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2020年05月31日
自営業は自衛業。
2020年 5月30日(土) 曇り時々雨
南東の風 波あり 水温24度
なんとか「平年」に合わせたいという気象台の願いをかなえるかのように、梅雨の最後の悪あがきが続いている。
とはいえときおり日差しも出るほどで、一滴も降らなかった午前中はフツーに潜りに行けたし、夕刻には晴れ間の下でフツーに散歩もできたほど。
その後アジサシの本隊もやってきた桟橋は、にぎやかだけどうるさくないという、ここ15年のこの季節では台風時以外まったく味わえなくなってしまっていた離島のたたずまいを(一時的に)取り戻している。
なんだかアジサシたちもうれしそうだ。
でも来年のオリンピックに向けて「通常」に戻りたい一心の政府も東京都も完全に前のめり状態になっているようだから、間もなく全国からお客さんが訪れるようになるのだろう。
世の中の一部の方々は「緊急事態宣言解除」を「安全宣言」と勘違いしているようだけど、個人個人の生活レベルで見ればリスクは何ひとつ変わっていない、ということは自覚しておかなければならない。
だからといっていつまでも自粛じゃ、経済が停滞してしまう、という各首長や政府の言い分ももっともな話。
そのため「新しい生活様式」とか「ウィルスとの共存」などと耳に心地よさげなことを言って、リスクやダメージを伴うことは覚悟のうえ、という論調がフツーになってきている。
でもそれはあくまでも、政府とか知事などの行政担当者から見た、「数」のうえでの話であるということも忘れてはいけない。
言ってみれば、まわりにミナミアカエソや各種プレデターが手ぐすね引いて待ち構えていようとも、中層で泳がなきゃエサは食べられない。
だからキホシスズメダイの幼魚たちは、今日もにぎやかに群れ泳ぐ。
もちろん、なかにはエソやアジなどに襲われて食われてしまうものも多数いるし、幼魚の群れは日を追うごとに減っていく。
それでもそのリーフ近辺のキホシスズメダイ全体で見れば、安定的にいつも群れている。
……
…というようなもの。
さすがに志村けん級になれば悼む声を上げる首長であっても、三丁目のタバコ屋のおばぁの安否まで考えているはずはない。
経済活動の再開に伴うリスクやダメージの「数」の中に、我々自身が入ってしまう可能性が無いわけではまったくないのだ。
緊急事態宣言は解除されたからといっても、喰われる危険皆無でノーテンキに中層で群れ泳いでいられるわけではないのである。
けっして誰かが何かを「宣言」したり「発出」したりしない世界では、自らの判断で行動を決める。
危険を察知していち早くサンゴの枝間に逃れるものたちと、いつまでも群れ泳いでいるものたち。
生き残れるのはどちらか。
我々も機に応じて枝間に逃げ込むキホシスズメダイ・チビターレたちにあやからねばなるまい。
となると、もはや新型コロナウィルスよりも悪質で危険で無軌道であることが明らかになったアベセイケンウィルスに身を委ねている場合ではない。
というわけで、国がどう言おうと東京都がアラートを出そうが出すまいが、とりあえず当方の基準を設けておかなければ。
以下、来たるシーズン開始に向けて。
●今のところ、ダイビング業務は6月11日から営業を始める方針に変更はありません。
●ダイビングは通常どおり行いますが、逃れようがない「密」になる夜の「ゆんたくタイム」は、今年は中止いたします。
●その代わり、ログ付けタイムとして、夕方から宿のお食事までの1~2時間、雨が降っていなければという条件付きで、庭のテーブルで軽く飲みながら…という過ごし方にします(もちろん義務ではありません)。
●その場合、「宿の夕食抜きにしたから…」といって、そのままエンドレスに庭で飲み続けることはしません(午後7時終了目安)。
当店ゲストの場合、ダイビングそのものよりも夜の酒が主目的という方も多いことを考えると、「それだったら行くのを止めよう…」ということもあるでしょうから、すでにご予約をいただいている方々におかれましては、よろしくご検討くださいませ(それが理由のキャンセルももちろん可です)。
2020年05月30日
10年ぶり&25年ぶり。
2020年 5月29日(金) 曇り時々晴れ
東の風 おだやか 水温24度
ピーカンとまではいかなかったものの、朝からおだやかなお天気の1日に。
寄る年波で一晩寝たからといってスッキリ快調!ってなわけにはいかないけれど、せっかくのお天気だから節々が痛い体にムチ打って、朝から海に行ってきた。
肉体疲労時にはアリナミンAがいいんだろうけど、そーゆーモノはないから、とりあえず疲労した肉体を重力から解放してやることにした。
ぼんやり浮かんでいるだけで、なんだか心地いい。
動物プランクトン食の魚たちにとってはいい感じの潮の流れ加減だったのか、ハナダイ類やベラ類もまた、心地よさげに中層で群れて、めいめいがエサを食べている。
水温が上がり切らないこの時期は、ハナダイ類のオスたちの求愛泳ぎが活発だから、観ているとにぎやかで楽しい。
なのでボーッと眺めていると、視界を横切る際立った姿が。
あれは!!
シラタキベラダマシだ!!
ベラ好き変態社会においては「幻」とまで言われている、ベラ界有数の世界的レア魚だ。
近年は何度か幼魚に出会うという幸運に恵まれていたものの、オトナと最後に出会ったのは2010年1月のことだから、実に10年ぶりの再会だ。
観たところシラタキベラダマシは盛んに誰かにアピールしているようなのだけど、「幻」だけにあいにくメスの姿はどこにも見当たらない。
だからなのか、彼は同じ仲間のシラタキベラやヤマシロベラ相手に、オスメス構わずアピールし倒していた。
不思議なことに、ときおり中層から下降して海底に降りて来ては、岩のそばをみんなで物色していた。
多くのベラ類は中層で産みっぱなしの産卵をし、シラタキベラダマシの仲間たちも同様で、スズメダイ類のように産卵床に誘っているわけではない。
いったい何の儀式なんだろう??
マイペースで気ままに暮らしているっぽい様子からすると、しばらくこの場に居てくれそうな気もするけれど、「幻」だけにいくら頑張っても相手がいないことに気がつけば、本日この時のみの束の間の出会いで終わる可能性も高い。
なのでこの際とばかりパシャパシャ撮らせてもらった。
スイスイ得意気に泳いでいる時は各ヒレを閉じている。
でもやっぱりヒレを開いている姿のほうが見栄えがいい。
幸い、先ほどから他のベラたち相手に(時にはハナダイ類にも)気張ったポーズを見せながら泳いでくれているので……
ピンと立った背ビレも撮らせてもらえる。
それにしても、体のサイズのわりに腹ビレのなんと小さいこと…。
ときおりエサを食べてもいた。
普段の取り澄ました顔とはチト違う。
そんなこんなで、肉体疲労時なのでのんびりボヤヤンと群れを眺めているだけのはずだったのに、結局シラタキベラダマシに合わせて中層で右往左往忙しなく泳ぐ羽目になってしまった。
でもまぁ、また今後10年…ひょっとしたら人生最後になるかもしれない千載一遇を逃す手はない。
おかげで一生分撮ることができたのだった。
深いところで長居してしまったので、この後はリーフ際に戻って暗がりに潜む小さなベニハゼ類でも探そうと思っていると、オタマサが何やら手招きしている。
前回のツチホゼリ・キレンジャーの時もそうだったように、すでに写真を撮っているのなら、こういう場合は撮った写真をカメラのモニターで見せてくれればひと目でわかる。
なのに、なぜだかそういうボタン一つで済む便利な機能をいっさい利用しないオタマサ。
手招きしていた場所からすぐのとこならともかく、随分離れたところまでついて行かされる場合、その正体が不明だと肉体疲労時の体にはパワーが出ない。
やっと現場に到着し、オタマサが指さす先を見てみると……
おおッ!ムスジコショウダイのチビターレ!!
頭部はアジアコショウダイの激チビ時代とそっくりながら、体後半部のオレンジ色は、紛れもないムスジコショウダイ・激チビの特徴。
ムスジコショウダイのチビは我々にとってはレアで、かつてオタマサがビーチで出会ったもの以来になるから、久しぶり度はシラタキベラダマシのオトナどころではない(ワタシ自身は初遭遇)。
これをモニターで見せてくれていれば、ダッシュで駆け参じたものを…。
サイズにして5ミリオーバー、でも1センチには遠く満たない激チビだった。
そう聞くと、よくもまぁこんな小さなチビターレを発見できるものだと思われる方もいらっしゃるだろうけれど、実はコショウダイの仲間たちはまるで自ら発見されるのを望んでいるかのような動きをする習性があるのだ。
これは画像ではわかりづらいので、ややピンボケの動画でご覧ください。
ずっと観てれば一生クネクネし続けていそうなムスジコショウダイチビ。
ホ……と息をつくことがあるんだろうか??
というわけで、真っ白に燃え尽きるほど疲労した肉体にムチを打ったおかげで、10年ぶり&25年ぶりのレアレアに出会うことができた1本なのだった。
2020年05月29日
「あしたのジョー」最終ページ。
2020年 5月28日(木) 晴れ時々曇り
南東の風 おだやか
前日は御願所の清掃作業もあったために婦人部も含めた若手(?)島民全員参加だったのだけど、この日は男衆のみによる作業の日。
この日は前日の疲労を加味して10時開始ということだったから朝はゆっくりできたものの、結局終了は午後5時過ぎ。
今日もまたみっちりガテンな1日になったのだった。
そんな2日間の作業終了を労うべく、夕方からは慰労会が。
2日続けてカツオのお刺身が出てきたのだけど、やっぱ美味しいなぁ、県産カツオも。
カツオがあるということで、オタマサがマサエ農園産島ニンニクを刻んできたところ、やっぱりみなさんお好きな模様。
ところで、昨日は完全に島内の都合による作業だったのとは違い、この日の作業は事実上先だっての浚渫作業の尻拭い。
というのも、以前お伝えしたように、航路と泊地を浚渫した砂は、小さな島ゆえ持って行き場がないということで、裏浜に敷き詰める方向で話がついていた。
ところが実際に掘ってみると、その量は半端ではなく、このまま裏浜に敷き詰めたら干潟のシオマネキが絶滅してしまう…
…なんてことになりかねない。
ということに気がついた北部土木事務所は、計画を変更。とりあえず浚渫した砂をいったん裏浜の入り口付近に溜めておいて、しかるのち別の工期でカモメ岩の浜に…
ということになったそうな。
なので浚渫工事が終わった後しばらくの間は、裏浜の入り口はこういう状況になっていた。
右手に見えますのが……
砂の山。
左手に見えますのも…
砂の山。
まるでひと月後には元寇が襲来するかのような土塁が構築されていたのだった。
浚渫を終えた作業船も重機も作業員もみんな帰っちゃったというのに、いったいいつまでこの状態なんだろう?
