意外なツーショット。

クロワッサン

2025年05月17日 08:31

2025年 5月16日(金) 晴れ

南の風 おだやか 水温22度~24度

 4月末からワタシが口を酸っぱくして沖縄は梅雨入りしていると言っていたのに、気象庁がグズグズしているうちに、とうとう九州南部が全国に先駆けて梅雨入りしたそうな。
 
 九州南部が全国イチで梅雨入りするのは、観測史上初だという。
 
 近年の沖縄の梅雨はすっかり昔と様相が変わっているにもかかわらず、 30年前の梅雨のありようしか「梅雨」としか認めない頑迷固陋な気象庁のなせるワザである。
 
 さすがオヤクニンの世界、米農家が吐いて捨てるほどいた時代からずっと変わらぬ農政を十年一日のごとく続けていた結果、気がついたら米が無くなってた…なんて話と同じようなものかもしれない…。
 
 さてさて、梅雨の長期休暇中の好天に恵まれたこの日、3日ぶりに海へGO!
 
 すると航路の赤灯台に、彼らの姿が。
 

 この反対側にもう3羽いたので、計6羽のエリグロアジサシたちだ。
 
 斥候隊として島の様子を見に来ているのであろう彼ら、港は大工事中だわ、防波堤は切り崩されているわで、ひょっとすると結論は…
 
 「ダメだ、こりゃ。」
 
 …になってしまうかもしれない。
 
 ともかく今年もなんとか姿を拝むことができてうれしい。
 
 かなうことなら本隊も来てほしいなぁ…。
 
 アジサシの今季初飛来に気を良くしつつドボンとエントリーしたところ、水温が上がっていた。
 
 ドボンとエントリーしてから、しばらく10メートル以浅にいたところ、妙にフードの中が暖かすぎるなぁと思ったら、ダイコンの水温表示は24度を示していた。
 
 好天が続いているから、それなりに上がっているだろうと期待していたとはいえ、3日前は21度だったのに、たった3日で3度も上昇?
 
 もっとも、24度もあるのは水深10メートル以浅限定で、そこから深いほうへ行くと途中に水温の断層があって、春っぽい22度の世界になっていた。
 
 温かいところから急に冷たいところに入り込むと、冷水に浸されたうどんのキモチがよくわかる。
 
 5月の半ばを過ぎて22度というのはけっこう低めギリギリボール1個分はずれているってくらいに低温なんだけど、だからだろうか、低水温時にやる気モードの季節を過ごすタテジマヘビギンポが、張り切って産卵&放精を繰り返していた。
 
 タテジマヘビギンポは、藻が生えた岩肌の表面に、卵が藻で隠れるように産み付けるので、この時期そういうところに普段より色を濃くしたオスがいれば、卵を守っていることが多い。
 
 さらにそこにメスまでいれば、産卵シーンが観られる。
 
 ヘビギンポ類なので、タテジマヘビギンポも先日紹介したベニモンヘビギンポと似たような行動様式なんだけど、ベニモンヘビギンポに比べれば遥かにメジャーで身近なタテジマヘビギンポでありながら、産卵シーンを観たことがあるという方はそんなに多くないかもしれない。
 
 産卵モードに入っているメスは、藻が生えている岩肌に腰を押し付け、腰をクネクネさせながら卵を産みつける。
 

 下腹部にある白いところ(輸卵管)から卵をムニョッ…と産むメス。
 

 それを傍で観ているオスは、卵を産んだ気配を察知して近寄ってくる。
 

 メスはメスで「産んだよー」サインを送るので、それを合図にオスはサッとメスのもとへ。
 

 そしてメス同様腰をクネッとさせながら、卵にシュッと放精し…
 

 …パッと離れる。
 
 このようにコマ送り的に見るとオスの動きはのんびりしているように見えても、実際はベニモンヘビギンポと同じくサッシュッパッの動きは目にも止まらぬ一瞬の早ワザだ。
 
 一瞬なので肉眼ではちゃんと見えていないのだけど、写真で見ると、オスメスどちらも、つま先立てて海へと歩く、イカした娘のモンローウォークなみにため息混じりのステップで腰をくねらせているのがわかる(R-50)。
 

 そんなタテジマヘビギンポの産卵シーンの様子を動画で…。
 
 
 
 なんの変哲もない岩肌に見えつつ、卵を産み付けるには絶好の場所としてオスがキープしている産卵床なので、そこに邪魔者が接近してくると激しく追い払うあたり、やはり繁殖期のオスは血の気が多くなっているらしい。
 
 産卵はまだずっと続くようだったから、もう少しじっくり撮らせてもらおうとしていたところ、背後からオタマサが呼ぶ声が。
 
 振り返ると、何かモゴモゴ言っている。
 
 聞き取れないので砂底に字を書いてもらったら、
 
 「ナ」
 
 ふん?
 
