2024年12月24日
ウミウシの変身。
2024年 12月23日(月) 曇り
北東の風 けっこう波ありのち少し波あり 水温22度~23度
一日中曇り空のお天気ではあったけれど、前日に比べれば随分暖かく、ガメ公ですら外に出てきてムシャムシャエサを食べるほどだった。
寒くはなくても朝のうちはまだ前日の強風の名残りがあって、洋上はわりと波波だ。
それでもその後回復していく見込みということもあって、連絡船はようやく通常運航に。
ダイビングボートは本島から来ているのに連絡船が欠航していた先日とは逆に、この日は連絡船が運航しているのにダイビングボートは1隻も島の周りには見えなかった。
行きたいところに行けるチャンス。
というわけで海へGO!
行きたいところとはほかでもない、その後のバロニアモウミウシチェック…
…とオタマサが言う。
そりゃその後の経過は気になるところではあるけれど、たった2日で何がどう変わるということもなさそう。
ま、ウミウシが居なくなっているってことはありそうかな?
とはいえ最初からリーフ際に居続けるのもなんなので、まずはルーティンコースを巡ってみたところ、過去に何度か紹介している同じ場所に、もうかれこれ何代目になるのか不明のカンザシヤドカリsp.の姿があった。
巣穴周辺のサンゴが傷んでいるから同じ場所感が薄れているけれど、これまで多くのゲストにご覧いただいた場所だから、ご記憶の方も多いことだろう。
いつ頃からだったか忘れたけど、このごろは巣穴入り口に綺麗めのイバラカンザシの親戚がついていて、2匹が仲良くおしゃべりしているかのような風情になっている。
これぞまさしくカンザシヤドカリ?
一昨日は6ミリ半のウェットスーツ導入のおかげで寒さのストレスが無くなったと書いたばかりだというのに、今日はエントリーと同時に寒い。
やはり太陽が出ていないと潜る前のぬくもり貯金がゼロのままだから、エントリーと同時にマイナスになっていくのだろうなぁ…
…と思いつつダイコンの水温表示を見てみると、水深15メートル以深では前回より1度低い22度表示。
数字を見た途端にいっそう寒さが募ってしまった…。
そんな水温だというのに、ムチカラマツにはガラスハゼの卵があった。
低水温ながらも卵の発生はちゃんと進んでいて…
…お目目キラキラ。
ちなみにこのムチカラマツでは、今月3日にも卵を確認していた。
このときは現在より1度ほど高い水温だったとはいえ、それでも夏場に比べれば遥かに低い。
だからといって発生がこのまま3週間ずっと停滞したままってことはないとなると、ここのガラスハゼ夫婦はこの卵たちが孵化したあと、さほど時を置かずにまた次の卵を産んだということになる。
こんな季節に?
ガラスハゼ、気でも狂ったのだろうか。
高水温期間が長すぎて、調子狂っちゃったのかなぁ…
…と思いつつも念のために拙日記の過去記事を確認してみたところ(PC版ページでは、左にブログ内検索窓があるので、「ガラスハゼ」で検索すると過去記事をまとめて見られるのです)、なんとなんと今年1月、今よりもさらに冷たい海の中で、ガラスハゼは産卵していたのだった。
今年のデキゴトだというのに、それも、こんな寒い季節にフツーに観られるということを再認識していたというのに、そんなことなどすっかり忘れていただなんて。
どうやら調子が狂っているのは、ガラスハゼではなくワタシのほうらしい…。
リーフ際に戻ってきて、そろそろバロニアモウミウシチェックでも…と思い始めた時、眼下に真っ黒クロスケの姿が。
今春ついに当店Tシャツモデルデビューとなった真っ黒クロスケ、昨年までの2年ほどの間はやたらと遭遇頻度が高く、同じ子が同じ場所に長い間居続けてくれていたというのに、デビューさせた途端すっかり影をひそめてしまっていた。
それが秋の初め頃から再び安定的に見られるようになってきて、冬になってもけっこう出会えている。