…と思ったら、今月半ばからこの砂を移動するための工事が始まった。
4台の4トンダンプと4台のユンボにより、この砂山をカモメ岩の浜で下ろして整えていく……という流れを、なんと毎朝6時前から日暮れまで。
北部土木事務所の行き当たりばったりかつ低予算の事業にもかかわらず、黙々と働く現場作業員のみなさんである。
で、その結果、カモメ岩の浜の入り口は……
それは見てのお楽しみ。
よくご存知の方なら、「え?ここどこ?」となること必至。
元どおりに整えられた裏浜にも多少の砂は残されたものの、危惧された星砂壊滅は免れたはず。
こうして浚渫された砂は無事に行き場を見つけ、作業は滞りなく終了することとなった。
……のだけど。
カモメ岩の浜へと続く道は、ご存知のとおりあちこちにオカガニの穴が開いているほどの未舗装路。
そこをひっきりなしにダンプがピストン輸送をしていると……。
この道を重量級の車両がここまで頻繁に往復する事業はおそらく島始まって以来のことだそうで、その圧力に未舗装路は悲鳴を上げていた。
そして先日の大雨のあとには、これまで見たこともない「湖」が路上に出現。
水はなかなか引かず、引いてもそのあとはグジョグジョのドロドロで、四駆じゃなきゃ行き来できないほどになってしまっていた。
この未舗装路の脇にはところどころでオキナワアナジャコの塚状の巣穴が観られるのだけど、その穴から掘り出されているのはいつも泥濘状。
下層は泥なのだ。
その表層10センチくらいはうまい具合いに土の層が固まっていて、軽自動車がたまに通るくらいならフツーに「地面」になっていたのだろう。
しかしそれがダンプのピストン輸送の圧力によって崩れ、下側の泥層と混ぜ合わされてしまったようだ。
このままでは、大雨ごとに湖ができてしまうし、道もグチャグチャになる。
そこで!
なんとか湖ができないように、道がグチャグチャにならないようにしよう……
…というのが本日予定されていた土木作業ミッションである。
島の小さなユンボ1台、軽トラック数台(ダンプ機能無し)、そしてスコップ&レーキのみという、まるで農民一揆で大阪城を攻め滅ぼそうとするかのごとき軽装備ながら、前日同様人池戦術によってなんとかミッションは終了。
あとはこのあと大雨が降って、路上がどうなるかを確認するだけ。
その前にカンカン照りが続いて、固まってしまうといいのだけれど……。
たとえ元の木阿弥になってしまったとしても、同じ作業をするにも半年後くらいじゃないと、ヘロヘロの体はとてもじゃないけど再起動不能だ。
道が真っ白になったかわりに……
燃え尽きたぜ……真っ白にな。
2020年05月28日
人池戦術。
2020年 5月27日(水) 曇り時々雨
南西の風 波ありのちおだやか
本来この時期の水納島は、繁忙期というほどではないけれどすでにシーズン中のこと、それぞれの業者さんにそれぞれの都合があるから、島の中で何か作業をするにも、ヒトを集めることが難しい。
なので例年は、台風で連絡船が欠航していてそれほど天気が悪くない時がチャンス、という具合いになる。
ところが今年はすでにどっぷりシーズン中のはずのところ、コロナ禍自粛中のために全員ヒマ。日付さえ事前に示し合わせておけば、現役組リタイア組どちらも全員参加の作業が可能になる。
というわけでその作業日指定になっていたこの日、9時スタートの御願所周辺の清掃を皮切りに、伸びすぎた樹々の剪定などをこなしつつ、メインイベントに。
途中、負傷退場を余儀なくされた方(誰だかはヒミツ…だけどみなさんにはお馴染みの方)を渡久地港まで救急搬送というアクシデントはあったものの(個人的にはそれがいい休憩になった)、作業は延々5時過ぎまで。
お昼にはお弁当が支給され、夕方はビールとお刺身が出るプチ慰労会まであって、なんだかすっかりガテンな1日になったのだった。
それでもさすが、70以上の高齢者を除く男女全島民のほとんどすべてが参加しただけあって、2日がかりになるかと思われたメインイベント作業は1日で終了。
人海戦術の威力は絶大だ。
もっとも。
「人海」といっても男女合わせて総勢11名。
規模でいうなら人海じゃなくて人池程度だろうか。
しかも男衆のなかでは齢52のワタシが最若年という過疎高齢「人海」で成し遂げたのだから、これが500人くらいいる島だったらあっという間にお城でも建ててしまえそうだ。
で、気になるそのメインイベント作業とは。
ここで写真のひとつでも披露すれば一目瞭然のところながら、島に1、2度来たことがある方なら、それこそひと目で変化=作業内容がわかるはず。
次回のご来島をお楽しみに。
2020年05月27日
季節はずれ。
2020年 5月26日(火) 晴れ
南の風 うねりあり 水温24度
ウワサによると、今年の梅雨明けは過去に1例あるかないかくらいに相当早く終了する見込みだという。
今日などは完全無欠の「中休み」のお天気なんだけど、すでに「中」じゃなくて最終盤なのかも。
多少のうねりはあるものの、輝く空、広がる海はともにどこまでも青い。
で、午前中早めに1本潜ってきてから、午後は潮が引き切る前のタイミングでターボスネイル生息密度調査をしてきた。
表層だけなら、もう5ミリのワンピースでOKな水温になっている。
うねりが鬱陶しかったけれど、ともかくノルマを果たそうと頑張っている最中も、手にはコンデジをぶら下げているので
「おっ?」
と思う何かがいれば撮る。
ひと昔前のようなターボスネイル生息密度ならそんなことをしてるヒマなどまったくなかったところながら、幸か不幸か(不幸だ)そういうヒマのほうが圧倒的に多い。
で、「おっ?」という魚がいたので撮ってみた。
おっ!モンツキカエルウオだ。
けっこうでっかい個体で、巣穴もでっかい。
写真だと上側がこの穴の奥で、危険を察知するといったん穴の奥に身を引くのだけど、顔だけ見えている状態でしばらくジッとしているかと思ったら、すぐにこのように顔を出してくる。
穴の奥で卵でも守っているんだろうか?
もっとじっくり観たかったのだけど、なにしろ水深50~60センチでうねりがひっきりなしとなると、とてもじゃないけどこの場に長居していられなかった。
モンツキカエルウオといえば、水納島でこれまでタンクを背負って潜っている時に出会えたのは、過去にたった1個体のみ。
その後今回同様ターボスネイル生息密度調査時に会ったことはあるものの、今回にしろその時にしろ、とてもじゃないけどダイビングでゲストをご案内できるような場所じゃない。
残念ながら水納島のモンツキカエルウオは、居ないのではなくて居る場所に行けない魚なのだった。
「おっ?」という魚といえば、先日出会ったツチホゼリのイエローテールチビターレ、前日ワタシがなんちゃって隻眼になっている間にオタマサがチェックしに行ってみたところ、すっかりGONE。
そのかわり……
撮影:オタマサ
(おそらく)イロカエルアンコウの姿が(写真は顔のアップです)。
この周辺にいる魚たちのなかでは、もっとも疑似餌に反応しそうなツチホゼリキレンジャー、きっとひと飲みにされちゃったのだろうなぁ…。
さてさて、ターボスネイル生息密度から帰ってくると、桟橋の連絡船バース側に、この季節には異例の魚たちの姿があった。
ミジュンもしくはハララー!!(黒っぽい塊の部分)
群れで近くまで来たり遠ざかったり、ウロウロしていて、それを狙うダツなどがときおり襲い掛かるから、小魚たちがビシャバシャ飛び跳ねていた。
他の場所ならいざ知らず、水納島の場合このテの魚が群れ始めるのはお盆頃からと相場が決まっているというのに、いったいどうしちゃったんだろう?
立ち寄るつもりはなかった水路が浚渫されて様相が変わっているのを見て、「ん?ん?どうっなってんの??」と様子を見に来たのだろうか。
このまま秋までずっといてくれればにぎやかでいいけど、残念ながらそれはないだろうなぁ…。
2020年05月26日
目玉の記。
2020年 5月25日(月) 晴れのち曇りのち晴れ
北東の風 やや波あり 水温23度~24度
秘密基地で一夜を過ごし、翌早朝、上架してあるボートを海におろした。
その後買い物を済ませてから、島に戻る。
島が近づいてくると、洋上を飛ぶアジサシの姿が見えた。
そろそろ本隊第1弾が来ているのかもしれない。
水路に差し掛かった時、赤灯台を観てみると……
上段下段2つの踊り場(?)に、アジサシたちがギギギギ…言いながら(近づくボートに怒ってる声)ズラリと勢揃いしていた。
鉢巻きのような模様はエリグロアジサシ、ヘルメットのような模様はベニアジサシだ。
普段は赤いベニアジサシの嘴は、繁殖期になるとこのような色になるという(幼鳥も黒い)。
島にやってきた途端にやる気満々というわけか。
今年は冬の間もキビナゴがずっといたくらいだから、きっと子育て中のエサに困ることはないだろう。
ジェットスキーの往来も台風の襲来も少ない中で、健やかに子育てができますように……。
島に戻ってきたのが10時過ぎ。
この日の干潮が午後3時前。
帰ってきてすぐはムリだから、潜りに行くなら午後、でもかなり潮が引く干潮が3時前なので、それを避けて夕方に行くことにした。
なので昼過ぎからしばらくは時間がある。
久しぶりに天気もいいことだし、草刈りの続きをすることにした。
先だって開通させた灯台への道が、早くも草で埋まりかけているので先日第1弾をやったのだけど、その後雨続きでしばらく手を付けられずにいた。
やろうと思えば1日でできる作業ながら、しんどい目に遭うと「次回」のやる気を失うから、少しずつ少しずつ、草刈り機(刈り払い機)の燃料タンク満タン分を1回の作業にするとおよそ小1時間、それを4回やれば灯台まで到達する予定。
今回はその2回目。
で、道上と沿道の草草や頭上を覆うように横から伸びてきた木々の枝やトゲトゲの葉を伸ばしまくるアダンを切り倒しながら黙々と(でもエンジン音はうるさい)作業を進め、時間的に作業終盤に差し掛かった頃。
突然右目が痛くなった。
汗がしみたとかそういうレベルじゃない痛さで、目を開けていられない。
なんだかわからないから頭に巻いているタオルで拭いてみたものの、痛みは取れない。
すぐそばに車を停めてあって家に戻るとか、水筒を携えていたりすれば、すぐさま水で洗い流すこともできただろう。
でもあと少しで終わるし、目を閉じていれば作業は可能だから、とりあえず最後までやり終え、草刈り機を片づけてから家に戻り、さっそく水で洗った。
しかしそれは、まったく「さっそく」ではなかったのだった。
洗っても痛みが取れないので目薬を大量投入してみたところ、やがて痛みは徐々に落ち着いて、その後痛くも痒くもなくなった。
……のだけど。
今度は視界がおかしくなってしまった。
右目だけ曇り止めを忘れた水中マスクのように、一面靄がかかっているのだ。
これはひょっとして、インスタント白内障なんだろうか。
朝起きたてだったり居眠りをこいたときにも似たような感じにはなるけれど、そういう場合は目をこすれば元に戻る。
しかしこのインスタント白内障モドキは、こすっても水で洗っても目薬をさしても、いっかな症状に変化がない。
うーむ……これは不便だ。
その後午後4時頃から潜りに行くことにしていたので、予定どおり海に行ってきた。
水圧がかかったら治ったりして。
…というなんの根拠もない期待は、潜った途端に吹っ飛んだ。
なんだか陸よりも見づらいんですけど。
曇ったマスクを通り越して、石灰分がこびりついたマスクになってしまったような。
海水に直接当てたら治ったりして。
これまた何の根拠もない期待で、海水に目を晒してみたものの、まったく何の変化も無し……というか悪化したような。
これがまた利き目というかクセというか、カメラのファインダーを覗く際には右目のワタシなので、見えないのについつい右目で観ようとしてしまう。
全体を見渡そうにも両目じゃヘンテコなガチャ目状態、左目だけで観ようとすると立体感ゼロ。
独眼竜政宗って、よくもまぁ隻眼で広く隈なく世の中を見抜いて戦国の世を生き抜いたものだなぁ……
と感心しつつも、非常にストレスを抱えたままのダイビングになってしまった。
その後海から上がってしばらくすると、なんとなく海中にいたときよりはマシになったような気はするものの、白内障状態はそのままだ。
帰宅後シャワーを浴びているときに鏡で右目を両目で見てみたら(ややこしい…)、白目部分が充血しているのは当然としても、虹彩の中の瞳孔部分が左目と比べてやたらとボヤけて見えた。
これは……右目だけ失明するのだろうか。
それにしても、いったいぜんたいこの原因はなんだ??
