2024年 12月30日(月) 曇り時々日差し
北西のち南西の風 おだやか 水温22度
2日がかりになるはずだったところが1日で終っちゃったものだから、この日秘密基地にいる必要は無くなった。
これで雨模様の冴えないお天気だったりしたら、そのままゆっくりして最終便で帰ってもよかったのだけど、曇りがちではあっても海は今年最後のグッドコンディション。
今月は(おそらく来月も)3日きざみで高気圧が張り出しては去り、張り出しては去り…を繰り返すものだから、たまの海日和を買い物その他のお出掛けにあてなければならないことが多く、せっかくヒマなのになかなか思うように潜ることができていない。
となれば、このラストチャンスを逃す手はない。
朝イチの便で島に戻り、それから海へ繰り出そう!
…あ。
そうだった、銀行仕事もしなければならなかった。
昨日のうちにしておくつもりでいたのだけど、あいにく日曜日、銀行の窓口は世間に対して堅くシャッターを閉ざしている。
9時の開店に合わせて用を済ませたとしても、朝イチ便は渡久地港9時出航、間に合うはずはなかった。
仕方なく、午後イチ便で戻ってから潜りに行くことにした。
でもこの日の朝はかなり冷えていて、けっこう戦意を喪失しかけていたんだけれど、昼前に外に出てみると、屋内とは違って意外に暖かい。
しかも日差しが見え隠れ。
暖かな空気と明るい光に励まされ、喪失しかけていた戦意はたちまち復活、諸々の用事を済ませ、意気揚々と島に戻ったのだった。
というわけで、本年最後、2024年の潜り納め。
だからといって過度な期待はしていなかったけれど、ポイントについて用意をしようとしていた時、70~80メートルほど離れた水面から、バシャッ!とわりと大きなものが跳ね飛んだ。
目の端だったのでよく見えなかったんだけど、サイズ的にクジラほどではないにしろ、ダツやスマなどよく水面を跳ねる系の魚よりは遥かに大きかった。
はてなんだろう?
…首をひねる前に、早くも再びジャンプ。
カジキだ!
背ビレを閉じてはいても、その戦闘的機能美に満ちた上アゴのシャープなフォルムは見紛いようがない。
どうやら泳ぎ進みながら跳ねているらしく、場所を進行方向にずらしながらも、その後もう2度ほどジャンプしてくれた。
あいにく視野30度、しかももう一度跳ねるかも…と推測して観続けるということを知らないオタマサは、いずれのチャンスでも目の端でしか観られなかったようながら、オールレンジの観測が可能でなおかつ次の動きを容易に予測しうるワタシは、2度目3度目4度目のジャンプをまざまざと拝見することができた。
何カジキかは知らねども、過去にも1~2度観たことがあるカジキジャンプ。
リーフからさほど離れた場所ではないのに、こういうところにも姿を現しているのだなぁ…。
まだ1ミリも潜っていないのに、レアものとの遭遇になんとも充実した潜り納めである。
もういいもの見ちゃったし、海中では欲張らずにのんびりしていたところ、久しぶりにハダカハブラックに出会った。
こちらで紹介しているように、ハダカハオコゼにはいろんなカラーバリエーションがあるんだけれど、そのうちこのチョコブラックは最も出会う頻度が少ない(気がする)。
肉眼で見るともっと黒く見えるのに、光を当てるとけっこうライトなブラックだった。
むしろ赤味が残っているようにも見える。
ひょっとして、ちょっと前までピンキーだったのかな?
