› 徒然海月日記~つれづれくらげにっき~ › 2018年03月
2018年03月31日
別れテープ乱れ咲き。
2018年 3月30日(金) 晴れ
北東の風 波あり
気象庁の「発達しない」という見込みとは裏腹に、結局950ヘクトパスカルにまで気圧がさがった台風3号。
表層の海水温だけだと従来どおりの予想が通用したのだろうけれど、先日も触れたように水深100メートルあたりから下の水温がこれまでよりも相当高くなっているために(その差1、2度でも劇的変化)、もう旧来の予想・予報の方法が通用しなくなっているに違いない。
というわけで、今年もストロング台風の発生連発確定。
あとはもう、それが沖縄方面に来るか来ないかということにかかってくる。
太平洋高気圧が絶大に頑張ってくれれば、沖縄方面に台風を寄せつけずにいてくれるだろうけれど、そうなるとまたサンゴ白化の危機が。
逆に太平洋高気圧がヘナチョコで見る影も無くなっていたら、台風は小笠原方面にも行き放題になって沖縄への襲来数が減るかもしれないけれど、「夏」らしくない日々になるかも。
太平洋の高気圧がほどよい塩梅で「夏」を演出してくれていると…………
その大外を周ってくる台風が、次々に沖縄方面にやって来ることだろう。
はたして今夏は、どのタイプ??
幸い今回の3号は遥か南海上を東方向に進んでいるので、沖縄方面には直接の影響はない。
でも通常の気圧配置との合わせ技1本になってしまって、日中はそれなりに強めの風が吹いていた。
その風のせいで……
紙テープ乱れ咲き!!
春に離任する先生方を見送る、恒例の離岸式である。
いつものように、別れテープを笑顔で切る憧れのハワイ航路方式は情緒たっぷりなのだけど、おりからの強風が紙テープにいたずらをしまくることになってしまった。
そして連絡船が港内で回頭すると、紙テープが連絡船のデコレーションに。
たかが紙、されど紙。
束になってかかられると何がどう災いするかわからないから、船長指示のもと、慌てて紙テープを回収する船員さんたちなのだった。
話は変わる。
昨年もいろいろな海の生き物と出会ったけれど、個人的に印象に残ったもののひとつがこれ。
まだ和名がつけられていないため、種小名のhalimedaをそのままに、「ハリメダ・ゴーストパイプフィッシュ」と通称されているカミソリウオの仲間だ。
サボテングサという海藻専門の擬態職人らしい。
サボテングサとは、こういう海藻。
サボテングサは、最終的に石灰化して白くなっていくのだけれど、このハリメダはご丁寧にも、その石灰化まで自らの体の模様に入れてしまう。
しかもサボテングサの石灰化が進んで全体が真っ白になると、ハリメダもまた真っ白に変身するという。
真っ白になるまで観てみたかったところながら、あいにく発見後の再会を果たすことができなかった。
そんな印象深いハリメダ君が………
Tシャツになりました♪
その昔13代目石川 五ェ門は、ルパンに関わって斬鉄剣を使用するたびに、
「またつまらぬものを斬ってしまった……」
と洩らしていたものだった。
ワタシもまたつぶやこう。
「また売れないものを作ってしまった…」
2018年03月30日
古き良き40円。
2018年 3月29日(木) 晴れ
北東の風 おだやかのち波あり
南海上を小笠原方面へと抜けていく台風3号と、この季節のフツーの気圧配置との合わせ技で、けっこうな時化になるかも……
なので自分たちの船で28日の午後遅くに本島に渡り、本島で一泊した翌日は連絡船で島へ、自分たちの船は台風のほとぼりが冷めてから島に戻す予定でいた。
ところが台風は予想外にだらしなく、多少の影響程度で済みそうな予報で推移している。
結局翌日、翌々日と大丈夫そうだったから、翌日はそのままボートで戻って来た。
さて。
このところの秘密基地泊では家飲みばかりだったから、年度終了記念で久しぶりに生ビールを飲むことにした28日の夜。
生ビールは2月上旬に大阪にいた時に飲んだのが最後だから、かれこれ1ヶ月半ぶりだ。
やっぱ缶では味わえませんな、この味!!
高知で過ごしていた連日生ビール生活で、危うくその有難味を忘れてしまうところだったけれど、ひと月以上も間が空けば、新鮮味も復活。
そして高知で追い求めたあの魚が、目の前のカウンターに。
迷わず注文。
ザ・カツオ。
居酒屋「海」さんでは、何が何でもカツオを出すわけではなく、近海産の水揚げがあったときだけメニューに載っているらしく、この日のカツオももちろん本部産。
これがまた………
旨しッ!!
大将いわく、小ぶりなサイズながら脂がノッているとのことで、たしかに「これが沖縄のカツオ??」と思ったくらいにほどよい脂のノリ具合。
あまりに旨かったのでもう一皿頼んじまったぜ。
夏場にいただくサッパリしたカツオも、真冬にいただくしっかりしたカツオももちろん美味しいけれど、これまで食す機会がなかったという意味では、早春のカツオ、侮りがたし。
…というか、今オフにはわざわざカツオを求めて土佐まで行ってきたというのに、地元のカツオがやたらと美味いことを今さら知る我々である。
町内の居酒屋で飲んだあとは、代行運転業者に電話して、というパターンを定番にしていた。
でもいつの頃からかやたらと待ち時間が長くなってしまったので、この頃はタクシーを利用するようにしている。
あらかじめ秘密基地まで車2台で行っておき、飲み屋さんの駐車場に車を停めたままタクシーで帰還、翌朝もう1台に乗って車を引き取りに来る、という作戦だ。
タクシーはいつでもズラリと並んでいるから待ち時間は皆無だし、距離的に代行とほとんど変わらない料金で済む。
いたずらに代行運転の到着を待ち続ける必要もないから、とても楽ちんだ。
この夜もタクシー作戦で帰還した。
運ちゃんはムダに話しかけてくるタイプではない寡黙な方で、車内にはただFMラジオが流れているだけだった。
酔い心地にまかせてラジオが奏でる昔懐かしい歌を聴くともなく聴いていると、CMになった。
そのCMの内容が、とてつもなく本部町内ローカル広告。
あれ?この放送って、ひょっとして本部町内のFM局では?
「ちゅらハートFMもとぶ」という正式名称は知らなかったけれど、本部町内にローカルFM局があるということは知っていたので、運ちゃんさんに訊ねてみた。
するとそれまで寡黙な紳士だった運ちゃんさんは、突如我が意を得たりとばかりにそれが正解であることを教えてくれるとともに、ラジオのボリュームあげ、流れていたCMについてもガイドしてくれた。
CMは町内の農業生産法人の工場で作られているシークヮーサードリンクか何かで、その工場というのが、桃原飛行場跡地にできているのだとか。
かつては滑走路の跡地だけだった一角に、いつのまにやら農産物の加工場ができていたのだ(滑走路跡もたっぷり残ってます)。
ちなみにそこへと降りていく道はとてつもなく立派になっていて、さらにその先には橋を作り、上本部方面の国道に繋がる計画になっている。
その道があればあったでまぁ便利なんだろうけど、需要という意味ではムダ以外のナニモノでもない立派な道路がまたひとつできあがるのだ。
でもいまだその計画図面に描かれたルート上には、人々が住まう家が建ち並んでいる。
これまでずっと静かに暮らしてこられたであろう人々の生活をたたき潰してまで造る必要がある道路とは、とても思えないんだけどなぁ…。
ともかくもそんなわけで、寡黙な運ちゃんさんは実は地元ラブな郷土愛に満ちた方であることを知った。
図面だけを観て人々の暮らしを考えない道路行政のお役人には、けっして見られないタイプの「愛」である。
おまけに!
秘密基地に到着した時にメーターが示していた料金は1040円。
ところが運ちゃんさんは…
「1000円でいいですよー」
40円オマケしてもらっちゃった。
そこらじゅう立派な道路だらけになって、景観的に沖縄が沖縄じゃなくなっていく一方ではあるけれど、こういうところにまだまだ「古き良き」は息づいているのであった。
2018年03月28日
季節到来。
2018年 3月27日(火) 晴れ
東の風 おだやか 水温21~22度
魚の種類としては珍しくなくとも、その居る場所が珍しいというケースはよくある。
水納島の主要ダイビングポイントの砂地では、ドロップオフ環境に多い魚はほとんど観られないのだけれど、たまに何かのマチガイで棲みついている、ということがあるのだ。
シテンヤッコもそのひとつ。
フツーは砂地の根に住み着いていたりはしない。
かといって根がダラダラと沖に向かって続くような岩場のポイントにいるわけでもない。
潮通しのいいドロップオフ環境で、岩肌に付着しているカイメンを食べているのがシアワセなヤッコなのだ。
そういうった環境がないために、水納島ではシテンヤッコに出会う機会はほとんどない。
ところが7、8年前の短期間だけ砂地の根の周りにずっと居てくれたことがあって、行けば必ず会うことができた。
そんな彼の姿もいつしか観られなくなり、もう随分長い間シテンヤッコの麻呂顔を拝んでいないなぁ…と思っていたら、
本日久しぶりに遭遇。
それも砂地の根で。
すっかりオトナなのに周りには同種が誰もおらず、しかもエサとなるカイメンが付着する岩肌の表面積はかなり限られている。
そんな環境にもかかわらず、けっこう丸々と太って健康そうだ。
3つほど根が並んでいるところから離れることはなく、その周囲をウロウロしているだけだったから、麻呂顔を撮るチャンス到来かも??
ありゃ?
眼の上の黒い点が左右で繋がってるぞ??
これじゃあ、お公家さんの眉じゃなくて「両さん」じゃん。
個人的にこれまでの目撃例が少ないシテンヤッコだから、彼らの眉(?)はどの子もちゃんと左右で離れていて、お公家さんのようになっているものとばかり思っていた。
けれどこの機会にネット上に出回っているシテンヤッコ正面顔の写真を見てみると、眉が繋がりかけていたりほぼ繋がっている子もわりといた。
眉ひとつで、生まれも育ちもガラリとイメージが変わるなぁ……。
久しぶりに再会したシテンヤッコが、お公家さんではなく両さんだったことに驚きつつ浅いところに戻ると、オタマサが呼んでいた。
なんじゃらほいと寄ってみると……
おお、ブッシュドノエルウミウシ。
でっかいウミウシなのでコンデジで撮っていたところ、様子が気になったのか、しゃしゃり出て来た背後の魚。
ワタシはまったく意図していなかったにもかかわらず、やっぱりやってくれますTG-4。
いやだから………オグロトラギスを撮るためにカメラを向けているんじゃないんだって>TG-4。
ウミウシといえば、前日にはオタマサが初モノを見つけていた。
こちら。
撮影:オタマサ
手元の図鑑ではまだ和名が付いておらず、学名のカタカナ表記でグロッソドーリス・トムスミスイと掲載されていた。
この時は縮こまっていたけどもっと長く伸びている姿が本来のスタイルらしい。
縮こまった状態で15ミリほどだというから、伸びても2センチそこそこってところだろう。
モンジャウミウシやキャラメルウミウシのように、外鰓を能動的にユラユラユラユラ動かしていたようだ。
目を皿のようにしてサーチせずとも、いまだに初見の種類と出会うことができるウミウシワールド。
お馴染みさんたちと出会う頻度も増してきた。
春はウミウシ。
そろそろ季節の到来だ。
※明日のこの稿は更新しません。
2018年03月27日
明日をつくる技術。
2018年 3月26日(月) 晴れ
東の風 やや波あり 水温21度
このところ22度をキープしていた水温が、晴天続きだというのにどういうわけか21度になってしまった。
何度も紹介しているとおり、この水温前後の1度というのは、たった1度でもアームストロング船長が月面で印した1歩と同じくらい大きな意味があり、体感に大きく影響を与えるから重大事なのだ。
それでも世間は全体的に、季節の移ろいが例年より早いようだ。
先日の日曜日は、半世紀近くに渡ってサザエさんを世に送り続けてきた技術の東芝が提供する最後のサザエさんだった。
これももう見納め。
ずっと「明日をつくる技術の東芝」だったのに、もう東芝はサザエさんの明日を作れなくなってしまったのである。
その東芝提供最後の日の3本のうちの1本が花見ネタだったのだけど、満開のソメイヨシノはいくらなんでも少々早すぎなんじゃね?
