2021年12月12日

ロクセン漸増。

2021年 12月11日(土) 晴れ

北東の風 うねりあり 水温23度

 「ボートダイビングは楽である。」
 
 …とは、三十数年前の学生時代にある後輩が合宿のレポートの冒頭に書き出した言葉だ。
 
 貧乏学生の集まりであるダイビングクラブなので、普段のダイビングといえばもちろんビーチエントリー。
 
 西海岸の多くのポイントはタンクをかついで崖に近い岩場を上り下りせねばならず、真栄田岬では巨人の星のオープニングに匹敵する試練ともいえる長い階段だ。
 
 南部のポイントだと、エントリーしてからリーフの外まで行くのが遠く、キャリングで泳がねばならない距離が随分ある。
 
 年に2度の離島合宿で味わえるボートダイビングは、そんな普段の試練など皆無、船べりからボチャンとエントリーするだけでダイビングが始まる。
 
 誰もが味わうその幸福感をたった一文で表わして以来、彼は「文豪」の名を欲しいままにしたのであった。
 
 そんな文豪の名文を、この日のワタシが久しぶりに思い出したのはほかでもない、渡久地港北岸での長い入院生活を終えたボートを前日島に戻しておいたので、本日40日ぶりにボートダイビング!
 
 いやはや、ホントに……
 
 ボートダイビングは楽である。
 
 ま、水納島でビーチエントリーをする場合、長い階段も崖の上り下りも無いけど、軽トラから浜辺までタンクを担いで行き来するのがつらい…。
 
 おそらく今のワタシが真栄田岬でダイビングすれば、帰りの途中35段目くらいで野垂れ死ぬに違いない……。
 
 さて、師走も半ばに差し掛かった海中は、さすがにリーフ際にキビナゴの川は無くなっているものの、砂地の根は相変わらずのスカテンパラダイス。
 
ロクセン漸増。

 小潮のタイミングで1日中強い流れが生まれていないためか、魚たちが実にのんびりしていて、シーズン中ならダイバーが近寄ると岩陰に逃げることが多いユカタハタたちが、みんなスカテン煌めく宙を舞って心地よさそうにしていた。
 
ロクセン漸増。

 ただしユカタハタサイズの魚を間近で撮って全身を納められるような画角のレンズではないから、ある程度距離を置いてユカタハタを撮らざるをえず、そうすると、おうおうにして↓こういうことになる。
 
ロクセン漸増。

 スカテン目隠し。
 
 こんなの、狙ったって撮れないのに、なまじスカテンが多いものだから、フツーに撮っているつもりでも目線入り少女Aユカタハタだらけになってしまう…。
 
 のんびりしているのは小型のヤッコたちも同様で、フツーに撮れそうで撮れないツーショットチャンスも大盤振る舞いだ。
 
ロクセン漸増。

 このタテキンベビーはこの根に2匹いるうちの大きい方で、今年ずっと確認している子だ。
 
 なぜ同じ個体だとわかるのかというと、背ビレを損傷しているから。
 
ロクセン漸増。

 尾ビレに近い側のボロボロ具合いは近づいて観なければわからないものの、背ビレの真ん中あたりの輪郭が妙な形でへこんでいるので、遠目にもすぐにこの子とわかるのだ。
 
 根のボスであるユカタハタにも果敢に縄張りを主張するタテキンベビーが、実際にユカタハタにやられるとは思えず、これはスカテン狙いのカスミアジアタックのとばっちりを受けたものかもしれない。
 
 現在より2周りほど小さい頃から背ビレのへこみはこの状態だったのだけど、それでも健気に逞しく、その後もしっかり成長しているのだ。
 
 このタテキンベビーに限らず、魚たちはダメージの大小にかかわらず、死ぬまで頑張り続ける。
 
 当たり前のようでありながら、現代ニッポン人にはなかなかできないことのような気もする…。
 
 さてさて、流れの無い海中ではヒメテングハギもポワワ~ンと中層に群れていたほか、根のキレンジャーたちも宙で塊を作っていた。
 
 10メートル隣の根に群れているフエダイ類といえばヨスジフエダイしかいないのに、なぜだかこちらの根には、昔からヨスジのほかにロクセンフエダイとキュウセンフエダイが混じっている。
 
 そう、昔は「混じっている」程度の個体数だったのだ。
 
 ↓こんな感じ。
 
ロクセン漸増。

 どこにロクセンフエダイがいるかわかりますね?(チラッと見えているものも含めれば3匹います)
 
 どれがロクセンフエダイかわからないという方は、こちらで復習してください。 
 
 ここ数年はロクセンフエダイの数が増えているような気がしてきて、それでも「昔に比べれば増えた」という程度だと思っていた。
 
 ところが今年になって、実はそれどころではなく増えているんじゃなかろうかロクセンフエダイ…ということに気がついた。
 
 そしてこの日、根の上方でフワワンと群れているキレンジャーは、なんとヨスジメインの群れとロクセン主体の群れに分かれているではないか。
 
ロクセン漸増。

 右側がヨスジオンリー、左側がロクセンが多い群れ。
 
 ていうか、先ほどのスカテン&ユカタハタといいここといいヒメテングハギの群れといい、フィッシュアイだったなぁ、今日は!
 
 …という後悔を抱きつつポッケのコンデジで遠めにパシャ。
 
 ヨスジフエダイはともかく、普段はすぐに岩陰に潜もうとするロクセンフエダイもこのように宙で群れるんだなぁ…。
 
 でもこれじゃあヨスジだロクセンだなんて話にならないので、ロクセンメインのほうに邪魔してみた。
 
ロクセン漸増。


ロクセン漸増。

 先ほどのリンク先の末尾で触れているように、このところ毎年初夏に増えてその年のうちに消えていくロクセンフエダイのチビ~若魚たちはどこに行ってしまうんだろう…と思っていたのだけど、どうやらここに大集合しているらしい…。
 
 なぜこの根に?
 
 ヨスジは群れている10メートル隣の根と、いったい何が違うんだろう?
 
 このテの魚が美味しいことを知っているヒトはたくさんいても、そのテの話に詳しい人はそうそういないのであった。
 
 ああ、それはともかく!
 
 ここでロクセンフエダイの群れを撮っていたら、その後ササムロの群れがドドーッと降りてきて、束の間ながらもグルクンのライトブルーとキレンジャーのツートンスクール!
 
 なんてきれいなんだろう……。
 
 ああ、フィッシュアイだったなぁ、今日は!!


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Posted by クロワッサン at 09:03│Comments(2)水納島の海
この記事へのコメント
いやはや、あの一文はけだし名言でしたね^^
年に一度のボートダイビングの度に思い出すフレーズです(^^ゞ
Posted by uza9 at 2021年12月17日 12:29
30年経っても忘れ得ぬ…
これぞまさに至宝の名文ということなのでしょう(笑)。
Posted by クロワッサン at 2021年12月17日 16:57
 
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