2021年12月31日

スペシャル・デリバリーサービス。

2021年 12月30日(木) 曇り時々晴れ

北の風 時化模様

 予報どおり前夜から強い北風が吹き始め、夜明け頃には再び「冬」状態になっていた。
 
 ここ数年のこの時期にたびたび書いている気がするけれど、昔に比べ、大陸の高気圧が張り出してくるローテーションが早くなっている。
 
 以前なら中6日7日は当たり前、10日くらい間が空くのもフツーだったのに、近年はなんだか鉄腕稲尾が投げていた当時の主戦投手のローテーション状態だ。
 
 この鉄腕稲尾ローテーションのおかげで、冬の間はたとえ運航しても載せるものといえばほぼ空気だけの連絡船は、高騰する燃料代を大幅に節約することができているのだった。
 
 晦日大晦日と連絡船が欠航しそうという情報は早くから流れていたこともあって、いつもなら晦日大晦日に帰省してくる家族・親戚の方々のなかには、例年より早めに島入りしているヒトたちもいる。
 
 この日カメさんたちのエサ採りで歩いていたら、リョウセイさんのおうちでは年末の庭の大掃除大会が開かれていた。
 
 ん?
 
 リョウセイさんが2人いる?
 
 ついに乱視まで入ってきたかと思ったら、その2人の動きは別々だ。
 
 その体型と年齢からは予想できない素早い身のこなしをするリョウセイさん、ついに分身の術まで身につけたのか……
 
 …と思ったら。
 
 2人目のリョウセイさんは、次男のマサノブなのだった。
 
 かつてビーチでアルバイトをしていたときはあんなに痩せていた彼だったのに、親の苦労を見て育ったからだろうか、現在はいわゆる堅いシゴトに就いているので生活安定体重も安定、今や30年前のリョウセイさん(髪の色以外今と変わらない)とそっくりになっている彼である。
 
 我々が越してきた頃はまだ小学生だった彼も、あと数年で不惑ともなれば無理からぬことか。
 
 でも遠くからにこやかに手を振ってくれる姿は、小学生当時と変わらないマサノブスマイルだった。
 
 さてさて、数日後に迫るお正月、暴飲暴食できるほどの体力はないとはいえ、グータラする日々になるのは間違いないので、せめて年末くらいは質素倹約に努め、調子に乗ってバカ食いしないよう、自らを戒めよう……
 
 …と思っていたら。
 
 夕刻、民宿大城のヤスシさんが持ってきてくれたものは……
 

 握り寿司ヤスシさんスペシャル!!
 
 以前は新年会で、近年は大晦日の忘年会でふるまっていただいているいわば毎年恒例のスペシャル、コロナ禍のせいで会食中止になった昨年に続き、今年も豪華なデリバリーサービスだ。
 
 あらかじめナリコさんから、「お寿司持っていくからね!」とお知らせいただいていたので、昨年同様大晦日はお寿司で年越しだ、と思っていた。
 
 ところが晦日大晦日の連絡船欠航が確実視されているおりでもあったため、ネタの仕入れの関係で1日早くなったのだ。
 
 というわけで、質素倹約の努力は早くも崩壊し(家計的には倹約ではあるけれど…)、今宵も酒が進むのであった。
 

 まぁ我が家の場合は、ある意味年がら年中お正月のようなものなんですけどね…。

 そんなこんなで今年もいよいよあと1日。

 みなさまよいお年をお迎えくださいませ。
  


Posted by クロワッサン at 08:48Comments(0)島の美味いもの

2021年12月30日

プレイバック2021・オタマサ編。

2021年 12月29日(水) 曇りのち雨降ったり日差しが出たり

東のち南のち北の風 おだやかのち時化模様

 今週は昨日今日の2日間だけが、海況穏やか補償付き。
 
 前夜は本島の秘密基地泊だったから、せっかくだからこの日は秘密基地の大掃除をしてから午後の便で…としたいところ。
 
 でも穏やかすぎて水納港の周りにまたいつなんどき軽石が広がってくるか知れたものではないし、午後から雨予報でもあったので、朝イチの便でとっとと島に戻ることにした。
 
 予報どおり昼から雨がちになってきて、降っては止み降っては止みをしつこく繰り返しながら、やがて夕刻になると北風へとシフトチェンジ。
 
 午後の便の到着時には案の定雨が降っていた。
 
 雨の中軽トラに荷物を載せて…なんてことにならずに済んでよかったよかった。
 
 そして!
 
 連絡船の運航が約束されていたこの2日間の最後の便(
といっても合計4往復だけだけど…)にて、鮮魚たけおの荷物も到着!
 
 ああ、これで新年を迎えることができる…。
 
 しかも!
 
 元ドレヤンフカガワ水産夫妻から、またしてもまさかのシマアジも!!
 
 さらに!
 
 春に母が亡くなり、毎年師走になると送ってくれていたお餅はもう二度と届かないから、お正月用のお餅は無いものと覚悟していたところ、一度亡母とともに水納島に遊びにいらっしゃったこともあり、その後も音信のやりとりが続いている母のご友人さんから、まさかのお餅が届いた!
 
 お餅のほか、痒い所に手が届くような、あると助かるいろいろなものも併せて送ってくださっていた。
 
 搗きたての餅を送るついでに空いたスペースにステンレスのボールを入れてしまったがために船便に回され、届いた頃には餅がカビで緑色になっていた…なんてことを平気でやっていた亡母ながら、ついでに入れてくれていたいろんな小物や食品などは離島民には大変ありがたかったものだった。
 
 まるで実家から届いたかのような荷物は、そんな記憶を懐かしく甦らせてくれたのだった。
 
 年末のお忙しいなかにもかかわらず、みなさんどうもありがとうございます!
 
 ああ、連絡船が運航できる間に届いてよかった……。
 
 話は変わり、プレイバック2021・オタマサ編。
 
 まずは、水温が上がり始めた5月のわりと深めの砂底で、長細いウミエラの仲間についていたこの魚。
 

 小さな桃色の玉のようなものは、せいぜい5ミリほどでしかない。
 
 アップ。
 

 魚だ。
 
 おそらくはアオサハギのチビターレ、これくらい小さいものは俗に「魂サイズ」と呼ばれている。
 
 「魂」なんて誰も観たことはないものの、マンガなどで描かれていることが多い形をしているからなのだろう。
 
 より「魂」らしく見える角度から見ると…
 

 まさに魂。
 
 このテのウミエラには魂のほか、ハゼやエビなどがついていることが多いから、チェックを欠かさないオタマサ。シーズン最終盤の10月末には、こういうものもついていた。
 

 その姿は、紛うかたなきタツノオトシゴ系。
 
 水納島の砂底で観られるタツノオトシゴ系といえば、極小のピグミーを覗くとオオウミウマくらいのものだけど、その体の突起の塩梅はいささか異なって見える。
 

 どうやらこれは、イバラタツのようだ。
 
 沖縄にも分布しているそうだからいてもおかしくはないとはいえ、ネット上で見られる写真のほとんどは、伊豆半島をはじめとする本土の海で撮られたものばかり。
 
 四半世紀以上におよぶ我々の水納島潜水生活においても、これが初めての登場だ。
 
 ワタシも是非!とばかりに数日後に現地を訪ねてみたものの、案の定Gone。
 
 まさに一期一会の儚いご滞在だった。
 
 お次は、春の人生初遭遇ウミウシたち。
 
 まずは…
 

 その名もオリーブビロードウミウシ。
 
 15ミリほどの小さな体が、白い砂底にジッとしていたという。
 
 一望白い砂が広がる海底に、文字どおりポツン…とこんなのがいるのだから、ウミウシがお好きな方はたとえ上空をウシバナトビエイの群れが通り過ぎていようとも、目を皿のようにして海底サーチをしなければならない。
 
 もひとつ人生初遭遇ウミウシ。
 

 8ミリほどの小さな体からすれば意外な速さで、ドロップオフ状の崖面をムニョムニョ這い進んでいたという。
 
 ひと目でミノウミウシの仲間ということはわかるものの、そこから先はさっぱりわからないから図鑑を見ると、カナリヤミノウミウシに似ている。
 
  似ていても完全ビンゴ!ではないから定かではなく、定かではないとなると「ゴシキミノウミウシ属の仲間」ということになる。
 
 ゴシキミノウミウシ属の仲間といっても会員ナンバー60番まであるから、「固有名詞」としてはまったく用をなさない。
 
 というか、ウミウシなんて図鑑が出るたびに名前が変わっているといっても過言ではないテキトーな研究ジャンルだから(※個人の感想です)、図鑑が出るたびに変わる呼称をいちいち覚えるのもバカらしい。
 
 …いや、もはや能力の限界ともいいます。
 
 さてさて、プレイバック2021・オタマサ編の最後を飾るのは、冬の真っ只中に遭遇した完全無欠の変態社会クリーチャーだ。
 

 全体が2センチほどで、一見小さなサルパかクラゲに見えるけれど、よく見るとエビカニのようなハサミがある。
 

 おそらくこれは、タルマワシと呼ばれるものだろうと思われる。
 
 サルパなどを巣にし、その中に卵を産み付けて孵化させるという、知る人ぞ知るエイリアン的生物だ。
 
 なのでこれ全体がひとつの生き物ではなくて、サルパらしき巣の中からハサミ部分が出ている状態なんだろうけど、どこが頭でお腹がどこで、どこからお手手が出てるやら、見れば見るほどわからないグルグルパッパのグルッパークリーチャーでもある。
 

 こういうクリーチャーは「見たい!」からといってそうそう会えるものではないし、おそらくなにげにやたらと種数は多いのだろうから、「ザ・この種類」に会うのはこれが最初で最後かもしれない。 
 
 ウミウシに夢中になるあまり、海底に目を向けてばかりいたら、一生会えないことだけはたしかだ。
  


Posted by クロワッサン at 08:56Comments(0)日々の徒然水納島の海

2021年12月29日

SOY SOY Cafe。

2021年 12月28日(火) 晴れ

北の風 波あり

 年末最後の買い物チャンスになること必至の今日明日の両日で、買い物ついでに秘密基地泊でお出かけすることにした。
 
 年末の時化と大潮でまた水納港は軽石禍に見舞われそうで、新年早々ボートの対軽石避難に追われるのも面倒だから、この際渡久地港に上架することとし、朝遅めに島を出発。
 
 すると、まるで狙いすましたかのように、渡久地港に到着するタイミングで渡久地港近辺だけ雨に。
 
 その後の抜群の好天ぶりを思えば、何かの見えざる手を感じざるを得ない…。
 
 ボートの上架をスムーズに済ませ、お役御免の洗濯機を名護のベスト電器まで運び、年内に済ませておきたかったリサイクルミッションは終了した。
 
 そのためには料金4180円を払わなきゃならなかったけど、回収に来てもらったとしたらそのうえ2000円ちょいかかるのだから、今宵のディナーは2000円分豪華にしてもいいってことだ。
 
 名護でのメインの用事が済んだので、羽地方面経由で屋我地島~古宇利島へとドライブ。
 
 古宇利大橋では多くの観光客が橋横断の散策を楽しんでいた。
 
 まさに絶好の行楽日和、絶景を眺めながらのお散歩は、大雪の地から来た方々にとっては亜熱帯パラダイスそのものだったことだろう。
 
 でも前日に橋を渡ってたら凍死してたと思うけど…。
 
 それにしてもすれ違う車の「わ」「れ」「わ」「れ」ナンバーの多さときたらどうだ。
 
 本島地域でも特に北部(もっぱら本部町がけん引してるけど)で新規感染者数が徐々に盛り上がってきているなか、こうして多くの方々が美ら海水族館をはじめとする閉鎖空間でウィルスキャリアーとなって、寒さ厳しい本土に帰っていくのだろう。
 
 帰路は屋我地島からワルミ大橋を渡るコースにした。
 
 橋の本島側の橋詰めに、景色展望目的のちょっとした駐車スペース(ワルミロードパーク)があって、そこには立派な四阿も建てられており、琉球石灰岩の石垣状の土台には、眺望の説明看板までキチンと設けてある。
 

 が。
 
 そこから見渡す景色はといえば…
 

 目の前に生い茂る木々のみ。
 
 橋を造る際にはこのあたりは大々的に造成されていたろうから、草木ひとつない荒れ野だったに違いなく、そこから望む眺めはさぞかし抜群だったことだろう。
 
 しかしお役所の皆さんは、やがてこのように木々が生い茂ってくるという、小学生でもわかる「モノの道理」をまったくわきまえておられなかったらしい。
 
 景観を奪う形になっている木々は、定期的に伐採されているんだろうか。それとも、以後ずっと放置プレイなんだろうか。
 
 想像力が無く道理をわきまえないオヤクニンは、こういうことにも湯水のように血税を使っているのだ。
 
 ワルミロードパークからは目の前の木しか見られないかわりに、もう少し上のほうにあるりっかりっかワルミの屋上に設けられた展望スペースからの眺めは素晴らしかった。
 

 右側が屋我地島、左側が本島、そして奥に古宇利島と古宇利大橋というパノラマだ。
 
 先日はこの内海が軽石で覆われていたという。
 
 そうなると左奥にある運天港がワヤになってしまうから、ついに洋上から船を使って軽石を除去する作戦に出たそうだ。
 
 橋の上から軽石チェックをしてみたところ、作業の甲斐あって軽石は細く帯状に浮かんでいただけだった。
 
 眺望を満喫したあと、本部町に戻ってお買い物。
 
 その前に、数年前から気になっていたモノを食べてみることにした。
 
 これ。
 

 知るヒトぞ知る…というか、今やすっかり有名なんだろうか、本部町が誇る豆腐屋さんの山城豆腐店プレゼンツのカフェ「ソイソイカフェ」の、豆乳ソフトクリーム。
 
 渡久地の十字路にほど近いところにあるバス通りに面した店舗ながら、店内はおもろまちにある店のようにオシャレなため(ちなみに飲食メニューもおもろまちの店級の価格…)、このソフトクリームは前々からずっと気になってはいたものの、こっぱずかしくてなかなか入るチャンスがなかった。
 
 今回オタマサにソフトクリームテイクアウトミッションをお願いして、ついに念願のソフトクリームが目の前に。
 
 さっそくひと口食べてみると…
 
 激ウマッ!!
 