なにしろオープニングの花は、まだ梅なんだから(梅はもう遅すぎだけど…)。
…と思ってたら、大阪では観測史上最速でソメイヨシノが満開になっているそうな。
そりゃ台風も3月末から北上しますわね。
きっと今年も猛暑だ!!
海水温が低いこととシーベーを除けば、一年で最も過ごしやすい季節を迎えている今は、猛暑とも寒さと無縁。
海へ行く準備をするのも実に快適。
風も波もおだやかなものだから、海況的にもノーストレスで臨む海中もまた心地良し。
この日も、エントリー早々にハリセンボンと遭遇した。
このところ毎回別の場所に潜っているのに、5回続けて潜るたびに出会っているハリセンボン。
そろそろ復活宣言をしてもいいかもしれない。
居れば居たで、居なければ居ないで「目立つ」ハリセンボンのような魚がいる一方で、居ても居なくても気づかれもしないという、ダイバーにとって不人気な魚は数多い。
リーフ際の浅いところでフツーに観られるノドグロベラもそのひとつ。
枯葉のように漂っているフリをしながら泳ぐ幼魚こそ特徴的ながら……(もっと白っぽい子のほうが多い)
オトナになるとコントラストは出てくるものの、「枯葉のよう」という特徴がなくなり、興味の対象としては地味な存在になってしまう。
ただしこれはメス。
メスは狭い範囲に複数個体を観ることが多い。
ところが、そんなメスたちをコントロールしているオスの姿を目にする機会は多くはない。
たとえ遭遇しても、行動範囲が広いベラなんてチョチョイのチョイではなかなか撮れない。
この日は、そんなノドグロベラのオスに遭遇。
安全停止を兼ねているようなリーフ際でのことだったので、ここはひとつストーカーになってみよう。
そして……
10分間のストーキングの果てに、オスを撮ることができた。
それにしてもこの色彩感覚。
ベラのオスなんていったらたいがい奇抜なファッションセンスなんだけど、メスがメスだけに際立つサイケデリック。
オスメスいずれにしても、この魚の体色からは誰も想像すらできない「ノドグロベラ」なんて和名をつけるセンスに乾杯だ。
味がノドグロのように美味しいとか??
だったら観る目が変わるかも………。
まぁ残念ながらそれはまずないだろうから、彼らがこの先も多くのダイバーから脚光を浴びることはないだろう。
彼らノドグロベラの明日は、こちらの企業に作り出してもらおう。
2018年03月26日
ハイシーズン。
2018年 3月25日(日) 晴れ
北東の風 やや波あり 水温21~22度
引き続きいいお天気に。
肌寒い朝さえ乗り切れば、また暖かな一日が待っている。
その暖かな一日が、例のクリーチャーをますます活発にさせている。
シーベーだ。
シーベー対策でハエ取りリボンを買ってきたことは先日触れた。
室内に垂らしたハエ取りリボンも、ようやくその実力を発揮し始めているけれど、日中鳥さんたちを出しているデッキ上のシーベーの量ときたら、室内の比ではない。
そこで、風もおさまっていることだし、ここはひとつシーベー誘引鳥ロンちゃんの上に、ハエ取りリボンを垂らしてみることにした。
(以下、閲覧注意)
すると、そのわずか半日後には……
ウワ………ッ!!
この黒い点々の99パーセントが、件のシーベー。
一度でもシーベーの痒みに苛まれたことがある方なら、悶死級の量といっていい。
たった半日ですぜ。
発生源と言われる海辺ならこういうこともままあるけれど、集落内だと尋常ではない生息密度だ。
シーベーにたかられて追い払うのに忙しく、ロンちゃんの餌食いの量が激減しているのはもちろんのこと、これじゃあワタシの腕がこんなことになっているのも無理はない……。
これ、昨日今日やられた痕じゃないんですよ。
もうすでに一週間くらい前のこと。
さすがにそろそろ痒みはおさまっているけれど、まだこんな痕が残っているのだ(そして何かの拍子にふと痒くなる)。
シーベーは肌のやわらかい部分が大好きらしく、腕のこういう部分や、脇の周り、へその周囲、腹周りなどなど、そこらじゅうがこういうことになってしまう。
ムヒなどてんで役に立たないうえに、痒いからといって掻きすぎると膿んでしまってひどくなるから、じっと耐えるしかない。
そんな痒みに耳の穴の中が被害に遭った日にはそれこそ気が狂いそうになるほどながら、まだ痒みの正体がわかっているだけ理性は失われない。
その昔同じくシーベーにやられた学校のセンセイは、その尋常ではない痒みの正体がわからず、思わず皮膚科を受診するに及んだほどだ(皮膚科の医者も困ったろうけど…)。
それでも、島内のどの場所であろうとも、そこで飛んでいるシーベーの量なんて、このロンちゃんの周囲に群れ飛んでいる数を思えばなにほどのこともない。
シーベー異常空間化しているロンちゃんゾーン、この虫の専門家や調査研究者にとっては、有り得べからざるミラクルワールドかもしれない。
もっとも、先日も触れたように、痒みは抗体反応なのかなんなのか、ここに来た誰もが即座にシーベーにやられるということはなく、日帰りや数泊のご滞在程度のお客さんは、まずシーベーの被害に遭うことはない。
最近の調査によると、コーラルリーフのヤスシさんやリョウセイさんは何の被害にも遭わないのに対し、タツヤさんやオサムさんはやられるという。
おかあさん方にも被害に遭う方と遭わない方がいらっしゃるようで、ひところは「使っている洗剤の違いだ」という説がまことしやかに流れたほどだ。
でもたしかにロンちゃんに特異的に集まってくることを考えると、シーベーを避ける何かがあるというよりも、呼び寄せる何かがあるのは間違いない。
そういえばジュンコさんが、台所で卵焼きを作っているとシーベーが集まってくる、と教えてくれた。
卵に、というよりはおそらく油が誘引物質になっているのだろう。
強力な誘引物質さえ判明すれば、すべてそこに集めておいて、被害を最小限に食い止めるってことも可能かもしれない。
…なんてことを言っているうちに、シーベーの季節は終了する。
彼らの発生は毎年3月から始まり、今頃がハイシーズンで、4月の半ばころくらいまでといったところなのだ。
今年もあと少しの辛抱だ……。
2018年03月25日
りゅうPON!。
2018年 3月24日(土) 晴れ
北東の風 やや波あり 水温21~22度
放射冷却のために朝方こそ肌寒いけど、ひとたび太陽が昇れば、すぐさま暖かくなる。
冷房も暖房も厚着も不要な、一年で最も過ごしやすい季節だ。
あいにく海中は季節の巡りが陸よりも2~3ヶ月ほど遅いから(空気に比べ、水は熱しにくく冷めにくいので)、まだまだ冬の様相だ……
……と思っていたら、どうやら熱帯低気圧は台風にまで発達しそう。
小笠原方面に行きそうだから沖縄地方に直接の害はないだろうけど、気圧配置上の合わせ技でけっこう風が吹くかも。
定期ドック入りの連絡船は27日午後から復活予定という話なのに、戻ってくるなりすぐさま欠航??
まだ3月末だというのに台風のままある程度北上するくらいだから、やはり海水温は高いのだろう。
台風の発達には、表層の水温もさることながら、水深100メートルあたりの層の水温も大きく影響するという。
その部分の水温がもう恒常的に高くなっている以上、また今年も発生すなわちストロングという図式になりそうだ。
そんな先の話はともかく、とりあえずこの日も海日和。
まだ冬と言いつつやはりどことなく春めいている海中は、群れ集うグルクンを観ているだけで心地よい。
しかし春夏秋冬関係なく目線がもっと小さなモノに行っているオタマサは、こんなものを発見していた(以下写真3点の撮影:オタマサ)。
クラゲに寄りそうエイリアン風甲殻類(見やすくするためコントラストを強くしてますが、ホントは青い海です)。
クラゲの傘の直径が2センチ弱ほどだそうだから、エイリアンのサイズもだいたいそんなところだ。
本来クラゲに寄り添っているものなのか、たまたま乗っていたのか不明ながら、3カットほど撮っているうちに、エイリアンはクラゲから離れたという。
クラゲから離れると、このように垂直姿勢のまま、能動的に泳ぐことなく漂っていたそうだ。
ほぼ真横とほぼ真上から撮影されたモノを並べてみると……
ますますエイリアン。
はたしてその正体は??
話は変わる。
3月25日付の琉球新報小中学生新聞「りゅうPON!」の1面にて、デカデカとヤシガニ生態について解説されている。
その記事の監修者はF博士だ。
ちなみに毎週日曜発行のこのりゅうPON!、子供新聞ながら、沖縄の生き物について興味深い記事が載っていることが多い。
件のF博士は琉大ダイビングクラブの後輩で、那覇の街の夜の帝王であると同時に、今や県内で右に出る者がいない甲殻類のオーソリティへと進化を遂げている。
その彼がりゅうPON!の記事にて、監修だけではなく普段のフィールドワークの賜物的写真も提供しており、ヤシガニの交接、放卵、脱皮、貝に入っているチビターレ、それから各段階の幼生など、フツー誰も観たことないでしょう的なものが惜しげもなくズラリと掲載されている。
小中学生新聞の場に留めておくのがもったいないくらいにハイグレードな内容だから、お好きな方なら必見…って、県外の方は見ようがないか……。
海中の甲殻類もイチローなみの広い守備範囲に入っているF博士ではあるけれど、県内の陸生甲殻類もまたライフワークにしているらしい。
なので憑りつかれたように県内各離島を巡ってはフィールドワークをしている彼は、有人離島で残すところは水納島(ともうひとつ)のみとなった昨秋、満を持してついに水納島初調査………
……のはずだったのに、台風で2泊3日の予定がすべて蹴飛ばされてしまったF博士なのだった。
はたして今年、リベンジなるか?