 「カ」
 
 ふんふん?
 
 「モ」
 
 なに!?どこどこどこ??
 
 すぐ近くのようなので、案内してもらったら、ホントにいた。
 
 さて問題です、「ナカモ…」ときたら、あとに続く名前は何でしょう?
 
 すぐにピンと来たあなたは合格、まったくわからないそなたはお逝きなさい。
 
 はい、もちろん「ナカモ…」ときたら、こちらの方です。
 

見やすくするため天地を逆にしています

 ご存知ナカモトイロワケハゼ。
 
 まだ小さな若い個体だ。
 
 水納島でナカモト君と出会えるのはたいてい30メートル以深なので、それほど身近な存在というわけではない。
 
 でも徒労を徒労と思わないオタマサの砂底サーチダイビングでは、こちらで紹介しているように意外に遭遇率がけっこう高い魚でもある。
 
 ワタシはかなり久しぶりの再会なので、どこでも観られるタテジマヘビギンポなどあっさりうっちゃらかして観させてもらった。
 
 ワタシがオタマサに案内されたころにはもう、ナカモト君はさんざんオタマサに弄ばれていたため、かなり奥まったところにいたんだけど、オタマサが見つけた際にはもっと外に近いところまで出張っていたようだ(以降写真4点撮影:オタマサ)。
 

 こんなポールポジションにいてくれているにもかかわらず、撮った写真すべて背ビレを畳んでいる状態で写っているってことは、ナカモト君は相当リラックスしていたのだろう(ワタシなら背ビレを立ててくれるまで待つけど…)。
 
 ナカモト君の住処の全体像を撮っておこうと思ったオタマサ、目の端に動いた黄色い魚は2匹目のナカモト君だろうと思い込んで撮ったところ、その黄色い魚はすぐに奥の奥に引っ込んでしまったらしい。
 
 でも写真には姿が残っていたもう1匹。
 

 ただし後刻PC画面で確認したところ、それは…
 

 …なんとイレズミミジンベニハゼなのだった。
 
 えー、人工漁礁的瓶詰写真ならともかく、天然状態でイレズミ君がナカモト君と同じところにいることもあるの?
 
 撮った本人がまったく気がついていなかったのだからちゃんと撮れているわけはないんだけど、イレズミミジンベニハゼとナカモトイロワケハゼのツーショット。
 

  まぁどこにいるのか説明を必要とする写真を、ツーショットと称していいかどうかは不明だけど…。
 
 浅いところに戻ってきた後は、目につくシロレイシガイダマシを排除していたところ、リーフエッジに育っているヘラジカハナヤサイサンゴの枝間で、セダカギンポが産卵に勤しんでいた。
 

 セダカギンポは、生きているサンゴの共肉を剥ぎ取って産卵床にするので、パッと見はシロレイシガイダマシの食害のように見える。
 
 でもその白くなった枝に見える黄色い部分は…
 

 産みたてホヤホヤのタマタマ―。
 
 メスが少しずつ産み付けると、オスはそこに精を放つ。
 

 以前も紹介したように、オスこのときブラシ状の卵受精専用器官を下腹部から出していて、そのブラシを卵にこすりつけるように動く。
 
 あいにくこの日はうまく撮れなかったから、詳しくはこちらでどうぞ。
 
 セダカギンポの産卵シーンは、過去何度も目にしたいずれのケースも午前のダイビング、しかも10時台だから、ワタシはもう、セダカギンポの産卵は午前10時過ぎに観られるもの、と決めつけているんだけど、間違っていたらゴメンナサイ。
 
 梅雨の長期休暇のおかげで水温も上がり、魚たちがますます活発になってきた。

 いろいろ見どころがありすぎて、1時間やそこらじゃ全然足りない。
 
 まだしばらく長期休暇は続くようだから、週末はこのチャンスを活かすとしよう。

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