2024年05月09日

迫りくる恐怖の足音。

2024年 5月8日(水) 晴れ

北の風 おだやかのち波あり

 この大潮は日中に随分潮が引く。
 
 前日はその干潮時を避けるため、午後1時台の1往復を2時台に変更して運航していた連絡船だった。
 
 この日は大引き干潮に加え、北よりの風が少々強めに吹く予報。
 
 激引きの時に北風に流されたら、たちまちする座礁の危険がある港だけに、おいそれとお客さんを乗せてこられない…
 
 …ということで、この日は朝イチ便のみであとは欠航ということになった。
 
 そしてその翌日は、全便欠航の可能性が高いという(7日午後時点)。
 
 GW中も連日潜っていたために、また溜まってしまった使用済みタンクの空気充填も兼ね、ちょいと出掛けて秘密基地で一泊しようと思っていた我々は、当初から自分たちのボートで出掛けるつもりではいた。
 
 でも翌日ビショビショになりそうな波になっていたら、ボートを渡久地港に残して連絡船で…
 
 …と甘いことを考えていたというのに、その手段が無くなってしまった。
 
 日帰りでは買い出しのほかにいろいろとやりたことができないから、ここはひとつ翌日が予報がいうほど荒れないと信じて予定どおりお出掛けすることにしよう。
 
 午前中にモロモロの用事を済ませ、午後から作業開始。
 
 本日の成果は…
 
迫りくる恐怖の足音。

 先日取り付けるところまでは進んだ物置のドアの、防腐防虫塗装完了。
 
 ただ塗っただけで他はなにも変わっていないというのに、超絶ストロング級の台風が来てもビクともしなさそうな重厚感…。
 
 ワタシが作業を終えるころには、例によって庭でゴソゴソしていたオタマサも終了したようなので、その後久しぶりに周辺を散歩した。
 
 いまだ沖縄気象台は梅雨入りを宣言していないようながら、生きとし生けるものはしっかり季節を把握しているので、池のほとりの木々にはこういうものがぶら下がっている。
 
迫りくる恐怖の足音。

 以前も紹介したことがある、(おそらく)オキナワアオガエルの卵塊。
 
 その下には池の水があり、孵化したオタマジャクシたちは泡から出たあと、ポトリと落ちれば水の中、という仕組みになっている。
 
 ただしここの池は古い貯水池で、現役だった当時は常時水を湛えていたものだったけれど、巨額の税金で立派なコンクリートの貯水池が近くに作られ、水源からの水は基本そちらに溜まるようになってしまっているらしい。
 
 そのため雨が少ない季節だと、この旧貯水池は水が干上がっていることもある。
 
 立派なコンクリート貯水池ができる前はカワセミを観ることもあった池も、たびたび水が干上がるようではおちおち魚も暮らしていられない(でもミドリガメは水があるといつもいるけど…)。
 
 水があったり無かったりするからだろう、一般に繁殖期は冬と言われ、12月から長くて7月までとされているのに、この旧貯水池で卵塊を観るのは決まって梅雨時。
 
 そりゃ水が無いところに卵を産んだら、オタマジャクシの運命など端から決まっているようなものだものなぁ…。
 
 昔ながらのクネクネ曲がるスージィぐゎを歩いていると、民家のブロック塀から顔を出している生き物の姿が。
 
迫りくる恐怖の足音。

 お馴染みのキノボリトカゲ。
 
 どういうわけかブロック塀にはりついた状態でジッとしていて、なおかつ口を半開きにしたまま。
 
 おかげで、キノボリトカゲのベロもガメ公と同じくピンク色をしていることを初めて知った。
 
 このまま動かないのだろうかと、少し離れたところから塀の内側を覗こうとしたら、キノボリトカゲはサッと身を翻して逃げていった。
 
 何してたんだろ?
 
 アオガエルは一般的に梅雨限定ってわけじゃないし、キノボリトカゲもオールシーズンだけど、この時期限定なのがこちら。
 
迫りくる恐怖の足音。

 サンニンこと月桃(ゲットウ)の花。
 
 天然の防腐防虫材として古来よりその葉が利用されてきたサンニン、その葉に包まれたムーチーなどはかなり香るのに対し、花は全然香らない。
 
 花は梅雨時に咲くので、このころになると沿道のそこかしこでサンニンが花を咲かせている。
 
 水納島でも(今のところは)随所で繁っていて、各ご家庭でムーチーを拵える際には、各人専用のサンニン採集エリアが決まっていたりする。
 
 ただしこれが庭に蔓延ると、けっこう厄介な存在になる。
 
 繁殖力が旺盛だから、たちまちサンニンだらけになってしまうのだ。
 
 現我が家の庭の端にもサンニンがあって、その香りをワーイワーイと楽しんでいたら、あっという間にサンニンの藪になってしまった。
 
 そのため今ではなるべく育たないようにと、絶えず葉を落として成長スピードを抑えているオタマサである。
 
 そのため花を咲かせることもなくなったのだけど、花を愛でていたら藪になる。
 
 こうして梅雨時に花を楽しむのなら、他人様の土地で咲き誇るサンニンに限るのだった。
 
 1時間ほど散歩し、ほどなく夕食。
 
 これまでなら外泊時の夕飯用買い物は本部町内のスーパーと相場が決まっていた我々ながら、先日今帰仁のかねひでで北部市町村にあるまじき(?)その実力を知って以来、名護からの帰り道を今帰仁経由にして立ち寄るようにしている。
 