 豆乳にかぎらず、ヘルシー志向のスイーツなんてそもそもカテキン茶飲みながらポテチ食うようなもんだろ…と常々バカにしていたワタシではあるけれど、これはヘルシーとかなんとかに関係なく、ソフトクリームとしても人生ベスト3にランクインする味だ(クリームクリームのソフトクリームももちろんランクインしてます)。
 
 でまたコーンはグラノーラで作られているので、なんだかシリアル入りのパフェを食べているかのような充実感。
 
 いやあ、これはMサイズ480円弱(税込み)の価値はある。
 
 知らないままで死ぬことにならずに済んでよかった……。
 
 渡久地港からも歩いて来られる場所なので、連絡船出航までお時間がある時などに是非!
  


Posted by クロワッサン at 08:22Comments(0)街の美味いもの観光

2021年12月28日

プレイバック2021・パート2。

2021年 12月27日(月) 曇り時々雨束の間日差し

北の風 波あり

 未明までそのままだった冬将軍の勢いは、夜明け頃になってようやく、乱闘のあとの池乃めだかのようなセリフを吐いてくれた。
 
 もっともこの場合、池乃めだかに倣うのであれば、「今日はこれぐらいにしといたろ」というセリフを吐くのは我々のほうってことになるけれど。
 
 風は随分おさまったものの、気温はさらに大下降。
 
 我が家もこの冬ついに暖房のスイッチを入れた。
 
 壊れてなくてよかった、エアコン…。
 
 変温動物たちのほとんどが機能停止する寒さのなか(でも野菜を狙うカタツムリは活発だったらしい…)、連絡船も欠航。
 
 桟橋から見渡す海はほとんど平常どおりに見えるんだけど、やっぱ寒いからしょうがないか…。
 
 < えッ?寒さで欠航!?
 
 年末週間となった今週は、気象予報的にはとりあえず28日、29日の両日がお出かけチャンスデーになっており、水納海運からも島民にそのようなアドバイスが出ている。
 
 すなわち晦日、大晦日はまた時化そうってことだ。
 
 時化はともかく寒さがキビシイのはつらいなぁ…
  
 …なんてことを沖縄県民が言うと、大雪に見舞われている本土のみなさんに怒られそう。
 
 彦根あたりでは平年の3550パーセントの積雪量なんていう、数値的にジョークのようなニュースもあったけど、そんだけとんでもなく降るくらいだから100年に1度の大雪なのかと思いきや、「意外にも数年に1度の…」と気象庁は控えめだ。
 
 数年に1度なんていったらほとんど「日常」の範囲なんですけど??
 
 もうこれから先は、暑さも寒さも雨量も積雪量も、メリハリだらけで大変なことになっていく、という意味も言外に込められているのかもしれない。
 
 今そこにある食糧危機の原因には、獲れない採れないということだけではなく、獲れても採れても「運べない」という事態も大きな要因を占めている。
 
 鮮魚たけおに注文したお魚さんたち、28日、29日のわずかなチャンスに届いてくれるだろうか?
 
 ああ、新年用のメニューが……。
 
 さてさて、昨日に続きプレイバック2021、本日は魚種じゃなくて初遭遇の「生態」ベスト5。
 
 まずは、数年前の予想と期待が見事に結実した5月のこのシーン。
 

 ミヤケベラの産卵!
 
 他の多くのベラ類のペア産卵と同じく、2匹で素早く上昇し、このあとブシュッと放卵放精して素早く降りていった。
 
 すでに何度も紹介しているように、かつて沖縄の海はミヤケベラの主生息分布域からすると辺境も辺境だったので、水納島で見られるミヤケベラといえば幼魚~若魚くらいのもので、冬を越してオトナにまで育つものには会えなかった。
 
 ところがいつの頃からか、ミヤケベラの幼魚にまったくレア感が無くなるほど出会えるようになり、オトナサイズのメスを見かける頻度も増えてきたなぁと思っているうちに、ついにオスと遭遇したのが2018年のこと。
 
 その後オスとの遭遇頻度が増してきた…という流れからしても、そろそろミヤケベラの産卵行動が観られるかも、と期待込みの予想をしていただけに、ゲンジツに目の当たりにしたこの瞬間は、ワタシの周りだけ水温が3度ほど上昇したのは言うまでもない。
 
 ベラ類のように人目を憚らず天に向かってピュッと上昇したり、時間を掛けて入念に整えているから産卵する場所があらかじめわかっているスズメダイ類などは産卵シーンに気づくのはわりと容易なのだけど、同じ昼日中の産卵でも人目を憚るフグやカワハギ類の場合、それが産卵前の行動だということに気がつかないでいると、産卵シーンに遭遇するのはなかなか難しい。
 
 幸いこれまでにフグやカワハギ類の産卵シーンはいくつかの種類で目にしたことがあったから、「アヤシイ動き」に反応することができるようになっている。
 
 そのおかげで観ることができたのが↓こちら。
 
 
 
 ご存知テングカワハギの産卵だ。
 
 毎年水温がヒトに優しくなり始める6月くらいになると、メスがお腹をパンパンに張らしているテングカワハギのペアは見かけるのだけど、これまではいったいどこでどのように産卵しているのかまったく知らなかった。
 
 ところが、昨年見かけたハナキンチャクフグの産卵時と似たようなアヤシイ動きをしているペアがいたのでずっとストーキングしたところ、どう見ても産卵床を物色しているようにしか見えず、期待を込めて見守っているうちに、ペアはついに産卵に至ったのだった。
 
 テングカワハギがこのように産卵するのなら、ノコギリハギ(カワハギ)だって似たようなものに違いない。
 
 10月にリーフ際で出会ったノコギリハギのペアの動きは、まさに6月のテングカワハギペアの動き。
 
 同じく期待と予測を抱きつつストーキングしていると…
 
 
 
 やっぱり産卵!
 
 どちらの産卵シーンも人生初遭遇だ。
 
 こういうコトにまったく興味がない方には「で?」てなもんだろうけど、なかには「観てみたい」という方も多いはず。
 
 ただし、そのためにはリーフ際で20分近くストーカーになる必要がある…ということを知ると、その数は3人くらいになるかもしれない…。
 
 さて、今年は本来レアなものが各所で相次いで観られた、ということが多かった。
 
 過去27シーズンで最も遭遇個体数が多かったのが↓こちら。
 

 ご存知マダラタルミ・チビターレ。
 
 これまでは出会うたびに「何年ぶり…」という程度の遭遇頻度だったというのに、今年はここに1匹あそこに1匹、挙句の果てには…
 

 同時に2匹!
 
 遭遇頻度僅少とはいえ、年間ベスト5に入れるほどのレア感は無いマダラタルミ・チビターレながら、2匹が連れ立って泳いでいるなんてのは人生初遭遇シーンだ。
 
 2~3センチほどのこんなパンダカラーの小魚が5匹くらい集まって泳いでいたらなぁ…。
 
 マダラタルミと同じく、種類自体はけっして「レア」というわけではないけれど、圧倒的な数で勝負してきたのが↓こちらの面々。
 

 軽石の使者ことアミモンガラチビチビ軍団!
 
 その後の軽石自体の騒ぎですっかり過去のモノになった感もあるアミモンガラ・チビターレ、軽石が水納島に大量漂着し始めてからしばらくの間は、桟橋脇で大軍団を観ることができていた。
 
 流れ藻などとともに桟橋脇に流れ着くアミモンガラ・チビの通常の個体数から考えると、今年大集合していたアミモンガラたちは軽く人生10回分に出会えるアミモンガラ数といっても過言ではない。
 
 ところが軽石は相も変わらずそのままなのに、いつしかアミモンチビチビ軍団たちは忽然と姿を消してしまった。
 
 そもそも外洋で漂っているのが本来の人生だけに、桟橋脇などという真逆の環境では生き抜けなかったということだろうか。
 
 それとも、再び意を決して外洋に泳ぎ出ていったのだろうか。
 
 いずれにせよ、その後の姿の消しっぷりを思えば、アミモンチビチビ軍団を確認してからすぐに撮っておいてよかった。
 
 アミモンガラ・チビターレたちのように、軽石も忽然と姿を消してくれないかなぁ……。
  


Posted by クロワッサン at 08:14Comments(0)水納島の海

2021年12月27日

プレイバック2021・初遭遇編。

2021年 12月26日(日) 曇り時々雨パラパラ

北の風 時化模様

 引き続き時化模様につき連絡船は運航停止。
 
 おまけに気温大下降で生命体は機能停止。
 
 この日屋外で稼働していたのは、おそらくマサシさんとオタマサだけだったに違いない。
 
 さてさて、本年最後の日曜日、潜り納めも終えたことだし、ここらで毎年恒例の「今年の出会いベスト5」。
 
 ヨコシマニセモチノウオやヒオドシベラ・チビターレ、そしてヒフキアイゴのチビチビやカメンタマガシラ・チビターレなど久しぶりの再会を果たした面々、それに念願かなってついに出会えたウミヅキチョウのチビも今年を彩るインプレッションプレーヤーではあったけれど、やはりここは「人生初遭遇」に重きを置きたい。
 
 まずは冬の真っただ中に出会ったこの方。
 

 コビトスズメダイ
 
 水納島に越してきた95年当時から、「おっ、コビトスズメダイか?」(当時は和名が無かったけど)と注目しても、必ずそれはヒメスズメダイ…ということを繰り返すこと27年、ついに念願かなって人生初遭遇。
 
 年間を通じて水温が最低になるこの時期に、思わず体がホクホクしたのはいうまでもない。
 
 残念ながら春になる頃には姿を消してしまったので、1度もゲストに紹介することなく終わってしまった。
 
 お次は、長引く梅雨のさなかに出会ったこの方。
 

 キングジョー(クロワッサン仮名)ことアゴアマダイ属の1種。
 
 ちょこちょこ見かけるホシカゲアゴアマダイよりも3周りはでっかい巨大ジョーフィッシュは、ひょっとしてホシカゲアゴアマダイが成長した最終形態なのかな…と思いきや、調べてみたところどうやら別種らしい。
 
 周囲は一望礫底のため、ピンポイントでの再訪が難しい場所だからたしかなことは言えないけれど、その後何度かこの周辺をサーチしてみたものの、再会は果たせていない。
 
 同じく梅雨時にリーフの上で出会ったのはこちら。
 

 フタホシゴンベ
 
 沖縄の海ならけっしてレアものというわけではなく、むしろいて当たり前な魚ではあるものの、なにしろ警戒心最強のために、リーフエッジ付近で暮らしているにもかかわらず、その姿を目にする機会がほとんどないゴンべの仲間だ。
 
 フタホシゴンベに比べれば、沖縄の海では遥かにレアなベニゴンべには過去に何度か会ったことがあるというのに、27年目にしてようやく初遭遇を果たせたのだった。
 
 写真で彼が隠れているサンゴの場所は覚えたので、その後何度も周辺をチェックしたのだけれど、これまたその後再会は果たせていない。
 
 遭遇と言いながら全身が見られない写真が続いて恐縮ながら、ボディカラーが印象的だったのがこちら。
 

 まだ和名が無いタテガミギンポ属の1種
 
 岩場のポイントの浅いところでたくさん観られるタテガミカエルウオの仲間たちは、婚姻色ではないかぎりパッと見はみな黒っぽく見えるのに、このギンポはレンガ色。
 
 顔周辺だけじゃなくて…
 

 …尾ビレの先(写真右上部分)までレンガ色。
 
 彼もまた警戒レベルは四六時中マックスのようで、枝間に潜んでしまったまま二度と出てきてはくれなかった。
 
 たまたま眼下でサンゴからサンゴへ泳ぎ渡る全身レンガ色ボディが見えたから認識できたものの、最初から隠れていたらまず見つけられないだろう。
 
 その後このポイントを訪れるたびに捜索しているのだけれど、まったく姿を見せてくれない。
 
 ただしオタマサは昨シーズンにこの場所で見かけたことがあるそうで、ひょっとすると同じ個体がしっかり越年しているのかもしれない。
 
 ラストは、まだ軽石騒ぎ勃発前の10月初めに出会ったこの魚。
 

 アズキハタ
 
 世間的には珍しい魚扱いはされていないものの、ワタシは水納島に限らず学生時代を含めて沖縄の海では出会ったことがなく、前世紀に訪れたモルディブの海でオトナを観たことがあるだけ(モルディブでは多かった)。
 
 なので個人的沖縄の海初記録だ(オタマサは昔八重山で観たことがあるらしい)。
 
 オトナに観られるアズキ模様が無い幼魚色ではあるけれど、10センチ弱くらいには育っており、こうしてピックアップした姿を観るとハタの貫禄たっぷりだ。
 
 その後しばらくほぼ同じ場所にいてくれたから、オトナの模様が出てくるまで観られるかも…と期待していたところ、あいにくシーズンが終わる前に姿を消してしまった。
 
 もっと効率よくエサをゲットできるところに引っ越したのかもしれない。
 
 こうしてまとめてみると色味的には地味地味ジミーなものばかりながら、なにしろ人生初遭遇、水納島で初、というものばかりだから、その場で出会っているワタシ自身はその都度バラ色になっていたのはいうまでもない。
 
 それにしても、水納島で暮らし始めて四半世紀を過ぎた今になっても、いまだこのように「初遭遇」をラインナップできるのだから、やっぱり海ってとことん奥深い。
 
 来年はどんな出会いが待っているだろう?
 
