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2023年06月30日
ハチのひと仕事。
2023年 6月29日(木) 晴れ夕方ほんの少し雨滴
南の風 波あり 水温27度
今日の海、特に午前中は、実に快適なひとときを過ごすことができた。
ひょっとしたらこの先当分の間見納めになるかもしれないから、目と体中に焼き付けておいた。
まったく話は変わる。
蜂の巣といえば、ミツバチやスズメバチに代表されるように、すべて彼ら自身で作り上げた造形物を思い浮かべる方が多いはず。
でも多種多様なハチの仲間には、そこらにある穴ポコを利用するものもいる。
彼らにとって適度な直径の穴ポコであれば材質はほぼ問わず、草刈り機や原付バイクの排気ガスの出口も格好の穴ポコになる。
しばらく使わずにいた草刈り機や原付のエンジンを掛けようとすると、プスンプスンいうだけでまったく掛からない…という場合、このオキナワドロバチの巣作りが原因というケースがちょくちょくある(田舎の場合)。
木材に開いている穴ポコも、彼らの格好の物件になる。
木材のそのままの厚さでは木ネジの長さが足りないから、ほどよくなるようある程度穴を開けてネジ留めしてある部分。
こういうものは、マメな方ならちゃんとフタをして見栄えを良くするものなのだろうけど、面倒くさいのでそのままにしてある。
ところがそれを見かねたのか、ハチがちゃんとフタをしてくれる(画像の色味は異なるけれど同じ木材です)。
ジガバチ系のハチが、雨が避けられるコンクリートの壁に登り窯のような巣を作る様子は何度も観たことがあるのだけれど、エグゾーストノズルに悪さをするものと同じ種類と思われるこの巣穴の主の姿を、そういえばこれまで目にしたことがなかったような…。
この完成している巣穴のすぐ下に、↓このような状態になっている穴ポコがあった。
おお、すでにイモムシたちがたっぷり詰め込まれている。
イモムシはハチによって麻痺させられているので、この状態でも逃げ出せない…
…はずなんだけど、床を見てみると数匹落っこちていた。
ん?
…と疑問に思っているところへ、ハチ登場。
ん?
これは他のハチの巣穴を壊して、中のイモムシを横取りしているのだろうか?
それにしては、去ってはまたやって来る…を繰り返している。
やがて、巣穴の様子が変わっていることに気がついた。
穴ポコの縁にそって泥が盛られている!
そうか、このハチこそがこの巣穴の主だったのだ。
このハチは(おそらく)オキナワドロバチという種類で、このようにどこかから土をもってきては自ら泥を作り、それを左官職人よろしくコネコネしてフタを作る。
床に落ちていたイモムシは、麻痺の度合いが低いものが蠢くうちに落っこちたのだろう。
穴ポコにはこのハチの卵があるはずで、孵化した幼虫はその場ですぐさまエサにありつける、という寸法だ。
そんなオキナワドロバチのフタ作り職人ぶりを動画で…。
↑これはまだ途中まで。
続いての作業で、ついに穴ポコは閉ざされる。
閉ざすだけでは終わらず、泥が穴ポコのスジ切り一杯になるように盛り付けるオキナワドロバチ。
そして…
完成!
ものぐさ太郎が放置していた穴ポコを、見事に塞いでくれたオキナワドロバチなのだった(でも幼虫が羽化して外に出てきたら穴はまた開きますが…)。
2023年06月29日
紅白濁合戦。
2023年 6月28日(水) 晴れ時々にわか雨
南の風 波ありのちおだやか 水温26度~27度
このところの傾向に拍車がかかり、今季はアジサシたちの飛来数が目に見えて少ない。
ただし、6月のうちは日帰り客が少なかったからだろうか、朝夕などに海水浴場の砂浜でアジサシたちが戯れているシーンが観られた。
以前は当たり前に観られた「砂浜のアジサシ」ながら、近年は頻繁なジェットスキーの往来等で居心地が悪くなったからだろう、桟橋から見渡せる範囲の砂浜の上にアジサシが佇んでいる様子などそうそう観られなくなっていた。
居心地悪くなってるよ、という先達からの情報が伝わっていない集団が来ているのだろうか?
でもせっかく来てくれているその集団も、今季でかなり懲りることになるはず。
この日水納班班長から伺った公式情報によると、6月30日に作業台船が入港し、7月3日(月)から浚渫作業が開始されるとのこと。
一昨年に続き、この3年間で2度目の真夏の浚渫…。
予定では2ヶ月ほどの工期を見込んでいるというこの第1回泊地拡大浚渫工事なので、沖縄が最も輝く「夏」の間を通じて、ビーチのすぐそばに巨大な作業台船が鎮座することになる。
北部土木事務所都市港湾班によると、浚渫中には土砂はまったく外に流れ出さないようにする、などと謳っていたけれど、机上とフィールドでは事情がまったく異なるのはみなさんご存知のとおり。
北部土木事務所都市港湾班がいう砂泥流出防止技術が実際にどの程度のものかまったく不明なので、朝から夕まで連日ガッシャンガッシャンと騒音が響き渡るのもさることながら、風向きや潮の加減によっては、リーフ際その他のエリアがたえず白濁しているということになるかもしれない。
ちなみに水納港大改修工事は、本年を含め4年の工期で計画されているので、今年以降しばらくの間、港はずっと「工事現場」になることになる。
せめてそのような工事は冬場に集中してくれればいいものを、もはや狂気の沙汰としか思えない真夏の浚渫。
アジサシたちにとって、水納島が繁殖に適した島だった日々は、これで終わりを告げることになるかもしれない。
なお、浚渫区域は待合所方面へと続く海岸にも及ぶため、海岸にはデカデカと工事現場につきものの看板が並ぶことになるもよう。
もちろんのこと重機稼働中はそちら方面に散歩することができないから、事実上桟橋から灯台の先まで続く長い砂浜は立ち入り禁止区域になるらしい。
重機が稼働していなければ入れるのか、土日祝日は作業をしないのかなど、細かいところは依然不明だけど、島を訪れるお客さんたちにとって、これがどれくらいショックなことか、なんてことなど1ミリも顧慮してはいない北部土木事務所都市港湾班。
なんだかもう、お隣の大陸の政党が推し進める国家政策なみの容赦なしぶりだ。
この「公共」工事を行うのは、日本国内で観光立県を謳う地方行政史上空前絶後に最低レベルな民度を維持してやまない北部土木事務所なので、お腹立ちや哀しみやザンネン感の矛先は、すべて北部土木事務所都市港湾班に向けてください。
さてさて、海が白く濁ることを危惧していたら、名護漁港では真っ赤に染まっていたので驚いた。
沖縄タイムス
オリオンビール工場から、冷却水が流れ出たためだそうな。
さっそく「人体には影響がない」なんて話で押し通そうとしているけれど、いきなり赤く染まった漁港を見たおじいやおばあが腰を抜かして引っくり返って腰椎骨折、もしくは心臓が止まっているかもしれない。
そもそも「人体に影響はない」って、そりゃあなた、濃度によるんじゃねーの?
水で薄まれば「ヒト」には大丈夫でも、他の様々な生物には多大な影響があるのは間違いない。
でもこれ、赤いから即座に何かが漏れ出したってことがわかるからいいものの、無色透明なら誰も騒がなかったはずで、オリオンビールも知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいたかも。
というかひょっとすると、事故を装って海に流しちゃったほうが、廃棄冷却水をキチンと処理するよりも圧倒的に安上がり…ってことだったりして(漁協にはオリオンビール1年分くらいで話をつけて)。
巷間には悪評が立つとはいえ、ケンミンなんて3日もすれば三ツ星掲げてアリ乾杯!ってやってるのだろうから、キチンと処理する費用に比べれば、悪評被害など微々たるもの。
あ、その手があったか!
とばかりに、政府も放射能汚染水を「事故」で海に流し始めるかも…。
いずれにせよオリオンビールでさえこうなのだから、米軍基地から何が流れ出ているかなんて話になったら、エリン・ブロコビッチが訴訟を1万件くらい起こせるほどなんじゃなかろうか。
近年になってようやく騒がれている有機フッ素化合物、いわゆるPFASなんて、おそらく氷山の一角でしかないのだろう。
知らない間に何にさらされているんだかわかったもんじゃないニッポンにあっては、水が砂や泥で白濁するなんてことは屁でもない?
