2013年12月31日

Eyes。

2013年 12月30日(月) 曇りのち晴れ

北の風 うねりあるもおだやか 水温21度

 例によって朝の空気は戦意喪失級に冷えこんでいる。

 けれどこれで海に行かなかったら、昨日耳が千切れる思いをしながら船をわざわざ島に戻してきたのはいったいなんのため?って話になってしまうので、意を決して潜りに行った。

 おお、ブランク1ヶ月余。

 そういえばちょうど1ヶ月前は銀座にいたのだったっけ。
 なんだか半年くらい前のことのような気がする……。

 この1ヶ月の間に水温は急速低下したようで、ついにオフシーズン中の最低水温域に達していた。

 我々は遊びで潜っているから、寒くなれば上がればいいってもんだけど、この日も本島から水納島まで来ている数隻のダイビングボートのスタッフのみなさんは、この季節に仕事で潜っているわけだ。

 若いヒトならともかく、40を越えてなおかつウェットスーツで潜っておられるのだとしたら、心から哀悼の意を表します…
 ……って、死んでないって。

 そんな寒い海中では、驚いたことに、過去19年で一度も冬にスカテンがいたことがなかった場所に、まだスカテンがある程度の群れを作っていた。
 そしてそこにずっと住んでいるアザハタが、今年やけに成長したように見える。
 クロホシイシモチもわりと集っているから、スカテンと合わせ、今年は相当ご馳走にありつけたのだろうなぁ……。

 水はわりと良くて、白い砂地に群れ集うグルクン、そしてイナダを思い起こさずにはいられないサイズのツムブリの群れに囲まれたかと思えば、その向こうにはムロアジ系の尾びれが黄色くて細長いアジの群れ。

 上空にはサバヒーが4匹通過していき、振り向くとイソマグロがこれまた4匹行進していった。

 なんだ、けっこうにぎやかじゃん、冬!!

 ……これで首筋からときおりチョロチョロ入ってくる冷たい水さえ忘れることができれば、随分心地よく過ごせたことだろう。

 出会いはにぎやかだったものの、手にしているのはマクロレンズなので、花形スターたちは観るだけにとどめ、こういうモノを見つけては撮っていた。

Eyes。


 海のなんじゃこりゃ?コーナーで紹介している、ミズタマサンゴにつくヒラムシ。
 0歳児赤ちゃんの小指の爪よりも小さい。

 生物分類学的に厳密にいうとヒラムシではないそうだけど、とりあえずそれはおいといて、注目すべきはこのクリーチャーの「眼」(眼点?)。
 前述のなんじゃこりゃ?コーナーで紹介した写真にも写っていたものの、偶然光っただけなのかどうなのかは未確認だった。

 本日晴れて、彼らにはちゃんと「眼」があることが判明した(左斜め上にある白い2つの点)。

 眼といえば。

 ラテン語でウナギという意味の名を持つアングイラこと、ヒオドシユビウミウシ。

Eyes。


 クネクネ泳ぐウミウシとしても知られているこのウミウシにも、やはり「眼」があるのだ。

Eyes。


 ね?(白い矢印の先、白い円の中の黒い点)

 フツー、ウミウシを正面から撮る場合、頭の先の触角を「目」になぞらえて顔をイメージすることが多い。
 ところがこのウミウシは、たまたま模様がそこにあるとかそういうものではなく、正真正銘の眼(解剖学的に「眼」とされる)があるのだ。

 それを踏まえると、フツーのケースだったら合わすべきところのピントがすべてはずれているように見えるこの写真も…

Eyes。


 「眼」にちゃんとピントが合っていることがわかるのだった。

 僕がそういうある意味変態社会的写真を撮っている一方、オタマサは、こういうエビを見つけてひそかにムフフフとほくそえんでいた(以降の写真はオタマサ撮影)。

Eyes。


 ヒメモバコエビ。
 いったいどこで音節を切るべき名前なのか、世間のマトモな人にはさっぱりわからないけれど、「姫も婆子海老」ではないだろうし「非メモ箱海老」でもなさそうだから、きっと「姫・藻場・小海老」なのだろう。

 そのサイズ、先のヒラムシとほとんど変わりがない。

 小さいといえば、さらなるオタマサワールドがこれ。

Eyes。


 卵を装着したコペポーダ。
 ナマコやヒトデの表面でよく見られる小さな小さな生き物だ。
 この写真で特筆すべきは、彼が暮らしている宿主。

 上の写真はもちろんトリミングしてあるので、それを元に戻すとこうなる。

Eyes。


 円内2ヶ所にコペちゃんが写っている。
 この宿主は、なんとハナブサイソギンチャク。

 エビやカニが暮らしていることもよくある、かなり毒の強いイソギンチャクである。
 なのでイソギンチャクの触手に触れると大変だから、エビやカニを撮影する際には注意しなきゃいけないというのに、ひときわ小さなコペポーダを撮るために、触手がここまで拡大されるほどに近づくなんて!!

 さすが変態社会人。

 ……などとヒトの愚行を笑う自分もウミウシと「眼」が合ったことに喜んでいるのだから、目くそ鼻くそを笑うってなものか。

 いずれにしても、ノンダイバーの方を海へと誘う写真にはならないのだった。

 来年こそは、人々を海中世界へ導く写真を撮りたいなぁと思いつつ……

 海中という聖地へ
 エビを求め 魚を求めて彷徨う…
 クロワッサンの海中放浪記。

 来年もどうぞよろしくお願いいたします!


同じカテゴリー(水納島の海)の記事
大当たりの日。
大当たりの日。(2024-05-13 08:54)

一輪開花。
一輪開花。(2024-05-11 07:54)

ミニマム&ダブル。
ミニマム&ダブル。(2024-05-07 06:52)


Posted by クロワッサン at 08:52│Comments(0)水納島の海
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。