本来の草刈り機の使用方法とは違う高さの植物まで刈り払っているから、たとえばアダンを伐ったりするとものすごく汁が飛んでくる。
でもアダンの汁でそんなことになるなんて聞いたこと無いしなぁ…。
そういえば最初に水で目を洗う際に眼鏡をはずしたとき、右目側のレンズになにやら泥のようなものがこびりついていたっけ。
泥などあるわけがないところで草刈りをしていたのだから、いったいあのメガネにこびりついていたものはなんだ??
ひょっとしてジュラシックパークに出てきたエリマキトカゲ恐竜のように、何かを吐きつけられたのか??
それとも、確率にして100年に1回級の禁断の実を粉砕してしまったとか??
とにかくすでに日も暮れこの日はどうすることもできないので、翌朝になってさらにひどくなっていたら眼医者に行くしかないか…と諦めつつ、意図せず早めに寝たところ。
翌朝、つまりこれを書いている今は、100パーセント回復!とまではいってないけど、ともかくインスタント白内障症状は無くなっていた。
鏡で右目を見てみると、ボヤけていた瞳孔の輪郭がクッキリしている。
これだったら眼医者に行かなくてもよさそう。
それでもやはり原因は不明のままだ。
ウーム…激痛を伴うインスタント白内障、この原因はいったい??
というか、接着剤などの製品の注意書きによくある、
「目に入ったらすぐに水で洗い流してください」
というのを目にするたび、そんなこと言われなくてもやるって!と突っ込んでいたというのに。
原因不明の痛みが生じた際にそのままガマンして作業を続けたワタシは、オロカモノ以外のナニモノでもないということだけはよくわかったのだった。
2020年05月25日
御池かわせみ。
2020年 5月24日(日) 晴れ
北東の風 波あり
日曜日に外出することは滅多にないのだけれど、今回はヒトと会う用事で先方の都合に合わせる必要があったので(平日だと我々が那覇方面まで行かなければならなくなるから)、久しぶりに日曜日に名護まで行ってきた。
用事自体はものの15分もあれば済むものだから、メイクマンなど本部町内には無い店でも買い物を済ませたところ、やっぱりホームセンター、日曜日のお客さんは多かった。
何を買うにもどこのレジでも並ばなければならないなんて、もともとの生活がソーシャルディスタンス120パーセントの田舎者にはいちいち面倒くさい。
久しぶりに天気が良かったので、午後後半は上架してあるボートの船底塗料を塗ることにしていた。
名護での用事を済ませて本部町に戻ってくると、まぁ道路が空いていること!
例年のこの季節だったらレンタカーだらけで、交差点で右折するさい直進車を待っていると、10台中8台はレンタカーということもザラにあるくらい。
ところがレンタカーなどほとんど走っていないから、道は空いているし信号待ちでも車は多くないし、日曜午後だというのに海洋博公園前の道路もガラ空き。
なんて快適なんだろう!
これほど車が少ないと、随所でとてつもなく立派な道路を造る工事をしている現場が必要以上にバカバカしく見えてくるのだった。
レンタカーを減らせば巨額の税金を投じて道路造んなくてもいいじゃん……。
ペンキ塗りをしている間に連絡船の最終便が渡久地港を出てしまっている……のは最初からわかっていたので、この日は秘密基地で一泊予定。
塗装作業が終わってからの夕方は時間がたっぷりあったから、久しぶりに散歩してみることにした。
このオフは年末に痛い風騒ぎになってしまい、結局その後実施されることが無かった「本部マラソン合宿」のコースを歩いてみよう。
ジョギングコースは、普段車で通らない、通れない道を選んでいるから、1年半ぶりに観る景色は新鮮だ。
テケテケ歩いていると、この春は随分聞きなれている音が聴こえてきた。
コゲラのドラミングだ!
どうやら沿道の松にいるらしい。
探してみるとドラミングしているもの以外にも2羽いて、キツツキ類らしい両足チョンチョン動きをしていた。
手つかずの原野だらけだった一帯も、徐々に道が立派になったり建物が増えたりして随分変わってきてはいるけれど、元のままの場所もたくさんある。
超豪華な農業用池が造られて以来、農業用水としては誰も利用しなくなっている池は、この長雨で満々と水を称えていた。
随分前に散歩した際には、この池のほとりでカワセミを観たことがあった。
その後超豪華農業用池が造られると、この溜池は干上がることが多くなって、カワセミなど水辺の鳥と出会うチャンスはまったくなかったのだけど、この日は……
いた!
水面の気配を探っているらしい。
こっちを向いてくれないかなぁ……
向いてくれた!
やっぱかわいいなぁ、カワセミ。
水納島には今ならコゲラはいるけど、カワセミは一生観られないだろうから、貴重な機会をプレゼントしてもらえた。
この池のほとりに茂っている木々のそこかしこに、不思議なものがぶら下がっていた。
この木の実かな?と思ったのだけど、よく観ると葉からぶら下がっているものもある。
アワアワしたその質感、どうやらこれは、オキナワアオガエルの卵らしい。
モリアオガエルでおなじみのアワアワ卵、ここからオタマジャクシが孵化して落ちれば、すぐに着水できるよう、卵は必ず水の上になる場所に産んである。
冬場に池が干上がっているときならあり得ないけど、梅雨時の水量豊富な季節ならではなのだろう。
陸水環境が無い水納島にはカワセミ同様カエルもあり得ないから、これまた島では見られないもの。
さてさて、ジョギングコースは意外な場所が立派に舗装し直されていたり、下水処理施設なのかなんなのか、有刺鉄線付きフェンスで厳重にガードされた建物ができていたりもしていたけれど、こういう場所はまだそのまま残っていた。
車一台ギリギリ通れる舗装道路は、落ち葉が堆積してまるで自然遊歩道のようになっている。
こういう道も、やがて沿道の木々は伐採され、道は倍以上拡幅される……
…という土木的に猛々しい勢いが、今の沖縄県にはある。
勝手に作ったコースには、こういう道もあるかと思えば、見晴らしのいい場所もある。
冬場は一面菊になる電照菊畑も、今の時期は土を肥やすためのソルゴが風にそよぐだけ。
その向こうに見える海には、遠く伊是名伊平屋両島がクッキリ見えていた。
海が見える場所もあれば……
山々を一望できるところもある。
こうしてほんの一部を巡ってみるだけでも、いいところだなぁ、本部町。
田舎暮らしを求める方が、こういった海や山の風景を眺められる場所に家を建てる。
しかしその眺めを遮るように、巨大なホテルやアパートがニョキニョキ建ってもいる。
景色も含めた不動産にでもならないかぎり、「景色」重視の立地はリスクがある不動産バブルの本部町なのだった。
そんなこんなで、小一時間くらい…のつもりだった散歩は、結局2時間経ってしまい、ようやく帰ってきたらヘロヘロになってしまった。
思いがけず「運動」になってしまったものの、おかげでビールが美味しい。
2020年05月24日
蟷螂小僧。
2020年 5月23日(土) 雨のち曇り
北東の風 波あり
日中はさほどの予報ではなかったのだけど、減便中でもあり、急ぎで本島に出る用事があるヒトはおらず、学校はないから先生方の行き来もない……ということで、本日は朝から連絡船欠航。
まぁそれにしてもよく降りますなぁ、雨。
天気図を見ると、本日午後3時でこういう塩梅。
前線上を高速ホバリング移動する低気圧のジェットストリームアタックとなれば、そりゃ雨も黙ってはいられまい。
それでも前日に比べれば気温は高めだったから、カメさんたちは小屋から出てきてエサを食べていたし、草草の間をたくさんの蝶が飛び交っていた。
雨が降っているのに、蝶は平気なんだろうか。
オオゴマダラサイズともなれば、雨滴を受ける率は相当高いと思うのだけど、傘なしじゃ辛いくらいに降っている中を平気で花から花へ飛んでいる。
彼ら的限界雨量はどれくらいなんだろう?
そうだ、昆虫といえば。
オールシーズン昆虫がいる亜熱帯の沖縄ではあるけれど、やはり春になるとチビチビたちの姿が見えてくる。
我が家の庭の一角には、ハーブなど人間用の植物をいろいろ植えてあるのだけれど、小さな花々が咲いていろんな虫がやってきたり、葉っぱそのものを食べるバッタ系がたくさん集まることもあって、それらを狙うハンターの生活場所でもある。
昆虫界のハンターといえば、もちろんこの方。
カマキリ・チビターレ。
右に見える白い花は、ごくごく小さいバジルの花で、それに比してこのサイズだから、1センチほどの、孵化してから最初のサバイバルを見事乗り切ったのであろうチビターレだ。
このサイズでカマキリの種類がわかるのはカマキリ先生くらいのものだろう。
それからひと月経ったこの日、随分成長している幼体が月桂樹の葉の裏についていた。
25ミリほどと倍化した体はすっかりカマキリらしくなっている。
同一個体かどうかは不明ながら、少なくとも同期生だろう。
でももう少し大きくなってくれないと、ワタシには種類がわからん……。
正体はあとひと月後に。
2020年05月23日
あの時君は若かった。
2020年 5月22日(金) 雨
北の風 波あり
屁理屈で言い逃れようとするからますますおかしなことになっていく…というのはよくあることながら、まさこちゃんが長を務める法務省報告のために、世の中はレート点ピンの賭けマージャン=合法と理解した。
でも赤牌使用も割れ目ルールも賭博性が高くなるため違法、アリアリルールは脱法……なんて微に入り細を穿つ法律になったりして。
いずれにせよ今後は、卓を囲んでいる際に少牌がバレてしまって罰符を要求されても、
「いや、これは訓告処分でお願いします」
と言い逃れることができるに違いない。ワタシのようなうっかり八兵衛には大助かりだ。
ああ、麻雀したくなってしまった……。
さてさて、近年の沖縄地方は梅雨になるたびに晴れ間が広がる5月が定番だったから、そろそろ大干ばつ時代になるのかも…なんて話をしていたことも多かったというのに、今年は梅雨が梅雨であることを思い出してしまったのか、久しぶりに本格派ストロングスタイルの梅雨になっている。
天気予報がビビらせていたほどの豪雨ではなかったけれど、今日も1日おおむね雨。
太陽が出ていれば毎朝小屋から出てきて日光浴を満喫するガメ公も、降りしきる雨空を見上げて恨めし気な顔をしていた。
晴れていれば、ヒマなおかげで↓こうして散歩もできるのにねぇ…。
豪雨ではないとはいえ傘もささずに歩くとビショビショになるくらいには降っているから、できることなら出歩きたくない。
でも雨が続くと狭い家の中に閉じ込められ、万歩計換算にして1日20歩くらいになりかねないので、運動不足どころか稼働不足解消のため、わざわざ傘をさして長靴履いて、散歩している今日この頃。
そんな雨続きのなかでも、トシおばさんのプチ畑ではゴーヤーが育っていた。
夏野菜ゴーヤーとしては、せめてもう少し太陽が欲しいところだろうなぁ…。
そうそう、お伝えし忘れていた季節の便りが。
今週月曜日に雨降る中桟橋にいたところ、飛び交う数羽の白い影。
アジサシだ!
