2024年 10月29日(火) 雨
北東の風 かなり波あり
未明からけっこう吹いていた風は朝になってもおさまらず、洋上は欠航確定級の時化模様になっていた。
前日の時点では通常運航が約束されていたこの日ではあるけれど、これでは無理なんじゃ…?
…と思いきや、満潮時のうねり回避のために10時台の1往復だけ見合わせた以外は通常運航。
なんだ、やればできるんじゃん。
水納港停泊中に翌日の見込みを船長にうかがったところ、明日も10時台の1往復は欠航するかもしれないけれど、基本通常運航とのこと。
それもこれも台風の進路がどんどん西へ西へとずれていくからで、結局台湾に上陸して大陸まで達し、そこから東進という進路予想になってきている。
かなり強大に育つとはいえ随分遠いし、ターンするまでは離れていく一方ということもあって、うまくいけば2日までこのまま運航できるかも…と船長。
2日の用事のためにその前後合わせて一週間以上本島単身赴任になるか…と覚悟していた当初に比べれば、大幅な状況改善である。
台風21号もまた、台湾攻撃のためのキンペイウェポンだったのだなぁ…。
西進台風のおかげで今日も島に居続けることができたのはよかったのだけど、あいにく本日は朝からずっと雨雨雨。
おかげでのんびりワールドシリーズを観戦することができるとはいっても、マラソン中継よりも遥かに長い試合時間中、ずっとテレビだけを観てもいられない。
なので野球中継を観ながらPCを立ち上げて最近撮った画像などを観ているうちに、ネタにしようと思いながらお伝えし忘れていたことがあったことに気がついた。
これまで何度か紹介しているように、近年のリーフ際には、アカヒメジが群れるようになっている。
群れはリーフに沿ってある程度移動するため、いついかなる時も同じところにいるわけではないんだけど、ボート下に集まってくれている時に出くわすと、ついついカメラを向けてしまうもの。
なので無駄にたくさんある何の変哲もないアカヒメジの群れの写真、それらを見ていると、撮っている際にはそのつもりはなかったのに、とある共通項を持つ写真が多いことに気づく。
最初の写真も含めたこの4枚のアカヒメジの写真、その「共通項」とは、さて何でしょう?
慧眼なる皆様におかれてはすぐさまお気づきになったことだろう。
そう、
クロモンガラが一緒に写っているのだ。
そもそもリーフ際に多いクロモンガラだから、アカヒメジが群れているところに写っているからといって不思議でもなんでもないんだけど、ここに写っているクロモンガラたちは、たまたま一緒に写っているのではなく、能動的にアカヒメジの群れにつきまとっているのだ。
クロモンガラだけではなく、各種ベラ類やブダイ類もまとわりついていることがある。
そこでモンダイです。
なぜ彼らはアカヒメジにつきまとっているのでしょう?(↑左上のアオヤガラは別目的です)
5時間考えてもその理由に思い至らなかった方は、その答えがすぐさまわかる↓この動画をご覧ください。
そうです、彼らはアカヒメジのウンコ待ちをしているのでした。
ボンヤリ泳いでいるように見えつつ、ひとたびアカヒメジがウンコをすると、ダッシュで駆けつけるクロモンガラやブダイたち。
アカヒメジのウンコ待ちをする魚といえば、ワタシが最初に気がついたのは
スミツキベラだった。
普段そのような行動をしないスミツキベラが、アカヒメジの群れにつきまとっていたから不思議に思い観ていたところ、その目的が明らかになった次第。
当時ウンコ待ちしている魚はこのスミツキベラくらいのものだったのに、それが今や各種ベラやブダイに止まらず、クロモンガラまでがアテにするようになっているのだ。
その昔の水納島は、今に比べれば遥かに透明度は高く、海に流れこむ有害物質の影響も少なかったからかなんなのか、魚たちの数も格段に多かった。
ただ、ことリーフ際にかぎると、食用系の魚たちの数は今のほうがよほど増えているといっていい。
というのも、その昔は伝説のウミンチュおじぃがお元気で、本島から小さな小さなボートで水納島のリーフ際に来ては、お一人で追い込み漁をやっておられたため、群れるタイプの食用系魚たちの姿はリーフ際では稀だったのだ。
アカヒメジなどは格好の獲物だから、群れていようものならたちまち漁獲されていたことだろう。
沿岸域の魚を獲って糧にするウミンチュなど遠の昔に絶滅しかけているなかでたったお一人とはいえ小さな島のこと、恒常的に漁が行われているところに水産資源系の群れが居座るはずはなく、当時はリーフ際でアカヒメジの群れなどあり得ない光景だったのだ。
ところが寄る年波でさすがのレジェンドも出漁できなくなり、やがて捕獲圧が途絶えたのにともない、次第次第にリーフ際に水産資源系の魚が増えてきた。
今でこそリーフ際で当たり前に群れているアカヒメジもそのひとつで、巨群がリーフ際の浅いところに現れ始めた時には驚いたものだった。
リーフ際で暮らす他の魚たちにとっても、きっとそれは同じようなものだったのだろう。
で、最初にその利便性に気がついたのがスミツキベラ…ということだったのではなかろうか。
スミツキベラが楽してブクブク太っていく様子を観ていたのかどうか、騙されたと思って試してみたら…というノリで、次々にアカヒメジウンコ愛好家が増えていったのかもしれない。
普段いったい何を食べているのやら、アカヒメジのウンコは相当栄養豊富らしい。
その点ブダイの絨毯爆撃ウンコは、よっぽどカスなのだろう、誰一人見向きもしない。
ま、サンゴ礁域の砂浜の砂の5パーセントはブダイのウンコ由来である、という研究もあるようだから、これはこれでけっして無駄にはなっていないのだけど。
ここにきて今度はリーフ際を流しながら船釣りを恒常的にするヒトが出てきたせいか、群れが出現し始めた当時に比べれば随分減ってしまったアカヒメジではあるけれど、それでも今のところお馴染みの魚たちでいてくれている。
居ることが当たり前になってからご覧になっている方々にとってはたかがアカヒメジ、でもいなかった時も知っているヒトにとってはされどアカヒメジ。
今夏の白化でサンゴが激減してしまったら、はたして彼らはどうなるのだろう?
いつまでも いると思うな アカヒメジ。
観られるうちに是非ご堪能くださいませ…
…いやもちろん、ウンコじゃなく眺めを。