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2016年11月22日

トラギスの夜は明けるか!?

2016年 11月21日(月) 雨

北西の風 波あり  
      
 先日当日記にて紹介した新型蟹江敬三ことオジロトラギス、こういうマニアックな魚の話になると、全国3000万人の読者は、信徒に頼られた時の神のごとく途端に沈黙を守るようになるのだけれど、ここにひとり、貴重な情報を届けてくれたヒトがいた。

 某海洋写真家氏である。
 後日届いた彼からのメールをここに引用しよう。

 あのトラギス、『日本産魚類生態大図鑑』には載ってないですよ。
 あの頃、生態写真が載っていたのは、何を隠そう『フィッシュマガジン』1995年4月号のマリンパラダイス第15回「トラギスの夜は明けるか!?」です。

 ?マーク付きの「コクテントラギス? 12cm」となっていて、

 「ヨツメトラギスの雌と似ているが、背鰭に白く縁取られた黒斑があることや、頬の周りの模様など、微妙な違いが見受けられる。撮影したKINDON氏によると、ヨツメトラギスが見られる水深より深い所に生息しているという。」

 と書いてありますよ。
 まったく書いた本人がすっかり忘れて…。
 
 とイジリたいところですが、KINDON氏の方もどのポイントで撮ったのかなど、まったく覚えてないです…。

 果たして、20年以上ぶりに復活したのか、それとも、20年以上もの間、誰にも気付かれずに命をつないできたのか、どちらにしろ、ロマンがありますね。

 彼の指摘どおり、そんなことなど完全に失念していたワタシであるけれど、こうして情報を届けてくれた某海洋写真家氏が声を大にして言いたかったであろうことはただひとつ。

 「オレが最初に見つけたんやぁ!!」

 彼の負けず嫌いも相変わらずである。

 ところでここで触れられている「フィッシュマガジン」という雑誌は、何を隠そうワタシがその昔勤務していた観賞魚の専門誌である。
 もっぱら淡水の熱帯魚を取り扱う雑誌ではあるものの、当時すでに海水魚飼育が広く一般に普及し始めていたこともあって、わずかな誌面を海水魚に充てていた(そのなかの一つが、大方洋二さんの連載「海の生態学」)。

 で、海水魚方面には(わりと)詳しいということもあって、限られたページ数をほぼほぼやりたい放題やらせてもらっていて、魚をはじめとするいろんな海の生き物をグループごとにフィーチャーする「マリンパラダイス」というコーナーは、当時売出し中ですらなく、ただの自称に等しかった「水中写真家」のKINDON氏と、専業主婦でしかなかったオタマサに写真を依頼する、という形で2年近く連載していたもの。

 当時の編集長のご好意で、ワタシが退職して水納島に越してきてからもしばらく続けさせてもらっていたこのコーナー(越してきたばかりの頃は、その原稿料のおかげで食えていたともいう)、もちろん我が家でも毎号ちゃんと切り抜いて保存していた。

 しかし旧我が家の止まることを知らぬ雨漏りというジャブ攻撃で徐々にボロボロになっていった切り抜き集は、最後に台風被災により完全にトドメをさされてしまったため、あれから5年間、まったく目にする機会は無くなっていた。

 だから95年当時に自分で書いた文章など覚えていられるはずはないのである。

 でもなんだか懐かしかったから、某海洋写真家改めKINDON氏に、もし切り抜きを持っているなら、扉のページだけでも写真で送って!とお願いすると……

トラギスの夜は明けるか!?


 扉の写真どころか、カラー6ページ、モノクロ5ページをすべて見開き状態で画像にして送ってきてくれた。

 あのぉ、日々何かと忙しいとお嘆きの写真家氏ですけど、こーゆーことばかりしてるから忙しいのでは???

 ともかく、おかげでなんとも懐かしい誌面を久しぶりに見ることができた。
 それにしても「トラギスの夜は明けるか!?」だなんて、我ながらなんと秀逸なタイトルであろうか。

 せっかく届けてくれたので、件のコクテントラギス(当時)の部分を見てみよう。

トラギスの夜は明けるか!?


 キャプションはKINDON氏がメールで知らせてくれたとおり。

 20年前にして「ん?変わったトラギスがいる」と気づいた氏の慧眼もさることながら、今のようなネット社会ではなかった当時、限られた情報のなかで何を頼りにこの魚がコクテントラギス(当時)であるという結論に行き着いたんだろう?

 ちなみにこのマリンパラダイスというコーナーは、トラギス類をフィーチャーしていることからもわかるとおり、一般読者のストライクゾーンからかなりはずれたところに力を注いでいた。

 当時はまだ誰も見向きもしていなかったウミウシを特集したり、色とりどりのイバラカンザシで誌面を飾ったり、食べ物のひとつとしか認識されていなかったであろうホヤを種々並べてみたり……

 ……今でいう変態社会を地で行くコーナーだったのだ。

 もちろん、あまりにも時代を先取りしすぎて、誰もついて来られなかった気配が濃厚だ。
 先見の明を通り越した、不見(識)の明とでも申しましょうか…。

 当時はバブル景気に乗っかった空前の熱帯魚ブーム時代で、大元のバブルが崩壊した後も、熱帯魚業界は好況が続いていたおかげで、ワタシが勤めていた頃はノリノリのイケイケだったから、こういうほとんど個人的遊びといっていい連載を続けることができていた。

 しかし時代とともにブームは去り、観賞魚誌の老舗中の老舗だったフィッシュマガジン誌は、ついに先年、休刊とあいなったようだ。

 いや、けっしてそれは、トラギス特集などをしていたことが原因ではないですからね……。


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Posted by クロワッサン at 08:02│Comments(0)日々の徒然
 
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