ようやく今季初の偵察隊が飛来していた。
毎年島で繁殖をしては、秋になると再び南半球に戻っていくアジサシたちは、夏の鳥の代名詞。
今年は例年になく静かな海辺になりそうだから、心安らかに子育てできるに違いない。
季節の便りといえば、賭けマージャン祭り状態になっていたこの日の新聞の片隅に、このような記事があった。
沖縄タイムス 5月22日
ゴリラチョップという名で知られている崎本部で、20日夜に撮影されたものらしい。
撮影者によると前日も確認されたということなんだけど、月の満ち欠け的にはあと2~3日で新月になる日。
ミドリイシ類って、基本的に満月からその後数日のどこかで放卵するんじゃなかったっけ??
…という方がきっと多いことだろうけれど、満月=サンゴの放卵というのは、どうやら恐竜は体が大きくなりすぎて動けなくなったから絶滅したというのと同じくらい古い説になっていて、旧暦がどうのこうのというのも実は通用しない話になっているらしい。
昔と違って観察例が星の数ほど増えデータも蓄積されている現在では、そういった暦に基づいた単純な話ではなさそうだ、ということが明らかになっているそうなのだけど、だからといって滅多やたらに産んでいるわけではなく、一斉放卵のタイミングが満月より数日早かったり、一週間後の半月の日に行われるなんて話があったりするくらいの「ズレ」だったはず。
サンゴの一斉放卵のタイミングについては、80年代半ばにグレートバリアリーフで確認されて以来、世界のあちこちで研究されていて、おそらくどういう研究でも基準は「満月」で、その前後の環境要因(話によっては宇宙からのナントカカントカというものまである)を調べて一斉放卵のタイミングのヒミツを探っている……
…と思っていたワタシ。
この記事のような新月チョイ前に放卵なんて観察例も、今ではフツーになってるんでしょうか???
だとすれば、これは数多あるサンゴの一斉放卵研究のどれかの説で説明できる話なんでしょうか??
今月は満月からずっと雨が多過ぎるために、ミドリイシたちはきっかけを失っていたからとか??(そういえば20日はガメ公がお散歩できた日)
寡聞にしてモノを知らない我々のこと、ミドリイシ類が新月直前に放卵するだなんて、元検事長の賭けマージャンのジジツを知った同僚検事なみにあきれ声を出してしまいそう。
今度瀬底のサンゴ博士に訊いてみようッと。
ミドリイシ類の一斉放卵といえば、かつて一度だけ、ひと目見ようと満月の夜から毎晩通ったことがある…という話は以前どこかで触れたことがある気がする。
95年の5月だったか6月だったか、当時はまだ今のように観察例が豊富ではなかった頃のこと、まだ「満月に一斉放卵」説が有力で、でも沖縄あたりではどうやら数日はズレるみたい、そして放卵開始は午後8時頃…という話になっていた頃だから、最初から一晩で済むとは思っていなかった。
島に越してきた年のことで、まだ不慣れだったこともあり、夜間にボートを出すのは自重して、桟橋脇の海岸からエントリーし、リーフ際までタンクを背負って泳いでいった。
相棒は、当時まだ自称水中写真家だった現某有名海洋写真家。自身は「クロワッサンアイランドでアルバイトをしていた」などと詐称しているけれど実際は居候で、誰よりもヒマだったのだ。
初日は観察すべきサンゴを定めただけで、これといった気配はまったく無し。
2日目もまったく気配無し。
3日目、4日目も、放卵の「ホ」の字も見受けられない。
こりゃ今回の満月は空振りなのか?
と不安になり始めた5日目は、日中からとんでもない豪雨になっていた。
なにしろ夜になって桟橋の付け根あたりから航路を観ても、点灯しているはずの赤灯がまったく見えないほど。
ここまでひどい土砂降りのさなかに、タンクを背負ってエッホエッホとリーフまで泳いでいくなんて……
今じゃ絶対にやらない。
しかし。
あの時君は若かった。その時僕も若かった。
20代のチカラで、豪雨に負けず、でも水面は雨がひどすぎるから最初から潜降してリーフを目指していると、それまでの4日間ずっと通過していたミドリイシに、異変が生じていた。
サンゴの表面という表面に、まるで青春真っただ中の中学生のニキビのようなツブツブが!!
これは……ビンゴ!かも!!
慌てて「定点」目指してダッシュし、さっそく観てみると……
おお、これまでの毎晩、何の変化も見せていなかったサンゴが、ニキビ面状態になっているではないか。
時刻は午後8時。すぐさま放卵が始まるに違いない。
……と、今か今かと待ち構えること、約2時間。
浅いからタンクのエアーはいくらでも持つからいいとして、いい加減待ちくたびれたんですけど。
…と文句のひとつも言いたくなったその時。
始まった!!
静かにおだやかに、フワ…と舞い上がる卵一粒。
しかしここからアッと言う間にピークになった。
先ほどまで表面のニキビ状だったピンクのツブツブが、ものすごい勢いで大放出されていた。
時間にして10分~15分くらいのこと。
4晩通って空振りで、5晩目にしてようやく、しかも2時間待ってやっと観ることができたミドリイシ類の一斉放卵は、たったそれだけの時間で終了したのだった。
もっとも、「一斉放卵」だけにこの群体だけではなくて、そこかしこで同じような状態になっており、群体ごとで多少の開始時刻のズレはあったから、ゲップが出るくらいには鑑賞することができた。
卵目当てに夜行性のアカマツカサ類などもわんさか駆けつけ、狂乱状態になっていたような記憶もあるけど、おそらく某有名海洋写真家とワタシも、ハタから見ればアカマツカサと同じくらい盛り上がっていたことだろう。
あれから四半世紀が経った今、「サンゴの一斉放卵は午後10時過ぎだよね」なんて話は、世間では当たり前になっているのだった。
当時の午後8時過ぎ説はいったいなんだったんだろう??
2020年05月22日
今日もどこかで…。
2020年 5月21日(木) 雨
東の風 波あり
人の世に愛がある。
人の世に夢がある。
この美しいものを 守りたいだけ……… (by 阿久 悠)
我々の子供の頃は、悪魔ですらこのモチベーションで世のために「悪」と戦ってくれていたというのに。
まさか半世紀後には、そのための力を行使できる立場のヒトが犯罪に走ってしまう世の中になっていようとは。
まさに後退途上国ニッポン(< 先進国脱落、もはや発展途上国ですらないという意味です)。
夕日を浴びて東京タワーに腰掛けながら、きっと彼は背中で泣いていることだろう。
え?それは誰だって?
誰も知らない 知られちゃいけない……。
しかしそれが「訓告」だけで済ませられて、おまけに巨額の退職金まで支払われるなんてことになったら、たとえ娘婿に対しては口を噤んでいる東尾修も黙ってはいられないだろう。
減棒2500万円と、半年間の出場停止処分を返してくれ!…と。
…なんてことを言い出したら過去を蒸し返すだけだから、やっぱ黙っているか。
とはいえ、外出自粛中なのにという倫理上の話や麻雀賭博という立小便級の犯罪がどうこうというよりも、検事長と卓を囲んでいたのが朝日や産経の記者ってことのほうがよほど腐臭が漂っている気がする。
しかしこのタイミングでの明らかなリーク、いったいどういう力が闇の世界で働いているんだろう?
ひょっとしてこれは、検察庁版令和の二・二六事件なのでは??
後任が林真琴氏という、まっとうな軌道に即座に修正されたことといい、このあと順当に司直の手が入り、テッテー的にシンゾー&アキエが追い詰められていくような気もする。
週刊文春5月28日号の記事ということで、将来的には「五・二八事件」として歴史の教科書に載ることだろう……あ、発売日からすると五・二一事件か?
人の世にある愛と夢は美しいと思うヒトが、まだまだいると信じよう。
一方。
我が家には イモがある。
我が家には コーンがある。
この美味しいものを 食べてみたいだけ。
というわけで、マサエ農園産お野菜で……
ポテチ!
アーンド……
コーンポタージュ!
1日じゅう雨で食ってばかりとなれば……。
今日もおうちで デブるマン
明日もおうちで デブるマン………
(バックに白いハトが飛びます)
2020年05月21日
1本18リットル。
2020年 5月20日(水) 曇りのち晴れ
南の風 波あり
昨日は北風&雨模様で、Tシャツ短パンじゃ寒すぎるほど冷えたのに、昼前から太陽が顔を出したこの日は、一転して若夏の陽光輝く暑い1日になった。
雨が降って日も差せば、畑の作物たちはスクスク育つ。
前日山のように採れたとお伝えしたモーウィ、すぐさまオタマサがモーウィ配りおばさんになってしまったので写真を撮ることができずじまいになってしまった。
でもそれを残念がる必要はまったく無かった。
なにしろその翌日に、再び前日とほぼ同量のモーウィが収穫できてしまうのだ。
昨日は配り切れなかった家庭に配りに行くモーウィ配りおばさんである。
先日は間引きヤングコーンを楽しんだコーンも、収穫サイズに育っている。
ご存知のとおり収穫したコーンをそのまま放っておくと、糖分が酵素によってデンプンに変えられてしまうから、甘さがガクンと落ちてしまう。
トウモロコシの糖分は聞くところによると24時間で半減するといい、トウモロコシ農家のベストな食べ方は、畑に七輪を持って行って採ったトウモロコシをその場で焼くのだそうだ。
それを考えると、広大なトウモロコシ畑を縦横に走る火星でも活躍できそうなマシンで収穫され、遥か遠い加工場まで運ばれていくアメリカンなコーンなんて、いったいどういうことになっているんだろう?
ミックスベジタブルのコーンが美味しいわけがないってことがよくわかる。
幸い小さな島の水納島では、「家から遠い」と言っているマサエ農園畑1号ですら、車で1分、歩いて5分ほど。
採れたてコーンをすぐに茹でることができる。
糖度が高い採れたてコーンは、茹でずにそのまま食べればフルーツのように甘いのだけど、ちょうどお昼ご飯時でもあったので、ここはやっぱり茹でたてコーン。
もっとも、さすがに2人でこれを全部平らげることはできず、2本だけ残った。
そんなおり、家庭用ガス湯沸かし器設置工事のために来島していた本部ガスさんが、作業を終えて我が家にやってきて、なにやらガスのホースをチェックしたいという。
いったいなにがどうしたのか、当初はチンプンカンプンだったのだけど、話をしていて気がついた。
沖縄はプロパンガスの利用率が高く、水納島も当然ながら各家庭はプロパンガスを利用している。
そのおかげで、停電はすれどガスが止まることはない(台風銀座&停電が日常の沖縄で、IHコンロを普及させようとする意味が分からない…)。
毎月本部ガスのスタッフがメーターをチェックしては、ガスボンベをたくさん連絡船に載せて島に来て、各家庭で交換していく。
島に越してきた当時はまだこれを各家庭でやっていて、連絡船に乗ってきたボンベを港で車に載せ、自分たちで設置していたっけ…。
当時のことを思うと、随分楽させてもらっている。
で、そうやって各家庭のガス消費動向がわかる本部ガスさんが、我が家の異変に気がついたわけだ。
この春はやけにガスの消費量が多いんじゃね??
