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2024年04月20日

四半世紀越しの念願成就。

2024年 4月19日(金) 晴れ
 
北東の風 うねりと波あり 水温21度~22度

 朝方こそ20度を下回る気温で肌寒さを感じたけれど、少し日が昇ればあっという間に暖かくなる。
 
 さすが4月。
 
 しかし悲観的なほうの10日間天気予報を見てみると、週明けからなんだか梅雨入りしそうな勢いで雨マークの連打になっていた。
 
 心地よく潜れるのは今のうち。
 
 荒れ模様は一夜でおさまり、少々うねりを残す程度になっていたから、本日は絶好の海日和だ。
 
 というわけで、朝から海へ。
 
 大雨の影響はまだ残っていて、表層は薄緑色に濁り、リーフ際は白内障のようなシルト濁りと冴えないコンディションではあったけれど、海中は1本のダイビングとはとても思えないネタ尽くしで賑やかだった。
 
 行こうと思っていたところに早くも他のボートが止まっていたので、次善の策で潜ったところは、オタマサが「オオアリモウミウシ(の1種)が多い」と言っているところ。
 
 多いというからには、ワタシの眼でも発見できるに違いない。
 
 さっそく海底をさまよってみると…
 
四半世紀越しの念願成就。

 …いた。
 
 密集しているって感じではないものの、そこらに点々としている彼らは、場所によっては50センチ四方に4匹くらいいたりもした。
 
 なるほど、たしかに多いや…
 
 …と思っていたら、オタマサによると「ホントに多い日には50センチ四方に10匹くらいいることもある」のだそうな。
 
 ところで、牛さんの角にも見える触角の間にある小さな黒い点、これはおそらく光を感じることができる眼点、ようするに目と思われる。
 
 目と思ってみてみると、その表情のイメージがガラリかわり、なんだか道に迷って困っているようにも見える。
 
 実際オオアリモウミウシ(の1種)は、意外な速さで這い進んでいるのだけれど、ウロウロしているわりにはあまり遠くには移動していなかったりする。
 
 
 
 道を失っているのだろうか?
 
 ともかくもこの小さなウミウシ、ワタシにも「見える」ことがわかって喜んでいたところ、オタマサがさらに小さなウミウシを教えてくれた。
 
 海中ではマスク内の空気と水の屈折率の関係で、実際よりもモノが大きく見えるものなのだけど、それでさえ5ミリすらないように見えた極チビウミウシだ。
 
 かろうじて肉眼でもピコピコ動いている様子が見られ、1対の長い棒が突き出ているのもわかった。
 
 ファインダーで覗いてみたところ、ツノザヤウミウシの激チビなんじゃね?
 
 …と思ったのだけど、撮った画像をその場で拡大して見てみれば…
 
四半世紀越しの念願成就。

 1対の棒はツノザヤウミウシのような突起ではなく、触角そのものだった。
 
 後ろから見てみると…
 
四半世紀越しの念願成就。

 こんな妙チキリンなバランスのウミウシなんて、観たことないかも。
 
 後刻調べてみたところ、コヤツはツノウミウシという、成長してもせいぜい1センチくらいにしかならない小さなウミウシであることがわかった。
 
 長い触角と鰓を取り囲むように、左右それぞれ3つずつある突起が生えているのも特徴のひとつらしい。
 
 オタマサによると、この日他にもう1匹見つけたそうで、ひょっとするとつぶさにサーチすれば他にも湧いていたのかもしれない。
 
 ツノウミウシをあとにして、砂底の根を訪ねてみると、大きなメレンゲウミウシの姿があった。
 
 しかしワタシの目を奪ったのはメレンゲウミウシではなく、その傍にいたこちらの方。
 
四半世紀越しの念願成就。

 魚自体は砂地の根ではお馴染みの、何の変哲もないゴイシサンカクハゼである。
 
 しかしその居場所には、かなり「変哲」がある。
 
 ゴイシサンカクハゼといえば、根の暗がりの砂上にいるのが定番で、彼らの暮らしぶりからしても、このように岩肌に育つ被覆状サンゴの上に鎮座していることなどまずない。
 
 ところが、このすぐ下が砂底で、そのキワにあるサンゴというのならともかく、砂底から50センチほど離れた上の方にチョコンと乗っていたのだ。
 
 いったい何があったのだろう?
 