そんな白濁の日々がやがて訪れることなど知る由もない海の中の生き物たちは、今日も元気に暮らしていた。
水納島の砂底の海には、わりと深いところまでミドリイシ系のサンゴが育つのだけど、そのサンゴにデバ(アオバ)スズメダイが群れるということはまずない。
せいぜいリーフ際の浅いところまでが、彼らの主生息域になっているのだ。
もちろん何かの拍子で流れ着いたチビたちが、深いところで育っているサンゴに住み着くことはあっても、やがて彼らが育って群れになる、なんてことはない。
ところが数年前から、水納島では異例といっていい水深に育っているミドリイシに、デバ(アオバ)スズメダイの若魚の姿が目立ち始めてきた。
フタスジリュウキュウスズメダイの群れに混じっている程度ながら、この調子でここを根城にしてくれれば、さらに増えてくるかも…。
そして今年、そのサンゴのデバ(アオバ)スズメダイは、こういうことになっていた。
これで砂底に死サンゴ石がゴロゴロしていなければ、座間味かどこかの海中景観みたい。
ワタシの力及ばずこの程度にしか撮れなかったものの、実際の見た目はもっと涼やかで、これからの季節にはとっておきの納涼ポイントになることだろう。
そんな涼やかな様子を動画でも、と思い立ったところ…
デバデバヒーリングだったはずが、ギチベラハンティングになってしまった。
ちなみに早々に退場したかのように見えるギチベラは、実はサンゴの下に潜んでいて、裏側から枝間に潜むデバデバを狙っていた(
後半にまた出てきます)。
このようなプレデターにずっと狙われ続けるのだもの、よっぽど高い生産量じゃないと、デバ(アオバ)スズメダイがこの数を維持するのはキビシイ。
はたして今季限定の納涼ポイントとなるか、この先ずっと続くのか。
デバ(アオバ)スズメダイのがんばりに期待しよう。
2023年06月28日
つのとんぼ。
2023年 6月27日(火) 晴れ
南の風 波あり
再び4日間に渡る実入りのあるシゴト期間を終え、心身ともに疲労困憊してから迎える休日は格別の感あり。
そして一週間ぶりに本島まで買い物に。
買い物だけならすぐに済ませてとっとと帰ってこられるところながら、たまにしか出られないとなると秘密基地にも空気を通してあげたいから、所用を済ませた後は窓全開放状態でひたすらのんびりした。
疲れた体に昼寝が心地いい。
一方どういう状況であれ常に何かしらゴソゴソするオタマサは、せっかくの好天に居ても立ってもいられず布団を干していた。
にわか雨の心配皆無のお天気だったから、出掛ける前に干しておけばかなり長時間太陽エネルギーを蓄えることができる。
で、それらを取り込んでいた際に、オタマサはこんなクリーチャーと遭遇した(以下の写真、撮影:オタマサ)。
手塚治虫の超名作「火の鳥 復活編」に出てくる重要キャラ・チヒロのアンテナのような触角にピンと来た方は、そうとうな昆虫少年少女といっていい。
この3センチほどのクリーチャーはツノトンボの仲間の1種で、オキナワツノトンボという(これはメスの翅の色)。
トンボという名がついてはいても、実はトンボの仲間ではなく、ウスバカゲロウの仲間といったほうがより正確らしい。
ウスバカゲロウを薄馬鹿下郎と読んでしまうノット昆虫少年少女は知る由もないだろうけど、ウスバカゲロウの幼虫といえば、ご存知アリジゴク。
幼虫はオトナとは似ても似つかない砂の惑星デューンに潜んでいそうな姿形ながら、サイズは1センチほどのチビチビで、サラサラ系の砂にすり鉢状の窪みを作り、その中央部に潜みつつ、砂のすり鉢の落とし穴にはまる獲物を待つという、昆虫少年少女にはたまらなく魅力的なクリーチャーだ。
そのウスバカゲロウの仲間ということは、ツノトンボ類の幼虫もやはり…?
ちょこっと調べてみると、案の定アリジゴクどころではなく、腐海に蠢く巨大クリーチャーばりの姿形だった。
まぁ考えてみればヤゴだって相当腐海の住人系クリーチャーではあるけれど、なんといってもアゴの開き具合いがヘビケラ的に不気味だ。
それに比べれば極めてフツーに見えるオトナながら、トンボではないから、止まっている時の翅のおさめ方も、横に広げるでもなく体の上で閉じるでもなく、お腹の下でピト…と閉じている。
そして止まっている様子は、なんだかコンクリートを食べているんですか?的な身の寄せ方。
こんなクリーチャーを人生で初めて目にした日には、珍しくオタマサがカメラ片手に炎天下の下に再び戻る気になるのも無理はない(その存在も名も知ってはいたけど、人生初遭遇だそうな)。
その名も存在も知らぬワタシも、これがいつものように朝のひとときに庭の片隅でのことなら、ただちに「なんだなんだどしたどした?」とばかりにお姿拝見に駆けつけるところである。
けれどいかんせん4日間に渡って蓄積した心身の疲労が、ワタシの豆腐脳から好奇心を奪い去っていたのだった。
たとえ実入りはあろうとも、肝心なところで体を動かす気になれないだなんて…。
やはりシゴトなどしている場合ではない。
2023年06月27日
CHU!
2023年 6月26日(月) 晴れ
南の風 波あり 水温24度~27度
梅雨明けの南風が吹く爽やかな夏空。
これで小潮ともなれば、海中は1日中美しく青きドナウ…
…のはず。
ところが昨今は南風が少々吹いているだけで、干潮に向かい始めるとリーフ内の濁った水がリーフ外に溢れだし、シュトラウスのドナウは21世紀のドナウ川になってしまう。
なんでこの程度の風でこれほど濁ってしまうのかといえば、ほかでもない、数年前のプチ浚渫工事の際に、泥質成分込みで掘り出した砂をすべてカモメ岩の浜に移してしまったから。
環境アセスを行ったジジツなど1ミリもなく、場当たり的にその場しのぎの低予算解決法としてカモメ岩の浜に移された大量の砂は、1年ほど経ってほとんど跡形もなく消え去ったように見えるけれど、かなり大量の泥混じりの砂がリーフ内に留まっているはず。
その泥成分が、南風の際には桟橋側のリーフの外にダーッ…と流れ出てしまうのだ。
一方、一昨年の真夏にも行われたキチガイ沙汰の港の浚渫工事の跡にも、剥き身状態でさらされている泥混じりの砂がある。
これらは潮の動きに合わせ、航路からジワジワと外に流れ出す。
そのため以前はあり得なかったタイミングで、リーフ上からリーフ際、そして海面が白濁する。
海の酸性化だ、温暖化だとただでさえ負担が大きくなっている島の海中世界は、ここ数年の人間の活動によってさらにマイナス方向への傾斜に拍車がかかっているのだけれど、そこにトドメをさすかのような、水納港の大改修工事の始まり始まり…。
かつて「水納ブルー」とも呼ばれた美しき青き海の世界は、おそらくこのまま過去のものとなるだろう。
さて。
先日この稿でも産卵シーンを紹介したマナベベラは、メスもオスも基本的に地味だから、リーフ際で潜っていてわざわざ注目するヒトは少ない。
でも幼魚となると、なんだか知らないけれど気になる魚としてけっこう目にされているのではなかろうか。
なんだか知らないけれど気になる魚のひとつ、マナベベラのチビはこんな色をしている。
この季節になると出始めてくるチビチビで、これで15ミリほど。
なりは小さいんだけど、サンゴやイソギンチャクの上でクネクネとかなり目立つ動きをしているから、夏場に潜っているとたいてい目の端に入るのだ。
なんでわざわざ目立つ動きをしているかというと…
…他の魚をクリーニングするから。
「お役に立ちまっせ!」とアピールすることによって、他の魚から攻撃されるリスクを激減させることができるのである。
これまた先日紹介したミヤケベラもマナベベラと同じマナベベラ属の魚で、クライアントに対する施術法は似ている。
ただしどちらもその口元は…
…いつもセクシーリップ(写真はマナベベラの若魚)。
サンゴのポリプをチュウチュウできるように特化しているようなのだけど、こんな口で他の魚のクリーニングなんてできるのだろうか。
それともクリーニングをする子供の頃は、口元が異なるのだろうか?
15ミリほどのチビターレをチェックしてみると…
やっぱり「CHU!」だった。
オトナと違ってまだ口周りが柔らかく、この口で「CHU!」とされる魚はなにげに気持ちいいのかな?
2023年06月26日
仕太刀打太刀。
2023年 6月25日(日) 晴れ!
南の風 波あり 水温24度~27度
梅雨明け!
あけおめ。
数日続いた豪雨の日々で水温が若干下がった際は、グンと湧き始めた小魚たちの増加スピードがガクンと落ちて、むしろ急速に減ってしまった感があった。
やはり1度程度の水温差でも、魚たちの代謝には大きく影響するのだろう、不活発になった途端に次々にハントされたに違いない。
ところがこのところ太陽が圧倒的に優勢になってきたおかげで、再び水温は上昇傾向。
そしてまた一気に小魚が増えてきた気がする。
そんな盛り上がりを過敏に察知するのだろうか、ヘラヤガラが真昼の決闘状態になっていた。
以前も紹介したことがあった気がするけど、もう少しちゃんと撮れたので再び。
この動画の1分48秒くらいのところで聴こえる「ゴンッ!」って感じの音は、ヘラヤガラが発しているもの。
相手に頭突きを喰らわせた衝撃音なのか、海中ではかなりハッキリクッキリ聴こえた。
ヘラヤガラがこのように儀式的に仕太刀打太刀の役割をかわりばんこにする様子は、夏場になるとちょくちょく見かける。
ところが昨年は、お互いが向き合った状態で、まるで剣豪対決のようになっていた。
とはいえ何も得物を手にしていない彼らの場合、自らの体を剣にしてのチャンバラになる。
切っ先(アゴの先)をチョンチョンと重ね合わせたかと思うと、お互いを切り合うかのような動きでヘラヤガラがチャンチャンバラバラ!
かなり激しく長く面白いシーンだったというのに、眺めるだけで終わってしまった…。
今回もそれを期待して観ていたところ、残念ながらそこまでには至らなかった。
通常は体にこれといった模様は無く、カモフラージュモードになると体に沿ったタテ縞が出てくるヘラヤガラは、興奮モードや対決モードになると、動画にあるようなヨコ縞が現れる。
このヨコ縞モードになっている2匹がいれば、剣豪対決拝見のチャンス。
滅多に観られないヘラヤガラのチャンチャンバラバラ、巡り会った際には夢お見逃しなく。
2023年06月25日
摂れないギンポ?
2023年 6月24日(土) 晴れのちやっぱりにわか雨
南の風 おだやか 水温24度~26度
本日も朝から梅雨明けを匂わせつつ、昼前からまとまった雨がザー…。
今年の梅雨の腸内ガス、まだ出きっていないらしい。
でもどうやらそろそろ梅雨明けしそうで、週間天気予報でもオレンジのマークがズラリと並んでいる。
いよいよ夏本番!
…というタイミングで、悲しいお知らせが。
先だってお伝えした、狂気の沙汰の真夏の浚渫工事、6月の半ばもしくは下旬くらいから始まるという説明だったけれど、ここまでその気配がまったく無かった。
ひょっとして予算が消えて計画がおじゃんになったかな?
…と期待していたところ、昨日は浚渫用らしき測量をしている気配が。
未確認情報ながら、水納島まで日帰りで営業をしにくる本島の業者さんによると、今月29日もしくは30日あたりから作業台船が入ってくる予定なのだとか。
いよいよ夏本番、そして沖縄の海が最も輝く格別の季節に、あえて工事を行う北部土木事務所に乾杯。
ホントにもう、つくづく沖縄の行政には愛想が尽きた。
さて。
オタマサが↓こういう写真を撮っていたのは先週のことだった。
撮影:オタマサ
なんの変哲もないオウゴンニジギンポ…と思ったら、このギンポ、尾ビレがまるまる欠損してしまっているではないか。
何が原因か知らないけど、オウゴンニジギンポといったらその牙に毒があるから、他の肉食魚はおいそれと手を出せない…ということもあってイナセギンポがそっくりさんになる意味があるはずなのに、無謀にも尾ビレを奪うほどのアタックをかける猛者がいたとは。
その猛者、返り討ちに遭っているのだろうか?