さては配管のどこかで漏れているのかも。
…ということもあって、ちょっと見てきて的に言われたのだろう設置工事作業員がチェックしに来てくれていたのだ。
でも我々にはその理由がすでにわかっている。
そう、とんぼ玉制作だ。
ガスバーナーを使ってガラスを溶かして制作するとんぼ玉とはいえ、趣味程度の利用ならさほどのガス消費量にはならない。
ところがただでさえ「商品」としてたくさん作っているMasae工房とんぼ玉作者オタマサは、このコロナ禍で時間がたっぷりできたのをいいことに、例年のこの時期とは比べ物にならないのはもちろんのこと、このひと月ほどの間は、畑仕事に費やす時間のほうが多い冬場よりも圧倒的に多くの時間をとんぼ玉制作に充てていたのだ。
そりゃ、どこかで漏れてるんじゃ??と思ってもおかしくないほどの消費量激増だったことだろう。
後日念のため検査しに来ると言ってくれてはいたけれど、ほぼ間違いなくこれが真相だ。
ところで。
ガス湯沸かし器の取り付け工事の依頼主はタツヤさんだった。
20年選手のボイラーが不調になってしまったのを機に、この際ガス湯沸かし器に変えることにしたという。
ガス湯沸かし器を設置したあとは、不要になったボイラーや灯油タンクは不要になるから、本部ガスさんが持ち帰ってくれるという。
ただ、100リットル用灯油タンクにはまだ、半分弱ほどの灯油が残っている。
そのまま持って帰るのは重すぎるので、本部ガスさんとしては空にしてもらいたいところ。
そこで!
ガス漏れチェックのために本部ガスさんを我が家まで案内してきたタツヤさんから打診が。
「灯油もらわない?」
もらいます、もらいます!!
というわけで、水色の灯油容器にして2つ分の灯油を頂戴してしまった。
容器を空にするため、先に2つ分の灯油をタンクに入れたし、そのうえ備蓄があと容器2つ分あるとなると、灯油の消費量が一気に減るこれからの季節のこと、この夏はもう灯油を買う必要がないかも。
なんともありがたいお申し出。
でももらいっぱなしじゃなんなので……ってことで、タツヤさん家のタンクから灯油を移し替えているときにヒョコヒョコ家に戻ったオタマサは、先ほど食べ切れなかった2本のトウモロコシを御礼代わりにタツヤさんに。
灯油容器2つ分のトウモロコシだなんて、なんと高価な!!
いささか順序が逆になったわらしべ長者なのだった。
2020年05月20日
ヒミツの隠れ家。
2020年 5月19日(火) 曇りのち雨模様
北の風 波あり
降りそうで降りそうで、でも降らない空模様。
なので朝のカメさんたちのエサ採りも、昼の散歩もフツーにできた。
でもこのあとも降らないと見越して草刈りなど始めたら、きっと降って来るんだろうなぁ…
…と賢明なる予想のもとに自重したら、案の定その後ほどなくして降ってきた。
ま、前日の豪雨とは違って、しばらく外に出ていたら濡れちゃうってくらいの雨だから、その程度なら許容範囲のオタマサはいそいそと畑に行き、1日行かない間にドドンと成長していたモーウィを山のように抱えて帰ってきた。
さっそくモーウィ配りおばさんになって島中を行くオタマサ。
モーウィがあっという間に成長するのに対し、じっくり熟成タイプのシブイ(冬瓜)はようやくこれくらいになっている。
もっとも、シブイがモーウィのようにあっという間にドコドコ採れるようになったら、えらい騒ぎになっちゃうところだ。
話は変わる。
先日、ミツボシゲッターのツチホゼリ・チビターレを観た際、浅いところへ戻る途中、再びオタマサが何か見つけて撮っていた。
砂底に転がるなんの変哲もない小さな石ころを指さしている(以下の写真、撮影:オタマサ)。
こうしてピックアップした写真を見るとすぐにわかるけれど、海の中のクラシカルアイでは、石ころの何を指し示しているのかさっぱりわからない。
さて、この石ころにいったい何がいるかお気づきですか?
そう、石ころの下側にピトッ……とくっついている黄色いモノ。
これは……
イレズミミジンベニハゼ!(背側が下になってます)
どこからやってくるのか、毎年梅雨頃から初夏にかけてイレズミミジンベニハゼやナカモトイロワケハゼが出没するので、毎年のように会いに行くオタマサ。
ただし彼らは浅いところにはけっして居てくれず、水深35メートルより深いところをサーチしなければならないから、ゲストをお連れすることはまずない。
ところがこの日出会ったイレズミ君が居た場所は、水深28メートルほど。
イレズミミジンベニハゼと30メートル以浅で出会えるなんて!!
他所の海はいざ知らず、水納島最浅記録更新だ。
しかも、例年オタマサが出会うイレズミミジンベニハゼはもっと小さな個体だから、2センチほどとほぼオトナサイズのこの子は随分大きく見えたという。
2センチが随分デカい、それが変態社会。
昨今のダイビング業界では、ハゼたちが住処に利用しそうなガラス瓶をわざと置き、このテのレアなハゼを呼び寄せ、そして客を呼び寄せるのが定着してしまって久しい。
最近は写真映えする色合いのガラス瓶や美しい貝殻にこだわりを見せるなど、彼らスモールライフの野生の尊厳など微塵も顧慮しないママゴト写真が大流行中だ。
そうやって浅いところに呼び寄せる「テクニック」が普遍化したため、かつてはレアだったナカモトイロワケハゼは(人工的に)「いつでも観られる魚」に成り下がった感があるけれど、イレズミミジンベニハゼは今なおレアっぽい。
浅いところになかなか来てくれないからなのだろう。
そんな変態ママゴト社会羨望のハゼが、30メートル以浅にいるなんてことがバレてしまったら、ミジンベニハゼがいるところから砂浜のエントリー口までダイバーの行列ができていたかつての伊豆・大瀬崎の「湾内」のようなことになってしまうかもしれない。
イレズミ君の隠れ家は、隠れ家のままにしておこう。
ちなみにこの子は、小さな石ころと砂底の隙間を住居にしているらしく、入口付近で警戒しつつ、ビビると中に入って、またソッと出てきていた。
ずっといてくれればやがてペアになるかもしれないけれど、いかんせん住居は砂底に転がるただの石ころ。
台風1発でどこかに転がっていくだろうし、転がらずともあっという間に砂に埋もれてしまうことだろう。
おそらくは、この季節ならではの一期一会。
でもそれが海というものだ。
2020年05月19日
戦え!新人くん。
2020年 5月18日(月) 雨のち午後から薄日
南のち南西の風 波あり
台風崩れの熱帯低気圧が沖縄本島付近を弱々しく通過。
…という予報だったから、雨も風も覚悟のうえ。
ところが雨はそれなりに力を見せたのとは対照的に、風は結局さほどのこともないままで終わった。
これだったら連絡船は大丈夫だろう……
……という島民の大方の予想とは裏腹に、潔くもアッサリと朝から全便欠航。
船長カネモトさんだったら運航しただろうけれど……。
船長カネモトさんといえば。
カツオの町・本部町のカツオ漁船第11徳用丸の晩年なみの乗組員平均年齢になりつつあった水納海運に、ついに人材刷新の波が押し寄せている。
社長はもちろん、船長も機関長も還暦オーバーとなれば、そのうち欠航の原因が「船長腰痛のため」ということになりかねない…
…なんて話も無きにしも非ずではあるけれど、そもそも船員さんたちの人生設計的にもいろいろあるのだ。カネモトさんの人生設計的には、すでに予定より1年長く在職していることになっているはず。
ということもあって、我々がいつも「大船」に乗るつもりで全幅の信頼を寄せ続けさせてもらってきた船長カネモトさんは、今年6月一杯をもってついに水納海運を去ることになっている。
古くからのゲストで船員さんたちとも顔馴染みになっている方々には、たいそうショックなことだろう。
その話は随分前から決まっていたことなので我々も知ってはいたのだけれど、まぁシーズンが始まってから、お越しになったゲストにそれぞれ話しているうちに、伝わるべき方々には伝わるだろう……
…と思っていたところ、コロナ禍に。
おかげで自然伝播の機会が失われてしまった。
それで7月以降に来島された方が「エーッ!?」なんて話になっても申し訳ないから、今のうちにこの場にてお知らせしておきます。
船長カネモトさんに会いたい方は、6月末までにどうぞ。
…コロナが許してくれれば、ですが。
ちなみに機関長は今年12月まで契約があるそうなので、年内は会えます。
というわけで、水納小中学校の休校に続き、またひとつ「時代」の終焉を迎えることになる水納島。
この先はどう考えても新たに生まれるものよりは消えゆくもののほうが多そうだから、今までの「当たり前」が、それぞれ貴重な見納めシーンになるかもしれない。
いつまでも あると思うな 当たり前。
で、船長退社予定、それにリザーブ船長でもある社長セイゴウさんの高齢化にともない、戦う新人船長が2名、この5月から新しい船員さんになっている。
彼らがなにと戦うのかといえば、ほかでもない、大きな船舶だととんでもなく離岸接岸がしづらい「水納港」が相手だ。
高速船はただでさえ喫水が浅く風に流されやすいところに、現在の連絡船はバリアフリー化仕様で船体が大きくなっているため表面積が増しており、「海に浮かんだ空のタライのように」(船長談)風に流されてしまうのだ。
ところが離岸接岸時の回頭用に用意されている港湾スペースは、船体が今よりも遥かに小さかった頃の船に合わせたサイズだから、平時でさえギリギリのギリギリ、五島列島福江島の小さな空港に、ボーイング747を離発着させているようなものなのである。
そんな試練を乗り越えるべく、戦う新人船長たち。
6月末のカネモトさん退社後には独り立ちできるよう、現在カネモトさんやセイゴウさんがつきっきりで指導しているところである。
その一環で、桟橋には……
ペンキで塗られた黒いラインが。
まるで少年Aの目線のようなこの黒いラインは、自動車教習所の縦列駐車指導のごとく、接岸の際にはこれを目印に……と。
新人船長たちだってもちろんシロウトじゃないから、連絡船のひとつやふたつ、いつでも航行させられる実力の持ち主である。
でもこの水納港は、おそらく彼ら史上最大のハードルになっていることだろう。
一般乗船客がほとんどいなかった今月は、ある意味彼らにとってラッキーチャンスだったかもしれない??
ここにも「コロナ、グッジョブ」が。
というわけで、ひとつの時代が終わり、新たな時代が始まる……
…のだけれど、その新たな時代の初期は、欠航率がアップするかも?