 これだからダイビングはやめられない。 
  


Posted by クロワッサン at 08:54Comments(0)水納島の海

2021年12月26日

潜り納め。

2021年 12月25日(土) 曇り時々雨パラパラ

北の風 時化模様

 冬将軍が大軍勢を率いて襲来、誰が見ても文句のつけようがない欠航日和となった。
 
 朝方はまださほどでもなかった気温の低下は時を追うごとに身に沁みるようになってきて、午後遅くにはシンシン…という音が聴こえそうなほどに冷え込んできた。
 
 数日前は暑すぎるあまり、シャワーを浴びた後すぐに服を着ると汗が噴き出そうだからしばらくTシャツ短パンで過ごしていたほどだったというのに、今日はすかさずジジパッチ&ジジシャツを着なければ即凍死確定だ。
 
 ま、世間はクリスマスだから、うだるような暑さよりはこれくらい冷え込んでいるほうがそれっぽいか。
 
 どうせならもっと気を利かせて雪でも降らせてくれれば、寒さに震え甲斐もあるというもんだけど……
 
 …って、気を利かせ過ぎた東北地方のようになってもなぁ。
 
 さてさて、この日は久しぶりに前夜の酒が残っていたらしく、こんな日記文などをチマチマ書いているのが無性に面倒くさくなってしまった。
 
 さほどの量でもなかったのに残るってのは、やっぱ齢なのだろう。
 
 普段はそれをしっかり自覚しているから、昔に比べればバカ飲みバカ食いはほとんどしなくなっているワタシながら、せっかくオタマサが用意してくれたご馳走を前にして酒が進まぬはずはない。
 
 前夜のヒットはこれだ。
 

 カブのムース with 塩ウニ。
 
 塩ウニはシーズン後半にゲストにいただいていたもので、より豪華に見せるための演出という意味もあるのだけど、ムースの味が物足りなかったこれで調度よくなるだろうということでもある。
 
 ところがカブのムース、意外にもかなりしっかりした味で、塩ウニの助けを借りずとも立派に独り立ちしていた。
 
 冷やして固めている間にカブの成分が分離するらしく、横から見るとカルピスウォーターを冷凍した際のように底層がゼラチン色になっていた。
 
 なので見た目はムースらしい色をしている部分のほうが味が濃そうに思えるのだけれど、面白いことに半透明になっている底層のほうがカブの味が歴然としていて、美味しさが濃縮されていた。
 
 ただ茹でるだけで美味しくいただけるカブが、わざわざこのように手間暇かけた別の料理で登場なんてことはそうあることではなく、これ一事だけでも、クリスマス、グッジョブってところだ。
 
 近年はメインディッシュにこれまた普段食べることができない分厚い肉、というのが定番だったのだけど、今年は久しぶりに鶏の丸焼き料理にしよう、と随分前から決めていた。
 
 旧我が家では鶏の腹にガーリックライスなどを詰めて焼くのが定番だったのだ。
 
 なので師走になってから、買い出しのたびに、あられもない姿で1羽丸々で売られている鶏肉を探すのだけど、これが例年になくどこにも見当たらない。
 
 当日に丸焼きを買うことができる本島住民とは違い、連絡船が動くかどうかも分からない当日に買い物の予定などいれられるわけはなし(実際に欠航してるし)。
 
 やむなく、合鴨丸々1羽分を代用品とすることに。
 
 これがまた鶏肉に比べてデカいわ脂が多いわでオーブンレンジは大変なことになっていたそうなのだけど、アジアのどこの国だったか産の合鴨の姿は、昔アヒル(バリケン)を飼っていた頃を懐かしく思い出させる1品だった。
 
 でもなにせでっかいから(なにしろ姿勢を矯正しなければレンジ内で回転させられない…)、とてもじゃないけどすべて食べ切るまでには至らない。
 
 その点鶏肉だと、1羽のサイズが手頃だから、スペシャルな日だと思えばなんとか2人で食べ切ることができる。
 
 そにしても鶏の丸焼き用、いったいどこに行っちゃったんだろう?
 
 あ、そういえば。
 
 日本で流通しているこのテの鶏肉を生産しているのは東南アジア諸国に拠点を作っている日本の食肉メーカーだそうなのだけど、コロナ禍のあおりで操業できない輸出できないなどえらいことになっているため、日本国内の流通量はとんでもなく低水準になっている…というようなニュースを2ヵ月くらい前にテレビで観たような記憶が。
 
 最近では米国産ポテトの輸入が滞っているからマックのフライドポテトのMサイズLサイズが期間限定で販売休止になる…なんてニュースもあったっけ。
 
 ホントにもう、空前の食糧危機はすぐそこまで来てますな。
 
 しかしそういう深刻な「今そこにある危機」には目を瞑り、「高級御節の売れ行き好調!」なんてニュースを相も変わらず伝えているのだから、案外誰も「危機」とは思っていないのかもしれない。
 
 話は変わる。
 
 朝から南風&太陽燦燦で24日の日中は暑く、久しぶりに海へ行こうという気になった。
 
 翌日以降は時化予報、束の間穏やかになる日は秘密基地の大掃除&正月の買い出しのため本島へ…ということになると、どうやら今年の潜り納めになりそうだ。
 
 というわけで、早お昼を済ませて昼にさっそく海へ。
 
 エントリー早々から、クジラの声がハッキリ聴こえた。
 
 春先に聴こえる歌声となんとなく違って聴こえるのは、歌っているのが親子じゃないからだろうか。
 
 陸上と違って水中は寒く、5ミリのウェットスーツではもう限界というところだったけど、潜り納めに神様がくれたクリスマスプレゼントは、結局潜っている間じゅうずっと聴こえていた。
 
 リーフ際のオーバーハングの下では、わりと大きなネムリブカの姿も。
 
 今年はやけにネムリブカに出会う機会が多かっただけに、フカヒレならぬフカシメダイブだ。
 
 ジッとしているところをお邪魔して…
 
 …と思ったら、鋭く身を翻して逃げちゃった。
 

 水温が温かいと、リーフ際あたりはやる気モードになった魚たちだらけでとってもにぎやかなのだけど、22度くらいにまで下がると夏のようなお祭り騒ぎは観られなくなる。
 
 そのかわり、温かい時期のお祭り騒ぎの結果生まれた者たちの姿は数多い。
 
 浅いところでは、サンゴの枝間や死サンゴ礫が集まっている海底に、いろんなチビたちの姿がチラホラしている。
 
 種類は多いけれど、まぁだいたいお馴染みの魚たち……
 
 …と思いきや、種の壁を越えて一緒に行動しているベラベラブダイチビターレのなかに、これまで観たことがないものが1匹混ざっていた。
 

 この成長段階のアカオビベラにもカメラを向け続けたいところながら、頭部の黄色がやけに目立つこのブダイのチビターレが気になる。
 
 ベラベラブダイバーとしては、ちゃんと記録に残しておかねば。
 

 えーと……アナタはいったい誰子ちゃん?
 
 ご存知のようにブダイ類のチビターレはまだまだナゾが多く、たとえオトナは広く知られているものであっても、写真の子のように3cmほどの幼魚となると、いまだ詳細不明というものがけっこういる。
 
 手掛かりはもっと成長した段階の若魚なり雌の姿くらいのものだから、推測する以外に手はない。
 
 顔から延びる黄色い帯模様からすると、カメレオンブダイのような気がするんだけど、どうだろう…。
 
 1年の潜り納めに人生初遭遇ってのもうれしいプレゼントではあるけれど、どうせならスパッと疑問解決したいところ、なんだか年の瀬に切れの悪いウンコ状態の疑問を残してしまうことになってしまったのだった。
 
 宿題のような宿便のような謎をスッキリ解決して新年を迎えるためにも、正体をご存知の方、テルミープリーズ! 
  


Posted by クロワッサン at 08:40Comments(2)水納島の海島の美味いもの

2021年12月25日

We wish you a merry Christmas。

2021年 12月24日(金) 曇り時々晴れたり雨パラパラ

南東のち北西の風 おだやかのちやや波あり 水温22度

 飲みすぎた。

  


Posted by クロワッサン at 07:21Comments(2)日々の徒然

2021年12月24日

幻の第5巻。

2021年 12月23日(木) 雨

北東のち東の風 荒れ模様

 朝からしつこく降り続く空は結局1日中スカッと晴れることはなく、片隅に束の間だけ青空がチラ…と見えただけで終わった。
 
 この時期のこんな天気だと、例年なら氷雨になってカメさんたちは機能停止状態になるはず。
 
 ところが今冬はこれまでのところ気温が高いまま推移しているから、ガメ公など雨が降っているにもかかわらず、腹を空かせて外に出てくる始末。
 
 おかげで雨の中エサ採りをしなければならない羽目に…。
 
 どうせ降るならキッチリ冷え込んでくれ、冬。
 
 …と思っていたら、どうやらクリスマスにはサンタさんのソリを吹き飛ばす勢いで冬将軍が襲来しそうだ。
 
 1050ヘクトパスカル以上と相当強烈な高気圧はお待ちかねの寒気をもたらし、きっとカメさんたちを機能停止に追い込み、畑のイモムシやカタツムリの活動を停止させてくれることだろう。
 
 時化と強風くらいで済む沖縄とは違い、本土は雪の被害も出そうな気配。
 
 週末だけに皆様ご用心あれ。
 
 話は変わる。
 
 とある常連ゲストさんが、子供の頃に出会い、ご自身のその後に大きく影響を与えたとおっしゃる本を、ゆんたくタイム時などに数年前から紹介してくれていた。
 
 ある意味変態社会的といっていい個性あふれる人生の先輩を形成するきっかけになった本のひとつとなれば、少なからず気になるところだ。
 
 機会があれば実際に手に取って見てみたいと思っても、出版不況といいつつ出版物の種数だけは昔と比べ物にならないくらい増えている現在、のんびり書店を回って探していたのでは、新刊本でもないかぎり出会う機会などほとんどない。
 
 そんな話をオタマサから伝え聞き、業を煮やしたご本人は、わざわざ購入してまでプレゼントしてくださった。
 
 それは昔からある岩波少年文庫の本ながら、今世紀になって新版が刊行された、「ツバメ号とアマゾン号」から続くアーサー・ランサムの児童書シリーズだ。
 
 一般に「ランサム・サーガ」と呼ばれるものだけど、豹頭の戦士グイン・サーガなどの「サーガ」とは違い、ランサムが主人公のサーガというわけではなく、著者ランサムが描き出す物語世界という意味になる。
 
 1930年代のイングランド北部の湖沼地帯が主な舞台で、普段は都会に暮らす子供たちが、夏休みや冬休みに現地を訪れて、子供ながらの大冒険をする。
 
 1930年代であれ現代であれイギリスに行ったことなどないから、描かれている世界に違和感なくすんなり入り込めるのだけれど、よく考えてみると1930年代といえば、アガサ・クリスティが名探偵ポワロを大活躍させていた時代だ(「オリエント急行の殺人」が刊行されたのが1934年)。
 
 それを考えあわせれば、物語の舞台は主人公である都会暮らしの子供たちにとってもワンダーランドであることがよくわかる。
 
 そんなワンダーランドで、日本でいうなら昭和な子供たちといった感じのアウトドア派元気いっぱい少年少女が、子供の世界で大きな冒険を繰り広げる。
 
 船乗りの父を持つ子供たちだけに、セーリングはお手の物で、広い湖沼を大海原に見立て、小さなヨットで大航海遊びをする子供たち。
 
 現地には「海賊」を自称する姉妹がいて、主人公兄妹たちとの対立から融和、協力、冒険へと話は進んでいく(無人島暮らし設定で遊んでいるにもかかわらず、ちゃんと欠かさず「お茶の時間」があるところが面白い)。 
 
 という具合にあくまでも物語は少年少女が主人公なのだけど、なにしろ読んでいる我々の年齢が年齢だけに、元気いっぱいの子供たちを見守り、ときにはさりげなく援助する周りの大人たちの素晴らしさに思わず感嘆してしまう。
 
 こういう大人たちが周りにいれば、そりゃ子供たちもスクスク元気いっぱいにまっすぐ育つだろうなぁ。
 
 もちろんそれは、子供たちのほうも大人の信頼に応えられるだけの礼節、分別、理性、知性を備えているからこそ。 
 
 自由を得るには、まず信頼を得なければならないのだ。
 
 同じく権利を行使するためには、まず義務を果たさなければならない。
 
 人々の要求、欲求だけが肥大し続ける一方の現代社会が、ついぞ忘れてしまった世界が広がっている。
 
 齢50を過ぎてから初めて読んだワタシがいうのもなんだけど、こういう物語をこそ子供の頃にキチンと読んでおくべきもの…という意味では、まさに岩波少年文庫にふさわしく(今どき「少年文庫」なんていう命名は、ポリコレ的にどうなんだろう?)、件のゲストさんがこの本と出合うきっかけを作ってくれたという学校の図書室(でしたっけ?)、グッジョブ。
 
 このランサム・サーガシリーズは全12巻あって、その後件のゲストさんは来沖されるたびに少しずつ続巻をプレゼントし続けてくださるので、全集が少しずつ揃ってきていて、このオフにはついに続巻すべてドドンと贈ってきてくださった。
 
 ところが。
 
 全巻贈ろうにもシリーズ5巻目になる「オオバンクラブ物語」上・下巻だけがどうしても見つからず、ついには版元、すなわち岩波書店にまで問い合わせてみたという。

 岩波書店によると現在絶版になっており、版元にすら在庫がない状況なのだという。
 
 2011年に新版として全巻出版されたばかりなのに、たった10年で絶版?
 