こうしてあらためて見ると、やはり下アゴの黄色いラインは目立つなぁ…。
モデルになってもらうに際し、コスト的にも当初は黒一色で…と思っていたのだけれど、やはり真っ黒クロスケとはいっても背ビレの黄色は捨て難い。
割愛した口にも、黄色は捨て難かったか…。
そうやってあれこれ思案した黄色ながら、世の中には何度も何度もハナヒゲウツボの幼魚をご覧になっているにもかかわらず、背ビレが黄色いことにまったく気がついていない方もいらっしゃったのだった。
たしかにこのアングルから眺めてばかりいると、背ビレは見えないか…。
この真っ黒クロスケはかなりのお利口さんで、どれほど近寄っても全然引っ込まない。
ワタシがいるせいでアカテンモチノウオがフラフラ近寄ってきては、真っ黒クロスケに嫌がらせをするように巣穴まで来てビビらせるから、その都度クロスケは引っ込む。
でもその後すぐさま顔を出してくれるほどのお利口さんだ。
クロスケがお利口さんであることをいいことに、あーでもないこーでもないと撮っているうちに、ついうっかり時間を費やしてしまった。
というわけで、このあとバロニアモウミウシチェックに行けず。
ま、いっか、オタマサが行っていることだし。
そしてきっと何の変化も無かったというレポートで終わるのだろう…
…と思いきや!
クリアー状態になっていたオオバロニアの細胞壁の中では、意外な変化が出来していたのである(以下の写真すべて撮影:オタマサ)。
まず、卵が増えていることに気がついたオタマサ。
白で囲っている部分に見られるバカボン印は、2日前には無かったものだ。
ただ、かなり小さなバカボンではある。
前回2匹いたうちの、小さいほうが産んだ卵なんだろうか?
ところで肝心のウミウシの姿は?
1匹だけ確認できたオタマサ、しかしそのウミウシの姿は…
…あれ?
こちら側にくっついているため見えているのはウミウシの腹側、という違いはあっても、その蓑の部分(背側突起)の色合いが、前回観たヤツと全然違うんですけど?
お腹側から見ているからだろうか。
オオバロニアの細胞壁のなかを這っているこのウミウシが、奥の方に行ったところを無理矢理背側から撮った画像を見てみると…
形状はそっくりながら、やっぱり色は全然違っている!
どーゆーことですか、これは。
元々緑色だったものが、この2日間の間に食べたエサのために(もしくはエサを食べていないために)オレンジ色に変わった?
それとも、前回観たウミウシたちが産卵を済ませて外に出ていったあと、近縁ながらも別種のウミウシが入ってきてヨっコラショ…とばかりに卵を産んだ?
ウミウシ変態社会では、これは広く知られている話なんだろうか…。
たった2日じゃ大した変化はないだろうとタカをくくっていたら、思いがけず新たなナゾが。
この疑問を抱えたままでは年を越せなくなってしまう。
ご存知の方、テルアスプリーズ!
ところでこの日の朝は、海へ行く前に、連絡船用バースに避難させてあったうちのボートをまずは定位置へ戻す必要があった。
で、ロープを解いてボートを動かそうとしたそのとき、眼下に黒く蠢く祟り神が。
ミジュンだ!
この師走にミジュンの群れだなんて、少なくとも水納島の桟橋周辺では目にしたことがない(はず)。
夕刻になっても桟橋周辺にたむろしていたから、シメシメとばかりに竿片手に桟橋へGO。
すると、すぐさま1匹ゲット。
サビキセットなのに1匹ずつってのもなんだけど、群れに放り込めばすぐ食いつくから、この調子ならあっという間に10匹20匹になっちゃうかも。
浚渫のせいで白濁しているため、ミジュンたちも何が何やらわからないまま食いついてくるのだろうか。
そもそもミジュンが群れているのは、浚渫が進んで泊地の深い部分が広大になり、群れにとって居心地がよくなったからかもしれない。
なんだ、時ならぬミジュンは工事のおかげか!