 だからといっていつもいつも目を見張るものがあるわけではないんだけど、今帰仁にあって本部にはないものは確実にある。
 
 そのひとつが、バラで売られている握り寿司。
 
 ひとつ100円プラス税で108円となるこの握り寿司、この日目を引いたのが各種貝の握り。
 
 サーモンとかマグロとか各種養殖魚類ならパックの寿司セットでもお馴染みながら、貝のお寿司となると名護以北ではそうそうお目にかかれない。
 
 無類の貝好きのオタマサのこと、それに食指が動かぬはずもなし。
 
 というわけで夕食は、水納島産島タコ&コブシメのお刺身に、かねひでで仕入れたマンビカーのお刺身、そして…
 
迫りくる恐怖の足音。

 …貝尽くし♪
 
 貝といってもいろいろあって、真ん中の3つは、寿司ネタとしても王道をゆく赤貝、とり貝、つぶ貝の御三家だから、ワタシでも昔から知っている。
 
 でも右端の石垣貝、左端のアカニシ貝は、ひとつひとつ包まれているビニール袋に商品名シールが貼られていたから正体を知ることができただけで、これまでその名を聞いたことすらない。
 
 はたしてお味は?
 
 石垣貝はほどよい弾力が心地いい食感で、美味しい貝特有の旨味が口内をシアワセで満たしてくれた。
 
 一方アカニシ貝は、見るからに巻貝であることがわかるその形状から、サザエの刺身のようにコリコリしているのかなと思いきや、一度茹でてあるのか、ワタシが好む茹でたサザエの弾力に満ちていて、なおかつ美味いと来たもんだ。
 
 それにしても、初体験の石垣貝、石垣というからには八重山産…
 
 …であるはずはなく、この貝は本名をエゾイシカゲガイというのだそうな。
 
 茨城以北の寒い海で獲れるそうで、もっと南にいるイシカゲガイに似ていて、なおかつ分布域がより北であることからその名になったという。
 
 で、一緒くたにイシカゲガイと呼ばれていたものが、いつの間にか転訛してイシガキガイになっていったらしい。

 よりによって蝦夷が石垣って、転訛するにもほどがある…。
 
 一方アカニシ貝は、貝業界の漁業者にはカキやアサリの天敵として名を馳せている、肉食の巻貝なのだとか。
 
 また、その肝は毒ではないけれど相当とんでもない苦み成分があるらしく、うっかり口にしてしまったらしばらく味覚がマヒしてしまうほどだという。
 
 なにげにデンジャースネイルなアカニシ貝なのである。
 
 いずれにせよ、これまで見たことも聞いたこともなかった貝が、寿司ネタとしてさりげなく並んでいるだなんて、今帰仁のかねひで、目の付けどころは本部町内のスーパーの比ではないことだけはたしかだ。
 
 それもこれも、需要があればこそ。
 
 もともとお隣同士の町村で食文化にそれほどの違いがあるとは思えないのに、このスーパーの商品群の違い。
 
 それはひとえに、今帰仁のこのあたりには、本土からの移住者文化が広まっている…
 
 …ということなのだろうか?
 
 これが那覇あたりになると経済的な違いも目に見えて明らかで、おもろまちのりうぼうなんて、近隣の浦添や宜野湾といったベッドタウンのスーパーと比べれば、圧倒的な価格差社会、そしてもちろんその価格に裏付けされた商品格差があるものなぁ。
 
 県内ではずば抜けて高額所得者のポジションにいるオヤクニンの皆さんが多数お暮しになっているからなのでしょうかね、その需要は…。
 
 本部町のサンエーなんて、お菓子コーナーは無駄に広いというのに、ステーキ用の牛肉なんていったら、厚さ5ミリくらいのものがかろうじて並んでいる程度。
 
 日本本土がアベノミクスで生み出すようになる遥か以前から長い年月をかけて格差社会を作り続けてきた沖縄のこと、スーパーの品揃えひとつとっても、その実態が如実に伺えるのだった。
 
 でも近い将来の食糧危機を思えば、まだ買えるものがあるだけ恵まれているってことなのだろう。
 
 ちなみに2週間前は100円切っていたレタスが、この日は1玉400円。
 
 たとえモノはあっても買えなくなる、そんな日がそこまで来ているのかもしれない…。


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