 ようするに、少子化著しく読書する児童はさらに減る一方の現代ニッポンにおいて、このような本は初版オンリーがフツーで、第2刷、第3刷などあり得ない、ということなのだろうか。
 
 後続の全巻をドドッといただくまえに、5巻を飛ばしてプレゼントしてくださっていたので、オタマサなどは4巻から6巻へと平気で読み進んでいたけれど(ストーリーは1巻完結なので基本的にモンダイはない)、生理的にそのような読み方ができないワタシは、5巻を読まないかぎり先に進めない。
 
 かくなるうえは。
 
 オンラインで古本を購入するしかない。
 
 Amazonを手始めに、さっそくチェック。
 
 すると……
 
 上下巻2冊合わせて5000円!?
 
 定価なら2冊合わせて税込みで1600円そこそこなのに。
 
 いやこれは何かの間違いだ、きっと探せば「古本」価格があるはず……
 
 …と、その後も探し続けたものの、もはや世の中では5巻「オオバンクラブ物語」の相場は、上・下ともだいたい1冊2500円前後となっているのだった。

 kindleなら理性的な価格のままだけど、ああいうもので本を読みたくないしなぁ…。
 
 ウーム…ウーム……
 
 数日懊悩しつつも、第2刷が出る予定もないとなれば、今後は値段が上がる一方かもしれない。
 
 ならば……
 

 買っちゃいました………自分のお小遣いで。
 
 古本が定価以上の価格っていうのはほとんど趣味の世界だろうに、「子供の頃に是非読んでおくべき」本を子供たちに提供するという使命を背負っている岩波少年文庫がこんなことでいいのか。
 
 この一事をもってしても、我々の子供の頃とは時代が大きく変わっていることがよくわかる。
 
 ま、本を読みたがる子供の減少以前に、本を読む親が減っているのだから無理もないことか。
 
 そして礼節、分別、理性、知性をわきまえることなく、要求・欲求だけが肥大していく。

 社会が良くなるわけがない。
 
 さてさて、決意の購入となった第5巻「オオバンクラブ物語」は…
 
 …あ、残念ながら紙数が尽きた。
 
 読書感想文はまた別の機会に。 
  


Posted by クロワッサン at 09:08Comments(0)

2021年12月23日

ホワイトサンド。

2021年 12月22日(水) 雨時々曇り

東の風 やや波あり

 ほとんどの気象予報サイトでは、この日はさほど荒れずに済みそうな予報を出していたのだけれど、けっこう詳細な予報を出すサイトが唯一、低気圧の通過コースを北寄りに予想しており、それが正解となると午後あたり短時間ながら時化が予想される……
 
 …ということで、なぜだかその予報サイトに信を置く連絡船は、この日午前中だけで運航終了。
 
 結局日中はずっと穏やかだったけど。
 
 そのデタラメ予報のせいで、この日午後の便で届くはずだった洗濯機が渡久地港で足止めに…。
 
 たとえ購入は名護店でも、浦添か那覇かどこかにある配送センターからの配達になるベスト電器にしては、渡久地港に2日後の配達だなんて過去最速の「スピード感をもった」配送予定だったというのに、まさかデタラメ予報のあおりを受けるとは。
 
 このよもやの欠航のために、本来なら前日で降板予定だった現洗濯機は、まるで日本シリーズ第6戦のマクガフ投手のように、イニングをまたいで続投することとなってしまった。
 
 脱水機能が失われている洗濯機なんて、ストレートでしかストライクを取れないピッチャーのようなもの。
 
 これで続投なんていっても、まったくモノの役に立たない…
 
 …と思いきや。
 
 打たれても打たれても揺るがぬ高津監督の信頼に奮い立ったマクガフ投手のように、失われていたはずの脱水機能が、出力70パーセントくらいまで復活してきたではないか。
 
 やればできる子なんです。信頼はしてなかったけど。
 
 というか、「新しいのを買う」という我々の会話を聞いてしまい、慌てて頑張ろうとしているような気配もある。
 
 ともかくそんなわけで、洗濯機が線香花火の最後の輝きのような頑張りを見せてくれているおかげで、欠航の余波をさほど受けずに済んでいるのだった。
 
 欠航が続く間に、さらに調子が戻って完全復活したりして…。
 
 さてさて、結局風は吹かなかったもののシトシト雨がしつこいくらいに続いて、なんだか内地の梅雨のようなお天気になった冬至の1日。
 
 豪雨ではないにしろそれなりに雨量があるものだから、先だっての時化の際に坂道に溜まっていた砂浜の砂が、随分洗い流されていた。
 
 雨が降ったらそうなることはわかっていたから、いいお天気が続いていた先日、坂道に溜まっている砂を運び、カメさんたちの住居に敷き詰めた。
 

 風に運ばれて坂道に溜まるくらいだから、粒度的にはスーパーファインサンドの絨毯だ(でも今回は軽石も混じってる)。
 
 年に何度かやっているこの砂入れは、軽トラにトロ箱などの容器をいくつか載せ、スコップで砂を溜めてから庭に戻ってスコップで敷き詰めていくという作業になる。
 
 ホシガメホッシー用スペースの分も合わせて以前は1往復でだいたいまかなえていたのだけど、昨年ガメ公の飼育スペースを拡張してしまったために搬入する砂の量もより多くなってしまい、同じ作業を2度しなければならなくなってしまった。
 
 けっこうしんどい。
 
 それでもカメさんたちが心地よさげにしている姿を見るとやり甲斐もあるというもので、早朝の放射冷却で冷えきった体を温めるべく、午前中の日向ぼっこスペースでくつろいでいるガメ公も快適そうだ。
 
 ただし。
 
 お天気のいい日に白い砂は、カメにもやっぱり……
 

 …眩しいらしい。
 
 ま、ホワイト&ホワイトで磨いた白い歯のような砂の色も、歩き回るガメ公によって3日もすれば肌色くらいになるから、眩しさもそれまでの辛抱だ。
  


Posted by クロワッサン at 08:43Comments(3)カメハウス日々の徒然

2021年12月22日

軽石との戦い・師走編。

2021年 12月21日(火) 曇り

東の風 ややうねりあり

 喜如嘉での話で昨日書き忘れたことが。
 
 オクラレルカの田んぼのそばに巨大用水路のような川が流れていて、そこで大々的に工事が行われていた。
 

 「鳥や自然を大切に!」と喜如嘉小学校の子供たちが看板で呼び掛けている横での大規模工事…という風景はなかなかシュールではある。
 
 でもこの工事はどうやら治水事業らしく、田んぼへの用水の利便のためなのかもともとの川底は浅く造られているようなのだけど、昨今の激雨に見舞われると、この浅さではあっという間に氾濫してしまうということだろうか、川底を深くする工事が為されているように見えた。
 
 傍らに工事の看板があったので見てみると…
 

 宜野湾バイパス向けの右折2車線化???
 
 気でも狂ったのかと一瞬思いかけたけど、たまたま我々がカメラ側から歩いてきたから見えてしまっただけで、これは本来の看板の裏側なのだった。
 
 というか、こういうものをホイホイ使いまわすなよ…。
 
 いや、誰も欲しがらないマスクを税金で大量に作って余ってその保管にも税金を使って…というどこぞの政府よりもよほどマトモな感覚というところか。
 
 さてこの工事が行われている外堀田川は、この先で喜如嘉ターブク内を流れる石保川と合流して、そこから海までわずかに続く下流は石保川に名を奪われる。
 
 その石保川の河口から押し寄せてくるのだろう、工事現場手前の川面は…
 

 …軽石でえらいことになっていた。
 
 河口がすぐそこになるこのあたりは潮の干満で水量が上がったり下がったりするエリアだから、満潮時には軽石がフツーに遡ってくるのだろう。
 
 軽石はもちろんここだけではなく、道中から見える海岸一帯では、羽地をはじめ軽石が幅を利かせているところが多かった。
 
 これらの軽石は一生その場に留まっているわけではなく、風や潮流に身を任せてあっち行ったりこっち行ったりするわけだから、局地的に除去したからといってそれで解決というわけにはいかない。
 
 今週は沖縄を訪れている火野正平のチャリンコ番組、この日は読谷村の海辺がロケ地だった。
 
 いや、その、なんというか、その昔母が台所で聞いていたラジオから流れていた「人生読本」のような、いかにも日本的なウェットなお手紙の内容とかは、「沁みる夜汽車」同様まったく苦手な…というかどちらかというとキライなジャンルなんだけど、見知らぬ土地をウロウロするのが好きな我々にとって、観光地でも何でもないところをチャリンコでウロウロしている際の現地の景色はなかなか面白く、ついつい30分観てしまうことが多いのだ。
 
 で、この日もいつものように冒頭に「人生読本」的お手紙を読むシーンは本島西海岸。
 
 そしてそこもやはり…
 

 軽石だらけなのだった。
 
 このロケが行われたのがいつのことか知らないし、読谷村のこのあたりならボランティア大好き軍団が大集合して今頃はたちまち除去されているのかもしれないけど、番組では軽石のためにアーサの養殖もできなくなっているという話もあったから、けっして一時的なものではないのだろう。
 
 最近では、あまりにもひどい運天港近隣の軽石を排除するため、船を用いて洋上から掬い取る方法も取られているらしい。
 
 でもそれもやはり局地的な話でしかないから、たとえ一時的にクリア状態になったとしても、まだまだ全面的解決には程遠いに違いない。
 
 さて。
 
 同じようなモンダイを抱えている水納島。
 
 他の島のような立派な港を抱えているわけではないから、港の出入り口を封鎖することによって軽石の侵入を防ぐ、という方法が取れない水納港は、その日の風向き次第で軽石が容易に連絡船停泊スペースに溜まってしまう。
 
 たとえ洋上から押し寄せる軽石が品切れ中でも、島の海岸に打ち上げられている軽石が満潮時に海に戻され、風向きによって桟橋まで運ばれてしまうからだ。
 
 ただ、桟橋の東側は遮るものが何もないから、うまい具合いに強烈な北~北西の風が吹くと、軽石は島の海岸を離れてくれることもある。
 
 一方桟橋の西側、すなわち海水浴場側は、桟橋と突堤に囲まれてしまっているため、いったん漂着してしまった軽石たちは、海水浴エリアの西端と東端をいったりきたりするだけで、基本的に溜まったままになってしまっている。
 
 そのため風がさほどない時に大潮に当たってしまうと、海岸に漂着している軽石がボワ~ッと
 
 軽石のせいで連絡船の相次ぎ、ビーチをはじめとする海岸がえらいことになっているということを受け、本部町長が現地視察に訪れたのは先月末のことだった。
 
 現地滞在時間はたったの15分だったけど。
 
 で、何かがどうにかなるのかと思いきや、その後まったくのなしのつぶて。
 
 「とりあえず視察に行きました!」
 
 と言いたかっただけらしい。
 
 本部町役場の「役場」は、「役に立つ場」ではなく「役に立たない場」の略であるのは今に始まったことではないから、今さらガッカリしたところで始まらない。
 
 となると、来シーズンが始まる前に、本島から営業に来る各業者も交えて大々的に軽石除去大会かな??
 
 …と思っていたのだけれど。
 
 今月になってから、なにやら不穏な気配が。
 
 年内に一度、ともかくも軽石除去作業をしてみよう、なんて話がどこからともなく…というか出てくるのは一ヵ所だけだけど…出てきていたのだ。
 
 いやそれはたちまち元の木阿弥になるのだから、シーズン前にヒトを集めてドドッとやったほうがいいですって……。
 
 という声が届いたわけではなかったものの、具体的な作業日程などが告げられることなく師走もここに至っていたので、すっかり安心していた。
 
 が。
 
 いきなり作業日決定!
 
 しかも作業日はそれを告げられた翌日!!
 
 「自分の予定がみんなの予定」攻撃、久しぶりに炸裂。
 
 欠航が続いていたこともあって数日本島に出っぱなしになっていた方々が揃って島に戻る際に、連絡船内で話がまとまったらしい。
 
 そりゃみなさんはずっと本島にいたんだから用事を済ませているだろうけど、ずっと島にいた我々にはニュー洗濯機購入という火急の用件をはじめ、本島に出かけなきゃならないいろいろな用事ができているのだ。
 
 というわけで、知らないところで勝手に決まった予定には断りを入れ、朝から本島へ出たのが昨日のこと。
 
 < と言いながら喜如嘉で野鳥と遊んでいたのでは?
 