それはともかく、砂底や岩肌にいる何かをダッシュしてゲットする食事の摂り方をするオウゴンニジギンポのこと、尾ビレが無いんじゃ、かろうじて泳ぐことはできても、ダッシュができないんじゃ?
それじゃあさすがに長生きはできないだろうなぁ…
…と思いきや。
一週間後に再訪してみたところ、健気にも頑張り続けているハンディキャップギンポの姿があった。
しかもただ泳いでいるだけではなく、ちゃんと食事もしているようだ。
似非ヒューマニズム全盛の世の中だから、「飛べないホタル」に倣って「摂れないギンポ」なんて童話にしたら、一杯のかけそば級に大ヒットになるかも…などとほくそ笑んでいたというのに。
ハンディキャップをものともせずしっかり食事をしているギンポによって、ワタシの野望はたちまち霧消したのだった。
2023年06月24日
ひねもすのたりのたりかな。
2023年 6月23日(金) 晴れのち豪雨のち晴れのち雨のち晴れ
南西のち北のち南の風 おだやか一時波あり 水温25度~26度
これはもう梅雨明けかな?
と誰もが感じる爽やかな朝。
このまま一気に夏モードに突入だ…
…と思いきや、昼下がりからにわかに真黒い雲が伊江島を覆い隠し、ジワジワ東に向かって広がってきた。
それまでのおだやかな南風は一転、冷たい北風が吹き始める頃には雨がポツポツ、やがて本降りに。
ちょっとしたにわか雨かな…と高をくくっていたら、なんてことだ、とてつもない豪雨になってしまった。
線状降水帯ならぬ点状のピンポイント爆撃のような集中豪雨で、我が家の庭はすっかり水浸し、カメさんたちの家はそれぞれ床上浸水になっていた。
梅雨の腸内にはそうとうガスが溜まっているようで、最後っ屁がなかなか終わらない…。
そんな豪雨になるなどとはつゆ知らずのんきに潜っていたところ、春からこっちずっと活発に繁殖活動を繰り広げているニセネッタイスズメダイが、面白いところに産卵床を拵えていた。
大きめのシャコガイの殻の内側を自慢の産卵床にしているオスが、興奮モードカラーになってメスを誘い込んでいるところ。
メスにはデバスズメダイやアオバスズメダイのようなクッキリハッキリした輸卵管は見えないんだけど…
…ソラスズメダイの仲間たちってのは、わざわざ輸卵管や輸精管を外に出さないんですかね?
興奮モードになってメスを産卵床まで誘導するオスに導かれ、シャコガイの殻の内側に入っていくメス…という図式の途中には、こういうシーンもあった。
なかなか激しい三角関係が展開中の模様。
そんなシャコガイ産卵床の内側にはタマタマが…
…といいたいところながら、このツブツブがホントにニセネッタイスズメダイの卵かどうかはよくわからない。
ともかくそんな自慢のシャコガイ産卵床を守り続けるニセネッタイスズメダイの父ちゃんなのだった。
ニセネッタイスズメダイは早春から繁殖モードに入っているので、今の季節になると死サンゴ石がたくさん転がっている海底に、ニセネッタイスズメダイのチビターレがわんさか集まっている。
一方、6月も半ばを過ぎてようやくチビチビが目立ち始めるスズメダイたちもいて、そのひとつがこちら。
ヒレナガスズメダイ・チビターレ。
先月はまったくいなかったから、その繁殖期もやや遅めのスタートなのだろう。
リーフエッジ付近に集まるスズメダイたちは数多く、多くの種類が春先から早くもチビチビが姿を見せ始めるのだけれど、ヒレナガスズメダイ同様登場が遅かったのがこちら。
オトナに比べるととっても美しい、フィリピンスズメダイ・チビターレ。
他のスズメダイ類のチビたちが出始めていてもなかなか姿をみせてくれなかったフィリピンスズメダイのチビチビが、このところようやくたくさん観られるようになってきた。
もっとも彼らの場合、オーバーハング下の暗がりなど陰になっているところに集まる傾向があり、そういうところにいるダークブルーは黒っぽく見えるから、おそらく多くのダイバーにスルーされていると思われる。
この魅惑的なブルーはオトナでは味わえない色味だから、チビチビがたくさんいるうちに是非。
あ、でもライトやストロボを真横から当てると、魅惑のダークブルーは↓こういう色になるのでご注意を…。
「こっちのほうがいい!」という方は、どうぞストロボを真横から当ててください。
とまぁこんな具合いに季節によって観られたり観られなかったりするシーンがいろいろあるスズメダイ類とは違い、「夏の海 ひねもすのたり のたり哉」的に、いついかなる時も変わらぬ姿を見せてくれるのがこちら。
ご存知ハダカハオコゼ。
彼らはその名のとおり枯葉や千切れ藻のごとき細いボディをしていて、枯葉が波に揺られているかのようにユラリユラリしている。
そのため上の動画でそばを通りかかっているクチナガイシヨウジのチビも、そこにオコゼがいるなどとは夢にも思っていないかもしれない。
ところでこのハダカハオコゼのユラユラ、うねりに身を任せてユラユラしているだけのように見えるけれど、よぉ~く観ていると、実は能動的に自らユラリユラリと身を動かしている気配がある。
ハダカハのユラリユラリとそばで定位しているキンセンイシモチの動きはまったくマッチしていないし、移動する際にもハダカハオコゼはユラリユラリと身をくねらせている。
おそらく彼らのユラリユラリは、日常的な身の動かし方なのだろう。
ときおり見せてくれるアクビを除き、年がら年中ユラリユラリしているだけのようなハダカハオコゼにも、ときにはこういうドラマがある。
これは3年前のGWのことだったのだけど、繁殖にまつわるように見えるこういったシーンは、梅雨前後の時期に限定されているのだろうか?
2023年06月23日
激レアチビターレ。
2023年 6月22日(木) 晴れのち雨
南西のち西の風 うねりあり 水温25度~26度
今日もいいお天気!
…という朝のひとときだったのに、昼前からにわかにくもり始めた空は、午後になって梅雨の最後っ屁的に盛大な雨となった。
梅雨前線はまだしつこく沖縄本島近海に横たわっているらしい。
午後の雨には閉口したけれど、朝早めはむしろいいお天気だったので、チャンスとばかりに海へ。
この季節は様々なチビチビと出会える海の中、それでも今月初めまでは激チビだったオウゴンニジギンポなどは、みな成長してフツーのチビになっている。
繁殖期が長ければともかく、限られた時期にだけ産卵~孵化している魚たちのチビチビの場合、その旬はとても短い。
トゲサンゴの枝間に住まうアカネダルマハゼも、このごろようやくアカネダルマハゼと認識できるサイズのチビチビになって、トゲサンゴの枝間で観られるようになってきた。
オトナになると顔中ヒゲモジャになるアカネダルマハゼも、チビターレの頃はパーフェクトフェイスケア。
ウミウシたちのチビチビも春からこの時期くらいにかけて多く観られ、数種のウミウシのエサとしてその身を捧げているクマデコケムシをチェックしてみると…
…ウミウシたちが一所懸命に食事中だった。
先日オタマサは他の場所でもっと小さいこのテのウミウシが4匹ついているのを目撃していて、2日後に再訪してみれば、クマデコケムシは芯棒だけになっていたという。
ウミウシたち、なにげにアオムシなみの大食漢なのかも。
ちなみに上の写真の3匹のチビチビウミウシは、一見したところ同じ種類が3匹いるように見えるけれど、実は2種類いる。
1種類はお馴染みのツノザヤウミウシ(上の写真では左下)。
他の2匹は…
…コソデウミウシ。
どっちも同じフジタウミウシ科に属すウミウシだから似ていて当然なのかもしれないとはいえ、暮らしぶりも色柄もここまでそっくりということは、何かヒミツがあるのかも。
魚たちならこういう場合、一方がもう一方のマネをすることによって利益を得ている、と考えられるのがもっぱらだけど、この両者の場合はどうなんだろう?
単にクマデコケムシを食べていたら、勝手にこういう体色になってしまうとか?
水納島の場合ツノザヤウミウシとの遭遇率のほうが高く、コソデウミウシはどちらかというとレアな種類になる。
なのでこの時期によく観られるツノザヤウミウシと出会い、「またツノザヤウミウシか…」とひとつひとつの出会いをぞんざいにしていると、貴重なコソデ遭遇体験を自らスルーすることになるかもしれないのでご注意を(特にクラシカルアイの方)。
そのほか白い砂底には、連結パリーダの姿もあった。
ひところは図鑑が出るたびに和名が変わっていた、パリーダことクロヘリシロツバメガイ。
今2匹でいるということは、このあとヒミツの場所でヒメゴトが始まるのだろう。
それにしても、パリーダというと出会うのはたいていオトナサイズで、小さいモノでもせいぜいオトナより2周りほど小さい程度。
ツノザヤウミウシなどのような激チビに会ったことが一度もない。
いったいどういうところにいるんだろう、激チビパリーダ。
魚の場合でも、オトナにはよく出会うけれど幼魚の姿を見たことがないというものは多い。
この日のオタマサは、そんな滅多に出会えない激チビに遭遇していた。
これ。
ひと目で何かわかった方は、相当スルドイ。
このチビターレは、大きくなると(おそらく)↓こうなる。
そう、ヒメオニオコゼ!