2020年05月18日
降る降る詐欺の日。
2020年 5月17日(日) 昼前雨パラパラ以外うす曇り
南の風 波あり
雨がいつ降るか、いつ降るか……という雲が迫りつつある状態が続いただけで、結局昼前にパラパラと降っただけで、あとは薄日もさすほどの好天に。
雨が降れば屋内でやろうと思っていた作業があったのに、妙にいい天気になっちゃったから草刈りデーになってしまった。
こんなことなら今日までボートを置いておいて、この日も1本潜ってからにすればよかった……。
なんだか悔しいので、最近撮った2つの動画でセルフ在宅ダイビング。
ひとつ目は、彼女を産卵床に誘うために一生懸命なニセネッタイスズメダイのオスが、結局フラれる「ふられ気分でRock'n' Roll」。
興奮色を表していたオスの体の色が、最後はフラれてノーマルカラーに戻るところにご注目。
ふたつ目は、これまでありそうでなかった「ツイン・ドラゴン」。
キセキ(?)のシーンは動画中盤あたりです。
この漂う海藻のようなものはいったいなに?という方は、こちらとこちらをご参照ください。
もちろんのことながら、2本の動画はトム・キャットともジャッキー・チェンとも関係ありませんので悪しからず。
2020年05月17日
★★★ゲッター。
2020年 5月16日(土) 晴れのち夕方雨
南の風 波あり 水温24度
世界に送れまじとばかりに慌てて(?)緊急事態を解除して初めて週末を迎えたこの日、伝えられる人出の多さを受けたニシムラ行きがかり上担当大臣は、「あちこちで気のゆるみが…」と警鐘を鳴らしていた。
……しかしそう言っているご本人が、マスクをしてないんですけど。
さて、遅まきながらの今季1号となった台風は、早くも勢力を減退させ、沖縄本島地方に来る頃には消滅寸前の熱帯低気圧程度になっている見込みという予報に変わっていた。
台風から熱帯低気圧になると「ホッ…」と安心すると、もうナニゴトもない…と安心するヒトは多いのだけど、周辺地域に及ぼす威力の差はあれ、熱帯低気圧とは風を吹かせる構造は台風とまったく同じシステム、すなわちプチ台風なのだから、それが直上付近を通るとなれば、台風同様の用心をしておかなければならない。
緊急事態が解除されたからといってウィルスの危険性が無くなったわけではないのと同じ。
というわけで、台風崩れであっても気のゆるみを見せることなく、この日午前中に1本潜ってから、昼過ぎに渡久地港でボートを上架してきた。
晴れていることだし、せっかくだから…ということでその前に午前中に行ってきた海は、今日も素敵な世界だった。
例によって白い砂底に何かいないかな…とサーチしながら移動していると、前方中層付近に黒い影が。
普段マンタクラスの特大エイを見慣れていない目には、一瞬マンタか!?と思ってしまうほどでっかい(と感じる)マダラトビエイ・アダルトが、のんびり泳ぎながら正面から接近中。
先日このポイントのリーフ際で出会ったのと同じ子だろうか。
こういう場合、血気にはやるゲストと一緒に潜っていると、たちどころにカメラを向けてダッシュしてしまうから、マダラトビエイは危険を感じ、すぐさまダッシュで逃げていく。
でもその場でジッとしていると、そのままゆ~っくり近づいてきてくれる。
ただ。
海底付近からそのままフワッと上がってジッとしていたワタシは、BCにエアを入れていたこともあって、スーッと浮いてしまう。
BCの操作をするとエイをビビらせるから、せめて息を吐いてしまおうと、仕方なくそーっと息を吐きだすと、マダラトビエイ……
ワーォ!!
のポーズをしたかと思うと、驚いて針路変更してしまった。
ワタシが息を吐く以前までの彼には、ワタシは何に見えていたんだろう??
ここで針路を変更してくれたおかげで……
新一本サンゴとツーショット。
いやあ、いいものを観させてもらった。
上層ではグルクンが泳いでいるし、水は随分きれいだし、このまま浮いた状態で泳ぎつづけてもかなり心地よさそう。
……だったのだけど。
眼下に気になるものが。
あれはもしかして……
やっぱり!
先月初遭遇した、まだ和名が無いハタタテギンポ属の1種だ。
カメラに慣れてくれるまで通うことにしようと思ったら、その後プッツリ消息が途絶えてしまったこの魚、同じ子なのかどうかはわからないけど、以前会ったところと直線距離にして15mほどだから、他人ではなさそう。
近寄ると巣穴に身を引っ込ませてしまうため顔しか撮れなかった先月と比べると、近づいても随分体を出してくれる。
水温が多少は上がったからだろうか。
住処にしているのはどうやら貝殻の残骸のようで、うまい具合いに入り口が開いている。
ちょっと失礼して前から覗かせてもらうと……
相変わらずカワイイ。
完全個室らしきこの巣穴、この時期だしギンポだし、ひょっとして卵でも守っているのだろうか。
気になる。もう少し観ていたい……
その時、背後からオタマサの気配が。
何かを伝えたがっているようで、砂底に指で文字を書こうとしている。
いったい何を書くのやら、しょうがないから待っていると、最初の一文字はカタカナの「ハ」と読めた。
次いで「タ」。
ほうほう、ハタ。こうなると字をカタカナで書こうとしているのだろうと、こちらは心構えをする。
で?
すると想像外の動きになった指先の文字は、最後にまるでひらがなの「る」の最後の部分のように、クルリと輪を描いているではないか。
え……カタカナにそんな文字あったっけ???
ハタだけに、そこでハタと思い至った。
最後の2文字は「yg」だ!
ハタヤング?
なるほど、何かのハタのチビがいるというのだろう。
というか、ただでさえややこしい水中砂文字判読、伝えるのであれば、カタカナで書き始めたら最後までカタカナ、というのが「配慮」というものではなかろうか。
「『ヤング』と3文字で書くより『yg』のほうが2文字で少ないと思って…」
なんという自分本位の合理性。
これぞまさしくB型的コミュニケーション。
それはともかく、言いたいことはわかったので、どれどれとばかりに案内してもらっていくと…、その途中に例のテンスの姿が。
いつもは素通りしているけれど、まさかその極チビがあのような模様だったなんてことを初めて知った記念にとばかり、寄り道して……
先日の極チビターレは別として、この模様段階になっているテンスモドキにカメラを向けたのは、おそらく20年ぶり……。
水納島ではこのように模様が赤いライン状態になっている5センチほどの幼魚に出会う機会はわりとあるんだけど、このさらに小さい時がああいう模様だなんて、夢にも思わなかったなぁ……
…って、いかんいかん、オタマサが先で待っている。
もっと撮りたかったもののしょうがないから先へ急ぐと、そこはこのポイントにフリーで潜るたびにオタマサがちょくちょく立ち寄るところだった。
水深30メートルちょいなので、ゲストをお連れすることはまずない場所だ。
そこに……
え゛ッ!?
まさか「ハタyg」って、ムレハタタテダイのチビのことだったの?
けっして嫌いじゃないけれど、いやむしろ好きな魚ではあるけれど、なにもわざわざ30メートル以深まで行って観るほどの魚じゃないんじゃ……
……と思ったら、さすがのオタマサもそこまで常識外れではなかった。
彼女が伝えるところの「ハタyg」とは、矢印の先の魚。
そう……
ツチホゼリ・チビターレのイエローテールバージョン。
ツチホゼリのチビターレといえば、4年前に出会った1個体にしか出会ったことがなく、そのチビターレは全身淡いブルーだった。
当時調べたときに、幼魚にはこのように体後半部が黄色くなっているタイプ(だからといってキビレツチホゼリではないらしい)もいることを知ったものの、実際に目にするのは初めてだ。
でかした、オタマサ!(本人はツチホゼリだとはわかっていなかったようだけど)
3センチもないほどのチビターレながら、いっちょ前に縄張りを主張するようなポーズで頑張っているところを撮ろうとすると、どうにも周りでチョロチョロしているミツボシクロスズメダイのチビが邪魔になる。
ミツボシが邪魔になると思っていたのは、ワタシだけではなかった。
ひと足先に発見し、謎の「ハタyg」を撮っていたオタマサは、衝撃シーンを目撃していた(以下、一連の写真の撮影:オタマサ)。
なんと、ミツボシクロスズメダイ・チビに喰らいつくツチホゼリ・チビターレ!!
チビターレだとばかり安心して不用心にツチホゼリチビの周囲を泳いでいたミツボシクロスズメダイ・チビには、やはり気のゆるみがあったに違いない。
しかし食い千切って獲物を食べるサメなどとは違い、基本的にゲットしたら丸飲み方式のハタ類のこと、いかにビッグマウスとはいっても、3センチ弱の幼魚が2センチほどの、それも丸い形をした魚を飲み込むのは厳しかったようだ。
ま、にっちもさっちもいかない状態が続いてくれたおかげで、オタマサはこうして写真を撮れたのだけど。
結局ツチホゼリ・チビターレは飲み込むのを諦め、ミツボシクロスズメダイ・チビは九死に一生を得たらしい。
解き放たれたミツボシクロスズメダイ・チビがその後も元気に泳いでいたのかどうかは確認されていないものの、もし生命を取りとめたのなら今頃きっと、二度と気を緩めることのないよう、石田純一なみの反省をしていることだろう。
深いところでたっぷり窒素を溜め込んでしまったので、リーフ際でのんびり時間を過ごすことにした。
緊急事態解除といってもなんら安心はできない現段階では、みなさんにとって海はいまだ遠い世界かもしれない。
なので、解除後ファーストサンデーも気を緩めず自宅にいらっしゃる方向けに、在宅ダイビング「キホシスズメダイ・チビターレ祭り2020編」をお届けいたします……。
2020年05月16日
ミスター化。
2020年 5月15日(金) 晴れ
南の風 波あり 水温23度
その昔はワンサカワンサ、ワンサカワンサいたレナウン娘も、淀川のイタセンパラよりも早く絶滅してしまった今では、もはやどうしようもなかったのだろう。
10年前にお隣の大陸の企業に買収されていた時点でこの日が来るのは誰の目にも見えていたんだろうけれど、コロナ禍に乗じて静かに身を引くというのもひとつの手ではある。
一方、コロナ禍に乗じたどさくさ紛れのシンゾー総書記の作戦は、ついには検察OBの重鎮らからも、意訳すればほとんど罵倒に近い反対意見が出てくるかと思えば、与党のくせに対岸の火事の政権パートナー、コーメー党代表にまで飛び火しているようだ。
でも多くの方は大事なことを忘れている。
総書記の能力はほぼ現法相と同程度であることを。
反対意見に対して、
「恣意的な人事はしない」
「三権分立の侵害はまったくない」
などと応えているシンゾー総書記だけど、おそらく彼は「恣意的」という言葉の意味も、「三権分立」の意義と意味も、本人はなにもわかっていないと思われる。
書いてあることを読めばいいだけなので、意味など分かんなくても問題ないんだもの。
だから誰かがイレギュラー的に、「三権分立の三権って、なんですか??」といきなりありえない初歩的質問をしたら、おそらく総書記は手元の答弁用ファイルを指さし、
「こ、これに、これに、これに書いてないじゃないですか!」
と本気で憤ることだろう。
モノゴトをほとんどわかってはいないまま、とにかく自分のやりたいようにやる。
これはもう、躾けられていないサル同然の幼児となんら変わらない。
それってすなわち、お隣の半島の最高指導者となんら変わらないという意味でもある。
シンゾー総書記、やがて自衛隊の最新ミサイルをぶっ放してみたくなることだろう。
さてさて、泊りがけで本島に出ていたこの日は、朝から前日の作業の続き。
オタマサはここ何日か、お天気のいい日を狙って続けていた数年に一度の使命が、ようやく完了。
屋根のペンキ塗り。
この屋根、そもそもの施行が拙かったのか、キチンと周囲に向かって緩やかな勾配になっておらず、ところどころ広くくぼんでいるため、雨が降ると水が溜まってしまう。
水がたまると苔が生える。
苔が生えると水が乾いても汚くなる。
その苔の残骸だらけになると、「白」の効果が無くなる。
なのでそれを高圧洗浄機で落とすと、塗装が剥げる。
という悪循環があるため、5年に1回くらいこのようなことをして凌いでいるのだった。
この日は、ここから見下ろす位置にある物置の屋根のペンキ塗りが終了。
セメント瓦は放置しておくとどんどん劣化が進んでいくから、随分前に一念発起してモルタルで隙間を埋めたり割れている瓦を交換したり(現在唯一残る名護のセメント瓦工場で買ったのだけど、最近はやっている気配が見られない……)して形を整えたあと、屋根用の白いペンキを塗ったのが2016年のこと。
