2017年02月07日
鳥羽のジェイソン・ステイサム。
2017年 2月6日(月) 曇り
北の風 時化模様
昨夕から吹き始めた風は、一夜明けてもおさまらず、この日午前中の連絡船は欠航となった。
当然本島からの日帰り客は島に渡ることはできない。
ま、真冬の平日のこと、連絡船が通常どおり運航していたとしても、誰も渡ってこなかったかもしれないけど。
連絡船が欠航するほどに北風が強く吹いているくらいだから、もちろん気温は下がっている。
リュウキュウアサギマダラが枝に止まったまま機能停止するほどの冷え込みではないけれど、それでもやはり、海辺にいると寒さ直撃。
しかし海辺にしか生計を立てる手段がない鳥さんたちは、寒かろうが風が吹いていようが、海辺でたたずむしかない。
普段は軽快に浜辺を走り回っているシロチドリの夫婦も、波打ち際でとても寒そうにしていた。
どんなに寒いかというと、ジッとしている時には……
片脚立ち。
そりゃチベタイよねぇ、水に浸かったら……。
……と、さりげなくここにアップした写真はもちろんジョニー・ライデンで撮ったもの。
浜辺にいるチドリ類なんて、これまでならたとえこうしてジッとしているところを撮ろうとしても、カメラを構える以前にススススススーーーーーーと遠くへ走り去ってしまうものだったのに、ジョニーのおかげで鳥さんの心を煩わせることなどまったくないまま、この程度の写真は撮れてしまうのだ。
いやホント、散歩や旅行が好きで鳥さんも好きな方は、これ「買い」ですぜ。
さて。
鳥羽を訪ねるのは12年ぶり、ということはすでに触れた。
当時のタコ主任は鳥羽水族館の独身寮住まいで、そこは元々大きな旅館だったこともあって、空いている部屋を自由に使っていいという、古き良き時代的ゆる~い寮だった。
おかげで、鳥羽を訪れる我々は、そこに無料で泊まらせてもらっていたものだ。
しかしさすがにこの齢になると、いつまでも独身生活を続けることはできても、独身寮暮らしを続けることはできなくなってしまったタコ主任。
早い話が寮を追い出された彼は、現在は伊勢方面にアパートを借り、(鳥羽よりは)都会の生活を満喫しているらしい。
だから今回の我々は鳥羽に滞在するにあたり、タコ主任におススメの宿を紹介してもらうことにした。
すると、なんとなんと、鳥羽水族館が企業として会員になっている水族館近隣の宿を、会員待遇の格安価格で利用可能という。
そしてタコ主任が我々のために手配してくれた宿が、こちら。
海を見下ろす小高い丘の上に建つ、ホテル・アルティア鳥羽。
見下ろす海は伊勢湾ではなくエーゲ海ですか?と錯覚してしまうような、地中海仕様(?)の立派なホテルだ。
我々の部屋はセミダブルサイズのベッドが2つ並んだツインルームで、那覇を出発する前夜に泊まった寝台列車の客室のようなおもろまちの狭苦しいホテルに比べれば、もはやこれは花輪君のおうち級。
もちろん部屋はオーシャンビューで、ちゃんと窓から海が見える。
そしてテラスに出れば、お向かいの菅島が一望のもとに。
観光地鳥羽にとってこのあたりの眺望・景観といったらかけがえのない財産のはずなのに、思いっきり人の目に着く側が採石場になっているところがスゴイ。
世の中の価値観は様々ながら、こと自然観に関しては大きく2種類のヒトに分けることできる。その1つはトランプみたいなヒトで、もう一つはC.W.ニコルのようなヒト。
で、たいていの場合、力と・金を持っているのはトランプタイプで、そういう方々が金に任せてやりたい放題やるものだから、C.W.ニコルタイプの人々にとってはどんどんどんどん住みづらい世の中になっていくのだ。
ここ鳥羽にも、規模こそ違えどトランプタイプがいるらしい……。
まるで本部半島の採石場と化した菅島の様子は残念ではあるけれど、夜明けになれば、同じくテラスから日の出も拝むことができる。
おまけに露天風呂を備えた大浴場まであって、その使用料も含めた鳥羽水族館優待宿泊代は、1人1泊5300円!!
週末の那覇の狭苦しいAPAホテルや東横インよりも遥かに安い!!
ここに……ここに……ただ寝るためだけの宿泊だなんて!!