かつてゲストを案内中に一度だけこれくらいのチビと出会ったことがあるオタマサながら、ゲスト案内中には撮影しないため、その時は観るだけで終わっていた。
いささか深いところからの帰り道だったこともあり、もうタイムリミットになっていたためにそのゲストも観るだけで終了。
すなわち、せっかく出会ったにもかかわらず、当方の身の回りにはどこにも記録が残っていなかったヒメオニオコゼ・チビターレ。
それがちょうど梅雨明けの頃で、場所も同じところだから、ひょっとしてまた会えるかも…と砂底をグリッドサーチしていたオタマサである。
そんなスーパー短絡思考にもかかわらず、再びチビターレと遭遇してしまった。
どれくらい激チビかというと…
例によって対人差し指比でこのとおり。
漫然と砂底上を泳いでいたら、おそらくゴミにしか見えまい。
砂底グリッドサーチは、ともすれば結局何にも出会えないという不毛な結果におわることもある一方、こんな藻屑のような小さなクリーチャーに出会うためには、欠かせないサーチ方法でもある。
前回出会ったチビよりも遥かに小さいために、撮っている間はひょっとして他の別の魚のチビかも?という不安もあったらしいけれど、、撮った画像で爪のように変化している胸ビレの一部を見てみれば、不安はたちまち解消。
この千載一遇の大チャンスが、以前のようにゲストご案内中でなくてよかったよかった。
…ワタシが出会えたわけじゃないけど。
ところで、近年水納島で潜っているダイバーがのべ何人くらいいるのかまったく知らないけれど、はたしてそのうちの何人くらいの方がヒメオニオコゼのチビターレをご覧になったことがあるのだろう?
我々が激レアだと思い込んでいるだけで、実はご覧になったことがある方は「1万5千人くらいです」なんて言われた日には、引っくり返ってしまいそうだ…。
2023年06月22日
チビチビもつらいよ。
2023年 6月21日(水) 晴れ!
南西の風 波あり 水温25度~26度
本日は夏至なり。
夕刻のひとときを過ごすということでは日が長いのは大歓迎なんだけど、日が長いということは日の出も早いわけで、5時から明るいというのもなにかと落ち着かない。
なにしろ5時に目が開いてあと30分くらい寝ていないなぁ…と思っても、カーテンの向こうはすっかり明るくなっているし、それに合わせて人々の活動開始時刻が早くなっているから、おちおち二度寝もしていられない。
でも夏至を過ぎれば、日の入りはまだ少々順延されるものの日の出は少しずつ遅くなっていく。
真冬のように7時でもなお暗いというのもいささか不便ながら、せめて5時はまだ暗くあってほしいなぁ。
さてそんな夏至の日は…
…「夏」の日でもあった。
同じ6月に来沖を予定しても、選んだ日によっては台風に丸々蹴飛ばされたり、梅雨のど真ん中になったりする方々もいらっしゃることを思えば、こういう日に当たる幸運をありとあらゆるものに感謝してもいいところ。
でもほとんどの方は、「これが6月の沖縄かぁ!」と素朴に信じて帰っていくのだった。
幸運とは、願わぬところで威力を発揮しているのである。
まだ梅雨と夏が鍔迫り合いをしているようで、このあともビミョーに雨マークが散見されるけれど、こうなってしまえば気分はもう梅雨明け。
というわけで本日も海へ。
一昨日紹介したテグリのチビターレ、まだ居はせぬかと期待して訪ねてみた。
仮に居たとしても見つけられないよなぁ、こんな小さなもの…と半ば諦めながら、2日前に見つけた周辺をサーチしてみたところ…
…いた。
しかもお食事中らしくやたらと活発に動き回ってくれるおかげで、横からお姿を拝見できるポジションで。
それにしても、2日前には5ミリに満たないサイズだったはずなのに、この日は余裕で5ミリオーバーになっている気が…。
2日でそんなに成長するものなのだろうか。
それとも同じところに複数個体いるのだろうか。
一昨日撮った子と背中の模様を見比べてみると…
同じ子ですかね?
でも明らかに大きく見えるんだけど……
あ!
今日は晴れているからか?
同じ子かどうかは不明ながら、期待していなかったまさかの再会、この日はデジイチも携えていることだし、しっかり撮ろう!
このテのテグリたちは、ご存知のように普段は第1背ビレを閉じているのだけど、お食事中で盛り上がっているのか、ときどきピコ…ピコ…と小さな背ビレを立ててくれる。
さきほどの横から撮った写真では、まだ背ビレは半開状態で、ここからもう少しパッと広がる。
その様子を撮った…
…つもりが、背ビレに気を取られ過ぎて肝心のオメメが超ピンボケ。
居場所といいポーズといい、千載一遇だっただけにこのピンボケにはガックリきたものの、撮り直そうにもテグリっ子は見えないところに隠れてしまった。
諦めて他所を周り、再び戻って来てから念のためにサーチしてみると…
…いた。
それも、先刻のワタシの無念を知ってか知らずか(知らないって…)、小さな背ビレをしばらく広げたまま、ポーズまでとってくれたテグリっ子なのだった。
テグリっ子が一時姿を消していた間にお邪魔していたのは、これまた2日前に出会ったソメワケヤッコのチビターレがいるところ。
今年もまたソメワケヤッコチビターレとの遭遇率が高く、春からこっち随所で出会っているのだけれど、2センチほどといったらチビターレのミニマムサイズといっていい。
ただし、過去に何度も紹介しているように、このテの小型ヤッコたちはオトナもコドモも警戒心が強いため、タテキンチビターレのように向こうから威嚇気味にこちらの様子を伺ってくれるなんてことはまずなく、すぐに死サンゴ石の下などに隠れてしまうから、気の短いダイバーの多くは、チラ…ともその姿を観ることなく諦めてしまう。
その点ミニマムサイズはまだ世間の荒波に揉まれていないからか、もう少し成長している子に比べればとってもお利口さんだ(カメラを向けている者にとって)。
ソメワケヤッコチビターレが居つくようなところに多い小型ヤッコといえば、ご存知ヘラルドコガネヤッコのチビターレ。
ソメワケヤッコチビターレと同じように、死サンゴ石の表面に生えている何かをチマチマ啄んでいる。
同じようなサイズの近い仲間で、なおかつ同じような暮らしをしている両者だから、同じところで暮らせばすっかり仲良しさんに…
…なるかというと、世間はそれほど甘くはない。
一見すると仲良く一緒に泳いでいるかのように見えるけれど、実はこれ、ソメワケヤッコがヘラルドコガネヤッコに追われているところ。
縄張り意識が強い彼らのこと、居てもたいていボッチのソメワケヤッコよりも、周辺に仲間が多いヘラルドコガネヤッコのほうがどうしても優位になるらしく、追う追われる立場は両者の間で明確に決まっているらしい。
でもソメワケヤッコチビターレもただ追い払われるだけではなく、時には反撃もしてみせる。
一瞬の隙をついて反転し、威嚇のポーズをとるソメワケヤッコチビターレ。
もっとも、その「威嚇」にはなんの効果もなかったようだけど…。
ほのぼのキンダガーデンに見えつつも、そこにはキビシイ掟があるチビチビたちの世界。
こうしてソメワケヤッコチビターレは世間の荒波に揉まれながら、ダイバーの姿を察知するやすぐさま石の下に隠れる習性を身に着けていくのだった。
2023年06月21日
チビターレのオシゴト。
2023年 6月20日(火) 晴れのち曇り
南西の風 うねりあり
南下してくると思われた雷雲が結局降りてこなかったし、雨すらほとんど降らなかった前日のお天気に鑑みても、ジワリと梅雨明けの気配が。
数日前からリュウキュウクマゼミの合唱も始まっている。
この日の午前中はなんともいいお天気で、まさに梅雨明け、夏本番一歩手前ってな感じになっていた。
でもまだ週間天気予報上では、梅雨と夏がせめぎ合っている。
「平年」が好きな気象台としては、梅雨にはあと一息頑張って欲しいところなのだろう。
さて。
先日も紹介したように、昨年と違って今年は春先から順当に随所で遭遇しているミヤケベラのチビターレ。
クリーニングを本職としているホンソメワケベラやソメワケベラ以外にも、ベラの仲間には特に幼魚の頃にクリーニング行動を見せる種類が多く、なかでもこのミヤケベラはわりと仕事熱心なほうだ(オトナの姿はこちらをご参照ください)。
こういうサンゴの上でともに暮らしているフタスジリュウキュウスズメダイのチビチビたちを相手にすることはほとんどなくとも、ミヤケベラチビターレがいることを知って訪ねてくる他の魚相手には、かいがいしくクリーニングケアをしてみせることが多い。
ただし本職ではないだけにそのシゴトぶりは移り気で、クライアントの満足よりも自分の満足を優先させている気配がある。
↑この動画では、ミヤケベラチビターレに身を委ねていたゴマハギが、あっけなく終わる施術に驚き、「もう終わり??」と詰め寄っているようにすら見える。
一方、クライアントは同じゴマハギでも、本職のホンソメワケベラとなると、15ミリほどのチビチビでさえ行き届いたシゴトぶり。
ただ、一見クライアントが去るまで施術をし続けている…ように見えるのだけど、実は去ってほしくなったら痛がるところをつついてわざと去らせている気配が…。
すでにしてホンソメチビターレ、なにげにしたたかなプロフェッショナルのようだ。
2023年06月20日
PURE MALT RED。
2023年 6月19日(月) 午後少し雨がパラつくも基本的に曇り
西の風 かなり波あり 水温25度
前日から絶望的だったこの日の天気予報は、朝になってさらに激しく悪化していた。
梅雨なんだから雨は覚悟のうえながら、そこに雷とか強風が加わると、ヒトはそれを嵐と呼ぶ。
しかも雷雨マークの時間帯がやたらと長く、3時間ごとの時系列予報では日中の大半が雷雨になってしまう模様だ。
これはジッとおとなしくしているほかないか?
…と思いきや、雨雲レーダーを観ていると、その「嵐」を呼ぶ雲の帯は沖縄本島の北側に留まったままでいてくれそうな気配がある。
ひょっとしてこれは、天気予報がいうほどの雷雨にはならないんじゃ?