 いや、その…それはつまり…あくまでもついでじゃないですかシドロモドロ……。
 
 しかし敵前逃亡の負い目を抱え込みながら年を越す必要はなかった。
 
 翌日、つまりこの日も作業は続くよどこまでも。
 
 なにしろ前日は御願所清掃を午前中に、しかるのちに軽石除去を…という、現役世代人口が50名以上いるかのような強行日程だったから、軽石除去が終わるはずはなかった。
 
 また、そもそも「試しに…」程度で仕入れた(のか本部町役場提供かは不明)巨大土嚢袋10袋では話にならなかったので、この日の朝イチの連絡船でさらに20袋追加し、作業を続行することになっていたのだ。
 
 というわけで、老老男女総勢9名プラス重機&軽トラが勢揃いし、除去作業が始まった。
 
 って、前日は我々がいなかったから7名だったんじゃん……。
 
 洪水防止の即席堤防づくりに使われるような、1立方メートルほど砂を入れられる巨大土嚢袋に、重機&手作業でワッセワッセと軽石を入れていく。
 

 トンボを使ってガシガシ軽石を集めている船員さんのタカシさんは、このところずっと休みの日に時化が重なり、島のご実家に滞在することができず、生垣バリカンや草刈りなど、月ごとのルーティン作業もできずにいたところ、ものすごく久しぶりに島で過ごせる……
 
 …と思ったらまさかのこの作業。
 
 他のみなさんはみなさんで、昨日一日夕方遅くまで作業しっぱなしだったにもかかわらず、ナニゴトもなかったかのように作業に従事する。
 

 恐るべき平均年齢還暦オーバー。
 
 あ、念のために言っておきますけど、作業の合間にポッケからカメラを出してほんの1、2枚撮っているだけで、みなさんが作業中にサボって写真ばっか撮ってたわけじゃないですからね。
 
 さすがにぶっ通しでは気づかないうちに体が悲鳴をあげるからということで、しばしの休憩タイムが訪れた。
 

 以前水納小中学校に赴任されていた先生方と最近飲む機会があったというナカチさんは、その先生方がやたらと島内事情に詳しいので驚いたそうな。
 
 その情報源が実は拙日記だということを知ったナカチさんは、ワタシがみなさんの休憩中の様子を撮ろうとした際、珍しく
 
 「撮って!」
 
 と立ち上がるや、カメラにスマイル。
 
 その目的はつまり、そういうわけですね。
 
 というわけでマサコ先生、ナカチさんも○骨に鞭打って頑張っておられたので、次回お会いになる際には是非拍手喝采をお願いいたします。
 
 そうこうするうちに、巨大土嚢(みんなはトン袋と呼んでいる)は次々に溜まっていく。
 

 やがてこの日用意した20袋すべてが満杯となり、その頃にはもう海水浴場は元の白さを……
 
 …取り戻すわけないじゃん。
 
 全体的に見れば、こんだけやっても焼け石に水。
 
 先ほどのナカチさんが、ビーチを見渡しボソッとつぶやかれた。
 
 「達成感がないなぁ…」
 
 散々軽石を搔き集めても、目に見えてクリアにはならないのだ。
 
 とてもじゃないけど、昨日今日の合計30袋ではまったく足りない。
 
 足りないといえば、人手もまったく足りない。
 
 あくまでも「試しに…」だったとはいえ、過疎高齢化の島における人海戦術は、海どころか水溜まりに過ぎないから「人水溜まり戦術」でしかなく、ひとたび北風が吹けばすっかり元の木阿弥になることだろう。
 
 やはりシーズン前にヒトを大勢搔き集め、一気にドドッとやる以外に手はない。
 
 そして見事に海水浴場が元の白さを取り戻したとしても。
 
 それはやはり「局地的」な解決でしかなく、各地の海岸に軽石が溜まっているかぎり、一時的な回復でしかない。
 
 それはそうと、軽石入りの巨大土嚢はユンボでひとつひとつ軽トラに積み、裏浜入口の脇に設けられてある空き地に集積しているのだけど、ユンボが1台しかないものだから、積んで下ろして積んで下ろしてのたびに、ユンボは桟橋と裏浜を往復しなければならない。
 
 軽トラが20台あれば1度で済むところながら、うちが2台用意しても合計7台しかないから、ユンボは都合3往復。
 
 歩くよりは速いとはいっても、考えただけで気が遠くなる操縦を、オペレーターオサムさんはモクモクとこなすのだった。
 
 本部町役場、せめてリースのユンボを1台島に提供するくらいのことはできないか??
 
 ユンボはともかく、集積した軽石の搬出をしてくれるのだろうか?
 
 略して「役場」だけに、何も考えていないほうに千円ってところか…。 
  


Posted by クロワッサン at 09:49Comments(0)日々の作業

2021年12月21日

水辺のバレリーナ。

2021年 12月20日(月) 晴れ

北の風 うねりあり

 このところずっと不調だった洗濯機が、前日ついに故障者リスト入りすることとなってしまった。
 
 洗濯はされているようながら、脱水がまったく機能していないのだ。
 
 洗うだけ洗ってあとはほったらかしになる洗濯機なんて、料理を作るだけ作って食器は洗わないでいるうちに流しに皿が溜まりまくるビミョーにマメで無精な1人暮らしの方のようなもの。
 
 怠ける全自動洗濯機のために脱水だけ人力などと洗濯機のために奉仕し続けるのもバカらしいので、この日さっそく洗濯機を買いに出かけた。
 
 今回故障者リスト入りした洗濯機を買ったのは5~6年前だったっけ…
 
 と記憶をたどらなければならない際、こういうつまらないことでも日記として残っていると何かと便利。
 
 前回購入した際も、「洗濯記」というタイトルで残っていた。
 
 えーと、日付は……2017年11月13日。
 
 ん?
 
 まだ4年しか経ってないじゃん…。
 
 ま、昔ながらの二層式と違い、本来屋外据え置きは不向きなタイプ、しかも潮風万来の環境だから、メイドインチャイナなパナソニック製品としては頑張ってくれたほうかもしれない。
 
 今回は先日充填をお願いしていたタンクの回収をする必要もあったので、自分たちのボートで出てきていたから連絡船の時間に制約されずに済む。
 
 そこで、名護の電器屋さんで洗濯機を購入したあと(でも配達は2日後)、ちょっとばかし北へ足を伸ばすことにした。
 
 先日名護より南へ行ったのも久しぶりだったけど、名護より北に行くのも久方ぶりだ。
 
 目指すは大宜味村の喜如嘉ターブク。
 
 芭蕉布のふるさと喜如嘉はオクラレルカでも有名ながら、今の季節は花とはまったく無縁な水田地帯でしかない。


 けれどところどころ水が張られている田んぼには様々な生き物が暮らしているので、それらをエサにしている鳥さんたちの姿も多い。
 
 わりと珍し系のタゲリが観られる、という新聞記事が出ていたのを目にしたオタマサは、タゲリタゲリと呪文のように唱えていたけれど、タゲリの姿はなかった。
 
 そのかわり、水納島ではまず観ることができないこの方の姿が。
 

 ご存知セイタカシギ。
 
 豊見城の三角池に行けば群れで観られるこの鳥は、このような水溜まりでエサを探すことに特化したからか、やたらと足が長い。
 
 同じ田んぼに居たタシギらしき鳥は、同じように田に立っているんだけど↓こんな感じになる。
 

 膝より上が水面上に出ているセイタカシギが、いかにその名のとおり背が高いかおわかりいただけよう。
 
 その長い脚と索餌中の優雅な仕草から、こちら方面の変態社会では「水辺のバレリーナ」と呼ばれることもあるというセイタカシギ、その優雅な動きをどうぞ。
 
 

 おお、その足の運びはまさに水辺のバレリーナ。
 
 それにしてもバレリーナ、いったい何食べてるんだろう?
 
 ちなみに先ほどのタシギがエサを探す様子はというと…
 
 

 ウーム、なるほど田鴫、エサの摂り方はいささか下町風だ。
 
 シーズンになればオクラレルカが満開になる田んぼをグルリと歩いてみたところ、ヒトの姿が見えると鳥さんたちはサッと飛び立って逃げるか、歩いて遠くへ去っていく。
 
 ところが車に乗ったまま観ていると、まったく意に介すことなく、セイタカシギなどはむしろすごそばまで近づいてきさえするほど。
 
 水納島でもそうだけど、このあたりの鳥さんたちにとっても車は無害な存在であるらしく、プチプチトマト号のように派手な赤色であっても、迷彩柄のブラインドの役目充分に果たしてくれるのだった。 
  


Posted by クロワッサン at 08:18Comments(0)鳥さんたち

2021年12月20日

ウットリバード。

2021年 12月19日(日) 曇り時々晴れ

北の風 波あり

 かつて北海道を訪れた際、ついでに立ち寄った小樽の中央市場にある鮮魚店「たけお」さんと、その後もお付き合いが続いている、という話はかつて紹介したことがあるような気がする。
 
 通販もできるということだったので、その後毎年のように師走になると正月用にいろいろお願いしているのだ。
 
 今どきのようなオンライン販売などではなく、お店から注文用紙が郵送されてきて、それに書き込んで返送するという、オタマサにもやりとりが可能なシステムが素敵な販売方法である。
 
 ただ、今年は先方からの郵送が少々遅れ気味だったのに加え、連絡船の度重なる欠航もあって、当方に届いたのが先週のこと。
 
 注文するものを書き込んでも、欠航&週末で発送することができず、なんとか月曜日に返送できそうだ。
 
 ただし先方は先方で北海道だけに気象の条件が折り合わないと注文したものが揃わないだろうし、揃った時点で発送してもらってもこちらの連絡船が連絡船だけに……
 
 …なんてこともあるので、はたして年内に届くのかどうか、ヤキモキしているところだったりする。
 
 無事に正月を迎えることができるのだろうか。
 
 ところで、送ってきてくださった注文カタログリストの傍らに、鮮魚「たけお」のご主人が、
 
 「いろいろとモノの値段が上がっています…」
 
 と嘆いておられた。
 
 たしかにここ数年、北海道に限らず全国各地で「豊漁」という言葉をとんと聞かなくなっているんじゃなかろうか。
 
 秋刀魚は獲れない、イカはいない、桜エビは消えた、シシャモが見えない、サケを獲ろうとしたらブリしか獲れない……
 
 水納島でも、サザエは消え、タコはレアもの、ティラジャーが季節になっても出てこない…ときたもんだ。
 
 いやはや、10年後の我々は何を食べているんだろう?
 
 イカのような味がする、大豆で作ったイカそうめんとか?
 
 スマホで撮れる映像がハリウッド映画級の画質!なんていうハイテクはどーでもいいから、旬なものをフツーに食べられる世界に暮らしていたい…。
 
 話は変わる。
 
 昼間は外に出していても、日が暮れる前に室内に入れてしまうから、当店ゲストのみなさんであってもうちの飼い鳥を目にする方々は少ない。
 
 そのため存在を知らないヒトもいらっしゃるかもしれないけれど、我が家には現在インコが3羽いる。
 
 そのうちもっともよく喋るのがヒインコのロンちゃんで、TPOもしっかり把握しているから、我々が朝起きてトイレにでも行こうものなら
 
 「おはよう」
 
 と言うし、オタマサが「さてと…」と言いながら腰を上げると、
 
 「道掃除行ってきまーす」
 
 と反射的に言う(それが冷蔵庫のビールを取るために立ち上がっただけの時でも…)。
 
 蜂蜜が大好物の彼女は蜂蜜の容器につきものの金色のフタを目にすると、中身がなんであろうと反射的に
 
 「おいしいねー、おいしいねー」
 
 を連発して、欲しいことをアピールする。
 
 その他、まるでアナウンサーが実況中継しているような長いセンテンスをブツブツブツブツ喋り倒すこともある。
 
 ただ、種類的なモンダイで滑舌が悪いから、センテンスになるとたとえ飼い主でも何を言っているのかまったく聞き取れない。
 
 もしこれで滑舌よく誰でも聞き取れる話し方だったら、彼女は四六時中屋外で我々夫婦のヒミツの会話をそこらじゅうに向けて喋りまくっているかもしれないだけに、これはこれでむしろ良かったのかもしれないけど。
 
 さて、そんなロンちゃんは、会話を楽しむほかに、オモチャで遊ぶことも大好きだ。
 
 遊ぶといってもかなり暴力的で、噛みつく投げ飛ばすといったことが好きらしい。
 
 ただしお気に入りのオモチャもあって、それを手(足)に持ってウットリしていることもある。
 
 特に銀色のスプーンが大好きで、片脚立ちでスプーンを持ちながらペロペロしていることもあれば、仰向けに寝そべってスプーンを大事そうに抱え、ウットリしていることもある。
 
 鳥が寝そべるだなんて、知らない方は何かの比喩表現だと思われるかもしれない。
 
 でも↓このとおり、ホントに寝そべるのだ。
 
 
 
 飼い始めた15年くらい前に初めて目にしたときには、オタマサなど「死んじゃった!?」とビックリしたものだったけど、実はウットリしているだけということを知り、さらにビックリしてしまった。
 