…と喜んでいたところ、次第次第に群れは桟橋から離れてしまった。
これじゃあ届かないじゃん。
でも夕刻になって活発化しているだけで、少し待てばまた桟橋脇に戻ってくるかも。
…と気を取り直してしばし待とうとしたら、なんてことだ、バージが入港してくるではないか。
工事のおかげでミジュンが釣れたのはいいけれど、その工事のおかげで釣りができないのであった。
というわけで、オタマサはたったの1匹、ワタシは3匹で終了とあいなってしまった。
たった4匹とはいえ、獲れ獲れピチピチ。
もちろん夕食には…
…お刺身で登場。
さすが冬になってさらに成長しているだけあって、秋の初めにいただくミジュンとは脂のノリが全然違う!
夕食に食べる分だけ釣ってくる…というのも、考えてみればゼータクな暮らしなんだけど、物欲が満たされることがゼータクだという価値観の社会では、なかなか生きづらくもあるのだった。
この記事へのコメント
初めまして。いつも魚の写真と面白い解説を楽しみにしています。水納島の魚たちのウミヘビの中にある、謎のウミヘビはテングギンポハゼではないでしょうか。本島ではレッドビーチにいます。
Posted by YUSUKE at 2024年12月24日 23:49
貴重な情報をありがとうございます!
あの魚は「ハゼ」だったのですね…(汗)。
テングギンポハゼの名で画像検索してみましたところ、出てくるわ出てくるわ…。
さすが変態社会(敬称です)、ほとんどの時間穴から顔を出しているだけだというのに、よくもまぁみなさん見つけられるものですね。
これを「ウミヘビ」として載せたままにしておくと恥ずかしいので、早々に訂正しておきます。
ところで、YUSUKEさんは「沖縄本島魚類図鑑」のYUSUKEさんでしょうか?
こちらこそ、勝手ながら貴サイトをちょくちょく参考にさせていただいております。
今後ともよろしくお願いいたします!
あの魚は「ハゼ」だったのですね…(汗)。
テングギンポハゼの名で画像検索してみましたところ、出てくるわ出てくるわ…。
さすが変態社会(敬称です)、ほとんどの時間穴から顔を出しているだけだというのに、よくもまぁみなさん見つけられるものですね。
これを「ウミヘビ」として載せたままにしておくと恥ずかしいので、早々に訂正しておきます。
ところで、YUSUKEさんは「沖縄本島魚類図鑑」のYUSUKEさんでしょうか?
こちらこそ、勝手ながら貴サイトをちょくちょく参考にさせていただいております。
今後ともよろしくお願いいたします!
Posted by クロワッサン at 2024年12月25日 07:00
サイトを訪問いただいていたとはありがとうございます。
沖縄本島魚類図鑑も各魚のコメントはネットからの情報が主なので、間違ってる説明も多いかと思います。ところで、S先生が定年退職されてしまって聞くべき専門家に苦労しておりますので、また参考にさせていただきます。
沖縄本島魚類図鑑も各魚のコメントはネットからの情報が主なので、間違ってる説明も多いかと思います。ところで、S先生が定年退職されてしまって聞くべき専門家に苦労しておりますので、また参考にさせていただきます。
Posted by YUSUKE at 2024年12月25日 14:24
当サイトなど自他ともに認めるウソ800解説ですから、くれぐれも話半分以下でご覧くださいね(笑)。
私事ながら先月に大学関係の記念パーティーがありまして、そこにS先生もご出席されていたので、あつかましくもご挨拶させていただきました。
先生いわく、退職したとはいえ多様な残務がいろいろあって、けっこう忙しくされているようです。
そのうちまた我々一般ダイバーが魚についていろいろうかがうことができるような、ネットワークなりお仕事なりを始めてくだされば素敵ですね。
私事ながら先月に大学関係の記念パーティーがありまして、そこにS先生もご出席されていたので、あつかましくもご挨拶させていただきました。
先生いわく、退職したとはいえ多様な残務がいろいろあって、けっこう忙しくされているようです。
そのうちまた我々一般ダイバーが魚についていろいろうかがうことができるような、ネットワークなりお仕事なりを始めてくだされば素敵ですね。
Posted by クロワッサン at 2024年12月25日 17:25