結局カミナリ様は一発も騒ぐことなく、雨は少々降った程度で終わり、夕刻には爽やかな風を浴びながら屋外にいることができた。
この4日間は実のあるシゴトが続いていて、週間天気予報はまったく芳しくなかったんだけど、晴れ渡ることこそなかったとはいえ雨や雷に祟られることもなく終了。
きっとどこかで海神様が微笑んでくれていたのだろう。
おかげで夕刻の酒が美味い。
お酒といえば、先日貴重なものをいただいた。
こちら。
NIKKAが誇るブレンデッドモルトウィスキー、ピュアモルト・レッド。
PURE MALTにはこのレッドのほかにブラックもあるそうで、宮城峡と余市それぞれのモルトのどっちが主体になっているかで内容が異なるのだそうな。
で、レッドはというと宮城峡主体のボトル。
宮城峡といえば…
…ああ懐かしや、オトナの社会見学。
ずっと5~6年前くらいの感覚でいたというのに、もう丸々10年前のことになる。
当時はまだ「まっさん」が放送される前だったし、その後のお隣の大陸国のみなさんのウィスキー爆買いもなかったから、極めてフツーに流通していた品でもある。
ところが今や空前の品薄で、手に入れるためには絶えずチャンスを伺い続ける根気と努力が必要なのだとか。
そもそも売り物なのだからしょうがないとはいえ、需要爆増に狂喜して売り続けたら品が無くなった…だなんて、なんだか需要に応じてウニを獲りすぎたら絶滅しちゃった古宇利島、と大して変わらないような…。
いずれにしてももともと経済的にも手に入れることができない高嶺の花のウィスキー、ありがたくも心していただいてみると…
う~ん……あまい♪
勢い余ってロックで飲んじゃった当初の味覚よりも、ストレートでいただくとデザート感倍増だ。
こりゃ食後のエスプレッソ感覚で、チビッとショットグラスについでいただけば、日々の貧疎な食事もしみじみ味わい深いものになることだろう。
なぜ揃っているんだか理由をすっかり忘れてしまったそのショットグラスは、「ピュアモルト」のロゴがプリントされているもの。
これまで我が家にて様々な酒を注がれてきたこのグラスが、初めて本来の主を迎えることができたのだった。
ありがたいプレゼンターには、この場を借りて厚くお礼申し上げます。
話は変わる。
書いておかないと記憶からデリートされそうなので、この日奇跡的に遭遇したお魚さんを。
狭いところにいたから上からしか撮れなかったこの魚は(写真右側が頭です)、おそらくセソコテグリかそのあたりのチビターレと思われる。
そのあたりのテグリはそれぞれさして珍しいわけではないものの、なにしろこのチビターレときたら吻端から尾ビレの先まで5ミリもないくらいの激チビだ。
しかもピコピコ動いていたわけでもないというのに、気づいてしまったワタシの眼は少なくともスイジガイの眼くらいには生きている。
というわけで、出会ったヨロコビというよりも、薄暮の中で見つけることができたヨロコビに浸っていたワタシです。
2023年06月19日
1人ジェットストリームアタック。
2023年 6月18日(日) 薄曇り時々日差し!
南西の風 けっこう波あり 水温25度~26度
久しぶりに太陽が!
思わず太陽に手のひらを透かしてみれば、真っ赤に流れる僕の血潮…。
ミミズもオケラもアメンボも生きているように、魚たちも生きている。
先日紹介したオウゴンニジギンポのそっくりさんとしても有名な魚に、イナセギンポがいる。
もちろん両者は、チビ同士でもそっくりだ。
粋でいなせなイナセギンポは、オトナになるとスラリとしたフォルムになって、どこかお高くとまっているようにも見える。
でも巣穴に入っているときは愛嬌たっぷりで、とってもゴキゲンさんな顔をしている(穴に入っているときは、鼻先の白い線がクッキリ出る)。
この愛嬌を演出している口元がクセモノで、彼らイナセギンポたちは、この口を使って他の魚のヒレやウロコを齧り取り、それを糧として暮らしている。
そんな食事の瞬間を写真で捉えることなどまず不可能ながら、まったくの偶然ながら動画で撮ることができた。
まったくの偶然は、この日久しぶりの太陽燦燦のもと、テーブルサンゴの下で休憩していたアヤコショウダイがもたらしてくれた。
ペアで行動していたサザナミヤッコとのスリーショットなんて、なにげにゼータクなシーン…とばかりに撮っていたら、やがてサザナミヤッコは去っていった。
そして1人になったアヤコショウダイ。
普段ならこんなに近づくとすぐに逃げてしまうところなのに、どういうわけかこのアヤコショウダイはこの場に留まり続けてくれていた。
ホンソメワケベラがこで開業しているらしく、それが目当てでもあるらしい。
でもこのアヤコショウダイを目当てにしているものもいた。
観ていると時々アヤコショウダイが何かを追い払う仕草を見せるので、いったい何を嫌がっているのだろう…と不思議に思いつつ、こういうところでアヤコショウダイが鎮座したままでいる様子なんてなかなかないから、ついでに動画で撮ってみることにした。
本来であればただ単にアヤコショウダイがフンワカ静止しているだけの動画になるはずだったところ、そこに映っていたのは…
…イナセギンポの1人ジェットストリームアタック!
先ほどからアヤコショウダイが嫌がっていたのは、このイナセギンポの攻撃(口撃?)だったのだ。
ところが間近からライトを当てられカメラを向けられているものだから、イナセギンポに悪さをされても身動きが取れない状況になっていたらしいアヤコショウダイ。
完全無防備な状態にさせてしまってすまぬすまぬ。
でもそのチャンスを活かしたイナセギンポ、グッジョブ。
2023年06月18日
スイジガイ・アイ。
2023年 6月17日(土) 雨の慕情
南の風 やや波あり 水温24度~25度
世界のあちこちで大干ばつが発生し、イギリスのネス湖などネッシーが干上がるほどに水位が低下しているというのに、なんで沖縄はこんなに雨が降るのだろう。
この雨、世界中に分けてあげたい…。
太陽がなかなか顔を出してくれないために、冷たい雨水が水温をジワジワ下げていく。
エルニーニョのお膝元では表層の海水温が上がり過ぎ、お魚さんがいなくなって海鳥たちが大量に餓死しているというのに、なんで沖縄の水温はこんなに低いままなのだろう。
でもひとたび真夏になると、長期間高水温が続き過ぎて、サンゴの大規模白化になるとか?
そんな先のことなど心配している場合ではないくらいの雨続き。
海中は暗く、クラシカルアイにはつらい薄暮状態だから見づらいったらない。
たとえ貝殻に守られていても、周囲の警戒を怠らないスイジガイも、眼をニョロ…と出してあたりの様子を伺う。
マンガ「寄生獣」に出てくるミギーの眼のようなこの眼は、スイジガイなどマガキガイの仲間にはちゃんと1対あって、しっかり「眼」の役割を果たしているらしい。
その眼を静かにニョロ…と出して、あたりの様子を伺うスイジガイ。
そして安全を確信したのか、カメラに突進!…しかけたところ、石ころに躓いてまた引っ込んじゃった。
石ころに乗り上げてからガクンと落ちていなかったら、もう1歩進んでカメラにぶつかっていただろう。
スイジガイの眼、案外見えていないのか?
その眼の部分を拡大。
薄暮は見づらいクラシカルアイなのだろうか…。
2023年06月17日
ハナミノ多過ぎ。
2023年 6月16日(金) 曇り
南のち東の風 おだやかのち波あり 水温24度~25度
悲惨な予報がいいほうにはずれ、多少パラつくことはあったものの、朝から夕までおおむね薄い雲に覆われている程度の曇り空。
雨に祟られることなく済んだ。
ただし上り調子だった水温は一端停滞、さすがに連日の多量の雨も手伝い、少々下がってしまった。
ここからの急速な巻き返しに期待しよう。
そういえば、今年は春以前から無駄に多かったスカテンたちだというのに、世間がシーズンを迎えてからこっち、グッとその数を減らしてしまった。
そのためキンメモドキが安定的にワッと群れている根には、それを目当てにする魚たちが集合している。
ご存知ハナミノカサゴ。
画面に写っているだけで8匹、そのほか周辺にも3匹くらいウロウロしていた(ジッとしているときのハナミノカサゴは、体の色を地味に変えている)。
小魚がワッと群れているところに集いたくなるキモチはわかるけれど、それにしても小さな根に10匹以上は多過ぎる。
とはいえ需要と供給のバランスなど、ほどを知らないハナミノカサゴが考えるはずもないのだった。
ここにはハナミノのほか、腹をいつもタプタプにしているアカジンが何匹も周辺をウロウロして、ダイバーがそばにいても逃げることなく、その眼はキンメモドキにロックオンしていた。
キンメモドキたち、いつまでここに居てくれるだろう?
2023年06月16日
みにくいアヒルの子2023。
2023年 6月15日(木) 雨がパラつく曇り
西のち北の風 おだやかのち波あり 水温25度
本日も朝のうちはぐずつく予報だったけれど、このところ同じ予報でありながら午前中は降らないパターンが続いている。
きっと今日も降らないだろう。
というわけで、降らないほうに賭けて朝から海へ。
すると、雲間から小さな晴れ間が見えるほどの、わりといいお天気で終始した(朝は)。
基本的に曇天ではあっても実におだやかな海で、ダイコンの水温表示が安定的に25度を示すようになった海中はまったくのストレスフリー。
キンメモドキが群れている根を訪れてみると、湧くように群れていた若魚たちの数はかなり減少しつつ成長して薄茶色になっていた。
その根には、この水深では珍しくフタイロハナゴイのチビチビが複数匹チョロチョロしている。
これで3センチくらいなんだけど、これよりも2周りほど小さい激チビターレに出会いたい…と願いつつ、なかなか果たせないでいる。
というのも、キンギョハナダイなど砂地の根でお馴染みのハナダイのチビターレなら、15ミリくらいの激チビでも人目につくところに出ているのに対し、フタイロハナゴイの激チビは暗いところが大好きなので、水深20メートルちょいの白い砂地の根だと、根の奥の奥に潜んでいるようなのだ。
もっともっと深いところにある根にいけば、照度が落ちる分フタイロハナゴイのチビチビが表に多数出ていることも過去にはあった。
ちなみに今年同じ根に一度行ってみたところ、かつてフタイロハナゴイのチビチビがこんなにたくさんいたなんてことの片鱗すらうかがい知ることができない、ショボい根になっていた…。
今はもう、3センチほどのチビチビが複数匹いるだけでもありがたいので、ありがたがって観続けていると…
迷惑そうにアクビをするのだった。
浅いところに戻ってきて、そこらに転がっている死サンゴ石の陰に何かのチビターレでもいないかな…とサーチしていたところ、こういうチビチビがいた。
セジロクマノミのような模様が入っているゴンべの仲間なんていたっけ?と思った方がいたとしても無理はないほどのプリティフェイス、しかしその体側の模様を見れば…
まぎれもなくバラハタのチビターレであることがわかる。
成長すると50センチを超えるオトナは悠々と泳いでいるのに対し、幼魚は相当警戒心が強く、写真のような4センチほどのチビターレになると、カメラを向けられてその姿をさらしてくれることは滅多にない。
そのため体の模様をクッキリ観ることができないから、うっかりゴンべやハナダイの仲間と勘違いしてしまうかも。
でもたとえ顔だけでもずっと観ていると、少なくともゴンべやハナダイとは違うことがすぐに判明する。
将来の姿を彷彿させる大きな口は、紛うかたなきハタのものなのだった。
リーフエッジ付近のサンゴの上にも、様々なチビチビが増えてきている。
昨年紹介したように、近年はどういうわけか砂地のポイントのリーフエッジ付近にも、ハナゴイのチビチビが多数観られるようになっている。
そのため、以前はわりとたやすく観ることができたハナゴイチビターレの「みにくいアヒルの子」状態を観るのが難しくなっているのだけれど、まだチビチビの出始め時期だからだろうか、デバ(アオバ?)スズメダイのチビチビたちの群れにハナゴイチビターレが1匹だけいた。
久しぶりに「みにくいアヒルの子」。
…と思ったら、アヒルはハナゴイだけではなかった。
このところ目立つようになってきた今年生まれのクロスズメダイチビターレも、どうやらアンデルセンの物語の主役になりたかったらしい。
でもオトナになって美しいスワ~ンになるアンデルセンストーリーとは違い、アナタはただの黒い魚になるだけなんじゃ??