遭遇頻度僅少につきここぞとばかりに見つめ続けていても、ユラリユラリとする以外に特に何もしてくれないハダカハブラック。
向こうも退屈してきたらしく…
…アクビしていた。
最も口が開いているところを撮ろうと待ち構えていたら、そのタイミングを逃してしまった…。
リーフ際に戻ってからは、このところのルーティンでもあるテングカワハギチェック。
この日は1ペア2匹だけ(オトナサイズ)だったけれど、ともかく健在。
一方サンゴたちに新たな禍をもたらしているシロレイシガイダマシたちは、前回もそう感じたのだけど、さほど目立たなくなってきている気がする。
これは水温が下がったために貝たちが不活発になっちゃったからだろうか。
それとも、我々の知らぬ間に有志のみなさんが排除活動をしてくれたからだろうか。
事情はともかく、この様子なら、少なくとも冬の間の2次災害とはならずに済みそうだ。
この夏には時間が取れずに潜れなかったダイバーのみなさんのなかには、年末年始こそ!と南国にダイビング旅行を予定されている方も多いことだろう。
でも夏には当たり前に観られた白化の様子を観るには、時すでに遅しか…
…とお嘆きの方も心配御無用。
生き残ったサンゴたちは完全に元の色を取り戻している一方、各種イソギンチャクたちの多くは、もう水温も22度まで下がっているというのに、依然白化したまま。
なので↓こういうシーンなら、年末年始でもまだいくらでもご覧になれます。
このようなイソギンチャクに住まうクマノミ類やテングカワハギ、それにサンゴの様子だけを気にしていたらとうてい気づかなかったであろうちょっとしたサイズの死サンゴ石の下に、アヤシゲな尾ビレが見えた。
こんなところにゴマウツボ?
そのままジッとされていたらゴマウツボか…で終っていたであろうところ、ワタシの気配を察知したのか、尾ビレをピロピロ動かし始めた。
その動き、ゴマウツボではないんじゃ?
ちゃんと覗きこんでみると…
え?ナマズ??
海にいるナマズといえば……ゴンズイ。
たしかに巨大化したゴンズイも観たことはあるけれど、ゆうに30センチはあるこの魚はどう見てもゴンズイには見えない。
あ、ちなみにダイバーにも釣り人にもおなじみのゴンズイといえば、伊豆でも沖縄でも観られる魚…
…だったはずなのに、いつの間にか(2008年)本土で観られるものと九州沖縄以南で観られるものとが、分類的に別物とされてしまった。
そしてこれまたややこしいことに、従来の和名ゴンズイには新しい種小名がつけられ(
japonicus)、沖縄で見られるものは学名はそのままに、「ミナミゴンズイ」という新たな和名が付けられている。
その違いなど、シロウト目には地域変異程度の差なんじゃねーの?ってくらいであっても、きっと両者にはアカデミック変態社会のみなさんが黙ってはいられない分類学的な「有意な違い」があるのだろう。
もう15年以上前のことなのに、今ごろ知ったワタシ。
お魚コーナーもそのうち書き換えておかなきゃ…。
それはさておき、あきらかにミナミゴンズイではないサイズ、そしてその口元。
クリクリお目目の周りには、線香花火のようなヒゲが。
エラの下のものはヒゲじゃなくて腹ビレが変化したものか?
誰だこれ?
こういうナマズ系、昔大瀬崎で何度か観たことがあったけど、なんて名前だったっけ…。
あ!
イタチウオだ!
ドデンッとでっかくて、地味で、暗がりでジッとしてばかりいるから、たとえ出会っても大きなヨロコビとはならなかった大瀬崎のイタチウオ(腹ビレ変化系のヒレになど、当時は気づきもしていない)。
しかし水納島で暮らすようになって30年目にして初めて出会ったイタチウオは、いろいろと興味深かった。
本人には申し訳ないけれど、ライトに照らされたことによって落ち着かなげになってしまったあとのその動きが面白い。
背ビレと尻ビレをピロピロ動かすその様子は、その昔熱帯魚を飼っておられた方にはお馴染みであろうトランスルーセントグラスキャットみたい。
あ、ヤツもナマズだったか…。
そのヒレの動きは画像じゃわからないので、動画で(30秒過ぎからヒレの動きがグラスキャット化します)。
危うく「ゴマウツボか…」で終わってしまうところ、よくぞ気がついた。 >俺。
というか、イタチウオが沖縄にも分布しているとは知らんかったなぁ…。
実はすでに「ミナミイタチウオ」なんて名前がついて別の種にされていたりして…。
ともかくも個人的に初遭遇となる沖縄の、いや水納島のイタチウオ。
潜り納めのダイビングは、お魚コーナーにまた新たな魚をプレゼントしてくれたのだった。
海神様、ありがとうございます。
カジキも海中で是非…。