リベンジなった暁には、ナゾのエイリアンの正体もじっくりうかがってみよう。
2018年03月24日
いらざる高性能。
2018年 3月23日(金) 晴れ
北西の風 波あり 水温22度
ようやく時化がおさまったので、朝イチの便で渡久地港に渡り、うちの船を海に降ろしてすぐさま島に帰ってきた。
すぐさま海へ…と行きたいところながら、お店を開けておかなければならないから、海へ行くのは午後3時過ぎから。
といいつつ、午前中は商店すらないことにビックリしつつお腹を空かせた若い女性3人組のうちの1人がジャストルッキング、午後はヒトッコヒトリーヌ。
すぐに海に行っていればよかった…。
でも冷えたままの体で午前中に行くよりも、気温も体も暖まった状態で午後に行く方が、気分的にも随分楽になる。
せっかく上がった水温も、この時化でまた振り出しに戻ってるだろうし……
…と思いきや、依然22度のまま。
耐寒性能が落ちている体にはありがたい。
本来熱帯性の魚たちも寒さがこたえるのは同様で、代謝が落ちて不活発になるこの季節は、隙をつかれて寄生生物にくっつかれてしまうことが多くなる。
以前も紹介したように、ハリセンボンなどは寒さにめっぽう弱い。
このところ個体数が増えているのか、潜るたびに1、2匹は目にするようになったハリセンボン、この日もリーフ際のサンゴの下で寒さを凌いでいた。
寒さを耐え凌いでいるわりには、なんだかゴキゲンそう……
……と思いきや、背中になにやら付いている?
あ、ひょっとして……
ああッ、これは!!
あの日あの時観たヤツと同じクリーチャー!
7年ぶりの再会だ……って、別に再会したくないけど(オタマサは観たかったらしい)。
やっぱりこの季節の低水温は、ハリセンボンには受難の日々のようだ。
ところで。
ハリセンボンはサンゴの陰にずっといたので、狭いところでも便利なTG-4で撮っていた。
コンデジは基本的にほぼカメラまかせ状態で撮っているから、ピントももちろんオートフォーカスだ。
すると、TG-4の高性能ぶりをまざまざと見せつけられることになった。
それがこちら。
なんだよ、ハリセンボンにも寄生虫にもまったくピントが合ってないじゃん……
…と思ったら。
TG-4はその背後を捉えていたのだ!!
そこにはイシガキカエルウオの姿が。
顔認識モードにしてあるわけじゃないのに、なんでだろう?
撮影者がその存在すら気づいていない魚を写すだなんて、まるで全速でぶっちぎりたいのにブレーキをかける自動運転機能のような高性能ぶりだ。
……それってダメなんじゃ??
2018年03月23日
分布域拡大中。
2018年 3月22日(木) 曇り時々雨や晴れ
北の風 時化模様
前日から続く時化は長引き、結局この日も終日欠航。
北風が吹き続ける1日ではあったけれど、日中は晴れ間が見える時間帯もあったので、前日は機能停止状態だったガメ公も、外に出てきてエサを食べていた。
それにしても寒い。
そういえば4、5日前に完全に水納島をあとにしたと思われるジョビオことジョウビタキのオス、北へ向かう旅路についているのだろうけど、今頃きっと思っていることだろう。
「早まってしまった!!」
関東で雪が積もるほどだもの、南国気候に慣れた小さな体には相当つらそうだ……。
…と心配していたら、再び庭に姿を見せたジョビオ。
なんだかバツが悪そうな顔をしているところをみると、寒すぎたために引き返してきたのかも……。
ジョビオのように大陸と南の島を季節ごとに行き来する鳥さんがいる一方で、本島と水納島を気が向くと行き来しているらしき鳥さんもいる。
この方。
シロガシラだ。
イソヒヨドリよりやや小さい鳥で、本部の秘密基地あたりにはやたらと数多く観られるけれど、普段の水納島にはいない。
ところが、ときおりフラリと島にやってくることがあるのだ。
かといって空を見上げて「お、来た来た!」なんてわかるはずはない。
姿は見えずとも、耳慣れないさえずりが聴こえてくるから注意が向く、というわけ。
この時も、普段聴かない声がする…と思って見上げたところに彼がいたのだった。
もともとは八重山や台湾がそれぞれの亜種の生息地だったようなのだけど、70年代から本島で増え始めたのだとか。
しかもそのきっかけは、本島で誰かが飼っていた鳥が逃げ出したか放逐されたことによるという。
こんだけ分布域を広げるほどのきっかけがそれ……って、いったい何羽飼ってたんだろう??
情報源はとある図鑑の解説のみだから真偽のほどは定かではないものの、たしかに以前は本部町内では姿を観なかったはずなのに、今じゃ場所によっては群れるようになっている。
水納島には基本的にいないから害はまったく無いのだけど、聞くところによると本島では畑の害鳥としてわりと悪さをしているらしく、彼らはその分布域をどんどん広げているそうだ。
そんな彼らが水納島にも足を延ばしているのは、「ほほぉ、旨そうなものがいっぱいあるぞ…」ということなのかも。
仲間を次々に呼び寄せる日も近いかもしれない?
2018年03月22日
ムキムキ動画。
2018年 3月21日(水) 曇り時々雨や晴れ
北西の風 時化模様
寒の戻りとはよく言ったもの、夏のような日々は一瞬にして風に吹き飛ばされ、代船はまかぜ号もあえなく全便欠航。
前日に来店してくださったお客さんは、夏のような陽気を喜んでおられたけれど、この日、翌日の2泊3日で来沖予定の方は、大ハズレになってしまうことだろう。
そうそう、19日はたくさんの日帰り客がいらっしゃったというのに、ペンキ塗りのため、客を大勢乗せたはまかぜ号を指をくわえてみているしかなかった。
その前の日は、ずっと店を開けていたのにヒトッコヒトリーヌ。
なんという間の悪さ……
と嘆いていたところに、20日は昼の往復後から欠航予定。
でも渡久地港から乗ったはまかぜ号には、アジアからお越しのお客さんも3名ほど乗船していた。なので帰宅後お店を開けていたら、そのアジアンおねーさんたちが来店してくれた。
台湾から来ているというおねーさんたちの1人はダイバーで、普段は台湾で潜っているそうな。
どうやらウミウシラブらしく、当店にあるいろいろなウミウシ関連商品に反応しつつ、Factory TEN「[消しゴムはんこ」のウミウシを2個ご購入くださった。
かの地のダイバーも、こういう系になっているらしい…。
なんで夏に来ないの?と訊ねると、「ビジー」とのこと。
どうやら我々と同じ稼業のようだ。
3名様お帰りのあと、これでもう今日はおしまい……
……かと思いきや、前日からコーラルリーフさんに宿泊されていたカップルがご来店。
この1泊の島滞在は、お天気的に超当たりの2日間である。前日は泳いで貝を獲ってそれを宿で料理してもらったのだとか。
さぞかしご満喫いただけたことだろう。
13時30分の便で最後だから、これでもう今日はおしまい…
……かと思いきや、13時にはまかぜ号船長リョウセイさんから電話がかかってきた。
「そっちのお店に行きたいってお客さんがいるけど、お店開いてる?」
え?でも昼の往復のあとは欠航するんじゃないんですか?
「先生方が17時で出たいっていうから、最終便まで出すことになった」
修了式が終わって翌日は休日、その後もヒトによっては連休となる3学期最終日だというのに、翌日は欠航確定、その次の日もアヤシイだけに、この日島を出られないとなると春休みを棒に振ることになる。
そんな事情に鑑みつつ、天気予報も朝に比べて良い方に変わっていたから、リョウセイさんは運航を決めたのだろう。
…というか、運航を決めたら決めたで、欠航をすでに直接伝えていた相手には連絡してくれよ!
そんなキメ細かい対応をリョウセイさんに望むのは無理というもの。
でもお客さんの希望をかなえるべく、わざわざ電話をかけて店が開いているかどうか確認してくれる、というサービス精神はいつでも発揮する彼である。
というわけで引き続き午後もお店を開けていると、件のお客さんがご来店。
当店に来るために島に渡ってきてくださった親子連れは、どうやら娘さんの高校卒業記念旅行のようだった。
そんなこんなで、前日は指をくわえているだけだったものが、20日はこの春初のフィーバーに沸き返る1日に。
ところで、こういう時期に来店してくださるお客さんたちが、ほぼ口を揃えておっしゃることがある。すなわち、
「いいところですねぇ……」
うららかな春の日差しに輝く緑、色とりどりの花。飛び交う蝶々に鳥たちのさえずり。
他に誰もいないそよ風が吹くだけの海辺では、人工音などまったく無く、寄せては返す波の音だけ。
絵に描いたような離島情緒を堪能するなら、シーズン中よりもよほどこういう時期に来られたほうが望みにかなうのだ。
アタリの日に島を散策に来られた方々が、口を揃えておっしゃるのもごもっとも。
ただし同じようなアタリの日に来ても、まったく目的が異なる方々はというと、ただつまらない思いをして帰っていくことになる。
当店に足を運んでくださり、そのうえお買い上げまでしてくれるようなお客さんは、こういう状況を目的にしつつ、楽しい思いをしている方々ばかりといっても過言ではない。
逆に言うと、シーズン中は「その他」の方々が大挙して押し寄せてきては、そんなお客さんたちの楽しみを粉砕し倒ているということでもある。
このオフシーズンのシアワセも、そろそろ終了だ。
ちなみに今の季節なら、朝8時前後はこんな感じ。
庭で聴くウグイスのさえずり(1分ほどのYoutube動画)
風の音がやや邪魔ながら、ウグイスその他のさえずりしか聴こえない世界。
これが4月以降になれば、本島からわんさか来るジェットスキーの音や、準備のために忙しく行き交う軽トラの音がここに入ってくるようになってしまうのだ(もちろんその中には、当店の軽トラやミスクロワッサンのエンジン音も加わることになる)。
今年から時刻表が変わってしまったため、朝8時45分には一般客が来るようになるから、準備も当然早まることだろう。
朝のひとときは時短を余儀なくされるのだ(ちなみに島から出る最終便も遅くなったから、夕刻のひとときも短くなってしまう)。
話は変わる。
随分前のことながら、石垣のえび屋-Mさんから、活け車えびの剥き剥き作業の実際を動画で撮ってくれ、というご依頼を受けたことがある。
もちろんギャラは、現物支給♪
で、三脚を立てたりなんぞしつつ、テイク5くらいまで撮って動画を送った。
その動画を、このほどついにお店の楽天サイトにアップした!!というご連絡を、えび屋-Mさんからいただいた。
その動画が掲載されているサイトはこちら(ページを下へ随分スクロールしたところ、食品表示の隣にあります)。
なんだか3分間クッキングのようだけど、手タレはもちろんオタマサだ。
最初に氷水に浸けているのは、これが活け車えびだから。
なにしろ生きているので、暖まってくると活発化し、
こういうこと(6秒ほどのYoutube動画)
になってしまう。
そこで冷水で冷やしてやれば、殻を剥き剥きする際に暴れない、というわけだ。
慣れないと時間はかかる作業ながら、なにしろえび屋-Mさんのおかげで、オタマサはこれまで、おそらく世間一般の常識値からすれば50倍くらいの数の活け車えびの殻を剥いているから、まさに「お手の物」なのである。
動画を見たオタマサが、自画自賛していたのはいうまでもない。
活け車えびの販売は、今月いっぱいまで。
来月になって買いたいと思っても、もう遅い。
食べたくて居ても立ってもいられなくなった方は、ただちにポチッ!!
