランライスの天の橋立が。
どちらもごはんの量は最初からお願いすれば大盛りにしても無料のようなのだけど、あとから追加でライスをオーダーすると有料になるみたい。
このバターチキンカレーの場合、チキンの増量も有料でお願いできるほか、その他各種トッピングなどのサイドメニューもかなり充実している。
うむ、これはまさにスパイシーワールド。
そんなスパイスで代謝が促進されて火照る体のために、テーブルにはこういうものが各席に用意されている。
さすがインドのカレー屋さん、扇子までインド風カラーか。
と思いきや、開いてみると………
それはスイカの柄であった。
なにげにお茶目なゴカルナさんなのである。
口直しにラッシーも美味しくいただいて、大満足で完食。
ここまで来た甲斐ありという意味で、稀に見る充実度である。
お会計の際に、お店のにぃにぃから「ご旅行ですか?」と訊かれてしまった我々。
やんばる方面に住んでいるので、小旅行といえば小旅行かなぁなどと言いつつ、近所にこういうお店があれば、とかなわぬ願望を口にした。
するとにぃにぃは、「自分たちからすれば、身の周りに自然がいっぱいの北部がうらやましいです」という。
なるほど、みんなどれほどやりたいように生きていても、行き着く先は「無い物ねだり」なのですな。
我々がそっち方面から来ていることを知ったにぃにぃは、実にうれしいことを最後に言ってくれた。
名護の「たんぽぽ」にまだ行ったことがなくて、是非行ってみたいのだそうだ。
さすが名護の老舗カレー店「たんぽぽ」、その名声は都会で絶賛されているカレー屋さんにも響き渡っているのである。
あれ?
中華作戦の話のはずが、ミッション・インドッシブルで紙数が尽きてしまった。
続きはまた明日。
2017年04月15日
春の新作ラッシュ。
2017年 4月14日(木) 晴れ
南の風 うねりあり
泊りがけで本島に出かける日に限って、すこぶる行楽日和になり、日差しを浴びる新緑が目にまぶしいほどにイキイキとしていた。
今回は屋外で何かをする予定ではなかったから、こういう時こそ雨でよかったんだけど……。
今回の本島行については明日にでも触れることとして、今日はいろいろと新製品が完成したのでそのお知らせ。
まずはこちら!!
ポストカードの新作3点!(写真をクリックするとポストカードのページが開きます)
ポストカードはノンダイバーの方にもお気軽にご購入いただける売れ筋商品ではあるものの、だからといって爆発的に売れるわけではなく、また100部200部単位で作れるものでもない。
なのでそれを3種類も作ってしまうと、狭い店内にまたまた在庫スペースを確保しなければならなくなるから、100枚200枚単位でのご購入は大歓迎!!<いないって……。
そしてお次はこちら!
ついに登場、ダイビングサービス・クロワッサンアイランド30周年記念Tシャツ♪
(上の写真をクリックすると、該当商品ページが開きます)
デザインはこんな感じ。
30周年記念になんでインドカエルウオの幼魚?
という声が聞こえてきそうな気がするけれど、この際そんなことを気にしてはいけない。
モデルの是非はともかく30周年は今年限りのことなので、今回は売り切れ次第販売は終了。予約不可だからみなさんお早目に!
……といいつつ、来年も再来年もそのまた翌年も売れ残っていたらどうしよう。
2017年04月13日
そこの海にいたCOO。
2017年 4月12日(水) 雨のち曇り
北の風 波あり
芥川賞が今もなお純文学路線の新人の登竜門なのに対し、現在の直木賞は優れた「大衆娯楽作品」が対象になっているため、ときには「今さらこのヒトが?」と驚く場合もある。
今回の恩田陸もすでにベテラン、十分すぎるほど売れている作家だというのに、今さらの直木賞でもやはり「箔」がつくのだろうか。
今は亡き景山民夫が、それまで名を馳せていた放送作家の仕事をやめて作家に専心するきっかけになったのは、やはり直木賞受賞だった。
受賞作は「遠い海から来たCOO」。
当時のワタシは彼が放送作家としてどれほど活躍していたかなどということはまったく知らず、景山民夫といえば、俺たちひょうきん族に出てくる「フルハム三浦」としてしか知らなかったから、受賞作品を読んで初めて、このヒトが実はタダモノではないことを知ったのだった。
その「遠い海から来たCOO」は、南洋で父と共に暮らす日本の少年と、どういうわけだか奇跡的に棲息しつづけていたとある生き物との交流と冒険とスリルとサスペンスで、COO(クー)というのは「とある生き物」に少年が付けた名前だ(ワタシの記憶が確かだったら…)。
もっとも、現実的には今の地球に存在することはまずないだろうその生き物だから、残念ながらいかに南国の海で暮らしていようとも、我々が主人公の少年のようにCOOに出会えるチャンスはない。
ところが!