それから4年経つとさすがに塗装は劣化し、セメント瓦だからなのか、表面に藻がはびこるようになってしまっていた。
それが再び真っ白に変身。
このあと5年くらいは大丈夫だろう……。
一方ワタシは、構想5年の作業を着々と進めていた。
この物置の屋根は、母屋側の庇の下にまで及んでいる。
以前は周囲に雨どいが設置されてあったのだけど、すでにウケが腐食し、雨どい自体もあちこち破損していたから、早々に全撤去した。
四辺のうち三辺は雨どいなど無くてもなんの支障もないのだけれど、母屋に接しているところは、本来雨を避けられるはずのところが、物置の屋根のせいで濡れそぼちてしまう。
こりゃあ、こちら側だけでも雨どいを設けたほうがいいなぁ…
…と構想してから5年、ようやく実現の運びとなったのだった。
ひとくちに雨どいといってもけっこういろいろパーツが必要で、この一辺のためになにがどれだけ必要なのか、ということを考えるのが面倒なので、設置する場所の各サイズなどをハッキリさせつつ、必要なモノをひと揃い!という形式でメイクマンで購入しようと思っていた。
雨どいの長尺は1本の長さが360センチだから、ハイラックスの荷台と助手席を利用すれば、後ろから1メートル弱ほどはみ出す程度で済むだろう。
という段取りは4月のうちにつけてあって、あとは購入するだけ。
で、ゴールデンウィーク後にメイクマンに行ってみたところ。
なんと、ステイホームのゴールデンウィーク、ヒマなおとっつぁんたちは突如DIY大会になったらしく、雨どいの細かい各パーツもまた、売り切れ続出という事態になっていたのだった。
世のおとっつぁんたちにとっては、ステイホームじゃなくてステイホームセンターだったらしい……。
名護まで行ってまだ在庫が無いというのじゃ無駄も無駄だから、いささか割高になるのは覚悟で本部町内の金物屋で見繕ってもらうことにした。
そしてこの日、朝から作業を始めてみると、3時間くらいで終了。
ちゃんと勾配をつけなきゃ雨水が流れないとかいろいろ細かい配慮も必要ながら、試しに水を端から流してみると……
ちゃんと流れた♪
モンダイは、屋根から伝い降りてくる雨水をちゃんと受けるのか、というところ。
これで屋根からの水が雨どいを通り越して下に落ちたりしたら目も当てられない。
ペンキ塗りたてのため水を流すわけにもいかず、チェックは後日になるものの、まぁ以前備え付けられてあった雨どいウケの長さと同じにしてあるから、おそらく大丈夫だろう。
それよりも、最初の台風で吹き飛んでしまいそうなのがオソロシイ……。
作業を終えてサンエーで買い物を済ませ、島に戻るとお昼時。
その後昼過ぎから潜りに行ってきた。
晴れている昼過ぎとなるとさすがこの時期、暑さは半端ではなく、思わず海に飛び込みたくなる。
エントリー寸前には温度ショックに気持ちを供えなければならなかったほんのひと月前までとは全然違う。
火照った体に冷たい水が心地よく、うどんになったような気分で気も引き締まる。
海中では、先月3日に出会ったミヤケベラのチビに再会した。
ひと月半ほど経って、人生最小級からフツーの幼魚サイズにまで成長している。
成長してはいたけれどクリーニング作業は継続中のようで、サンゴの上に彼女の姿を認めた他の魚たちが、ひっきりなしにケアを受けにくる。
一番上のアサドスズメダイや次のゴマハギなどは、寄ってきてケアを求めはするものの、いまひとつミヤケベラチビターレの技術に信を置いていない気配が見える。
その点最後のアカハラヤッコは、なぜだか全幅の信頼を寄せているらしく、けっこう長い時間身を委ね続けていた。
幼魚の成長といえば。
3月に出会ったキンリンサザナミハギの若幼魚、その後もずっと同じ場所に居てくれたので、4月の様子も観ることができた。
はたして今もなお健在だろうか?
すると……
二回りほど成長しつつも、ほぼほぼ同じ行動範囲で元気にしていた。
でもなんだかより一層体色はくすんで、遠目にそれと察知するのが難しくなってきているような……。
というか、口元の青い部分がまるでヒゲの剃り跡のようで、ついつい「侍ジャイアンツ」にV9現役選手として登場する長嶋茂雄を思い出してしまった……。
左はもちろん王選手です。
そんなミスター化しているキンリンサザナミハギも……
ミヤケベラクリニックにご来院(ケアリクエストの際は、もっと体色を濃くするみたい)。
ミヤケベラヤング、なにげに引っ張りだこのようだ。
というか、どちらの幼魚も撮っておきたかったワタシ、最初からここにいれば、一挙両得一石二鳥、二兎を追って一兎で済ますことができたのに……。
2020年05月15日
海 羊。
2020年 5月14日(金) 晴れ
東の風 波あり 水温23度
秘密基地で一泊予定で本島へ。
でもこのあと台風だ梅雨だと雨続きになる雰囲気だから、晴れているお天気がもったいない。
幸い出かけるのは昼頃を予定していたので、朝はまた海に行ってきた。
エントリー早々、昨日オタマサが出会ったタテキンアイサイズチビターレに会いに行ってみた。
たった1日でGoneだなんて……
…ことにはなっていなかった。
なんだかしゃっちょこばって気をつけでもしているようなチビチビ。
もう少し大きくなったタテキンチビは、カメラを向けたりするとすぐにスーッと陰に隠れてしまうことが多いのだけど、これくらい小さいと怖いもの知らずらしい。
一応幼魚だから暗がりにいはするものの、カメラを避けて逃げるなんてことは思いもよらないらしく、むしろカメラに向かってグングン近づいてくるほど。
ヒレ全開ポーズも撮らせてくれたほか、アクビも披露してくれた…
…んだけどチャンスを活かせなかった。
そのかわり……
ゴマウツボキラメル。
前日いた魚と会いに、次の日また同じところへ…なんてことは、20年前だったら当たり前にできていたことだし、物好きなカメラ派ゲストなど、1匹のヒレナガネジリンボウを撮るために1日3本すべて同じポイント、なんてことも可能だった。
ところが近年は本島から来るダイビングボートが増えすぎて、小さな島の洋上は船だらけ。行きたいところに行けることなど滅多にない。
ゲストから前夜のログ付けの際に「明日はどのあたりに行きますか?」という質問をよくいただくことが多いのだけど(それに合わせてカメラの装備を考える、という理由もあるから)、朝7時に出発するならともかく、のんびり宿で朝食を食べてから…という当店のスケジュールでは、とてもじゃないけど予定したポイントでは潜れない。
なおかつこのタテキンベビーがいるところときたら、普段のシーズン中だったら、日中他のダイビングボートが停まっていないことはないってくらいの場所。
例年どおりのこの季節だったら、そもそもここを訪れてすらいないだろうし、会えていたとしても翌日すぐの再訪はかなわなかったことだろう。
コロナ禍のおかげで、なんだか20年ぶりくらい昔の「日常」を取り戻し、まことにゼータクな思いをさせてもらっているのだった。
さて、そうやってワタシがタテキンチビチビベビーと遊んでいた頃、前日同様砂底を這いずり回っていたオタマサは、クサイロモウミウシの仲間に出会っていた。
このウミウシがついているのは砂底にたまにポツポツ生えているテングノハウチワという海藻で、その名のとおり団扇形をした5センチ丈ほどの海藻だ。
この海藻をひとつひとつチェックすると会う確率が高いクサイロモウミウシの仲間ながら、せいぜい5ミリほどと小さいため、クラシカルアイの方はハナから諦めるに違いない。
しかしクラシカルアイのくせに諦めの悪いオタマサは、背後にもう1匹いることに気がついていた。
しかもさらに気がつき続けると、もう1匹どころではないことが判明。
その裏側はもっと大変なことになっていた。
ウミウシの形からして、なんだか羊の牧場みたい。
海牛ならぬ海羊。
彼らはこのテングノハウチワを餌にしているのだろうけれど、こんなに一か所に集まるってことは、それほどこの海藻が周囲に見当たらないってことなんだろうか…
…と思いきや、オタマサによると周囲にはほかにも同じ海藻がチラホラあるのに、そこには1匹もついていなかったという。
ってことは、ウミウシ自体がウミウシを呼び寄せているってことか。
おかげで本来はその名のとおり団扇のような形をしているはずの海藻が……
輪郭ボロボロ……。
梅雨時にカタツムリの被害に遭う、庭の花々のような有様になってしまっていた。
ま、カタツムリもウミウシも同じ仲間なんだから、被害状況が似ているのも当然か。
ところで、更新されなくなってから久しい「ウミウシ天国」には、このクサイロモウミウシもラインナップしている。
そこでクサイロモウミウシの卵と紹介しているものは、本文中でも触れているように、別のウミウシの卵である可能性が高い。
ではクサイロモウミウシの卵って??
彼らがついているテングノハウチワの表面をよく観ると……
サークル上に配置された小さな丸いツブツブの集まりが何個も見られる。
クサイロモウミウシの仲間は似たような形をしているものが多く、このテングノハウチワについているものがなんという種類なのかは不明ながら、これがこの種類の卵なのだろうか。
同じ仲間のカタツムリ同様雌雄同体のウミウシではあっても、自家受精できるわけでも単為生殖ができるわけでもないから、繁殖のためには相手が必要になる。
彼らウミウシは相手の這跡に残る「ナニか」を頼りに広い海の中で出会うことができるそうだから、1匹いるところに次の1匹が、そして次から次に……ということになっていくに違いない。
ウミウシ大集合は、実は「結婚を前提に…」じゃなくて、即繁殖前提の集団見合いなのだった。
2020年05月14日
梅雨のオタマサワールド。
2020年 5月13日(水) 晴れ
東の風 波あり 水温23度
梅雨が本気を出したと思ったら、たった1日で中休み。
おかげで朝からいいお天気だ。
で、朝のうちに海に行って帰ってくると、自粛LANが解除LANになっていた、ということは昨日「※追記」で触れた。
そのあと現場で作業をしている民間業者のスタッフから連絡があり(トラブルがあるたびの付き合いだから、お馴染みのヒト)、原因が判明した。
瀬底島にある中継用のアンテナの向きがずれていたそうな。
おそらく先日の豪雨時の突風のせいだろう。
これが台風だったら、アンテナは風見鶏のようにクルクル回っていたに違いない……。
古き良き昭和の時代には風に転がる映画もあったそうだけど、令和になってハイテク機器は風にクルクル回るのだ。
さてさて、海はこのところの大雨で本島の陸水由来の濁り水がドドッと押し寄せて来ていて、いつも潜っているあたりは5メートル下の水中ブイが見えないほどになっていた。
仕方がないので濁り水を避け、普段あまり行かないところに行ってみたところ、オタマサがこのようなモノを発見。
2センチほどの(おそらく)イロカエルアンコウ。
砂に埋もれかけの小さな石に生えているガヤに乗っかっていたそうな。
クマドリやイロといったカエルアンコウのチビチビは、このようなガヤの合間にいることがよくある。
先日のイロカエルアンコウ・チビターレが砂底で蠢く小さなクリーチャーを食べていたように、ガヤに潜むワレカラやエビなどを食べているのだろうか。
すぐ近くの根では、このような魚も発見していた。
この季節はサムネイルサイズのタテキン・チビターレが出始めるものなのだけど、このチビときたらゴマウツボの目と大して変わらぬほどの小ささ。
これは是非観てみたい……。
明日行こうっと。
こういったお馴染みのメジャーどころなら一般受けもしそうながら、オタマサワールドはそういうった方向には展開しない。
砂底をグリッド捜索し続けて……
産卵中のミズタマだかツノザヤだかのウミウシに遭遇。
そして……
キセワタガイ系のウミウシも産卵中。
ウミウシの卵といえば、クルクルと花のような形に産み付けられるものがメジャーながら、ウミウシの卵にはいろいろあって、このテのウミウシの卵はまったく違っている。
アップ。
こんな小さなツブツブから、いったい何が出てくるんだろう……
< そりゃウミウシでしょう。
こういったウミウシの産卵も、よく目にするといえばよく目にする。
しかし先日オタマサが水深25メートルほどの砂底で発見したクリーチャーは、水納島でのダイビング歴26年目にして初めての遭遇であろう、奇妙奇天烈なモノだった。
なんじゃこりゃ??