2018年03月21日
FLY CATCH RIBBON。
2018年 3月20日(火) 雨のち晴れ
南の風 波あり
月曜日は絶好のお天気。
行楽日和だしダイビング日和だし、なんでもできそうな1日は、しかし絶好のペンキ塗り日和でもあったのだった。
というわけで、朝からボートを渡久地港で陸揚げし、ドライブオイルの交換などしつつ、船底が乾いた頃を見計らって、午後遅くから船底塗料塗り。
渡久地港と水納島を行き来している代船はまかぜ号をときおり見ていると、こんな日に限って一般日帰り客が多い……。
絶好の行楽日和だというのに、「臨時休業」の札を下げていたんじゃあどうしようもない。
この日は秘密基地泊まりだったから、ペンキ塗りは時間に追われることも無く、のんびり済ませたあとは、夕刻もダラダラとのどかに過ごせた。
この船底塗料も、昔…といってもほんの7、8年前までは、このようにして塗っていたのだ。
大潮の満潮時に島の裏浜に船をまわし、ポジションをロープで固定しつつ船底には丸太をかましておく。
やがて潮が引くと、船底が干上がるという仕組みだ。
船底は干上がるとはいえ丸太1本分の高さでしかなく、船の底に潜り込んでペンキを塗るのは試練以外のナニモノでもない。
おまけに潮が満ちてくるまでにはペンキが乾いていなければならない。
まさに時間との戦いである。
この不便さが当たり前だった当時のことを思えば、たとえ本島まで行かねばならずとも、船台に揚げた状態で作業ができるなんて、まるで夢のような話。
さて、そんなペンキ塗りをしている港近辺でも、秘密基地でも、その他どこに居ても、この季節、本島にいるってだけでシアワセなことがひとつ。
それは……
シーベーがいない!!
沖縄方言でいうところのシーベーはショウジョウバエだけど、水納島でいうシーベーというのは、南洋の島々でいうところのサンドフライ、すなわちヌカカの仲間であることはすでにみなさんご存知のとおり。
これがもう、蚊に刺された痒みなど蚊の食うほどにも思わないくらいで……< 実際食われてんじゃん。……長く続くしつこい痒さと、体中を這い回っている(かのように錯覚する)感覚で、ゾワゾワゾワゾワと四六時中身の毛をよだちまくらせる羽目になる。
つい先日までは被害が無かったのに、この一週間で一気に湧いて出てきたらしく、たった2、3日で被害甚大。
ロンちゃん(赤いインコ)の独特の香りがシーベーを呼び込むらしく、彼女のいるところに群がり寄ってくるので、家の周りはシーベーだらけになってしまうのだ。
羽を入れてもせいぜい2ミリにも届かぬ小さな虫のこと、網戸の目など出入り自由なので、侵入を食い止めるすべはない。
そのため毎日痒さで気が狂いそうになっていたところ、1匹もシーベーがいない本島で過ごしている間は、しつこい痒みさすら忘れるほどに快適生活になっていたわけである。
ああしかし。
また島に戻ると痒み地獄が待っている。
かくなるうえは、自衛手段を講じるしかない。
水際で食い止めるすべがないのであれば、室内に侵入したものをナントカするしかない。
そのナントカ的シーベー対策がこれ。
ハエ取り紙♪
大昔の魚屋さんの店頭で吊るされていたのをご記憶の方もいらっしゃることだろう。
旧我が家住まいの頃に一度ハエ取り紙作戦を企てた際は、「ハエ取り紙」なるものはすでに世の中から時代遅れのアイテムとして消え失せかけていて、本部町が誇るよろずや的お店(冠婚葬祭に強い)の久場商店でようやく探し出したものだった。
当時すでにその商店でもハエ取り紙なんぞを購入するヒトはいなくなっていたのか、店のおばぁは
「あなたがたのために仕入れておくさぁ」
と言ってくれていたものだった(ちなみにおばぁは現在も90過ぎてなおお元気です)。
それから随分経った今、世の中がまたすっかり変わって……
ハエ取り紙復活。
虫駆除ツールとしては究極のエコ商品である、ということをようやく世間が再認識したらしく、ホームセンターの虫除け&害虫駆除コーナーにはフツーにハエ捕り紙も陳列しているのだ。
まぁしかし、ハエ取り紙など知ってはいても生まれてこのかた目にしたことがない、という方のほうが多いだろうから、使用前の姿もご存知ないかもしれない。
ビヨヨヨ~ンと本体を伸ばす前の商品は、こういう姿をしている。
見ようによっては和菓子のように見えなくもないけれど、「※食べられません」という注意書きは本体にもパッケージにもない。
さすが、日本がオトナ社会だった頃からある商品。
この筒の中に、抜群の粘着力を誇るテープ(誘引剤入り)が巻かれた状態で入っていて、それを引っ張りだしてビヨヨンと伸ばしてから付属の画鋲で止める。
その際、ドンくさい方はハエよりも何よりも、真っ先に自分が捕らわれることになるから注意が必要だ(過去に経験あり…)。
ちなみにこの製品は、「桐灰のハエ取りリボン KIRI FLY CATCH RIBBON」という名で、発売元は日本の会社ではあるけれど、MADE IN TAIWAN。
もともとハエ捕り紙って、日本のオリジナルだったんでしょうか、それとも舶来の文化?
調べてみると、このように天井から吊るせるよう、リボン状にしたのは日本の企業のアイデアらしい。
ハエ取りリボンという名前は本来その会社の商標だったようなのだけど、いつの間にやら一般名称として定着したようだ。
昭和の初めに誕生したというから、まさに「昭和」の遺産である。
買ってきたハエ取り紙は5個入りセットだったので、さっそく2個を天井から吊るしてみた。
シーベーがたとえスターシップ・トゥルーパーズの昆虫エイリアンなみに大群で押し寄せてきても、これでもう大丈夫だ。
…と思いきや。
吊るしてからしばらく経って、体にまとわりつくシーベー(袖口や襟元などから内部に平気で入ってくる)をワタシが直接殺したのは3匹。
一方、ハエ取り紙にくっついているシーベーは……2匹。
ウーム……
やっぱ、ロンちゃんのケージがあるのはもっと低いところで、我々も天井よりは床に近いわけだから、シーベーが飛んでいるのはもっと低いゾーンってことか。
それでもまぁ、無いよりはマシだろう。
粘着力はかなり持続するから、明日以降の戦果に期待しよう。
……と思ったら、寒の戻りでちょっと冷え込むみたい。
シーベー、しばらく不活発になっちゃうじゃん。
せっかく吊るしたハエ取りリボン、はたして大活躍の日が来るか?
ちなみに、我々がこれほどシーベーに苛まれている時期でも、島に来ているお客さんが被害に遭うということはまずない。
実はワタシも、越してきてしばらくの間はまったくなんの問題もなく、オタマサがのたうちまわっているのを見て笑っていたものだった。
それが今やすっかり痒み地獄。
この痒みって、ひょっとすると抗体の蓄積量に左右されるアナフィラキシー的反応なのだろうか?
でもそれだと、何十年も島に住んでいるのに、まったくシーベーにやられないというヒトもいらっしゃるのはなぜ?
いずれにしても、数日の滞在くらいではまず被害に遭うことはないようだから、日帰りでお越しになる方はなおさらご心配には及びませんのでご安心ください。
2018年03月19日
芋祭り。
2018年 3月18日(日) 晴れ
南東の風 波あり 水温22度
暑い暑いと思っていたら、3月半ばにして早くも海水温が22度になっていた。
寒さがつらいダイビングを思えば水が温かいことにこしたことはないんだけど、また今年も異常高水温でサンゴが白化の危機になるかも。
というか、梅雨頃から台風襲来すらありそうだ。
ま、そんな先のことを心配していても仕方がない。ともかく今の寒くない状況を喜ぼう。
そんな例年にない温かさのためだろうか、まだ3月というのにこのチビターレが早くもお目見えだ。
額のV字も鮮やかな、アマミスズメダイ・チビターレ@5mmほど。
こんな小さな生き物に目を奪われている場合ではないほど海中は爽快で、グルクン若魚の群れが風のように行き来していた。
水はクリアなんだけどクラゲの姿が目立つ。
ふと見上げたところには、30㎝ほどのサルパっぽい群体がフラフラと漂っていた。
ん?あれ(矢印)はひょっとして、クラゲをよりどころにしている魚の幼魚じゃないか?
クラゲウオとかだったりして!
と期待しつつ接近してみると……
クラゲだかサルパに捕えられた、何かの幼魚なのだった…。
宿主になってくれるタイプのクラゲと勘違いしてしまい、飛んで火にいる夏の虫になってしまったのだろう。
すでに絶命しているのか、微動だにしない。
たしかにひとつひとつの触手だかなんだかは、やたらと毒々しいものなぁ…。
というか、ウカツに接近してしまっているワタシも、とんだ夏の虫になってしまったりして??
慌てて離脱。
このクラゲだかサルパだか自体も観ていると面白く、当初は弛緩した状態でダラリと膨らみ、長い透明な触手を伸ばしながら漂っているだけだったものが、矢印付きの写真のように細く引き締まった形に変わるやいなや、能動的に泳ぎ始めた。
まるで映画「アビス」に出てくるような、宇宙的海中生命体のよう。
その全身像を撮るべく、ポッケに忍ばせてあるTG-4を取りだし、比較的ワイドな画角で余すところなく……
…と思ったら。
SDカードが使用できないというメッセージが。
今までずっと使ってきて、一度もカメラから取り出したことすらないSDカードが、なにゆえ突然この日この時使用不能になってしまうのだ??
まだ得体の知れないクラゲだからまだよかった。
これがトンガリサカタザメ再来とかだったら、またしても105ミリマクロしか手元にない事態になっていたところだ。
地団太でマグニチュード8級の地震が発生していたことだろう…。
切手ほどのサイズしかない薄っぺらいものに数十GBもの容量があるなんて、ほんの10年前ですら考えられないくらいに進歩している各種メモリー。
でも容量増大=トラブル増大になってやしないんだろうか?