 ちなみにこのように仰向けになるのはケージの中に居る時だけで、外に出して遊ばせている際には絶対にやらない。
 
 ケージの中が安全地帯であることを知っているのだ。
 
 鳥齢的にもう随分おばあちゃんになっているはずなんだけど、まだまだ元気で激しく遊んではお喋りし、そして時にウットリしているロンちゃんなのだった。
  


Posted by クロワッサン at 08:24Comments(0)鳥さんたち

2021年12月19日

江戸っ子は「おしたし」。

2021年 12月18日(土) 曇り時々晴れたり雨降ったり

北の風 時化模様

 前日に比べれば随分風はおさまったものの、連絡船は潔く欠航。
 
 またしても燃やすゴミを出せずじまいになってしまった。
 
 …と、ずっと変わり映えのしない暮らしを続けている間にも、畑の野菜たちはスクスク育っており、一部で収穫できるようになっている。
 
 もっとも、本格的な「収穫」時期ではないから、採っているのは事実上の間引きであったり間引きそのものだったりする。
 
 実はその間引いたものたちのほうが、本来あるべき姿よりも美味しかったりする。
 
 たとえばダイコンの葉っぱ。
 
 ダイコンは最初から直播で育てるものだから、3~5個くらいのタネを一ヵ所に蒔き、成長するにつれて選ばれし1本を残して間引くことになる。
 
 この間引いたダイコンの葉がまた美味しいのだ。
 
 スーパーで売られているものは葉が落とされているからそもそも目にできないけど、大根を作っているヒトにとっては、むしろ本体よりも葉のほうが好きという方もいるくらい。
 
 それもオトナになって固くなった葉ではなく、若い若いダイコンの葉となればなおさらで、近頃はわざわざダイコン葉目当ての「葉ダイコン」という品種まであるくらいだから、いかに好まれているかということがよくわかる。
 
 マサエ農園でもこの間引いた若いダイコン葉が、御浸し、ナムル、菜飯など、いろいろな副菜として登場し始めている。
 
 そんなおり、我が家の隣の畑でダイコンをたくさん作っているリョウセイさんから、大量のダイコン葉をいただいた。
 
 彼も好物ではあるけれど、たくさん作っているからとてもじゃないけど食べ切れないのだ。
 
 炒めればたちまち縮むダイコン葉だから、マサエ農園から間引かれた量では炒め物にしようという気にならないところ、、大量にあると皿の上でも大量のままだから、さっそくチャンプルーに。
 

 ああ、そういえば合わせて炒めているツナ缶は、家にハトが入ってそのまま落ち着いてしまったために往生していた島のおばぁからのヘルプ要請で緊急出動し、無事ハトを捕獲、外に追い出した際にいただいた大量のツナ缶だから、食材はどちらもいただきものだ…。
 
 ビジュアル的にはいまひとつだし、お弁当なら主菜の傍らの小さな一画にショボ…と添えられている程度の料理ではあるけれど、ダイコンの葉なんてスーパーではまず買えない品だから、これはこれで産地ならではのゼータク品なのである。
 
 一方、ダイコンの親戚であるカブは、みんな美味しい美味しいというわりには水納島ではオタマサしか作っていない。
 
 マサエ農園の場合、間引いて食べることを前提にしてタネを蒔くから、わりと量多く楽しめる。
 
 間引いたカブは丸いラディッシュくらいのサイズで、これまた炒めても漬物にしても茹でて葉ごとサラダに添えても美味しく、味噌汁の具にしてももちろん美味しい。
 
 味噌汁の具にして美味しいのだから、もちろんスープの具にもできる。
 
 メインとなる葉野菜類の成長が待たれるこの時期だからサラダランチとはいかない代わりに、このところのワタシのランチメニューはカブのコンソメスープ。
 

 これがまた五臓六腑に染み渡る滋味あふれるお味。
 
 オトナのカブではけっして味わえない食感が素晴らしい。
 

 「認めたいものだな。カブ自身の、若さゆえの美味しさというものを…」
 
 カブやダイコンが本来のサイズになるまでにはまだ時を必要としているかわりに、あると重宝するけどわざわざ買ってまで食べない系のルッコラやカラシ菜は、早くから食卓に登場し始める。
 
 ハーブに分類されることもあるルッコラは、葉っぱだけで勝負できる実力の持ち主で、畑でそのまま葉を千切って食べるだけで、パンチの効いた味を楽しめるほど。
 
 せっかくだから、そのパンチの連打を浴びるべく、御浸しにしてみよう!
 
 …というワタシのリクエストにオタマサが応えてくれたおかげで、
 

 ルッコラの御浸し♪
 
 こんなもの、わざわざスーパーでルッコラを買って作ってたらバカみたいだけど、たくさん採れるからいいのだ。
 
 さてさてお味は。
 
 葉っぱ1枚でも相当なパンチ力、こうして束になってかかってきたら、最終12ラウンドの嵐のラッシュ!なみの連打になるかも。
 
 まずはひと口。
 
 ありゃ?
 
 ボクサーはボクサーでも、引退して40年経った4回戦ボーイのパンチでしかない。

 あの独特の辛味や風味はどこに??
 
 というか、ほうれん草の御浸しですと言われても、きっとわからないはず。

 ほんの1分、サッと茹でているだけなのに、火の力が加わるとこういうことになるのか、ルッコラ。
 
 ようするに御浸しって、何を使っても結局こういう味になるのだなぁ。
 
 ある意味スゴイ料理法かもしれない…。
  


Posted by クロワッサン at 08:46Comments(0)島の美味いもの

2021年12月18日

愛せよ異形。

2021年 12月17日(金) 晴れ

北の風 ストロングな時化模様

 夜の間に風がグルリと周り、一夜明けた頃には寒太郎軍団の総攻撃状態になっていた。
 
 もちろんのことこの日の連絡船の欠航は前日から確定していたので、前日夕方のうちにボートを連絡船用バースに回しておいたから、総攻撃への防備は万全だ。
 
 午後の満潮時には波しぶきが桟橋の西側半分を洗うほどの荒れ狂い方だったから、これはもう連絡船が以前のままだったら…だとか戦う新人船長がどうとかに関係なく、文句のつけようのない完全無欠の欠航である。
 
 ゴミの日ではないし生ものが届く予定はないし、本島での用は一昨日済ませたから当分出かける必要もないので、欠航だからと慌てふためくことはない。
 
 ただ、着々と進む(オタマサの)年賀状書き作業のうえで困ったことがひとつ。
 
 この日届くかもしれなかった喪中のハガキが届かないと、出す必要のない方にまで時間を費やすことになる。
 
 宛名はすべて手書きだから、10枚20枚ならともかく、3万5千枚ともなると、喪中を知らせるハガキの到着は早いに越したことはないのだ(枚数にはいささか誇張アリ)。
 
 ちなみに、当方では毎年師走の24日までには3万5千枚の年賀状を発送してしまうので、それまでに喪中のお知らせをいただいていない場合は、服喪中のご家庭に年賀状が届いてしまいます。ご了承ください。
 
 あ、そうそう、今年は春に母が無くなったので、個人的には喪中につき、親類縁者友人知人方面には当方から喪中を伝えるつまらないハガキを出しているのだけれど、当店ゲストの皆様には当店から、いつものようでありながら大事なお知らせつきの年賀状が届きますです、はい。
 
 さてさて、そんなわけで海上は大時化でありながらもお天気は上々だったこの日も、昼食後のお散歩に。
 
 なるべく風が当たらない方面ということで、カメさんたちのエサを採りつつカモメ岩への道を歩いていると、オタマサが前方から手招きしていた。
 
 沿道の木々の葉の上で何かを発見したらしい。
 
 その何かとは(※閲覧注意)…
 

 ひゃあッ!毛虫!!
 
 このようなクリーチャーが大嫌いなヒトであれば、おそらく体中に寒イボが銀河のように現れ、身の毛のよだつ思いをされていることだろう。
 
 しかしそういう方々のなかには、これがもしウミウシだとしたら
 
 「カワイイ~♪」
 
 とか言ったりするヒトもいるのだから、不思議なものではある。
 
 まぁしかしこのようなものに身の毛がよだつわけではない我々が見ても、いかにも毒々しいカラーリング、さぞかし強烈な毒を有しているに違いない。
 
 ホントに毒持ちかどうか、ひとつオタマサに触ってもらい、近頃流行りの「実証実験」をしてもらおう…
 
 …と思ったら、最近はタイワンキドクガの毛虫ですらつまんでポイできるという彼女ですら、手に触れるのはヤダという。
 
 そりゃそうか。
 
 それにしてもこの悪魔のドクドクモンスターのような毛虫、いったい誰の子供なんだろう?
 
 こういう時に便利なのが、過去に何度も紹介しているイモムシガイドブック全3巻。
 
 帰宅後さっそくパラパラめくってみると、おお、載っている載っている。
 
 その正体は……
 
 なんとなんと、ルリタテハ!!
 
 ビックリ仰天玉手箱、アッと驚く為五郎。
 
 てっきり蛾の幼虫だとばかり思っていたら、蝶の子だったとは。
 
 ちなみにルリタテハのオトナはこういう姿形をしている。
 

 日向ぼっこをする際はこのように地面に降りていることが多い。
 
 その際にゆっくり翅を開閉することが多いから、翅の表と裏の違いを観ることもできる。
 

 ルリタテハは、激しく裏表のある人生を送っているのだ。
 
 昨日紹介したイシガケチョウとは違い、ルリタテハはどうやら島内で繁殖しているらしく、散歩しているとフツーに出会えるくらいに数は多い(でもリュウキュウアサギマダラに比べれば遥かに少ない)。
 
 そのわりにはこれまで幼虫、すなわちイモムシを観たことが無かった。

 ルリタテハのイモムシ、いったい何を食ってんだろ?
 
 先ほどのイモムシガイドブックによると、タテハチョウの仲間では珍しくユリ科の植物を好む種類なのだそうで、食草として、
 
 サルトリイバラ、ホトトギス、ヤマユリ、カラスキバサンキライなど
 
 と紹介されていた。
 
 ん?サルトリイバラ??
 
 どこかで聞いたことがあるような……
 
 アッ!!
 
 そうだそうだ、そうだった!
 
 今年3月、散歩をしていて見かけた不思議な花の名がわからずにいたところ、コメント欄にてそちら方面の変態社会の方々の協力を得つつ、ついに正体が明かされたのがハマサルトリイバラだったではないか。
 
 というか、このイモムシがムシャムシャ葉を食べていたのは、まさにその花が咲いていたところだ。
 
 さっそく当時の日記を見てみると、そのコメント欄の返信にてワタシは…
 
 「サツマサンキライなんて名前は聞いたことが無かったですが、 ルリタテハの食草なんですね。
 水納島にはルリタテハはたくさんいるので、 なにげにこの植物も見えないところで蔓延っているんでしょうか。
  27年目にして初めて気がつきましたけど……(汗)。」
 
 と書いていた…。
 
 せっかくルリタテハの食草を水納島生活27年目にして初めて知ったというのに、それから1年も経たぬうちにすっかり忘れていたぜ……。
 
 それにしても、昨日たまたまイシガケチョウのイモムシは島で観られないなんて話を書いたその翌日に、人生初遭遇のルリタテハのイモムシに会えるとはなぁ。
 
 そういう目で見れば、さきほどの写真で身の毛がよだった方も、ウミウシ同様だんだん可愛く見えてくるはず。
 
 ほら、見れば見るほど……
 

 やっぱ可愛くない??

 でも見た目と違って毒も無ければ、トゲトゲに触れても痛くも痒くもないらしい、完全無欠の人畜無害虫ですぜ。
 
 命短し恋せよ乙女、ついでに異形も愛せよ乙女。
 
 サイズ的におそらく終齢幼虫だろうから、やがてサナギがぶら下がっているのを見られるかもしれない。
 
 乞うご期待。
 
 < だから観たくないって。
 
 異形を愛でよ。
  


Posted by クロワッサン at 08:24Comments(0)昆虫記

2021年12月17日

太陽のチカラ。

2021年 12月16日(木) 晴れ

南東のち南の風 荒れ模様

 翌日はまた大陸から高気圧が張り出してくる予報となっていて、連絡船の欠航は確定的。
 
 でも今日は春のような南風で平和な1日に……
 
 …なるはずだったのに、春は春でも春の嵐のような南風が朝から吹き荒れ、洋上はかなりの時化になっていた。
 
 島内でも強い風に煽られてススキの穂から種が放出されまくり、まるで降り始めの雪のようにひらひらと舞っていたほど。
 
 そんななか、この日島内ではトートーメーのお引越し儀式が催されていた。
 
 おじいおばあともお星さまになったおうちでは、遺族もすっかり高齢化が進み、スーコーのたびに島に集まるというのも相当な負担になってきたことを受け、いっそのこと遺族が住まう地に仏さまを移した方がなにかと都合がいい、という事情による。
 
 時化だ欠航だとなにかにつけ島への行き来も不安定、という事情も拍車をかけたのだろう。
 
 これまで島内では数々のスーコーに臨席させていただいたけれど、我々にとってはトートーメーの引っ越しの儀式への参加は初めてのことで、いったいなにがどのように執り行われるのか…と思っていたところ、いつ始まったのかわからないまま終わっていて、後は各自お線香を立ててお別れの挨拶、という段になっていた。
 
 それまで庭先で控えていたときの、ジュンコさんの話が笑えた。
 
 儀式にはこういった行事の専門家(いわゆるユタ)の方もお見えで、昔からのイメージとして、ユタといえばおばぁ、と相場は決まっている。
 
 なのでその彼女への手土産を用意する際に、ジュンコさんは「ユタのおばあ用」と親族に説明したそうなのだけど…
 
 「ユタのひと、私より若いさ……」
 
 そりゃあ、我々も相対的に年齢が上がってますからね…。
 
 気がつけば校長先生もユタもみんな自分より年下になっているというジジツは、たとえ孫ができようと気分はずっと30代で過ごしているだけに、こういう時でもないとなかなか自覚できないジュンコさんなのだった。
 