とまぁ、世間一般の方にはおそらくまったくどーでもいいことなのだろうけれど、それが面白くてたまらない身には、リーフエッジ付近にこのまま半日くらい潜り続けていたくなるほどに、この季節はチビターレたちがにぎやかで楽しいったらない。
梅雨の大雨にさえ阻まれなければ、毎日のんびり楽しめるのだけどなぁ…。
2023年06月15日
持続可能な繁殖方法。
2023年 6月14日(水) 曇りのち雨の慕情
南西のち東の風 ベタ凪ぎのちやや波あり 水温25度
琵琶湖を引っくり返したような雨になってしまった前日にも、降っていない時間帯があった。
予報では大雨っぽかったから海に行く気はハナから無く、いつ降りだすか、いつ降り始めるかと空を見上げていたところ、ちょうど普段潜りに行っている時間帯だけベタ凪ぎのコンディションのまま推移した。
しまった、潜りに行っておけばよかった…。
なんだかちょっぴりクヤシイ。
この日も朝から雨予報ではあったけれど、雨雲レーダーを見るかぎりでは前日同様午前中にチャンスがありそう。
たとえ潜っているうちに降り始めたとしても、最初は大した雨ではあるまい。
というわけで、雲間から晴れ間すら覗き見えた朝のひとときに海へ。
曇天下では海中も暗く、にぎやかな夏の海のイメージとはいささか趣きは異なるものの、この季節は様々なチビターレが随所に出現しているから、細かいものサーチで潜っているだけで心はにぎやかになる。
チビターレといえば、今年は例年になく遭遇頻度が多い気がするのがこちら。
ヒレグロベラのチビ。
近年は昔に比べて遭遇頻度が減っていて、すっかりレアなチビターレになっていたというのに、昨年あたりから出会う機会が増えてきて、今年はすでにやたらと遭遇している。
これがこの先ずっと続くのか、たまたま今年だけなのか。
今年だけだとすると、まだヒレグロベラチビターレに会ったことがない方は今がチャンス。
もともとヒレグロベラよりも遭遇頻度が高い↓こちらも、今年はさらに多い気がする。
幼魚の頃はヒレグロベラとそっくりな、キツネベラチビターレ。
まだ水温が冬と変わらない時期からチビチビがチラホラしていたこともあって、近頃は写真のような3センチほどに成長しているものも見かけるようになっている。
同じタキベラ属ながら、上の2種に比べると出会うチャンスが圧倒的に少ないのがこちら。
ザ・タキベラのチビターレ。
このチビチビ3種、水納島におけるレア度の高いほうから並べると、
タキベラ > ヒレグロベラ > キツネベラ
となるんだけど、これらタキベラ御三家のチビターレ3種に1本のダイビングで出会うなんてことは、そうあることではない。
本日はなにげにプチラッキー。
キツネベラやタキベラのチビターレと出会った根には、アブラヤッコのチビチビもいた。
リーフ際近くや砂地の根でチョコチョコ出会えるアブラヤッコのチビターレ、いたからといって騒ぐほどの存在ではない。
でも小型ヤッコ類のチビたちはオトナ以上に警戒心が強く、アブラヤッコのチビもその例に漏れない。
わざわざカメラを向ける方はそうそういらっしゃらないだろうからご存知ではない方のほうが多いだろうけど、いざ撮ろうとしてもそうはたやすく撮らせてはもらえないアブラヤッコチビターレ。
そんなアブラヤッコの2センチほどのチビが、健気に岩肌のエサを求めてチョロチョロしていた。
滅多に撮れないチビターレ、これが千載一遇とばかりに粘ってジッとしていたら、チビターレはちゃんとチャンスを与えてくれたのだった。
クレナイニセスズメの若魚と比べてもこんなにチビチビ。
こんなチビチビがその体を惜しげもなくカメラの前にさらしてくれるだなんて、やっぱり今日はプチラッキー。
この時期激増するチビターレといえば、各種ギンポたちのチビチビも然り。
水温が低かった頃にはまったく見えなかった↓こちらの姿も、今ではそこらじゅうといっていいほどになっている。
このテのチビチビたちに目がないオタマサが、エキジット後にオウゴンニジギンポのチビも多かったという。
まぁこの季節だから、例年同様オウゴンニジギンポのチビターレだって数が増えているだろう。
と、てっきりそこかしこでポコポコ出会えるという意味の「多い」ということかと思っていたところ、オタマサが見せてくれた写真を見てビックリ(以下写真2点撮影:オタマサ)。
なんと2センチに満たないチビターレが、オトナがときおり見せるような集団になっていたのだ。
オタマサによるとチビチビ集団はここだけではなく、このほかの場所でも、それぞれ4匹、3匹のグループが観られたという。
たしかにそりゃ「多い」わ…。
オウゴンニジギンポのチビターレといえばそれぞれが単独、せいぜい2匹でいるのが定番だったのに、本来こういう暮らしをしているものがやむなく単独で暮らしているのか、それとも今年はやたらと数が多いために仕方なくいろいろシェアしているのか。
真相は不明ながら、チビターレも集団になることがある、ということを初めて知ったのだった。
一方、水温が一年で最も低い頃から産卵を始めていたガラスハゼ。
3月4月と、休む間もなく繰り返し産卵していたフシがあるペアも、このところは小休止のようだった。
産卵床のアップ。
卵は無い。
卵は無くとも、孵化したばかりとか産む直前だったりするかもしれないのに、なぜに小休止と?
それについては産卵床にご注目。
以前も紹介したように、ガラスハゼが産卵床を拵える際に共肉を剥ぎ取られたムチカラマツは、やられ放題のままでいるわけではない。
春先からチェックしているこのガラスハゼの産卵床、ひっきりなしに産んでいた春にはこういう感じになっていた。
それがこの日は…
…産卵床用に剥ぎ取られた部分(黒いところ)が狭くなっている。
それもそのはず、共肉をハゼに剥ぎ取られたムチカラマツは、ダメージコントロールをすべく分裂増殖を繰り返し、その部分を再び共肉で覆うのだ。
矢印の部分が現在再生中の共肉で、一朝一夕でここまで再生するわけではないから、この間ずっとガラスハゼは産卵床を利用していなかったと思われる。
このまま放っておけば、やがて産卵床は跡形も無くなるのだろう。
あいにくガラスハゼの産卵スイッチは再びオンになるはずだから、せっかく再生し始めている共肉は、再び剥がされることになる。
再生がほぼ終わっていれば、ガラスハゼは気分を変えて別の場所を剥ぎ取るとか?
これも以前に紹介したけれど、近年はこの共肉を剥ぎ取られた部分に他の付着生物がついてしまうことが多く、ムチカラマツはその部分の共肉を再生できないまま、むしろどんどん侵食されていくケースもよく観られる。
やがてその付着生物が成長すると重くなり、か細いムチカラマツは重さに負けて先端が海底に沈んでしまい、やがて全体が傷んでいく。
ガラスハゼの産卵床程度のダメージなどかつてはムチカラマツにとってなんてこともなかったはずなのに、近年はときとして群体が滅ぶきっかけになっていたりもするのだ。
ガラスハゼにとっての持続可能な繁殖方法は、ムチカラマツの再生能力とそれを保証する環境があればこそなのである。
2023年06月14日
いいんです!
2023年 6月13日(火) 雨の慕情
南西の風 ベタ凪ぎのち夕刻少々荒れ模様
未明からバケツを引っくり返したような雨だったお天気は、夜が明けると琵琶湖を引っくり返したような雨にグレードアップした。
誰だ、今年は空梅雨なんじゃね?なんて言っていたのは?