 グルリと根を一回りしたところ、ゴイシサンカクハゼの暮らしを落ち着かなくさせている原因かもしれない団体様の姿があった。
 
四半世紀越しの念願成就。

 日が高くなると寝そべるかのように根でジッとしているハナミノカサゴたちが、まだ日が低く表層が濁って照度が低いからだろうか、早朝や夕刻のように活発になっていて、さながら不沈宇宙戦艦との決戦を前にガミラス本星に集結してきたドメル艦隊のよう。
 
四半世紀越しの念願成就。

 群れに集まっているスカテンのチビチビの群れをハントすべく集合している彼らは、スカテンチビチビ集団の動きに合わせ、宙に舞ったり降下して岩陰に追い詰めたりを繰り返していた。
 
 いささか長いけど、その様子を動画で…。
 
 
 
 この根を訪れるたびに「ハナミノ多過ぎ…」と思ってはいたけれど、ここまでアクティブだと集団ならではの迫力があって素晴らしい。
 
 こんなのに追われ続けるんだもの、スカテンチビチビたちも大変だ…。
 
 リーフ際に戻ってくると、前日の荒れ模様で攪拌されたリーフ内のシルトが蔓延しているために、白内障の視野のように白い靄がかかったようになっていた。
 
 そんなリーフ際に、ヒレグロベラのミニマムサイズがいたので撮っていると、60分近くなったからそろそろ上がろう…
 
 …と思っていたら、何かを見つけたらしいオタマサが呼びに来た。
 
 指し示す方向を見てみると…
 
 おお、今度はコブシメのみなさんが大集結していた。
 
 すでにメスが産卵を始めているようで、それをガードする大きなオス、そして隙あらばと周りにたむろする他のオスたち…という構図のようだ。
 
 普段はダイバーが接近するとすぐさまピューッと逃げ去るコブシメながら、産卵中はメスもオスもダイバーの姿などそっちのけで、目の前の重大事に余念がなくなる。
 
 そこで、そばから拝見させてもらった。
 
 サンゴの枝間に1つずつ丁寧に卵を産み付けるメスは、1個(?)産むごとにその場を離れ、休憩場所に移動する。
 
 その間ずっと、オスはメスをガード&エスコートし続ける。
 
 
 
 そして休憩場所で次弾装填(?)の準備が整うと、メスは再び産卵場所に移動する。
 
 その際には周りにたむろする「隙あらば組」のオスたちがちょっかいを出しに来るけれど、それらをしっかり撃退するオス。
 
 オスにガードされながら産卵場所まで来たメスは、そこでまた卵を産み付ける。
 
 
 
 朝からずっとこれを繰り返していたのだろう、メスが休憩中に枝間を覗いてみると、枝間という枝間が、ピンポン玉サイズのコブタマだらけになっていた。
 
 初遭遇ウミウシから始まり、ハナミノ艦隊集結にコブシメの産卵と、なかなか盛りだくさんだったなぁ…と、そろそろエキジットしようと思ったら、ワタシがコブシメを観察している間にまたなにやら発見したらしいオタマサが石の下を指し示している。
 
 はて、そこに何が?
 
 これだった。
 
四半世紀越しの念願成就。

 ご存知シモフリタナバタウオ。
 
 ただそこにシモフリタナバタウオがいるってだけなら、何もわざわざオタマサはワタシを呼んだりはしない。
 
 しかしこのシモフリタナバタウオは…
 
四半世紀越しの念願成就。

 …天井に産み付けてある卵を守っているのである!
 
 例によっていつものごとく、卵拡大。
 
四半世紀越しの念願成就。

 シモフリタマタマ~♪
 
 前世紀末くらいにダイビング雑誌だったか何かで写真を目にして以来、是非観たいと思い続けて四半世紀、ようやく念願かなって初記録(ガイド中に観たことがあったかもしれないけれど)。
 
 卵を守るシモフリタナバタウオの様子はワタシと同じ情報源で知っていたはずのオタマサときたら、そんなことなどすっかり忘れ去ってしまっているものだから、誰も知らないシモフリタナバタウオの卵!的衝撃で大興奮していたそうな…。
 
 それはともかく、かつて拝見した画像だけではわからなかったジジツを、この日初めて目の当たりにしたことによって初めて知ることができた。
 
 てっきりスズメダイ類のように岩肌に一粒ずつ産み付けているのかと思いきや、この卵は卵塊状態になっていて、それが天井にくっついているという感じなのだ。
 
 そのため卵をケアしているオスが胸ビレで煽ったり、背ビレを当てながら体をクネクネさせて卵に新鮮な水が行き渡るようにすると、卵塊はウニョウニョと揺れ動く。
 
 あいにく背中を卵にあててクネクネするところは撮れなかったけれど、卵がウニョウニョする様子はこちら。
 
 
 
 色からしておそらく産卵後間もないと思われるこの卵、いったいどれくらいで孵化するのだろう?
 
 発生が進むとともに卵の色が変わる様子や、引き続き卵守りをするオスの様子がこのあと観られるかな?
 
 シモフリパパ、次回もここに居てくれますように…。
 
四半世紀越しの念願成就。

 うーん、なんとも充実したダイビング。

 でもよくよく考えてみれば、小さなウミウシから始まって、コブシメの産卵にシモフリタナバタウオの卵に至るまで、「充実」の大半はオタマサガイドによるものではないか。

 これは黙っておかないと、ガイド料を請求されるかもしれない…。


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Posted by クロワッサン at 07:55│Comments(0)水納島の海
 
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