さて。
1時間ほど潜って体がヒンヤリコンになってしまっても、船に上がればあっという間に暖かくなる日差し。
暑い暑いと思っていたら、雑貨屋さんの軒先は地中海になっていた。
パンチョリーナの店内で流れているカンツォーネ・イタリアーナが聴こえてきそう…。
いい気候なのでカメさんたちの食がいい、ということは昨日触れた。
で、お天気がいい日は毎日のように恨みがましい目で柵の出入り口のところで待っているガメ公。
なのでリクエストに応えて散歩した。
さんざんクワの葉を食べた後だというのに、まだ道草を食う。
食えばもちろんウンコをする。
完全ベジタリアンなので、カメもこのサイズともなるとウンコは大型草食獣のようだ。
これまでずっと、向かいの藪に捨てていたのだけれど、牛糞とほぼ変わらぬものを捨てるのもなんだかもったいない。
そこで、器材洗い桶(ベビーバス)を買い換えた昨年、古い桶を使って自家製亀糞コンポスターにしてみた。
そしてこの春に、まだ熟成には早いものの、そろそろ満杯になってきたから、肥しの一助にはなるだろうということである程度畑に還元することに。
底をくりぬいてある桶を逆さまにして糞や落ち葉を入れてある状態なので、容器をそのままスポッと抜いてみたところ………
おお、亀糞ティラミス!!
上層はまだウンコ状態ながら、中盤から下はすっかり堆肥っぽくなっている。
サツマゴキブリのチビチビがウヨウヨしているし、タイワンカブトのイモムシもいたくらいだから、立派な腐葉土になっている模様。
もとぶ1号という牛糞肥料の空き袋に、亀糞堆肥を詰めていく。
クロワッサンオリジナル肥料「みんな1号」の誕生だ。
畑といえば、カメさんたちの非常食用にと植えたイモの葉をご記憶だろうか。
とある方がかつて管理していた畑で放置状態になっていたイモの葉を節で切り、畑に移植したところ、思わぬ成功となって、昨年の食糧危機を幾度か救ってくれたイモの葉である。
これは地中に芋を作らない葉っぱ専門の、カンダバーと呼ばれる品種だと聞いていた。
その昔モノが無かった頃、夏でも食べられる貴重な野菜として、沖縄では、特に田舎で食されていたカンダバーは、今でもなお食材として現役で、炒めて食べると美味しいという。
そんなカンダバー畑も、マサエ農園畑2号拡張計画の一環で、場所を変えることになった。
葉を移植すれば容易に増やせることがわかった以上、今のうちにやっておけば、また夏の危機を救ってくれることだろう。
一方、旧来のカンダバーの場所は、ゴーヤーゾーンにするという。
そのためには、密生していたカンダバーを根こそぎ除去しなければならない。
そこでオタマサは、根っこを引っこ抜こうとしたところ……
芋が続々!!
なんと、ひと株から10個近く芋が採れてしまった。
あのぉ……カンダバーって芋ができないはずなんじゃ??
ワタシの記憶違いで、採ってきたイモの葉がそもそもカンダバーじゃなかったのか、それとも条件によってはカンダバーでも立派な芋ができるのか。
いずれにしても、まずはこれ、食えるのかどうかが気になるところ。
水納島きっての芋ラブファミリーの一員であるジュンコさんにうかがってみたところ、充分食べられるものだという。
質問ついでにおすそ分けしたところ、
「美味しかった!」(早ッ!!)
とのこと。
芋ラブファミリーが太鼓判を押す味となれば、さっそく実食してみよう。
オタマサ、カンダバーの芋をふかすの巻。
高級サツマイモに比べると黄色味は若干薄めとはいえ、見た目ほぼほぼサツマイモ。
食べてみると……
あ……美味しい。
もちろん甘味はホンマモノには及ばないけれど、でも「サツマイモ」と聞いて期待する味や食感を裏切るものではけっしてない。
というか、むしろヘタなサツマイモよりも美味しいかも。
この芋をもとにオタマサが作ってくれたなんちゃってスイートポテトもまた、完全なるポテトスイーツだった。
ただ葉を節から切って畑に移植しただけで、ひと株から芋10個。
それでこんだけ美味しければ、ノーリスクハイリターンも極まれりってところだ。
生育中には何度も葉を刈り取っては、カメに与えていたというのに……。
むしろそれが芋の育成幸いしたのだろうか?
この高収穫率を聞き、ジュンコさんがご自身も植えてみようと盛り上がっおられるのは言うまでもない。
ちなみにカメさんたち用に育てたカンダバーは、20株くらいあるんですけど……
全部これくらい採れちゃったら、我が家は超絶でんぷん祭りに突入だ。
そして、新たにカンダバーゾーンになったところには、畝と畝の合間に「みんな1号」が施されることに。
カメのエサを育てるために、カメの糞でできた肥しを使い、オマケでできた芋をいただく……
完全無欠の循環型リサイクルシステム!!
ガメラ君、君のウンコが君を育てるんだ!!
あまり興味はないらしい…。
※明日のこの稿は更新しません。
2018年03月18日
散歩道ドラマチック。
2018年 3月17日(土) 晴れ
北の風 波あり
前線通過後の時化が心配された今朝は、侮れないながらもさほどのこともなく済み、代船はまかぜ号は終日頑張っていた。
…けど、一般客は無し。
まぁそれにしても暑いこと。
例年のこの時期の日中は、晴れてさえいれば一年で最も過ごしやすい季節のはずなのに、Tシャツ短パンでいてさえ屋外にいると暑すぎるほどだ。
暖かいからカメさんたちの食も良く、真冬とは違って連日籠一杯の草を採らねばならない。
時間が無いシーズン中はそれがけっこうやっかいなんだけど、こういう時期はむしろいい運動になるという利点もある。
歩くことを目的にしたウォーキングよりも、他に目的がある散歩は時間の経過があっという間だ。
この日は当日用の餌を朝採集したほか、午後遅くにも、明日用の葉の確保をすべくいつもの道を歩いていた。
草木の成長が鈍るからエサの確保が大変な真冬とは違い、この季節のクワは1日ごとにグングン伸びる。
新緑の季節とはよく言ったもので、彼ら植物にとっても一年で最も過ごしやすいのだろう。
で、籠をぶら下げながらテクテク歩いていると、路上にやや大きめの鳥さんがいた。
肉眼では識別不能の距離ながら、こういう時用にポッケにはいつもジョニーを忍ばせてある。
おお、ツグミだ。
多くはないけど数年前から冬のお馴染みさんになっている鳥である。
ワタシの進行方向の路上で採餌しているものだから、歩くのをやめてしばらくジョニーでツグミを追っていると、ツグミのそばに別の鳥さんが1羽いた。
ん?これは……
これまで観たことがないっぽいぞ。
そこはジョニー、ズームでポン。
おお、やはり初見の鳥!!
帰宅後調べてみると、マヒワだった。
ヒワの仲間といえば、何年か前に一度だけ観たベニヒワ以来で、個人的水納島初記録種である。
それはともかく、こうして路上にいられると、なかなかそこのけそこのけお馬が通るとばかりに歩いて行くわけにもいかず困ってしまった。
でもなぜか、この姿勢のまま止まってしまった。
ワタシを警戒しているのだろうか?
先ほどのツグミも静止していた。
なにやらどちらもワタシではなく、右上を気にしているような雰囲気だ。
するとツグミは、 突如こういう姿勢になった。
マヒワもやはり……
完全に上方警戒態勢だ。
きっと上空に猛禽系が飛んでいるに違いない。
と思っていたら、突如傍らの藪から、ウグイスらしき声がけたたましい警戒警報を発し始めた。
あんなに小さな体なのに、なんというボリューム。
はてウグイス、どこにいるんだろう?
と、目線をそちらに向けたその時!!
バサッと音がしたかと思うと、1羽のサシバ(だと思う)が、マヒワのいたあたりにサッと舞い降りた。
上空を飛んでいたのではなく、樹上から狙っていたのか?
それを敏感に察知した鳥さんたちは、目立たぬよう動かぬよう、身を伏せていたのだ。
しかしそこはそれ、猛禽類の視力はマサイ族なみだから、いくら小さくとも伏せていても、サシバはしっかり目視していたに違いない。
はたしてマヒワはサシバに捕えられてしまったのだろうか。
千載一遇の大チャンスだったというのに、肝心の瞬間によそ見していたもんだから、撮影はおろかマヒワが逃げたかどうかさえ見られなかった……。
舞い降りるやすぐに飛び立ったサシバの飛び方がいささか悔しそうだったところをみると、マヒワはなんとか逃げおおせたのかも。
サシバには、もっとたくさんいる鳥で我慢してもらおう。
というわけで、いつもの道でいつにないドラマが展開した、土曜の暑い午後なのだった。
2018年03月17日
ナリキリカタギ。
2018年 3月16日(金) 雨のち曇り
南東のち北西の風 日中はおだやか
朝から雨の1日。
こんな日に日帰りで来島する一般客など1人もいらっしゃらないだろう…と思いきや、午後の便に一般客らしき若い男性2人連れありとの情報ゲット。
こんな日に男2人で島めぐりだなんて、もの好きにもほどがある。
…と思ったら、彼らはとある通信会社のバイトで、水納島での電波状況調査に来ていたのだった。
ただ、そのためには電源が必要なのだけど、ただでさえ公共施設など無いに等しい水納島で、しかもオフシーズンともなればいかんともしがたし。
で、コーラルリーフさんや学校をめぐった後、藁にもすがる思いで(当サイト推測)当店にやってきた彼らであった。
屋外にもコンセントはあるけれど、雨が降っていることだし、まぁ店舗内でどうぞ、と案内した。
聞けば名桜大の学生だそうで、山梨、長崎からそれぞれ来沖している若者たちだった。
春休みに帰省することなく、しっかりアルバイトしているわけだ。
電波調査は10分ほどで終わり、それじゃあお疲れさまでした……というところ、彼らはなんと買い物までしてくれた。
アルバイトで来ているのにお金を使ったらバカらしいから、気を遣わなくていいよ、というと、業務上必要だということで、調査ポイントごとになにやら記入して撮影するためのホワイトボード用に、フクギ染めマグネットを買ってくれた学生君。
実際にそこまで必要なのかどうかはさておき、その心づけ的な気持ちが素晴らしい。
そういう気遣いって、もはや日本からは絶滅したのかと思っていたけど、今どきの若い衆もなかなか捨てたモンじゃないっすよ、ホント。
お礼代わりに、裏浜付近の調査もできるようチャージ小屋に案内したところ、当店よりもチャージ小屋のほうが、電波の具合は良好とのことだった。
地形その他事情や理屈はわかるにしても、誰も住んでないところのほうが電波が届いているなんて、そのムダさ、沖縄の道路行政なみかも……。
さて、雨降りの一日だったので、この日は海に行かず。
そのかわり、またしても昨年撮った写真から、気づいていなかった逸品を発掘(?)した。
題して、ナリキリカタギ。
ヤリカタギもテングカワハギも、ともにサンゴのポリプを食べる魚とはいえ、なにも食べ方までマネすることはなかろうに…。
彼らのようにサンゴのポリプを食べる魚たちのことを敵視するサンゴラブな方が世の中にはいらっしゃるけれど、彼らがどんなに毎日食べていても、一つのサンゴ群体ということではサンゴたちはビクともしない。
むしろ日焼け止めを塗りまくって泳いでいる海水浴客のほうが、遥かに圧倒的に底抜けに、サンゴにダメージを与えているのである。
敵視すべきはそういう方々。
ところで、テングカワハギといえば、一昨年くらいからシーズン中に見られる幼魚の数が一気に激増したのはみなさんご存知のとおり。
そんな絶好のチャンスにもかかわらず。
その間ずっと、Masae工房のテングカワハギ玉は売り切れ状態が続いていた。
このままもう、再登場はないのだろうか。
そんなことはなかった。
この春ついに、3年ぶり(4年ぶりかも)に、テングカワハギ玉ストラップ再登場!!