あ……ワタシか。
この梅雨ではこれまでまとまった雨といえば台風時のみだったのだけど、今回初めて「梅雨」の雨。
ずっと貧打にあえいで連敗中だったところ、打線が一気に爆発し、毎回の20安打15得点といったところか。
でも、ときおり遠雷は聴こえてはいても基本的に雨だけで、このあと多少強まる予想が出ている風も南西からとなれば、連絡船は通常運航だろう…
…と思いきや、念のためとチェックした海運公式サイトには、
「天候不良のため欠航致します」
のメッセージが。
そりゃたしかに朝から「天候」は不良だけど、朝から午後遅くまではほぼ無風だったし、風が出てきた夕刻ですら、桟橋側は…
超ベタ凪ぎ。
このお天気で日帰りで来島しようとしていた方など皆無に近いだろうとはいっても、この日の欠航はノーマークだった島の方々は多かったはず。
しかしこのベタ凪ぎ欠航にはワケがある。
というのも、前線付属の低気圧が、こういう予想になっていたのだ。
青が平和なゾーン、赤がヤバいゾーン、ピンクがトンデモゾーンのこの風予想図では、低気圧がちょうど本島ど真ん中を横切っていく見込みになっている。
とはいえ時刻は20時、そして風が強い側は水納島から遠いところとなれば、全然運航に差し支えないじゃん…
…というのはあくまでも結果論。
朝イチの段階では、この低気圧がいつなんどき本島の西側を時刻早めに通過…なんてことになるやもしれず、そうなった場合に運航していたら連絡船は目も当てられないことになる…
…かもしれない。
これで修学旅行の予定が200人くらい入っていて、なおかつ運航責任者が北の大地の例の遊覧船会社だったら意地でも運航していたかもしれない。
しかし危うきには近寄らない君子である水納海運は、早々に全便の欠航を決めたのであった。
ところが9時半頃に、到着しようとする連絡船のエンジン音が聴こえてきた。
ん?どうなってんの?
桟橋に行ってヤング船員さんたちに事情を尋ねてみたところ、この日の欠航がまったくノーマークだった島民1名(ジュンコさんともいう)がどうしても島を出なきゃならないという事情に配慮し、この臨時の1便だけの特別運航なのだという。
200名の団体様などいなくとも、たった1人のために往復するライフライン、ここにあり。
もっとも、このベタ凪ぎで欠航と言われたら、所用ある方としても黙っちゃいられなかったろうけれど…。
話は変わる。
新聞の番組欄を見ると、唖然とするというか呆気にとられるというか、ほとんど詐欺なんじゃねーの?と怒りすら感じるほどに再放送を示す「再」マークや「選」という字が並びまくるNHKBSの各番組にあって、数少ない初放送だった月曜日のワイルドライフ。
それまで長い間1時間だったものが4月から構成を変えて90分になってしまった。
テレビ離れが加速する昨今、映画やスポーツ中継でもないのに90分も同じ番組を観続けるヒトがいったいどれくらいいらっしゃるのか知らないけれど、個人的には集中力が続かないから、興味があるタイトルでも最初から観る気が失せてしまう。
ところがこの日は奄美・沖縄に固有の生き物たちということでオタマサが興味を示したので、チャンネルをそのままにしていた。
そして飽きないように集中せずに観ていたところ、奄美・沖縄の生き物が主題だけに、案の定イリオモテヤマネコも登場。
しかし話題がイリオモテヤマネコになって我々がその登場に驚いたのは、肝心のヤマネコではなく、川平慈英を案内する研究者の姿だった。
学生時代からイリオモテヤマネコに恋し続けてウン十年の彼女は、オタマサとは入学年度も学科もサークル(ダイビングクラブ)も同じ大の仲良しさんで、卒業後もアカデミズムの分野においてイリオモテヤマネコ一筋で研究ライフを続けていて、今やNHKがオファーをするほどの第一人者になっているのだ。
最初引いた絵で川平慈英と二人で歩いてくるシーンの時点で、その歩き方とたたずまいですぐに気がついたオタマサ。
おかげで究極の変態シーンを撮ることができた。
↑これ、二人で楽しげに何をやっているのかというと、イリオモテヤマネコのウンコチェック。
ご存知のとおり、日中も夜間もなかなか人前に姿を見せないこういった野生動物の調査においては、その生活痕、特に糞の確認は欠かせない。
路上に転がる犬の糞は迷惑以外のナニモノでもないけれど、野生動物の場合は糞を観れば何をエサにしているかがわかり、糞の場所でどのあたりを行動圏にしているのか、よく現れる場所はどこなのかということがわかるのだ。
このシーンももちろんそういう趣旨で、イリオモテヤマネコの糞(第一人者はひと目でヤマネコの糞だとわかる)を二人でチェック。
で、ウンコチェックでは匂いも重要情報になるそうで、さっそくピンセットの先に挟まれたブツを匂った川平慈英は…
「ク―ッ!」
…って。
一般社会から観れば、相当な変態的シーンではある。
遠い西表島とはいえ同じ県内に住んでいる学生時代の仲良しさんだというのに、オタマサですら年賀状を除いて20年以上ご無沙汰のヤマネコレディ、相変わらず(ほとんど変わっていない…)元気な姿を拝見して、イリオモテヤマネコの映像よりも盛り上がった我々なのだった。
これじゃ、ワイルドライフというよりもヒューマンライフだ…。
一般社会にお住まいの方々からすれば、いつまでも猫のウンコチェックをする暮らしでいいのか、なんて話もあるかもしれない。
けれどともにウンコチェックをした川平慈英なら、きっと言ってくれるだろう。
「いいんです!」
2023年06月13日
クロハラアジサシ。
2023年 6月12日(月) 晴れのち曇りそして雨
南の風 少々うねりあり
週間天気予報を見るかぎりでは、今週は雨がちのお天気になりそう。
この日も予報では分厚い雲がたれ込めるはずのところ、朝からいいお天気、しかも少々うねりはあるもののベタ凪ぎのグッドコンディション。
絶好の海日和ではあるけれど、この日を逃すとボートで渡久地港まで行ってお出掛けするチャンスがなくなりそうだから(チャージを依頼しているタンクを回収するために、ボートで行く必要がある)、本日は後ろ髪を引かれながらお出掛けすることにした。
そのついでに少々ドライブ。
先日新聞のローカル版に、金武町の水田にわりと珍な鳥さんたちが姿を現しているという記事を見つけたオタマサが、行きたい行きたいと騒ぐので、またまた億首川の河口付近にある水田に行ってきた。
目当ての珍鳥にはそうそう会えるものではなくとも、水納島には無い水田地帯ならではの鳥さんたちがなにかしらいるだろう。
稲やタイモの田んぼ脇を歩いていたところ、さっそく目にとまったのがこちら。
プリプリヒップしか写っていなくとも、鳥さん好きならひと目でこれが誰だかわかるのだから、なかなか侮れない変態社会ではある。
変態ではない方々のために、顔が写っている写真も…。
もうおわかりですね?
生育中のタイモの間をテケテケ歩く姿など、もちろんのこと水納島では観られないシーン。
同じく水田ならではなのがこちら(↓これは田んぼの傍らにあった子供たち用の泥んこ遊び場になる土地)。
え?アジサシなら水納島でも観られるんじゃ??
…と思ったアナタはまだまだ甘い。
これまた変態社会のみなさんなら、ひと目でこれが水納島では観られないクロハラアジサシであることがわかってしまう。
以前に拙日記で紹介したのは、昨年だったっけ…と思って調べてみたら、なんと4年も前のことだった。
5月のことで、当時は1~2羽しか見かけなかったクロハラアジサシ、田んぼにアジサシという光景が目新しく、たとえ田んぼがあるからといってもそうそういるものではないのだろうなぁ…
…と思っていたところ、この日は電線に止まって羽繕いをしているものだけでも、こんなにたくさんいた。
このほかに田んぼの上を飛び交っているものたちも数羽いたから、10羽近くいたんじゃなかろうか。
田んぼの上を飛んでいるのも目新しいけれど、電線にアジサシというのも水納島ではあり得ない光景だ。
面白いことに、水納島にやってくるベニアジサシやエリグロアジサシが夏の間繁殖も含めて島で過ごすのとは違い、沖縄で観られるクロハラアジサシたちは、渡りの途中に立ち寄っているだけ、すなわち春と秋にフラリとやってくるという。
毎年お盆やお正月前にフラリと返ってくる寅さんのようなアジサシなのである。
そのため冬羽であることが多いそうながら、4年前に初めて会ったクロハラアジサシはお腹がクッキリと黒い夏羽だったし、この日もクッキリ腹黒い(?)ものが飛んでいた一方で、それほど黒くないものや…
…お腹どころか頭部まで薄い子もいた。
この薄弱そうな色味が冬羽で、ちょうど羽が変わる季節なのだろう。
北半球と南半球を行き来する彼らがいったい真夏をどこで過ごすのかは知らないけれど、本土ではそうそう観られるアジサシではないらしい。
沖縄県内では比較的遭遇頻度は高く、10羽~20羽の団体で各地にやってくるそうな。
2010年に刊行されている図鑑「沖縄の野鳥」では、「近年、飛来数が増えている」とあった。
とはいえクロハラアジサシが好む環境がこの10年で相当減少していると思われる沖縄県内のこと、はたしてさらに近年はどういう推移になっているのだろう?
その点まだ安定的に水田風景が広がる億首川河口域は、旅の途上のクロハラアジサシたちにとって、まだまだ過ごしやすい場所なのだろう。
洋上でホバリングして水面下にダイブするベニアジサシやエリグロアジサシと同じく、クロハラアジサシも田んぼの上でホバリングしながら獲物をロックオンし、急降下してゲットするという食事方法だから、タイモが茂る田んぼの上でホバリングしている様子がカッコイイ。
でも獲物はなにも田んぼにだけいるわけではなく、周辺の草原でもホバリングしていた。
そして急降下して獲物をゲットする。
でもよく考えたら、洋上や田んぼではないのだから、地面をフツーに歩くこともできるわけで…。
だったら、いちいちホバリングしてロックオン後に急降下、なんて七面倒くさいことをせずとも、トコトコ歩いて啄み続ければいいんじゃ?
でもクロハラアジサシは、たとえ高度数十センチであろうとも、ちゃんと舞い上がってから急降下を繰り返して獲物をゲットするのだった。
やはり様式化されてしまっていると、便利かつ能率的な方法にはそうやすやすと切り替えられないということだろうか。
なんだかどこかのお役所のような…。
2023年06月12日
ピエールあらためピエレット?