 ともかくもそういう次第で、トートーメーのお引越しの儀は無事終了。
 
 過疎高齢化の島では、現在生きている人間だけでなく、あちらの世のヒトたちまで減っていくのである。
 
 話は変わる。
 
 この日のように暖かい日は、先日紹介したように冬でもチョウチョウたちは楽しげに飛び回っている。
 
 でも飛んだからといって運動で体温が上昇するわけではない昆虫たちは、気温が下がると機能が低下する。
 
 そのため冷え込んでいる日は、葉の陰で機能停止モードで過ごしている。
 
 やがて風がおさまり再び太陽が顔を出し、あたりがポカポカ陽気になってくると、機能停止モードだったチョウたちは、エネルギー切れを起こしたキャシャーンのように、太陽光線を一身に浴びようとする。
 
 その場合、少し前まで機能停止していただけに、なによりも太陽光線が重要ということになるのだろう、普段はものすごく警戒心が強い種類でさえ、ちょっとやそっとのことでは逃げず、羽を広げたまま日光浴を優先する。
 
 先日見かけたイシガケチョウも、冷えた体を元に戻すべく、日光浴を優先していたおかげで……
 

 全然逃げなーい。 
 
 ガジュマルも幼虫の食草のひとつだというから、島内にもエサとなる植物はあるはずなのに、イシガケチョウはどうやら水納島では繁殖している様子はなく、かつて与那覇岳で出会ったデビル君のような幼虫↓は水納島で観たことはない。
 

 イシガケチョウといえば、ごく稀に本島からフラリと飛んでくることがあるだけ。
 
 喜如嘉の七滝にはめちゃくちゃたくさんいたというのに、水納島ではけっこうレアなチョウなのだ。
 
 なのでカメラを手にしているときに見かければ、いつも撮ろうとは思うのだけど、いいお天気が続いているときだったら、このように沿道に止まっていても、通りかかっただけですぐさま飛び去ってしまう。
 
 ところがこの日は前日来の冷え込みのおかげで日光浴モードになっていたため、さらに近寄っても……
 

 まったく逃げなーい。
 
 島内で前回撮ったのはいつだったろう?
 
 2019年だった。
 
 その前は、2017年。
 
 イシガケチョウ、隔年出現の法則??
 
 せっかく逃げないでいてくれるのだから、今回も昆虫写真家おじさん海野和男風に撮ってみよう。
 

 こうして観てみると、このイシガケチョウは葉に止まっているだけで、花の蜜を吸っているわけではないことがよくわかる。
 
 青空に輝く太陽パワーを、体いっぱいで満喫しているのだ。
 
 そんな大事な日光浴中にお邪魔して申し訳なかった、イシガケチョウ。
 
 ではまた、2023年にお会いしましょう。 
  


Posted by クロワッサン at 08:24Comments(0)

2021年12月16日

胃 走。

2021年 12月15日(水) 晴れ

東の風 おだやか

 何ヵ月ぶりか、というくらい久しぶりに、名護よりも南に足を伸ばした。
 
 9時30分水納島発、15時渡久地港発の本島日帰りでは、本来の用事以外の「余計なこと」がなかなかできないけれど、自分たちのボートでなら時間の制約はない。
 
 この日はタンクの充填をお願いする用もあったので、朝からボートでお出かけなのだ。
 
 名護よりも南へ行くのは「余計なこと」なので、本来の用意を済ませてからレッツゴー。
 
 先ごろ開通したという、名護東道路の許田までのルートを初めて通ってみた。
 
 いやあもう、沖縄がどんどん沖縄ではなくなっていきますな…。
 
 「便利」の陰で次々に失われていっているものの大切さは、辺野古で埋め立てられている海の大切さと何も変わるところはないと思うのだけど、沖縄県が反対するのは辺野古の埋め立てだけで、それ以外の「大切なモノ」の消失は、どんどん推進しているのだった。
 
 さてさて、この日名護よりも南へ足を伸ばした目的はといえば……
 

 ご存知クリームクリーム。
 
 たまにはこういった文明の味をいただくほうが、きっと体のためになる。
 
 臨時休業だったらどうしよう、定休日が変わっていたらどうしよう…というありがちなワナにハマることもなく、しっかりオープンしていたお店でオタマサがオーダーしたのは、ストロベリーサンデー。
 
 とにかく量が多いのでオタマサにはハードルが高かったところ、この日はお昼ご飯メニューを「本日のスープ」だけにしてチャレンジ、そしてペロリと完食していた。
 
 ワタシも同じように昼メニューを抜いて…と思っていたのだけれど、ワタシの意思よりも遥かに強い煩悩が、いつものハムチーズ野菜クレープをも要求。
 
 そのうえでデザートにお願いしたのが……
 

 初オーダーの「ぜんざいクリーム」。
 
 この店イチオシの人気メニューでもある。
 
 ビッシリとカップに詰まっている金時豆の上に、「矢野ソフト」の異名を誇るこの店自慢のソフトクリームがエッフェル塔状態だ。
 
 でまたいつものことながら、このソフトクリームが美味しいんだわ!
 
 最初からお豆さんのほうに手を出すとエッフェル塔が倒壊してしまいそうだから、序盤はソフトクリームを味わい尽くす。
 
 食べることによってエッフェル塔が未完成のバベルの塔くらいになったところで、金時豆さんにも突入。
 
 甘すぎずしつこくなく、アイスクリームとの絶妙なマッチングに、早くも昇天10秒前だ。
 
 うれしいことに金時豆さんの海の中には白玉が3つも泳いでいて、ワタシが「ぜんざい」に求める基本をキチンと抑えてくれていた。
 
 どこをとっても一分の隙も無い人気メニュー「ぜんざいクリーム」、個人的にひとつだけ弱点をあげるとするなら、このメニュー、とにかく…
 

 …量が多い。
 
 お豆さんの量は3分の1くらいでちょうどいいんだけどなぁ…。
 
 < 事前にクレープを食べなきゃよかっただけでは?
 
 そうとも言う。
 
 このところは胃袋縮小計画実践中だったから、予想外の大忙し状態に、我が胃袋はうれしい悲鳴をあげている。
 
 ワタシの場合、師走ではなくどうやら胃走であるらしい……。
  


Posted by クロワッサン at 08:21Comments(2)街の美味いもの

2021年12月15日

看脚下。

2021年 12月14日(火) 晴れ

北東の風 おだやか

 大陸の高気圧が張り出してくる季節風ではあったけれど、今回はあっさりしたもので、一夜明けたら風はすっかりおさまっていた。
 
 この時期にこのような風が吹くとかなり冷え込むものなんだけど、寒気にパワーがないのかなんなのか、朝晩の冷え込みはさほどではないし、日中に朝の格好のままでいたら汗ばむほどだ。
 
 寒くない冬は体が機能停止しないし海に行こうって気にもなるからいいことではあるものの、それは他のいろんな生き物にとっても同じなわけで、モンシロチョウたちがうれしそうに畑の上をヒラヒラ舞っている。
 
 もちろん彼女たちは生育中の野菜に卵を産みつけに来ているわけで、早くも葉の裏ではアオムシがムシャムシャムシャムシャ…と活発に活動中らしい。
 
 彼らアオムシにとってみれば、野菜の葉の上で暮らしているのはヘンゼルとグレーテルのお菓子の家のようなもの。
 
 放っておくと、続々増えるアオムシによって野菜たちは丸裸にされてしまうから、毎朝オタマサはアオムシチェックに行かなければならない。
 
 雨でも降ろうものならそこにカタツムリまで加わるから、チェックはさらに重要になる。
 
 これがストロングタイプの寒気であれば、雨は氷雨となってカタツムリも機能停止、チョウチョウたちも卵を産む気力もなし、アオムシたちも食事処ではなし…と、いいことづくめなのだ。
 
 今冬は寒さが厳しくなるという予報だったけど、これがとんでもない手のひら返しで超暖冬になってしまうと、畑は↓こういうことになってしまうかもしれない。
 
 
 
 一昨年この動画を紹介したときは、産卵場所を求めてモンシロチョウたちはダイコンにまで産み付けていたものだった。
 
 ちなみにこのダイコン畑はマサエ農園ではなく、すぐ隣の畑。
 
 畑の主はその後規模縮小してしまったために、現在はすっかり藪になっているから、ここにモンシロチョウが集うことはない。
 
 その分、この周辺で唯一となったマサエ農園畑1号に集中攻撃??
 
 まぁしかし、寒さが厳しい年はまた別に、普段は少数しかいないヒヨドリたちが、いずこからか大挙押し寄せてきたこともあったっけ。
 
 ヒヨドリたちの食欲はアオムシどころではなく、八重山探訪で10日間ほど島を留守にしていたら、ブロッコリーの葉はほぼほぼ骨(葉脈)だけになっていたほど。
 

  暖かすぎても寒すぎても何かしらの害があるのだ。
 
 なににつけても「ほどほど」が一番なのである。
 
 さてさて、野菜たちが収穫されるようになれば、お昼はサラダランチという日々が待っている。
 
 しかしこの時期はまだまだ早いので、そういうわけにはいかない。
 
 そのかわり先月からずっと、お昼はフルーツランチ。
 
 …ランチっていうほどの量を食べているわけじゃないけど。 
 
 そもそもフルーツなどというゼータク品は我が家では本来手を出せない品々だから、毎年押し売りされて山のように届くスキスキ木原のいよかんたちは、うちにとって最高級果実といっていい。
 
 けれどおかげさまでいろんな方面から果物をいただく機会が多く、シーズン中は食べても食べても無くならないメルモちゃんのキャンディ状態になる。
 
 先日紹介した柘榴のように、島の方々からいただく果物もいろいろあって、この前はお土産でとっても素敵なものをいただいた。
 

 干し柿!
 
 オフシーズンになって早々に、亡母のご友人から大量の柿が届いたのだけれど、これが昔ながらの味でとっても美味しく、久しぶりに柿の実力を見直す日々を送ることができた。
 
 その流れで、今度は干し柿。
 
 子供の頃にはさほど馴染みが無かったから、個人的には郷愁を誘うものでもなく、普段だったらさほど食指が動いていなかったかもしれない。
 
 でも改めて柿の実力を知った今、どれどれ…と手を伸ばしたくもなる。
 
 しかもいただいた干し柿は、写真こそ剥き身ながらひとつひとつ包装されているもので、田舎の家の軒先に吊るされている素朴な甘味というよりも、なんだか千疋屋モードの雰囲気もあった。
 
 さてその干し柿、お味の方は……
 
 激ウマッ!!
 
 こ……これが干し柿の発動か。
 
 久しぶりにギジェ・ザラルになってしまった。
 
 甘すぎずコクがあり旨味もある濃厚な食味と、ギュッと詰まっていつつもモッチリした食感のバランスが最高。
 
 その昔漫画「マスター・キートン」で、中華料理に使用されている甘味のヒミツがわからず、キートンが最後の最後に知ることとなった正体こそが、干し柿……という話があったっけ。
 
 当時は干し柿の実力を知らなかったから今ひとつピンと来なかったけど、今ならきっとわかるはず。
 
 おそらく人生初ではないだろうけど、その美味さを知ったという意味では、先日の柘榴に続く人生的発見だ。
 
 世の中的に新しいものばかりに目を向けてばかりいると、古来より身近に伝わるものの実力を知らないままになってしまいそう…。
  


Posted by クロワッサン at 08:19Comments(2)世間の美味いもの

2021年12月14日

動脈硬化対策。

2021年 12月13日(月) 未明雨のち曇り時々晴れ

北の風 時化模様

 大陸から張り出してきた高気圧がキッチリ仕事をして、強い北風がビュービュー吹きつける1日に。
 
 もちろん連絡船は欠航。
 
 この日の欠航は前日から確定的だったため、月曜に用事があるヒトは前日から出ておかなければならないし、ヒトによっては冬の間島にいないということもあり、ふと気がつけば、この日島にいる男性といえば、マサシさん、タツヤさん、そしてワタシの3名だけだった。
 
 その平均年齢は60オーバー。これで女性は老若揃い踏みというのならともかく、男性と似たり寄ったりなのだから、まっしぐらに突き進む限界集落への道といったところだ。
 
 ま、ナニゴトもなければ、そのおかげで毎日静かかつ平穏に過ごせるけど。
 
 さてさて、強い北風がまた軽石軍団を桟橋脇に溜めているんだろうか…と思いきや、小潮のタイミングということもあってか、海岸に溜まっている軽石はさほど浚われずに済んだらしく、遠方からはるばる流れて来る軽石大艦隊の姿も見えず。
 
 これなら安心してボートを浮かべていられる。
 
 軽石の何がやっかいって、航走しているときはさほどでもないものの、ボートを停めているときに軽石軍団に取り巻かれると、波のまにまに軽く沈んだ軽石がボートの下に潜り込み、そこから浮こう浮こうとするうちに、冷却水吸水口の穴メッシュを通り抜けるサイズのものが、冷却水汲み上げルートに入り込んでしまうのだ。
 
 そしてそのあとエンジンをかけると、そのまま機関のほうに流れ込んでいくことになる。
 
 うちのボートくらいだと冷却水のルートなんて単純な構造だから、小さいものが1つや2つならそのまま外に流れ出るのだろう。

 でもシーズン最終盤のようにボートの周りを軽石がビッシリ埋め尽くすようなことになると、停めている間に冷却水吸水口から入り込む小さな軽石の数は半端ではなくなる。
 
 いくら単純な構造とはいっても、ラジエター部をしっかり冷やす構造にはなっているので、曲がりくねったルートに軽石がワァ―ッと突入すれば、畢竟、冷却水ルートは高脂血症の方の動脈のようになる。
 
 それを踏まえれば、たとえ軽石を吸引してしまったとしても、機関に入らないようにすれば、トラブルは未然に防ぐことができる。
 
 そこで!
 