次回登場は3年後かも?
それまで待てないあなたは、こちらからどうぞ。
2018年03月16日
火箸楊枝。
2018年 3月15日(木) 晴れ
南東の風 波あり 水温21度
天気予報が伝えている以上の風が南東から吹いていた。
代船はまかぜ号で来るお客さんたちは、道中さぞかしアトラクションになっていたことだろう……。
この風向きだと、水納島の周りは波が回り込んでくるだけなので、今日も朝から海へ。
昨年の4月を最後に、ずっと使っていなかったマクロレンズに替えてみた。
クラシカルアイがますます進んでいるというのに、はたしてマニュアルでピントを合わすことができるのだろうか。
おお、泳ぎ回ってない子なら大丈夫だ。
はにかんでいるような笑顔が可愛いニジギンポ。
ニジギンポといえば、水中ブイに何匹もついているような魚なのに、この子は海底の小岩に開いた穴から顔を出していた。
なにをしても意地でもここから出なかったところをみると、巣穴の中の卵を守っているのかもしれない。
こうやって巣穴から顔を出しているような魚であれば、ファインダーを覗いてちゃんとモノが見えることがわかったので一安心(ファインダーには一応視度調節機能があるので…)。
ひととおり徘徊しているうちに肌寒くなってきたから、そろそろリーフ際に戻ろうか…と思ったそのとき、岩陰からチロリチロリと出入りしている細長いクリーチャーを発見。
普段目にする機会はあっても、あまり写真を撮ってはいないヒバシヨウジだ。
せっかくだからこの機会に、お姿を収めさせてもらおう……
……と思ったら。
見えない。
さすがにヒバシヨウジほど小さい(4センチくらい)と、目がどこにあるかはわかっても、そこに焦点が合っているのかどうかまったくわからない。
ここはひとつ、心の眼で撮るしかない。
というか、それ以前にヒバシヨウジ、なかなか岩陰から姿を出してくれない。
チョロッと出てきては引っ込み、また出てきては引っ込み…というわずかなチャンスしかなく、そのわずかなチャンスに見えないんじゃどうしようもないじゃないか。
しかし心の眼は捉えた!
岩肌にお腹を向けることが多いため、写真のヒバシヨウジはお腹が上になってます。
密閉空間だらけの現代家屋に火鉢の出番は少ないだろうから、火箸なんてものを知らない世代は増加の一途をたどっていることだろう。
火鉢とセットになってる火箸は、1本1本がバラバラにならないように手元の側で2本がリングで繋がっているものが多い。
尾ビレを広げたヒバシヨウジの姿は、その火箸のよう……
…ということでこの名がつけられたに違いない。
それはさておき「火箸楊枝」って、いったい誰がどのように使うんだろう。
拷問用具とか??
ずっと観ているうちにだんだん慣れてきてくれたのか、ヒバシヨウジは姿を晒している時間が増えてきた。
すると、同じような場所に住むオキナワベニハゼの姿がそばに。
これは……チャンス!!
しかし。
神は降りてこず……。
あとワンテンポ待てばバッチシだったろうに、心の眼はそこまで見えていなかったのだった。
さて、慣れてきたヒバシヨウジ、今度はカメラが気になってきたのか、チロチロこちらを覗き見るようになってきた。
遠慮なく撮らせてもらおう。
で、肉眼ではまったく確認できないものを、写真で楽しむことができる。
ヒバシヨウジの顔もそのひとつ。
トリミングして顔だけ拡大。
へ~んな顔!!
そうこうするうちに、ほぼ害はないと見てとったのか、当初のチロリチロリはどこへやら、全身を晒したまま、あろうことかカメラに向かってくるヒバシヨウジ。
ひょっとして、カメラを新たな拠所にしようとしてるんじゃ???
ああ、それ以上近寄ったら焦点合わないじゃんッ!!
ヒバシソウル………。
というわけで、そろそろ船の近くに戻ろうか、と思ってから20分近くヒバシヨウジと遊んでしまった。
次にカメラを向ける機会に恵まれるのは、5年後くらいかな??(けっしてヒバシヨウジが少ないわけではありません)
2018年03月15日
ホワイトデー。
2018年 3月14日(水) 晴れ
東の風 おだやかのち波あり 水温21度
もうじき春分、夜明けもすっかり早くなってきた。
今日も朝から晴れている。
絶好の海日和!
そしてオタマサは、久しぶりに寒さを忘れるほどのエビを発見し、小躍りしていた。
というと、またぞろ変態社会系?と思われることだろう。
たしかに変態社会系ではあるものの、写真はわりとビジュアル系だ。
撮影:オタマサ
脚が少なく見えるから、もげてしまって弱っているのかなと思ったら、脚が白く色づいているのは一部分のみで、他の部分は透明のために少なく見えるだけだった。
ひょっとして未知のエビでは?という興奮も冷めやらぬなかオタマサが調べたところによると、さすが現在最強エビ図鑑「サンゴ礁エビハンドブック」、ちゃんとこのエビちゃんも載っていた。
それによると、このエビちゃんの名はシオサイカクレエビ。
なんだか文学調の響きもある美しい名前、なぜに潮騒なのかは図鑑の解説だけでは意味不明。
ともかくオタマサ的水納島初記録である。
このテのエビといえばヤギやイソギンチャクなど宿主に寄り添う暮らしをしていそうなのに、このエビちゃんはなんと自由生活なのだとか。
自由生活というのは自由業という意味ではなく、特定の宿主に頼ることのない風来坊人生を送っているということだ。
だからこの日こうしてこのヤギに何匹かついてくれていたからといって、翌日行って再び出会える保証はまったく無い。
まさにこの日この時、ピンポイントの千載一遇。
もっとも、ヤギのポリプと比してもおわかりいただけるとおり、このエビちゃん、甚だ小さい。
クラシカルアイの皆様では、肉眼での確認はおそらく不可能だろう。
ちなみにこのヤギは、先日紹介したニセアカホシカクレエビも住んでいるところ。
ヤギの枝枝にはクモヒトデがワシャワシャ絡みついているということもお伝えしたけれど、今日はこの方にまで絡みついていた。
撮影:オタマサ
赤いのはベニキヌヅツミガイ(の仲間)で、このヤギの肉をエサにしている貝だ。
昨年から目立つサイズになっていて、随分ヤギを食い荒らしているようだったから、このオレンジのヤギ、来年までもたないかも…と思っていたところ、うまい具合にバランスがとれているのか、ヤギも貝も健在だ。
ただしクモヒトデにとっては、貝が食べるに任せていては隠れ家を奪われてしまうことになるから、こうしてがんじがらめにしてやりたい放題にならないようにしている………
……わけではなさそう。きっとタマタマだろう。
その同じヤギの別の枝先では、ガラスハゼの仲間が産卵中。
撮影:オタマサ
産卵中のメス(上側)のお腹を拡大してみると……
輸卵管から卵が出たとこだった。
するとオスがすかさず受精させる。
撮影:オタマサ
ちなみにガラスハゼ類がヤギに卵を産みつける際は、産卵床にする部分のヤギの肉を自ら剥ぎ取る(リンク先のガラスハゼが剥ぎ取っているのは藻ですが)。
だからこれまたクモヒトデにとっては迷惑な同居人ってことになるんだろうけど、クモヒトデはあまり気にならないのか、肉の無い部分にも絡みついているみたい。
…というか、クモヒトデはフツーのヒトデのように卵を食べたりしないんだろうか?
ガラスハゼ(の仲間)が放置しているところをみると、実害はないに違いない。
まぁそんなこんなで、せいぜい高さ30センチほどの小さな小さなヤギだというのに、じっくり観察するとタンク1本分丸々使って遊べるパラダイス。
そんなヤギがそこらじゅうにあればいいんだけれど、あいにく水納島にはこういった付着系の刺胞動物は極めて少ない。
ダイバーがあまり行かないところでは、わりと観られるんですけどね。
オタマサが変態パラダイスで楽しんでいた頃、ワタシはというと、まったく違う目的で泳ぎ回っていた。
今日はホワイトデー。
そのお返しにそのあたりのテキトーなお菓子を買うという手もあるけれど、それよりもいっそのこと自らの手で……
というわけで、今宵のスペシャルメニューゲット。
ア・カ・ジ・ン♪
白身の魚を白い皿に盛ると絵にならないのはいつものことながら、皿(の置き場)が無いからしょうがない。
ともかくもこれが、毎年チョコをくれるオタマサへのお返し。
…といいつつ、素材を提供しただけで、捌くのも盛るのもすべてオタマサセルフだったりする。
そしてもちろん、ワタシもご相伴に与る。
これがまた、個体差なのか季節なのか、個人的アカジン史上最上級にプリップリで、高知土産のめじか入り醤油でいただけば、そのお味……
赤坂の料亭級。
…行ったことないけど。
明日は軽く塩をして冷蔵庫で寝かせたものを、カルパッチョで味わってみよう!!
2018年03月14日
JAやんばる市場フードコート探訪。
2018年 3月13日(火) 晴れ
北東の風 少し波あり
絶好のダイビング日和だったのだけど、本島にて所用があったので朝からお出かけ。
ちなみにシーズン情報でお伝えしているとおり、12日からはまかぜ号が代船運行中。そうすると船着き場に空きスペースができるから、自分たちの船でお出かけしてきた。
午前中のうちに所用が済んだので、大城そばで魅惑の沖縄そばタイム。
その後チョロチョロと名護で買い物を済ませつつ、先日紹介したJAやんばるファーマーズマーケットあらためJAやんばる市場を訪れてみた。
従来の入り口はそのままに、その左側にも今風のエントランスになっていて、そこから入るとフードコートだ。
ガラリとイメージが変わってるでしょ。
三方の壁には蘭などの花卉の販売コーナーになっていて、飲食物を売っている店舗はこの3店舗。
各種サーターアンダギーが1個単位で売られているお店に、天ぷらやから揚げなどの惣菜屋さん、そしてマンゴースイーツ専門店が並んでいる。
惣菜屋さんでは天ぷらを購入。
各種並ぶメニューの中で、最高価格はから揚げ@250円。
天ぷらはひとつ60円で売られていて、魚、モズク、かき揚げをいただいてみたところ、どれもちゃんとした天ぷらだった。
使い捨て容器で売られている沖縄そば(購入後ポットの出汁を注ぐタイプと思われる)は、なんと驚きの150円(具に肉は無いはず)。
アンダギー屋さんは1個90円。
どちらもこのあたりの方々の庶民感覚の価格設定だ。
ところがマンゴースイーツ専門店はひと味違った。
写真を撮るためになけなしの小遣いをはたいて購入したマンゴーソフトクリームは……
けっこうなボリューム@421円。
ちょっとソフトクリームでも…というときにはやや多過ぎる量だから、半分くらいのサイズで300円くらいの「小」もあるとありがたいんだけど……。
これにマンゴーの果肉をプラスすると540円。
このお店のスペシャルメニューは、マンゴーかき氷だ。
かき氷の上に果肉がたっぷりのったモンブラン級盛り付けのお値段は………
1080円!!