なんと水納島にもCOOがいた!!
激写。
ね、ちゃんと背中に「COO」と……。
あの……そこのアナタ、本気で怒らないように。
このキイロイボウミウシを見つけたのはワタシだったのに、写真を撮ったのはオタマサ。
はい、COOにはまったく気がつきませんでした(汗)。
逃げない生き物は、なにはなくともあらゆる角度から眺めてみなければ……。
それにしても見事な「COO」、どこかに活きる道はないですかね?
「遠い海から来たCOO」実写映画化!!なんて話がもし今あれば、巨匠コスゲさんなら逃さず撮ること間違いないだろうけど、30年も前の作品なんて、冒頭のように説明しなければ誰も覚えてないだろうからなぁ……。
※明日のこの稿は更新しません。
2017年04月12日
マタニティコント。
2017年 4月11日(火) 雨
南西のち北の風 波あり
この日の朝刊の一面で、ヤンバルクイナのニュースが載っていた。
鳴き声による定点観測で、2013年には275羽をカウントしていたものが、昨年の調査ではたった29羽に留まったのだという。
鳴き声の調査でどうやったら羽数がわかるのか、我々シロウトには想像もつかないけれど、かつて紅白歌合戦で紅と白の数をカウントしていたその方面の専門家の方々が一度も間違えなかったことを思えば、鳴き声調査だってプロによるプロの調査なのだろう。
いずれにしても大激減。
3年でそこまで減ったのなら、今年あたりは絶滅か?
マングースや野良猫の対策が功を奏し、このところは数を回復させてきていたヤンバルクイナ。
ふと思いついて山原に行っただけで我々がヤンバルクイナを観ることができたのも、きっとその地道な活動のおかげだったのだろう。
ところが近年になって野犬の数が急増していて、この大激減の理由はおそらくその野犬たちだろうという。
数年前にテレビのニュースでも山原地方で捨て犬が増加しているという話題があって、その映像にはたいそう驚かされたものだった。
ペットショップで売られている類のブランド犬たちが、まるで狼のように群れなして県道を爆走していたのだ。
腹を空かせた野犬たちがこの規模でそこらじゅうに群れているとなれば、たしかに野生小動物たちはひとたまりもない。
基本的に余計な仕事を増やしたがらない役所がすぐさま対処するはずはなく、野犬たちはそのままずっと増え続けているのだろう。
対処するにしても、近頃の「殺処分ゼロ」という世の中の風潮が、役所に二の足を踏ませているのだろうか。
昔だったら保健所が出張ってきて、たちまち「処分」されていた町の野良たちだから、その命を守るための「殺処分ゼロ」を訴えるのもそれはそれでいいことなのだろう。
でもそういう動きがある一方で、あいかわらずペットショップでは数多くの犬・猫たちが売られている。
殺処分ゼロを目指すなら、犬・猫を飼いたい方々はペットショップで目当てのものを手に入れるのではなく、保護されているたくさんの犬・猫たちから選ぶ、という仕組みをまずは構築しなきゃ。
売るのは野放し、一部の飼い主は文字どおり野放し、それでいて殺処分ゼロとなっては、野犬や野良猫の増加が留まるはずがない。
たとえ野犬のモンダイが一段落したとしても、「沖縄本島じゅうを立派な道路で埋め尽くす計画」発動中の沖縄本島地方にあっては、いずれにしてもヤンバルクイナをはじめとする稀少な野生動物たちがこの先生き延びる道はほとんどないといっても過言ではない。
むしろ早く絶滅してくれた方が道路を造り放題になる!!
と願っているヒトたちがたくさん居ると言われても、今さら驚くべきことでもない。
あッ!!
野犬の群れは、そっち方面の方々が精力的に放しまくっているからとか??
