タテジマヘビギンポは忙しい。

クロワッサン

2025年04月13日 10:24

2025年 4月12日(土) 晴れのち曇り時々雨

南の風 おだやかのち時化模様 水温20度~21度

  昼過ぎから次第に風、波ともに上がってきて、前線通過後の夜半には激烈な北風が吹くという予報が出ていたこの日。
 
 日中は南風とはいえ天気概況では15メートルというから、ヘタしたら連絡船は…
 
 …と危惧していたところ、余裕の通常運航。
 
 日帰り業者さんたちも洋上にボートを並べる本島各ショップのみなさんも、嵐の前はいつものとおりの通常モードだ。
 
 ただしそれは午前中だけのこと。
 
 我々もその午前中のチャンスを逃さず、海へと繰り出した。
 
 南風を警戒してか、ダイビングボートの多くは風下側に集まっていたから、遅めの出発でも各ポイントは空いていたので、例によってまたミッキータッキーのその後の様子を見に行ってみた。
 
 ひょっとしてGoneかな…と一抹の不安を抱きつつ訪れてみると、前回前々回とまったく同じところで健在。
 

 前回から1週間経って、ミッキーの耳部分が薄れてきているのがわかる。
 

 タッキーがミッキーでいられるのも、あとわずかな期間しか残されていないっぽい。
 
 一方、今さらながら初めて(推定)タカサゴスズメダイの幼魚を認識することができたチビターレたちは、数を半減させつつも健在で、相変わらず右往左往していた。
 

 依然として弱々しげなチビターレではあるけれど、1週間前の姿と比べると尾ビレの黒い筋模様には黄色が幅を利かせるようになっていたほか…
 

 …サイズも多少大きくなっていて、儚げな雰囲気がだんだん薄れてきている気がする。
 
 それでもたった1週間で半減してしまうほどのサバイバル環境、彼らのなかにオトナにまで成長できる子が1匹でもいるのだろうか。
 
 先日こことは別のポイントでも(推定)タカサゴスズメダイのチビターレ集団に出会ったのだけど、そこでもやはり10匹程度の集まりにすぎなかった。
 
 水納島で観られるタカサゴスズメダイのオトナは大集団を作るわけではなく、せいぜい20匹前後が集まっている程度だから、フツーに見られはしてもやたら数多いというほどではない。
 
 幼少のみぎりのこのような境遇を思えば、たとえその程度の数であっても、よくぞオトナになるまで育ったねぇ…と感心してしまう。
 
 孵化後浮遊幼生期間を経てチビターレたちが根にたどり着いたばかりの頃はあまりにも小さく、様々な魚たちの餌食になっているであろうことは想像に難くない。
 
 激チビターレの頃には、↓こういう小さな魚でさえチビターレたちの脅威になっている。
 

 赤い体にピンストライプが特徴の、タテジマヘビギンポ、略してタテギン…と呼ぶヒトはいない。
 
 忌避生物ワースト5に必ず入る「ヘビ」がその名に含まれているせいか、それともやたらと数多くいるせいか、人気の面ではいまひとつながら、沖縄でダイビングしている方でこの魚を見たことがないというヒトはいない。
 
 こんな小さなギンポが捕食者になるの?
 
 と思われるかもしれないけれど…
 

 …このようにしっかりプレデターになっている。
 
 かつてフィルム時代にオタマサが撮ったこの写真、タテジマヘビギンポが捕らえているのはスカテンのチビだとこれまでずっと思い込んでいたんだけど、今見てみると、なんとなくスズメダイ系のチビっぽい。
 
 それも、(推定)タカサゴスズメダイの目とそっくり…。
 
 こんな小さなギンポにまで食べられてしまうのだとしたら、激チビターレたちが砂底の根で生き抜くだなんて、ほとんど奇跡に近いかも。
 
 ところで、その意外なプレデター・タテジマヘビギンポ、図鑑などの写真で見かける様子は、いつも何かにチョコンと乗っている。
 
 海中で見かけても、パッと見ではやはりチョコンと佇んでいる。
 
 そのため、「タテジマヘビギンポはいつもジッとしている魚」と思っておられる方が多いかもしれない。
 
 でも実際のタテジマヘビギンポは、いつもちょこまかと忙しそうに動いているのだ。
 
 流れてくるプランクトン系を食べるためにしばしばフワッ…と浮くほか、春の繁殖期には縄張り意識が高まるのか、個体数が多いこともあって隣人と張り合う様子もよく観られる。
 
 そんなタテジマヘビギンポの暮らしを、しばし動画で垣間見てみよう。
 
 その前に、チョコッと予習。
 

 登場人物は白い矢印の下の3匹のタテジマヘビギンポで、左の子は最後のほうでアクビも披露してくれる。
 
 ちなみに右下の黄色い矢印の先はカンザシヤドカリで、さりげなくゲスト出演してくれていた(撮っている際にはまったく気がついていなかった…)。
 
 というわけで、いささか長い動画です。
 
 
 
 オスが興奮カラーになってメスとよろしくやっていたり、ケバケバした藻が生えているところで卵を守っている姿も観られる今の時期は、夏とは違うタテジマヘビギンポの様子を観られるチャンス。
 
 もっとも、水温が激低い海中で、ジッと彼らの姿を見つめていられるか…というモンダイもあるけれど。

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