マンゴーだから高くなるのはしょうがないにしても、カプリチョーザが出店して2年ともたなかった名護で、はたして需要がどれほどあるのかビミョー。
観光客が大勢来るシーズンになったら繁盛するのかな?
というか、お昼時をとっくに過ぎている時間帯ということを差し引いても、ズラリと並んでいるテーブルに腰掛けているお客さんたちの多くは、これらの店舗で何かを買ってるわけでもなんでもなく、その辺で買ってきたらしきペットボトルや缶入りコーヒーを飲みながらゆんたくしている。
ただの休憩場状態になっている模様。
ときおり地元の人らしき方々が軽食を買い求めてはいたとはいえ、お昼用に用意されていたのであろう沖縄そばも随分余っていたようだし、冬場はなかなかキビシイものがありそうだ。
鳴物入りで大改装が施されたやんばるファーマーズマーケットあらためやんばる市場のフードコート、これら3店舗は生き残ることができるか?
というか、このフードコートができたことに伴い、それまで入り口前に出店していた屋台がすべて消えてしまった。
ワタシがこよなく愛するおっぱ牛乳のジェラート屋さんも……。
おっぱソフトの小@210円が、量はほどよく味はバツグンで、食後のデザートに最適だったのだけどなぁ。
一方、大元の野菜売り場はというと、トマトは色とりどり、葉野菜類は各種豊富、その他あれやこれやもすっかり品揃えが充実していて、どれもお求めやすい価格。
さすがに旬の季節。
しかし水納島では、今月になって日中の気温が高くなりすぎてきているので、葉野菜類が終了の時期を迎えている。
スクスク育っていたはずの第2弾大根にはアブラムシがたくさんついてしまい、もはや収穫は望めない状況だ。
トマトはまだまだこれから、タマネギや人参はいよいよこのあと、というところながら、「野菜の季節」はそろそろ最終盤に差し掛かっているのであった。
2018年03月13日
Relationship。
2018年 3月12日(月) 曇りのち晴れ
北東の風 やや波あり 水温21度
この日は朝から曇り空。
海水温は変わらないけど、イメージ的な寒さは募る…。
でも大丈夫、スーツボンドでウェットスーツを補修済♪
スペシャルなクリーチャーには出会わなかったものの、リーフ際でゆったりしているタテキンがいた。
ご存知ない方もいらっしゃるだろうから念のために紹介しておくと、昨日の渦巻き模様の子がオトナになるとこうなります。
昔の水納島はこのタテキンことタテジマキンチャクダイの数が多くて、リーフ際でフツーにゴロゴロ…は大げさながらたくさんいた。
ときにはリーフ上のサンゴ群落の上をゆったり泳いでいたりして、ああなんてゼータクな海なんだろう……とシアワセを味わっていたものだったのに、近年はオトナも子供も随分数を減らしてしまった。
ゼータクな海じゃなくなったってことか…。
それでもここ数年は、ひところに比べると若干数が増えている気がしなくもない。
今後の増加に期待しよう。
若干増えているといえば、この方の目撃頻度が今年になって増えてきている。
ご存知ハリセンボン。
水温が低いこの時期の彼らは機能停止寸前なので、ハリセンボンというよりはイジケンボンであることが多い。
ここ2、3年、ひょっとすると4、5年、ことによっては10年ほど、すっかり数を減らしてしまっていたハリセンボンなので、海中で出会う機会は滅多にないといってもいいほど(でも桟橋の周囲にチョロチョロしてたりはします)。
それがここにきて、潜るたびに姿を観るようになってきた。
一昨年のサンゴ白化で随分サンゴが死に、藻がはびこるようになったおかげでそれらをエサにする貝類が増え、それをまたエサにするハリセンボンも安定生活に突入、ということだろうか。
いずれにしても、今年のうみまーるの中判カレンダーの6月の写真のような巨群を作るほどに、いるところにはいるんだもの、そろそろ増えてきてもおかしくはない。
話は変わる。
3月も中旬になり、そろそろ季節が移り替わるころになってきた。
冬の間島に渡って来ていた冬鳥たちも、そろそろ見納め時だ。
今冬はどういうわけか我が家の庭先をナワバリに加えたジョウビタキのオスにも、お別れの挨拶をしておかねば。
当初は警戒心が強かった彼も、ひと冬の間に随分慣れてくれたのか、一緒に庭に居ても慌てて逃げたりしなくなっている。
ジョビオ君、来冬もお待ちしております!
一方、渡り鳥ではなく、年中いる留鳥は、ヒトにも随分慣れている。
我が家の庭をナワバリにしているイソヒヨドリは、ジョウビタキが目立つ動きをするとすぐに追い払うイジワル君ながら、それは先住者の特権というもの。
で、じっくり観てみるとそれはそれは可愛い鳥だ。
これはオス。
百舌鳥くらいの大きさだ。
本土でも海辺に住んでおられる方にはお馴染みの鳥ながら、内陸にお住いの方々には珍しいようで、このオスの青い色をご覧になって、「あの鳥は何?」と訊ねるお客さんは多い。
このイソヒヨドリは小動物を主食にしているので、オタマサが庭でなにかゴソゴソやっていると、そこからきっと昆虫類が出てくるだろうと期待して、目をキラキラさせている。
で、もう付き合いも随分長いものだから、ゴソゴソ=エサ、しかも大した危険は伴わない、と理解しているイソヒヨドリ。
なので彼は、こんなに近くまで寄ってくる。
来月に束の間の花の季節を迎えるアマリリスの周辺を整備しているオタマサがずっとゴソゴソしているので、彼はずっとおこぼれに与っているのであった。
イソヒヨドリと同じく留鳥なのに、さほどの信頼関係がない鳥さんがいる。
イソヒヨドリやジョウビタキと同じように、ハイビスカスの下あたりでゴソゴソしている小型の鳥だ。
はて、シロハラほど大きくはないし、ジョウビタキでもないこの鳥、いったいなんだろう?
黒っぽく見えるその体を写真に収めるチャンスがなく、今日までずっと未確認の鳥だったのだけど、この日ようやくカメラが捉えた。
え?ウグイス??
春になって高らかにホーホケキョ!が響き渡るようになってきている。でもウグイスって、こうやって地面でゴソゴソするタイプの鳥だったっけ。
ウグイスには親戚筋のよく似た種類が多く、目の上の白いラインだけで「ウグイス」認定できないところがなかなかややこしい。
はたして彼は、ウグイスなんでしょうか。
「クロワッサン野鳥の会」のみなさん、出番です(笑)。
2018年03月12日
船上の太陽。
2018年 3月11日(日) 晴れ
北東の風 波あり 水温21度
朝から快晴で心地いい天気。
北寄りの風がしっかり吹いているのに暖かい。
冬の間は、暖かいといえば南寄りの風、というのが定番なので、北風でも暖かいということは、いかに太陽が力強くなってきているかがわかる。
春ですねぇ…。
南寄りの風だと適度に湿った空気が流れ込んでくるのに対し、北寄りの風はカラッカラに乾いている。
おかげでこの日の湿度計は……
40パーセント台前半!
日中、頬骨のあたりがパリパリになっているのは、てっきり潜ってきたから体の水分が抜けてしまったためかと思っていたら、思いっきり乾燥しまくっていたのだ。
以前も触れたように、沖縄で湿度が50パーセントを切ることは滅多にない。
40パーセント台前半を示す湿度計なんて、ワタシが載っているヘルスメーターが60キロ台前半を示すくらいに超レアな計測値なのだ。
さて、一週間ぶりの海は、劇的な水温の上昇こそないものの、うららかな日差しのおかげで「イメージ」は温かい。
…はずだったのだけど。
なぜだかウェットスーツの脚の付け根あたりに、ちょっとした裂け目が。
合わせ目でもテンションがかかるところでもなんでもないから、何かで引っ掛けたかのだろう。
指が1本入るかどうかという程度の小さな裂け目、着替える前から気づいてはいたけれど、まぁいいか…とそのままエントリー。
すると……
寒いッ!!
新鮮な水が絶えず直接流入してくるとなると、6.5ミリのウェットスーツの意味は半減どころではなかった。
これで明るい日差しがふりそそいでいなければ、30分ほどでギブアップしていたところだ。
寒さは同じでも、船に上がれば暖かい、という「明日の希望」が生きる気力に繋がるわけですな。
ともかく寒さに震えながら、この日の目的だったナミスズメダイのフツーの写真をパシャパシャ。
用が済んだのでちょっと深い方に行ってみると、昨年久しぶりに居着いてくれていたタテキンベビーが、随分育って行動範囲も広くなっていた。
今年の夏くらいには、黄色い模様が入ってくるかな?