2023年 6月11日(日) 晴れのち曇り
南のち北東の風 うねり少々のち波あり 水温25度~26度
昼前から風向きが北寄りに変わり、それまで清々しく晴れていた空は一面雲に覆われてしまった。
それでもこの週末を含むこのところのお天気は、まさにワタシが常日頃ご来沖をおススメしている「梅雨の中休み」で、週末を利用して数日滞在された方々にとっては大当たりの日々だったはず。
休む間もなく来る日も来る日も「梅雨」で連日の豪雨だった昨年のことを思えば、気候はのどかに我がパラダイスうるま島ってところだ。
かつて通常営業をしていた頃なら、このような日々に滞在されていたゲストのみなさんは、きっと↓こういうことになっていたことだろう。
とはいえこういうことができるのも、現在の桟橋の西側を今のように利用できるまでのこと。
既報のとおり水納港の改修工事の段階が進むと、やがて現在の桟橋は利用できなくなるから(来期工事から)、ボートの脇からボチャンと飛び込んでウェットスーツを着る…なんてことも夢のまた夢。
もちろんボートを横付けしているところでできはするだろうけど、それは構造物に囲まれた港内で、しかもすぐそばの工事現場ではガッシャンガッシャン絶えず騒音が響いているに違いない。
予定どおり水納港が新たに生まれ変わったところで、以前紹介した絵図面のような姿になった暁には、現在当店のボートを係留している側は利用できなくなる。
なにしろ防波堤を撤去する分、現行の桟橋があるところは防波$防風のための堤の役割を担う構造物になるため、海面からの高さは現在よりも2メートルほど高くなってしまうのだ。
ボートを係留するだけなら無理矢理できるかもしれないけれど、そこからボートに乗り降りしたりタンクを積み込んだり下ろしたりするのはまったく実際的ではなくなる。
というわけで、かつて当店でダイビングされる方にはお馴染みだったボート脇でのお遊びタイムは、来年以降永遠に過去のものとなるだろう。
話は変わる。
先月初めに散歩していた際、路上で見慣れないトンボに遭遇した。
ご存知のとおり陸水環境が無い水納島では、幼少期を水中ですごすトンボは生息しておらず、たまに風に乗って赤とんぼ系が立ち寄るくらいのものだから、本島ではフツーでも水納島では見慣れない、という種類ばかりで、このハラボソトンボもそのひとつだ。
きっと何かの拍子に島にたどりついてしまったのだろうから、そのうち居なくなるはず…
…と思いきや、その後もたびたび遭遇していて、気がつけば我が家の庭先を縄張りにしている気配が。
こんなところで長居しても、恋の相手も見つからないだろうに、ずっと居続けて大丈夫なんだろうか。
それからひと月経ってもまだ居続けているハラボソトンボが、今日も庭で飛んでいた。
しかも、やけに羽音が大きいと思ったら…
…交尾ちう。
真剣白刃取りに失敗したかのようなポーズをして上向きになっているのがメスで、その長いお腹の先がオスの腰(?)あたりにピト…とくっついているのがわかる。
オスは交尾前に、同じく長いお腹の先っちょから精子をこの腰のあたりにある「副性器」に移しておくのだそうな。
なんとも込み入った仕組みだけに交尾時間もわりと長く、朝のひとときをこの態勢で過ごしていたハラボソトンボカップルだった。
トンボたちにはこの交尾態勢のまま産卵行動に入るものと、メス単独で産卵するものと2タイプあって、ハラボソトンボは単独で産卵するという。
でも……水納島には産卵に適した水場が無いんですけど?
ひょっとして、器材洗い桶に溜まっている水をアテにしているとか?
そうそう、交尾といえば。
先だって紹介した最強昆虫シオヤアブもまた、このひと月ばかりは交尾シーンを観る機会が多かった。
昆虫の交尾にはいろいろあれど、互いの配偶子をくっつけ合わせる以外に他の目的は一切なし、と言わんばかりの潔い態勢だ。
ドリトル先生に出てくるオシツオサレツ(他の訳あり)状態でありながら、この態勢で飛翔できるのだからスゴイ。
飛ぶ際は、オスメスどっちに主導権があるんだろう…?
オスとメスといえば。
昨日チラと再会したものの、よんどころない事情でとくと拝見することはできなかったピエールに、この日再び会ってきた。
てっきり初遭遇は一昨年のことと思っていたら、なんと昨年5月のことだった。
昨年5月の初遭遇時はこんな感じ。
ご覧のとおり模様的には昨年からほとんど変わっていないし、体のサイズにも変化はない。
ただし今春までと比べて、その行動範囲は随分広くなっていた。
サンゴの陰から陰へ巧みにスルスル移動しながら、お向かいにある根の天辺あたりまで遠征していたのだ。
これまでそちら側に行くのを観たことがなかったものが、ごくごくフツーに行動圏内にしているということは、やはりチカラあるオスの傘下に入った、ということなのだろうか。
その広くなった行動範囲には他のヘラルドコガネヤッコもいて、仲良さげに一緒に泳いでいたりもしたピエール。
ほぼ同サイズで小柄な左の子も、きっとメスなのだろう。
このあたりを縄張りにしているオスのもと、ピエールは会員ナンバー4くらいのポジションで「メス」になっているのかもしれない。
となるとなにかとジェンダー問題がややこしいこの時代、ピエールという固有名詞は不適当?
であれば、ピエレットと呼んだほうがいいのだろうか。
いやいや、性に応じて名を変えるということのほうがモンダイの根源なのでは??
…いろいろややこしいことになるので、引き続きピエールと呼びます。
名はともかく、会員ナンバー4くらいのメスになっているのであれば、サンセットタイムに潜ればピエールの産卵シーンも観られるかもしれない。
はたしてハイブリっ子は繁殖可能なのだろうか?
※昨日クロスズメダイが入り込んでいた窪みをチェックしに行ったところ、窪みに卵などなく、そこを守っている様子もなかった。
クロスズメダイはといえば、前日と同じくらいの数がテキトーに集まったまま、水面付近でエサをパクついていた。
ミドリイシの上で多数が集まっていたのは、単に個体数が多い場合のクロスズメダイの普段の様子なのかも…。
2023年06月11日
クロスズメダイの秘め事?
2023年 6月10日(土) 曇りのち晴れ
南の風 波とうねりあり 水温25度
最早で12日と伝えられていたNTTの修理、よくあることながら、その後なんの音沙汰もないままこの日連絡があり、1便で島を訪れるとのことだった。
だからといって不在にする時間帯もあるし、つきっきりで立ち会えないからその旨告げると、水納島御用達NTT修理スタッフ氏は、まるで当方に責があるかのように不満気だった。
そんなこと言ったってアナタ、予定より2日早く来ることを一方的に当日決めて連絡してきたのはそちらでしょうに。
もっとも、早く修理してもらえるに越したことはない。
で、いろいろ確認作業を大元からし始めていろいろ手直ししつつ、最終的な不通原因は、どうやら屋外から屋内に繋げる線が傷んでいたことによるものだったらしいことが判明した。
いつものように電柱やらなにやらに取り付けられている屋外の機器のモンダイとばかり思っていたら、まさか主要原因が家側だったとは…。
立ち会えなかったら解決しないところだった。
何をどうしているわけでもないのにそこはヒトの体と同じで、ただのコードも経年劣化は避けられず、傷んでいたコードを差し替えたら万事解決。
おかげさまで、固定電話不通状態はようやく解決されました。
さてさて。
早朝こそ天気予報どおりにときおり雨がパラつく重い雲がたれこめていたけれど、日が高くなるにつれ雲はどんどん退散していき、夕刻には日差しが降り注ぐほどのお天気に。
暑くもなく寒くもなく雨も降らず強風もなく、なんとも過ごしやすいイブニングタイムだった。
晴れ間こそ出なかったけれど朝昼の海はなかなかステキで、リーフ際でボーッとしているだけでもシアワセに包まれるひとときに。
そんなリーフ際でも、この時期から姿を現し始めるチビターレたちがチラホラし始めている。
そのひとつがこちら。
撮影:オタマサ
ご存知クロスズメダイの激チビターレ。
これのどこが「黒」スズメダイ?なんて愚門を今さら発する方などまさかいらっしゃらないだろうけれど、今さら訊けない…という恥ずかしさに身を震わせている方はこちらをご参照ください。
で、クロスズメダイ、もちろんながらダイバーに注目されることが多いのはチビターレの頃で、居住環境の周辺事情にもよるものの、おおむね5センチ前後でオトナに変身することになる。
けっして群れるタイプではなく、オトナもチビチビも単独で暮らすのが基本ながら、個体数は多いからオトナもコドモも場所によっては狭い範囲に多数いることもある。
毎年チビチビは安定的にたくさん出会えるし、オトナはリーフ際に多数いるクロスズメダイなんだけど、不思議なことに産卵その他、繁殖にかかわるシーンをこれまで目にしたことがない。
3~4センチほどの小さな魚なら節穴マナコで見逃していても不思議はないけれど、クロスズメダイは大きいモノなら15センチくらいはある大型スズメダイだから、オトナの「秘め事」はたちどころに日の下にさらされるはず。
普段はリーフエッジ付近にいるけど繁殖のときはすごく深いところに行ってます…なんてことはまずありえないとなれば、きっとリーフエッジ付近のどこかで何かが行われているはず。
そんなクロスズメダイのオトナたちが、どういうわけかひとつのサンゴ群落の上で集会を開いていた。
画面に6匹、画面外にもう1匹の計7匹ものクロスズメダイが一堂に。
このあたりのリーフエッジ付近は、文化レベルの低いスカポンタンな一部の業者がこのご時世でもいまだに平気で餌付けを客にやらせているため、他の場所に比べてクロスズメダイの個体数がもともと多い傾向にはある。
とはいえ、それぞれが縄張りをもって単独で暮らしているはずのクロスズメダイが、このように一ヵ所に集合するのは異例といっていい。
ひょっとして、繁殖にまつわるシーン?
…と興味深く眺めていたところ、このうちの2匹がアヤシイ動きを始めたかと思うと、サンゴ群体の下の窪みに2匹で入り込み、しばらくしてからまた出てきた。
下の動画は、2匹が窪みに入り込んだところから。
これはひょっとして…オスが産卵床にメスを誘い、メスは産卵していたのだろうか?
窪みから出てきた2匹のうちの小柄なほうの動きが、いかにもひと仕事終えたオスの仕草のように見えるのだけど…。
よんどころない事情のため一連のシーンをつぶさにずっと観続けていることができなかったから、詳細は不明のままで終わってしまった。
次回はこの窪みをチェックして、ホントに卵が産みつけられているかどうかサーチしてみよう。