そこまで手の込んだことをせずとも、平気で山を森を海を切り拓くわなぁ、そっち方面の方々は。
せめて自分が生きている間くらいは、沖縄本島における「絶滅」というニュースを観ずに済むかも…と思っていたのだけど、それはどうやら甘い考えかもしれない。
さて、ヤンバルクイナほどとはいわずとも、「大激減」という意味では同じくらいといっていいのが、水納島の砂地の根で観られるハナダイたち。
今でもハイシーズンになれば幼魚が増えるから、それなりにたくさんいることはいる。
でも90年代後半と比較すれば、それはもう9割減といっても過言ではない。
海の中に野犬がいるわけじゃなし、減少の原因をすぐさま指摘できるわけではないものの、本来白い砂だった海底に徐々に泥成分が増えているという一事だけを見ても、ジワリジワリとその生息環境が悪化していることだけはたしかだろう。
そんなハナダイたちもまた、恋する季節を迎えている。
ハーレムがいくつも集まって群れなしている彼らは、それぞれのオスたちが囲っているメスたちに対し、自らがオスであることを絶えずアピールする。
ハーレム方式で群れる魚はメスからオスに性転換するものが多く、その場合オスが存在をアピールすることが、ハーレム内のメスたちが闇雲にオスになってしまわないようにするリミッターになっているのだろう。
でもこの季節はオスのアピールだけにとどまらず、熱烈な求愛の意味も込められているようだ。
メスがいるもとへ急降下しながら激しく泳ぐオスの本気度もさることながら、それがホントに本気であることは、メスのお腹を見れば一目瞭然。
みんながみんな、お腹プンプクリンなのである。
このキンギョハナダイのメスのように、はちきれんばかりに膨らんだお腹を抱えたメスたちばかりになっているのだ。
盛り上がって盛り上がって盛り上がった頃に迎えるほどよい潮のタイミングで、日没後くらいに産卵ショーが繰り広げられることだろう。
たとえ環境が悪化していようとも、産めよ増やせよと彼らは頑張ってその数を増やす努力をしてくれているのだ。
同じ場所で群れているカシワハナダイのメスも、お腹がパツンパツンになっていた。
今にも卵が漏れ出てきそうなほどだ。
すると、ホントに何かが漏れ出てきた。
我慢しきれずにフライングしちゃうのか、カシワ子!?
と思ったら……
…ウンコなのだった。
お前はドリフのマタニティコントか!!
海中でそうツッコんだのは言うまでもない。
いざという時にはちゃんと卵を出してね、カシワ子。
2017年04月11日
ホワイトハウス2017。
2017年 4月10日(月) 雨
南の風 時化模様
ウロコムシご夫妻が朝イチの便で島を発たれた。
これにて春筍祭終了。
旬のタケノコがメインのこのイベントではあるのだけれど、近年は「その他」の美味しいものまでもドドンともたらしてくださるので、晩餐ではタケノコが脇役に徹しきってしまうほど。
そしてもちろん、ご自慢のワインセラーから選りすぐりの国産ワインの数々を事前に届けてくださっているので、スパークリングから白から赤から日本酒から、沖縄中探しまわっても絶対に手に入れられない美酒に酔いしれることができる。
そのなかの1本が、五島列島は福江島のワイナリー、五島ワイナリーの白ワインだった。
登頂失敗に終わったあの鬼岳の山麓のリゾートホテル内にあるワイナリーで、もちろんのこと五島初のワイナリーなんだけど、それはすなわち長崎県初でもある。
…ということをワタシが知っているのはもちろん2月に旅行をしたからこそで、その旅行記に合わせてセレクトしてくださったウロコムシTバック氏なのだった。
福江島滞在中のワタシは五島芋に終始し、ワインはまったく口にしなかったから初めてのお目見えだ。
なみいる国内強豪ワイナリー産のものに比べれば、まだまだ発展途上の段階ではあるらしいのだけど(※他人の感想です)、焼酎にしろワインにしろ、現地で生産された原材料を用いて美酒を作ろうという五島の酒造所の努力に乾杯。
という話の流れで、その五島ワインのボトルの写真を載せるつもりでいた。
開ける前に撮るのを忘れていたから、では空いたあとにボトルだけでも撮ろう、という話もしていたのだ。
が。
さあて、ボトルの写真でも撮ろうかなぁ…と思ったら。
本日燃やせないゴミの日につき、五島ワインの空きボトルは、ウロコムシご夫妻ともども連絡船に乗って本島へ行ってしまったあとなのだった……。
さてさて、そんなわけで酒池肉林カーニバルの二夜を過ごした我々。
なにもかも美味しかったのはもちろんながら、今回ウロコムシ氏にご持参いただいたものの中でなによりもありがたかったのがこれ。
フィルムケース!