口径3センチのライトと比較したサイズはこんな感じ。
足元を観ると……
管足がズラリと並んでいる。
どうやらナマコっぽいこのクリーチャー、変態社会本のひとつである「ナマコガイドブック」には、ビンゴ!な写真は見当たらなかった。
普段お馴染みのナマコの知られざる幼体なのだろうか。
それとも、いまだ誰も知らぬ不思議的ナマコなのだろうか。
カエルアンコウの種類がわかるヒトは世に大勢いても、ナマコに詳しい方となると、お付き合いをご辞退申し上げたくなるほどの超絶変態社会の方かも…という世の中の偏見を恐れるあまり、その豊富な知識を白日の下になかなかさらしてはくれない。
しかしここは勇気を振り絞って、どうか哀れにも無知なる我々にご教示をお願いしたく………
出でよ、ナマコスペシャリスト!!
……ナマコじゃないですよ、なんて話だったらどうしよう?
とにかく正体テルアスプリーズ!
2020年05月13日
自粛LAN。
2020年 5月12日(火) 豪雨のち午前中薄日のちずっと雨
南西のち北東の風 波あり
やる時はやるんです!とばかりに、梅雨が本気を出した。
前日同様未明から降り始めた雨はやがて豪雨になり、朝にはいったん小康状態に。
このまま曇り空のままになるか?という期待もむなしく、昼前からポツポツ来たかと思うと、その後は一気に土砂降りになってしまった。
どうやら南海で台風1号になろうとしていた熱帯低気圧が、前線のエネルギー供給源になっているようだ。
その熱帯低気圧も、パワーアップして台風1号に。
遅まきながらの今季1号、はたしてその進路は??
あら?
来るの??
5月にしては異様な勢力で沖縄近海まで達しそうな気が……。
さてさて、そんなお天気だったので、曇り空のうちにカメさんのエサ採りに出向いていた。
島内にクワの葉がたくさんあるといっても、毎日のことなので連日同じところを回るわけにはいかない。
そこでこの日は学校方面に行ってみた。
グランド脇に小ぶりなクワが何本か並んでいるので、それを目当てに歩いていると、驚いたことにかつての校長住宅から例の音が聴こえてきた。
例の音とは、昨日紹介したコゲラのドラミング音。
つい先刻我が家のすぐ裏手から聴こえていたから、まだ居るんだコゲラ…と思ったばかり。同じ鳥がこちらにも来て出張しているのだろうか、それとも別に縄張りを持つコゲラがいるんだろうか。
というか、そもそもこの音がコゲラのドラミング音である、というのはまだ推測の域を出ていないから、ここはひとつ音の正体を突き止めてみよう。
コゲラの習性的に、ドラミングするならあの木に違いない。
…と目をつけたのは、幹や枝を大幅に伐採されて葉もなくなっている、旧校長住宅敷地内の1本の大木。
グランドからソーッと近づいてみると………
いた!
気分よさげにドラミングしていた。
このところ聴こえていたのはまさにこの音、正体はコゲラのドラミング音で間違いなし。
昨日も触れたようにコゲラは以前に1度だけ観たことがあるのみで、それも3年前のことで、束の間の滞在だった。
こんなに長期間島にいたことなど、かつてあったのだろうか。
このところの狂奔的不動産土地バブルの本部町内のこと、野山という野山が切り崩されてしまい、実は彼らも生息地を追われているのかもしれない……。
ところで、キツツキ類が木をつついているのは、穴をあけてその中にいる虫を食べるためだけと思われがちだけど、彼らのドラミング音には囀りの代用という意味合いもあって、縄張り主張のために木をつついて音を鳴らすのだそうな。
曇り空の下でフツーにドラミング中の様子を撮ると、頭がまったく静止しない画像になるほどのピッチの速さだ。
コゲラの尾はかなり強靭だそうで、この尾と脚の3点でしっかり足場を固めているからこそ、頭部を好きなだけ高速に動かせるらしい。
それにしてもこんなに小さな鳥が、よくもまぁこんなに音を響かせるものだ。
このドラミングの音、みなさんにもお聴きいただけたらなぁ……
あ!
動画で撮ればいいんだ。
というわけで動画撮影。
ただでさえ酒が切れていると手が揺れるというのに、高倍率ズーム状態だから片手持ちなんかだとマグニチュード9級の揺れになる。
そこでなるべく揺れないようにちゃんと両手で持ち、1日に使える集中力のうち92パーセントをも注いで、なんとかドラミングの様子を動画で撮ることができた(それでも揺れる)。
不思議なことに、あれほど高らかに聴こえていたドラミングの音なのに、動画を再生すると風の音のほうが大きく聞こえる。
やはり色合い同様ヒトの耳も脳内変換されるのか、そもそも指向性能が高いのか、ドラミングはその場で実際に聴いているほうが遥かに大きな音のようだ。
ともかく、あとはこの動画を変換してアップロードするだけ。
ところが。
おそらくはおりからの豪雨とこのあとの激雨が祟ったのだろう、本部町が誇る無線LANブロードバンド、いきなりの沈黙状態に。
なんとなくアヤシゲな素振りを見せつつも、このところはフツーにネット上の映画を観られるほどにずっと安定状態だったのだけど、ダメージが雨とともにオーバーフローしてしまったのだろうか。
雨が降ると使えないだなんて、BSアンテナなみのハイテクだ。
夜になって雨が止むと、超絶ナローバンド状態ながら青息吐息で通信はできているものの、このまま放置されると、来たる台風でどうなってしまうんだろう?
その前に完全復活してもらえればいいけれど、この日昼過ぎに役場の担当部署経由で業者に連絡を取ってみたところ、この日は他の作業に追われているため、明日朝には瀬底島に赴いてチェックを、とのこと(瀬底島に中継設備があるため)。
瀬底島の設備でどうにもならないとなると、原因は水納島内にあることになる。
減便運航中の現在、島に日帰りで来るとなると朝8時30分の便に乗るしかないんだけど……はたしてそこまでしてくれるんだろうか?
コロナ禍自粛解除の動きがジワリと出始めているおり、本部町役場の離島振興無線LANブロードバンドは、逆行して「自粛」の道を選んでしまったのだった。
※追記
朝1本潜って帰ってくると、自粛LANが復活LANになっていた。
瀬底での処置がうまくいったのだろうか。
それとも晴れているから何かが乾いたからだろうか。
ともかく動画のアップロードが可能になったので、どうぞ(20秒ほどです)。
2020年05月12日
ドラミング。
2020年 5月11日(月) 雨のち晴れ
南の風 やや波あり
夜中に降り始めた雨は、時に豪雨となって夜通し降っていた。
しかし気象台が大好きな「平年」からの遅れが目立ち始めている今、このところお馴染みになってきた沖縄地方よりも早い奄美地方の梅雨入りということもあって、沖縄気象台は待ってましたとばかりに沖縄地方の梅雨入りを宣言。
すると、たちどころに雨は去り、空は晴れ渡るのだった。
雨が止むと、あちこちから鳥さんたちの囀りが聞こえてくる。
鳥といえば。
ここ10日ほど、裏のキヨおばさんの家のさらに向こうから、朝から夕までずっと鳴き声のような妙な音がしていた。
ほとんど同じ場所から聴こえているところからして、雰囲気的に鳥が巣作りでもしているかのような。
サギ類が喉の奥で震わす声なのだろうか、それともカラス??
しかしどちらもこんなところで巣作りするようなタイプではない。
いったい何の音なんだろう?
…と、ずっと気になっていたものの、長らく正体不明のまま。
で、この日の朝。
うちの鳥さんたちをデッキの上で遊ばせていたオタマサが、キヨおばさんの庭のカニステルの木の天辺付近に止まっている野鳥を指さし、コゲラではないかとのたもうた。
肉眼じゃ逆光なのと遠すぎるのとで正体がわからないから、さっそくジョニーで撮ってみた。
おお、ホントにコゲラだ。
コゲラはキツツキ界最小の種類で、スズメとほとんど変わらない大きさの小鳥だというのに、よくもまぁ逆光状態&遠目でコゲラだとわかったなぁ……。
一般的人智の及ばぬところでたまに冴えを見せるオタマサである。
水納島でコゲラの姿を観るのは2度目で、しかも前回止まっていた木とまったく同じ。
でも前回観たコゲラと比べると、羽毛の具合いや尾羽の感じがシャキッとしていない。
巣立ったばかりくらいの幼鳥なのだろうか。
それとも、巣穴で子育てしているものだから、羽毛がクシャッとなっているのだろうか(しきりに羽繕いをしていた)。
そこで…だったら鋭かったのだけど、あいにく血の巡りが悪いので、それから30分くらい経ってカメさんたちのエサを採りに行こうとしたときに「ハタ」と気がついた。
ずっと気になっていた「謎の音」って、実はコゲラのドラミングの音だったんじゃ???
コゲラはキツツキの仲間だから、キツツキと同じく木の表面を嘴で連打する。
幼鳥が巣立つまで雛を育てていたのだとしたら、親はいろいろと忙しかったことだろう。
ドラミングだってひっきりなしだったに違いない。
このところ日中ずっとといっていいほど聞こえてきたこの音、不思議なことにこの朝姿を観てからしばらくは、全然聞こえなくなっていた(聞こえないという「異変」があったからこそ、ワタシはようやくその音がドラミングであることに気がついたのかも)。
というか、例年だとゲストの有無にかかわらずこの時期にこんなにゆっくり家で過ごすことがないから、我々が今まで気づいていなかっただけなのか、それとも今年は例年になくこの時期に島全体が静かだからコゲラが安心して島に子育てに来たのか。
スズメがやけになれなれしくなっていたり、カラスが躊躇なく敷地内を飛行したりするようになっている今年の「異例」に鑑みると、コゲラもコロナ禍自粛中だからこそ、なのかもしれない。
さて。
謎の音モンダイが解決してスッキリしたところで、このところ小刻みに進めていた作業のフィニッシュを。
これ。
外塀の飾りつけ、額縁アート。
以前もこのようにしてあったのだけど、度重なる台風その他で傷んでしまったため撤去し、そのままになっていたところに再び。
適当な端材が揃ったら作ろう…と思い続けて早5年、今回ガメ公の柵改築に際してほどよく木材が余ったので、ようやく手をつけることができたのだった。
間近で見るとアラが目立つんだけど(なんでちゃんと45度に切れないんだろう……)、こんな感じ。
最初の台風で吹き飛んでしまわないことを祈ろう…。