ウェットスーツに穴さえ開いてなきゃ、もっとちゃんと撮れるまで粘れたろうけど、証拠写真のみで撤退。
それにしても、21度の水のなんと冷たいことよ…。
7年前のこの日に発生した東日本大震災では、多くの命が津波の犠牲になったけれど、最近になって、犠牲者の死因は溺死だけじゃなかったのではないか…という話が医学方面から出始めているそうな。
その死因のひとつが、低体温症。
3月の東北地方の海水温となれば、当然のこと、沖縄で穴の開いたウェットスーツを着て潜っている時の比ではない。
寒かったろうなぁ……。
絶望の淵に立たされた刹那の心情を思えば、言葉もない。
あらためて合掌。
ちなみに、東日本大震災の年に、我が家の屋根が台風で吹き飛んだのだった。
以来ずっと仮設住宅(?)暮らしではあるけれど、なにはともあれ、「船から上がったら暖かい」という明日への希望があるから、不便もさほど苦にはならない。
東日本大震災の被災者のうち、今もなお7万人余もの人々が避難生活を余儀なくされているという。
彼らを含め、今なお復興の道なかばにある被災地のみなさんにも、心に「エキジット後の暖かさ」がたくさんありますように…。
2018年03月11日
塩の道。
2018年 3月10日(土) 午前中一時雨パラパラおおむね晴れ
北の風 波あり
毎年のことながら、この季節のヨロコビのひとつ。
グリーンピース三昧♪
卵は茹ですぎちゃったけど…。
今年もマサエ農園で順調に育ってくれたエンドウ豆と、剥き剥き作業を喜々として行うオタマサのおかげで、シアワセの小鉢を味わうことができる(普段はレンゲ1、2杯です)。
この採れたて茹でたてグリーンピースをいただく場合、何もかけなくても美味しいけれど、オリーブオイルをタラ~リと垂らし、塩を少々振り掛けるとその分やる気系になる。
オリーブオイルもさることながら、この塩も味を大きく左右する。
近年は各地で天然塩が作られており、どれもこれも美味しいからどれだっていいってなものではあるけれど、最近のツボはこちら。
岩塩モモレンジャー。
昨春、とあるグルメ夫妻(タケノコ夫妻ともいう)からお土産にいただいたもの。
もともとは子供用の硯くらいある板状で、是非その姿を写真に……と思っているうちに、オタマサによってすべて石ころサイズに砕かれてしまった。
ちょうど使い捨てのミルがあったので、それを無理矢理リユースしてソルトミルにし、石ころ状の岩塩をグリグリゴリゴリやると、それはそれは味わい深いお塩に変身。
ふりかける塩までピンクに見えるわけじゃないものの、こういうお塩でいただいていると、もう旧専売公社の塩=食卓塩には戻れないかも…。
でも硯サイズの板が尽きればもう二度とは……
…と寂しくなっていると、なんと名護のAプライスで、同じような南米原産の板状岩塩が売られているではないか。
近頃は名護以北も小洒落た飲食店が増えているから、業務用商品を扱うAプライスの品揃えもどんどん幅広くなり、痒くないところまで手が届くようになってきている。
これならいつでも補給可能だ。
となると使い捨て同然のリユースソルトミルはそろそろ歯が傷んでくるだろうから、ダイヤモンドシャープセラミックの歯を装備したソルトミルでも買っちゃおうかなぁ。
…って、何も無い家にソルトミルだけそんなものを揃えたら、ホームレスがデュポンのライターでシケモクを吸っているようなものか。
それにしても、なんで近頃はご当地天然塩が増えてるんだろう?
…と思ったら、それは専売公社の独占状態が平成になって終了したからなのだった。
日清・日露戦争で英国に多大な債務を負うことになった明治政府は、英国方式を真似て塩を国の専売にし、その利益を債務返済に回すことにしたそうな。
で、増収増益のために海外から安い塩を輸入して販売するという方法をとったがために、国内の製塩業者はほぼほぼ壊滅。
そこへもってきて太平洋戦争前の西欧諸国による締め付け政策で塩の輸入がストップしたため、慌てて国内の製塩で賄おうとしたものの、国の政策で一度壊滅した産業がにわかに復旧するはずもなし、戦前戦中の日本は深刻な塩不足に悩まされていたそうな。
太平洋戦争前のABCD包囲網って、もっぱら石油が無くなるから大変だ、って話かとばかり思っていたら、実は塩も相当痛手だったのだ。
北方謙三の「水滸伝」の白眉ともいえる塩の道を失ってしまったニッポン。
戦後も含め、この塩不足による病気がもとで亡くなった方は、何万人にものぼるらしい。
塩不足というのはすなわち、ミネラルの欠乏状態のこと。
生命体が必要とするミネラルを最も手っ取り早く補えていた塩が無くなると、かくも甚大な被害をもたらすのだ。
戦後になっても、今度は太平洋戦争の賠償金など国費が底をつく日が続くこともあって、塩の専売システムも維持された。
戦後しばらくは輸入品も含めてほぼほぼ天然塩だったらしいのだけど、塩が専売であるのをいいことに、もっと安価に作っちゃえばいんじゃね?的に専売公社が生み出したのが、食塩だ。
ワタシが生まれる数年前のことである。
食塩は工業的に単純に塩化ナトリウムを精製しているだけなので、コストが安価なのはいいけれど、体に必要なミネラル成分はほぼほぼ皆無。
戦中戦後の塩不足状態とあまり変わらないことになる。
その後なんとなくモノがいいような謳い文句で「食卓塩」も登場したけれど、よくよく調べてみると、原材料はオーストラリアの天日塩ながら、その後の製造過程で肝心要のミネラル分をそっくり削ぎ落とし、わざわざ完全無欠の塩化ナトリウムにしてあるものらしい。
そんな塩だけになってしまった日本に住まう人々の健康状態が、心身ともにその後どういうことになっていったか、ということを考えると、あらゆる成人病・現代病の素って、実は食塩&食卓塩なんじゃね?と言ってもまんざら過言ではなさそう。
AGFが味の素を作っている一方で、専売公社は病の素を作り続けていたのだ(※個人の感想です)。
塩分の摂りすぎが問題視されるようになって久しいけれど、その塩分ってのは「食塩・食卓塩の摂りすぎ」と言葉を換えたほうがいいかもしれない。
ご存知のとおり旧専売公社は、JTこと日本たばこ産業に変身。
専売公社による食塩・食卓塩の製法と政策の拙さが生み出した健康被害を覆い隠すには、なんともバッチリのネーミングだ。
で、塩事業の分野は独立しており、「公益財団法人塩事業センター」という名になって引き続き食卓塩を製造販売している。
あのぉ……「公益」はブラックジョークでしょうか。
塩の専売制がようやく終了したのは平成4年(1992年)のこと。
以来各地で天然塩の製造が盛んではあるけれど、各家庭から食卓塩を駆逐するほどには至ってはいないと思われる。
ともかくも、グリーンピースに食卓塩はありえない。
今日もまた、グリグリゴリゴリいたしましょう。
2018年03月10日
安定と不安定。
2018年 3月9日(金) 曇りのち晴れ
北の風 時化模様
また本日も連絡船全便欠航。
6日、7日、8日、9日の4日間で、連絡船が運航したのは7日のみ。
その7日に、ハツおばさんの七回忌が執り行われていた。
古い(といったら失礼なのかな?)読者はご存知のとおり、ハツおばさんといえばリョウセイさんのお母さん。
亡くなられてから、もう丸6年になるのだなぁ……。
スーコーは随分前から予定されていたとはいえ、週間天気予報の予想気圧配置図は、日を追うごとに怪しくなっていった。
島の法事といえば島外からも多数親戚が来るものだから、連絡船が欠航してはどうしようもない。
そんな心配をよそに、この4日間でその1日だけ奇跡の運航。
船長が無理をしたわけでもなんでもなく、ホントに海況に恵まれた1日だった。
そして朝から親族がドシドシ訪れている中、リョウセイさんは喪服を着て家で忙しく……
…と思いきや、Tシャツ短パン長靴姿で、畑の野菜を大量に収穫しているのであった。
島に来ているご親族のみなさんに、手土産として野菜を持たせるためである。
前日夕方から畑をチェックしつつ、どれとどれをどういう配分で…と作戦を練っていた彼だった。
七回忌に一族代表者が畑仕事をしていてどうする…という声があるのかないのか知らないけれど、「畑をキチンとやりなさい」というハツおばさんの遺言といっていいお願いをキッチリ果たしているリョウセイさんの姿を、一番喜んでいるのはハツおばさんであることは間違いない。
さて、そんな法事の日に。
久しぶりにこの方もご来島。
これまた古い(失礼ですかね?)読者にはお馴染みの、元卓球少女の姫(隣りの方は従姉さんで、2人ともハツおばさんの孫)。
前回会ったのはハツおばさんの三回忌だったから、実に4年ぶり。もうほとんど甲子園の古豪復活レベルだ。
家系的にたいそうボリュームアップしているだろうから、会う機会があればそれをからかってやろうと思っていたのに、さほど変わらぬたたずまい(実は途中、ボリュームアップの道に行きかけたらしい…)。
逆に
「植田さん、ちょっと太りました?」
そりゃ4年もあったら増減するって。
去り際にオタマサが、マサエ農園産トマト各種を手渡すと(姫の好物)、
「トマトを見るたび、マサエさんを思い出してました…」
泣かせることを言う。
でも。
県外海外で暮らしているならいざ知らず、本島住まいなんだったら、思い出す前に顔見せろっちゅうの。
というわけで、いたって元気そうで、しっかり社会人になっていましたから、(ワタシのせいで)過去に関わっ(てしまっ)た方々、どうぞご心配なく。
というか、お世話になった皆様には、本人に代わり無沙汰を陳謝いたします。まぁ、ワタシでさえ4年ぶりなんですから、笑って許してってことで……。
また十三回忌には島にやってくることだろう……って、喪服ばっかじゃん。
さて、その七回忌には、直系の孫に当たる元ビーチボーイ・マサノブもご来島。
これまた古い(失礼?< しつこい)読者にはお馴染みの、彼と一緒に雀卓を囲んだことがあるゲストだっているほどの、水納ビーチでバリバリ働いていた青年だ。
ビーチで働いていた頃は、見ているこちらが大丈夫なの?と心配になるほどに痩せこけていた彼も、齢三十五を過ぎた今………
激太り。
シルエットだけなら、パパ・リョウセイさんと見分けがつかなくなってしまった。
写真を撮っておきたかったところながら、法事中の家にカメラを持って行けるはずもなし。
彼は現在本採用で学校職員の職に就いていて、将来鉄壁確定のバリバリの公務員だ。
ちなみに水納小中学校時代の彼は、3パカトリオ(と我々が勝手に呼んでいた)同級生三人組の1人。
それぞれ高校進学時から違う道を歩み始めた彼らではあるけれど、今現在みんながみんな、公務員の職を得ている。
島の暮らしでそれぞれの親がどれほど苦労していたか、潜在的に肌身に染ませつつ学んでいた結果かも……。
ところで。
現在の水納小中学校の児童生徒は、校内校外で何をやるにもクラス代表、学年代表、学校代表が確定している。
なので、フツーに児童生徒がたくさんいる学校だったら選ばれしディキヤーにしかチャンスが無い、「意見発表会」といったイベントも漏れなく参戦必須になる。
校内でも体育館で行なったりするに際し、学校はご丁寧にもその予定を公文でお知らせしてくれる。
昨年も意見発表会(だったか何か、人前で話をするヤツ)のお知らせが届いた。
その発表者にはもちろん、古くないゲストにもお馴染みの中学生マリンの出番もある。
そのお知らせに記されていた演目の、彼女が発表するタイトルは……
「夢の安定した生活」
安定した生活を子供が夢見るほどの不安定な生活って、いったいどんなだ?と驚くことなかれ。
4日のうち1日しか連絡船が運航しないなんてことだけではなく、我々の暮らしは不安定なのだ。
水納島に限らず、多くの小規模離島では、そこで育った若者たちがなにはともあれまず島を出ていくという、過疎高齢化に直結するモンダイがあるのだけれど、彼女のこのタイトルひとつ見るだけで、その理由の一端をうかがい知ることができるというもの。
もっとも、実際に安定した生活になってしまったら、彼女は誰よりも先に飽きるだろう、ということを、タイトルを見たワタシが意見発表したくなったのは言うまでもない。