フィルムケースをなぜ重宝するのかということは、以前拙日記にて触れた。
Tバック氏は今もなおフィルムにこだわって撮影しておられるので(被写体はけっしてエログロ路線ではありません)、フィルムケースなどご自宅にはワインセラーのワインなみにいくらでも転がっているそうで、今回わざわざ持ってきてくださったのだ。
ひび割れが進行してそろそろ使用限界ラインに到達しかかっていた、予備のOリング入れにさっそく採用。
そんなに場所を取るものでもないし、いくらあっても使えるものだから、今後はウロコムシ氏がいらっしゃるたびにフィルムケースをおねだりすることにしよう。
さて。
ひと冬越えて昨夏の白化騒ぎも過去の話になりつつある、というのは先日ご紹介したとおり。
水深20メートル超だというのに昨秋には半分白くなってしまっていたセンジュイソギンチャクもすっかり元の色を取り戻し、店子のカクレクマノミともども元気一杯になっていた。
ところが、場所はまったく異なるもののほぼ同じ水深で同じように潮通しがいい根にいるシライト(?)イソギンチャクは、どういうわけかまだこんな状態だ。
真っ白のまま。
触手に紛れて隠れているクマノミチビも、なんだか冴えない顔をしていた。
この根には他にも白いままのイソギンチャクがいる。
白化騒動の頃から白かったのか、それともまったく関係なく白くなってしまったのか。
こんなに水温が低いのに真っ白のままっていうのは、結局のところ白化のスイッチってなんなんだろう??
高水温が直接の原因ではなく、バクテリアだなんだといろいろ原因究明の努力が今も続いているみたいだから、季節外れに白化しているこのようなイソギンチャクは、きっと価値あるサンプルになるに違いない。
そんな純白イソギンチャクの傍らにイソギンチャクモエビがいた。
性能が悪いのは自分なのかカメラなのかわからないけど、とにかくキレンジャーではなかなか思うように撮れないものだから、白いイソギンチャクを撮ろうと何度かシャッターボタンを押しているうちに、傍らにいたそのエビちゃんがいつの間にかイソギンチャクの上に載っているではないか。
チャンス!
……をモノにしたのはオタマサなのだった。
それはともかく、本来は目立たずにいられるからこそエビちゃんはこうして寄り添って生きているというのに、こんな純白の舞台に乗っていたら、どうぞ食べてくださいと言わんばかりのような気が……。
エビちゃんたちのためにも、一刻も早いイソギンチャクの復活を祈ろう。
その前にもう一度チャンスをうかがいに行こうっと。
2017年04月10日
二色の戦い。
2017年 4月9日(日) 晴れのち曇り
南の風 うねりあり 水温23度
春に恋の季節を迎える魚たちは多い。
ギンポ系も、この時期には真夏にはあまり観られない動きをする。
フタイロカエルウオといえば、ハイシーズンの日中なら目立たないところにいたり、穴から顔を出しているくらいのものだけど、この季節にはやはり活発になっていて、メスをめぐってか、縄張りをめぐってなのかはわからないけれど、全身で己の存在をアピールしている。
普段はチョコンと地べたに乗っかっているのに、こういうポーズで上下に浮き沈みしながら泳いでいるのだ。
近くにもう1匹いたから、てっきりメスに対するアピールなのかと思ったら………
オス同士のバトルなのだった。
1匹が挑発的に目の前でアピールすると、もう1匹が挑戦を受ける形で立ち向かう、ということを延々繰り返す2人。
ただ、ヒトスジギンポのバトルと違い、彼らの戦いには威嚇しながら間合いを詰める時間がほとんどなく、たいがい一撃離脱だからニュータイプでもなければ撮影はかなり困難を極める。
でもワタシはニュータイプなので撮れちゃうのだ。
ま、50回近くシャッターを押せば、だけど……。
覇権をめぐる争いは終わる気配はなく、まだまだ延々と続きそうだったけれどタイムリミットになってしまった。
観ている間、やや優勢に見えたのはこちら。
穴から不安げに顔を覗かせている普段の様子からは想像もできない、猛々しくも荒々しい春のフタイロカエルウオなのである。