 新装置設置。
 

 冷却水用フィルター。
 
 連絡船レベルの立派な船であれば、宇宙兵器のような立派なフィルターがついているのが当たり前なので、機関長あたりはうちのボートにはもともとこのような装置がついていなかったということに驚いていたけれど、きれいなきれいな沖縄の海の場合、うちのボートくらいであればこんなものなんて必要ないのだ。これまでは。
 
 ただただこまめな網の目で異物を漉しとるだけの単純装置ながら、冷却水吸水口のメッシュより遥かに細かく、そのうえ外から異物の溜まり具合をチェックできるというスグレモノだ。
 
 今のところエンジンを動かした途端、軽石に関係なくあっという間に目が埋まってしまうというようなこともなく、冷却水はすこぶる順調、あとは始動前にこの装置をちゃんとチェックすることを忘れなければ、もはや「栄光の曳航」のようなことはあるまい……
 
 …って、ちゃんと機能するのかな、これ??

 はたして、ミスクロワッサンの動脈硬化モンダイは、これにて一件落着か??
  


Posted by クロワッサン at 08:42Comments(0)日々の徒然

2021年12月13日

Ride On Time。

2021年 12月12日(日) 晴れ

東のち北の風 おだやかのちやや波あり 水温23度

 テレビを見ていたら、テロップで流れるニュース速報で、迫りくる低気圧だか寒気だかのために、北海道や東北では暴風雪になる恐れがある、という気象警報が出ていた。
 
 で、その後すぐに始まったNHKのNEWS7の冒頭のニュースはといえば、
 
 「アメリカ南部のケンタッキー州で竜巻が発生し…」
 
 そりゃ100人以上も死者が出ている竜巻となればビッグニュースなんだろうけど、国内に気象警報が出ているさなかにそれがトップニュースってあんた……
 
 いったいどこの国の「公共」放送なんだ??
 
 さてさて。
 
 北国に暴風雪をもたらす低気圧を東へドドンと駆け抜けさせる大陸の高気圧が張り出してくる明日は、沖縄地方にも北風小僧の寒太郎が「冬でござんす…」とヒュルルルやってくるようだ。
 
 でもその前日にあたるこの日は、朝からもう……
 
 初夏!!
 
 といっていいほどに暑さ全開。
 
 11月にふと訪れる春のような気候を小春日和というのなら、師走にドンとやってくる夏のような気候はなんというのだろう?
 
 暑さ全開といっても朝早いうちだと体が温まっていないから、昨日も今日もある程度活動して暖気運転充分状態の午後イチに潜りに行く。
 
 おかげで23度まで下がっている水温でも、5ミリのワンピース&フードベストで、40分過ぎまでなら寒さを感じない。
 
 寒くもなんともない間に深い方に行って、ここ数年お馴染みさんになっている「幻」の健在を確認してきた。
 
 お馴染みになっている「幻」というのも妙な言い回しながら、一部の変態社会ではその遭遇率の低さから「幻」級の魚と称されているシラタキベラダマシのことだ。
 
 拙日記でも過去に何度か紹介しているこの幻、発見以来ずっと同じ根に居続けてくれているので、すっかりお馴染みさんなのである。
 
 近縁のシラタキベラやヤマシロベラ同様、本来はハレムを作ってメスを相手にブイブイ言わせながら暮らしているはずのところ、なにぶん「幻」だけに彼は長い間お相手に恵まれていない。
 
 いわばロンリーハレムの主を、この日も生存確認。
 
 でも…夏と比べて動きが異なり、根から随分離れたところまで行き、海底に近いところで何かをしている。
 
 様子を見ようと近寄ると、その場を離れて逃げはしても根には戻らず、かといってダッシュで逃げ去るわけでもないまま、海底付近にある小岩を気にし始めた。
 

 何を気にしているのかは不明ながら、これだったらもっと近寄れるかも。
 
 安心してさらに近づいてみると…
 

 え?
 

 ありゃ?
 
 手品~ニャ??
 
 素早い動きで小岩にダッシュしたかと思うと、忽然と姿を消してしまった。
 
 まさに「幻」……。
 
 手品のタネを明かすべく回り込んでみたところ…
 

 ああッ!出入り口が!!
 
 シラタキベラダマシって、こういう穴に入り込む魚なんでしたっけ??
 
 このテのベラが夜間に砂に潜って寝ていたり、昼間でも難を逃れるため砂中に没することもある、ということは知っていたけれど、小岩に穿たれた空隙を隠れ家にするワザも備えていたとは知らなんだ。

 先のリンク先でも紹介している、シラタキベラダマシがヤマシロベラたちとともに海底の小岩を物色していたのは、緊急時避難場所チェックだったのだろうか??
 
 わりと距離を置いて、再び出てくるのを待っていたところ、5分やそこらでは事態は変化を見せないことが判明、スゴスゴとその場を後にしたのだった。
 
 次回もちゃんと健在でありますように……。
 
 ここでジッとしていたこともあり、体が冷えてきた。
 
 陸は初夏のようといってもやっぱり水温23度、50分を過ぎたあたりから寒さが募ってくる。
 
 これまでであれば、遊びで潜っているときに寒さをこらえて無理に潜り続ける必要などまったくないのだからとっとと上がってしまえばいいところながら、現在のタンク1本あたりの単価を考えると、60~70ほど残してエキジットするのがもったいない…。
 
 …という極めてセコい理由で粘っていたところ、鉛筆ほどの細さのマックロクロスケ・ハナヒゲウツボがいた。 
 
 久しぶりに独り占め状態で会えたので、動画でマックロクロスケのアンアンでも……。
 
 

 寒さに挫けていたら会えなかったのだから、この出会いはタンクの単価のおかげだ。
 
 せめて30切るくらいまでは空気を吸っちゃおう…とさらに粘っていたところ、今度はなかなか観られないシーンに遭遇した。
 
 遠めからなので色味に乏しい写真で申し訳ないけれど…
 

 ヘラヤガラもバラハタも珍しくもなんともないし、ヘラヤガラがバラハタにラィディングしているシーンもお馴染みの光景だ。
 
 でもこのときは、どういうわけだか2匹のヘラヤガラが同じバラハタを椅子取りゲームのように取りあい……
 
 …かと思いきや、ライディングは1匹で、と決まっているわけではないらしく、
 

 ~♪
 Ride On Time 心に火をつけて
 飛び立つ魂に送るよ Ride On Time……

 
 …といったところなんだろうか、ヘラヤガラ・キレンジャー。
 
 でもやっぱりバラハタにしてみれば2匹は重荷のようで、2匹の要求を逃れるべく、通り抜け可能な根の空洞に入り込むことによって、2匹を振り払った。
 
 行き場を失いかけたヘラヤガラ、そのうち1匹は反対側から出てくるバラハタに気づき…
 

 Oh…Ride On Time!
  


Posted by クロワッサン at 09:11Comments(0)水納島の海

2021年12月12日

ロクセン漸増。

2021年 12月11日(土) 晴れ

北東の風 うねりあり 水温23度

 「ボートダイビングは楽である。」
 
 …とは、三十数年前の学生時代にある後輩が合宿のレポートの冒頭に書き出した言葉だ。
 
 貧乏学生の集まりであるダイビングクラブなので、普段のダイビングといえばもちろんビーチエントリー。
 
 西海岸の多くのポイントはタンクをかついで崖に近い岩場を上り下りせねばならず、真栄田岬では巨人の星のオープニングに匹敵する試練ともいえる長い階段だ。
 
 南部のポイントだと、エントリーしてからリーフの外まで行くのが遠く、キャリングで泳がねばならない距離が随分ある。
 
 年に2度の離島合宿で味わえるボートダイビングは、そんな普段の試練など皆無、船べりからボチャンとエントリーするだけでダイビングが始まる。
 
 誰もが味わうその幸福感をたった一文で表わして以来、彼は「文豪」の名を欲しいままにしたのであった。
 
 そんな文豪の名文を、この日のワタシが久しぶりに思い出したのはほかでもない、渡久地港北岸での長い入院生活を終えたボートを前日島に戻しておいたので、本日40日ぶりにボートダイビング!
 
 いやはや、ホントに……
 
 ボートダイビングは楽である。
 
 ま、水納島でビーチエントリーをする場合、長い階段も崖の上り下りも無いけど、軽トラから浜辺までタンクを担いで行き来するのがつらい…。
 
 おそらく今のワタシが真栄田岬でダイビングすれば、帰りの途中35段目くらいで野垂れ死ぬに違いない……。
 
 さて、師走も半ばに差し掛かった海中は、さすがにリーフ際にキビナゴの川は無くなっているものの、砂地の根は相変わらずのスカテンパラダイス。
 

 小潮のタイミングで1日中強い流れが生まれていないためか、魚たちが実にのんびりしていて、シーズン中ならダイバーが近寄ると岩陰に逃げることが多いユカタハタたちが、みんなスカテン煌めく宙を舞って心地よさそうにしていた。
 

 ただしユカタハタサイズの魚を間近で撮って全身を納められるような画角のレンズではないから、ある程度距離を置いてユカタハタを撮らざるをえず、そうすると、おうおうにして↓こういうことになる。
 

 スカテン目隠し。
 
 こんなの、狙ったって撮れないのに、なまじスカテンが多いものだから、フツーに撮っているつもりでも目線入り少女Aユカタハタだらけになってしまう…。
 
 のんびりしているのは小型のヤッコたちも同様で、フツーに撮れそうで撮れないツーショットチャンスも大盤振る舞いだ。
 

 このタテキンベビーはこの根に2匹いるうちの大きい方で、今年ずっと確認している子だ。
 
 なぜ同じ個体だとわかるのかというと、背ビレを損傷しているから。
 

 尾ビレに近い側のボロボロ具合いは近づいて観なければわからないものの、背ビレの真ん中あたりの輪郭が妙な形でへこんでいるので、遠目にもすぐにこの子とわかるのだ。
 
 根のボスであるユカタハタにも果敢に縄張りを主張するタテキンベビーが、実際にユカタハタにやられるとは思えず、これはスカテン狙いのカスミアジアタックのとばっちりを受けたものかもしれない。
 
 現在より2周りほど小さい頃から背ビレのへこみはこの状態だったのだけど、それでも健気に逞しく、その後もしっかり成長しているのだ。
 
 このタテキンベビーに限らず、魚たちはダメージの大小にかかわらず、死ぬまで頑張り続ける。
 
 当たり前のようでありながら、現代ニッポン人にはなかなかできないことのような気もする…。
 
 さてさて、流れの無い海中ではヒメテングハギもポワワ~ンと中層に群れていたほか、根のキレンジャーたちも宙で塊を作っていた。
 
 10メートル隣の根に群れているフエダイ類といえばヨスジフエダイしかいないのに、なぜだかこちらの根には、昔からヨスジのほかにロクセンフエダイとキュウセンフエダイが混じっている。
 
 そう、昔は「混じっている」程度の個体数だったのだ。
 
 ↓こんな感じ。
 

 どこにロクセンフエダイがいるかわかりますね?(チラッと見えているものも含めれば3匹います)
 
 どれがロクセンフエダイかわからないという方は、こちらで復習してください。 
 
 ここ数年はロクセンフエダイの数が増えているような気がしてきて、それでも「昔に比べれば増えた」という程度だと思っていた。
 
 ところが今年になって、実はそれどころではなく増えているんじゃなかろうかロクセンフエダイ…ということに気がついた。
 
 そしてこの日、根の上方でフワワンと群れているキレンジャーは、なんとヨスジメインの群れとロクセン主体の群れに分かれているではないか。
 

 右側がヨスジオンリー、左側がロクセンが多い群れ。
 
 ていうか、先ほどのスカテン&ユカタハタといいここといいヒメテングハギの群れといい、フィッシュアイだったなぁ、今日は!
 
 …という後悔を抱きつつポッケのコンデジで遠めにパシャ。
 
 ヨスジフエダイはともかく、普段はすぐに岩陰に潜もうとするロクセンフエダイもこのように宙で群れるんだなぁ…。
 
 でもこれじゃあヨスジだロクセンだなんて話にならないので、ロクセンメインのほうに邪魔してみた。
 



 先ほどのリンク先の末尾で触れているように、このところ毎年初夏に増えてその年のうちに消えていくロクセンフエダイのチビ~若魚たちはどこに行ってしまうんだろう…と思っていたのだけど、どうやらここに大集合しているらしい…。
 
 なぜこの根に?
 
 ヨスジは群れている10メートル隣の根と、いったい何が違うんだろう?
 
 このテの魚が美味しいことを知っているヒトはたくさんいても、そのテの話に詳しい人はそうそういないのであった。
 
 ああ、それはともかく!
 
 ここでロクセンフエダイの群れを撮っていたら、その後ササムロの群れがドドーッと降りてきて、束の間ながらもグルクンのライトブルーとキレンジャーのツートンスクール!
 
 なんてきれいなんだろう……。
 
 ああ、フィッシュアイだったなぁ、今日は!!
  


Posted by クロワッサン at 09:03Comments(2)水納島の海