しかもこの日は鶴橋で焼肉を食べてからやって来たこともあって、鳥羽駅到着は午後3時前、そしてホテルの送迎車が3時発だったため、ホテルに着いたのは3時過ぎになってしまった。
せっかくだから鳥羽水族館にもお邪魔するつもりだったんだけど、ひとっ風呂浴びてから行っても入館可能なんだろうか。
調べてみると、この季節は午後4時で入館終了、5時で閉館というではないか。
KINDON氏からタコ主任にメールをしてもらい(人はそれをキンタコ・ホットラインと呼ぶ)、入館終了時刻を過ぎても入らせてもらえるかどうか尋ねてみたところ、日々忙しそうに働くタコ主任のこと、仕事中に届くそんなメールに素早く対応できるはずはなく、入館可能かどうかはわからないまま。
こりゃゆっくり風呂になど入っている場合ではない。
というわけで、豪華なホテルの隅々まで味わい尽くしてゆっくり過ごしたいという後ろ髪を引かれつつ、旅装を解く間も惜しんでフロントでタクシーを呼び、おっとり刀で鳥羽水族館へ向かうことに。
そこへ、キンタコホットラインに返信が。
「券売所で呼んでもらえれば入れます!」
おせーよ、タクシー呼んじゃったよ!!
鳥羽水族館まで、タクシー運ちゃんから伊勢志摩サミット顛末記を聞くこと10分ほどで鳥羽水族館に到着。
入り口に向かう我々の前方に、館外を何やら忙しげに動き回っている人影が。
ん?あのジェイソン・ステイサムのような後頭部は、ひょっとしてタコ主任ではあるまいか。
呼びかけてみると、案の定タコ主任であった。
近頃の鳥羽水族館は、赤い作業着がユニフォームらしい。
タコ主任が赤い作業着なんか着たら、まるで茹でダコ……
…と言いたくなるのをグッと堪え、入り口まで案内してもらって、この日の段取りを軽く打ち合わせるやいなや、ジェイソン・ステイサムのような後姿を見せながら、彼は再び駆け足で作業へと戻っていった(まったくどうでもいいことながら、ジェイソン・ステイサムとは同年齢)。
忙しいところに押しかけて申し訳ない……。
…と思っていたのだけど。
後刻水族館内を巡っていると、旧知の職員Mさんにお会いした。
彼はタコ主任の先輩スタッフで、オタマサがサンシャイン水族館に勤めていた頃から面識があり、しかも奥様が独身時代に偶然にもクロワッサンのゲストとして水納島にお越しになったことがあるという縁があるため、たまたまお姿を見かけた時にお声掛けしてご挨拶した。
すると、
「そういうことなら、早く帰ればいいのに……」
友人一同が来館するということを一言言ってくれれば、仕事を早めに終えて帰ることだってできるのに、タコ主任なにやってんだ…ということらしい。
なんだ、今の時期はヒマだったんだ。
ヒマなのに誰よりも忙しげに働くタコ主任。
彼の禿頭はダテではない。
さて、閉館時刻を考えるとそうゆっくりもしていられないから、特に順路が示されるわけではない館内を巡ってみる。
鳥羽水族館ではずすわけにはいかないダイオウグソクムシや、その他いろんなお魚さんたちを鑑賞しつつも、やっぱり海生哺乳類は楽しい。
夕刻は餌やり時刻でもあるためか、いろんな生き物が餌をもらっていて、ラッコもご馳走をスタッフから受け取っては、集まっているギャラリーに愛嬌をふりまきながら、アクリルガラスにコンコンコンコンしつつ食べていた。
そちらにはお客さんの人だかりができているのに対し、そこからほんの少し離れたところに展示されているイロワケイルカの前には、お客さんの姿がまったく無い。
でもそのイロワケイルカは、順調に育っていそうな子供と一緒に泳いでいるではないか。
イロワケイルカが赤ちゃんと一緒に泳いでいるなんていったら、ひと昔前なら水族館的にけっこう話題になる展示だったのに、今では当たり前になってるんでしょうか??
でもこの方はしっかりカメラを向けていた。
うみまーるの写真集で、「マゼラン海峡で撮ってきました」なんて写真になっていたりして。
<なりません。by 世界5億人のうみまーるファン
屋外にも、ひときわ目を引く哺乳類がいた。
彼らが目にしているものはいったい何?
彼らの視線の先には、ものすごい重低音スーパーウーハーな唸り声でスタッフと楽しげにコミュニケーションを取りながら、好物の餌をもらっている特大哺乳類がいる。
その生き物とは……この方。
セイウチ。
食事を終えると水に飛び込んで、アクリルの外にいる客にこうして愛想を振りまいてくれるのだ。
オスのポウ君とメスのクウちゃんの2頭がいて、先だってこのカップルに赤ちゃん誕生!というニュースが舞い込んでいたから、オタマサはその赤ちゃんを観るのも楽しみにしていた。
しかし残念ながら、赤ちゃんは短い命で終わってしまったという。
それを知ったオタマサの興味は、また別のところに移っていた。
セイウチのヒゲって、時々抜けるものなんだろうか。
かつてサンシャインに勤めていた頃は、ラッコのプールの排水孔に溜まったラッコの毛をコレクションしたり、某水族館に勤めている後輩には、チューブワームの管をねだったりする彼女には、変態社会人垂涎の「オタマサコレクション」がある。
そのコレクションに加えるべく、あわよくばセイウチのヒゲを……と密かに目論んだのだ。
しょっちゅう抜けるものならば、ラッコの毛のように排水孔に集まっているに違いない。
そのうちの1本でも……ムフフフフ♪
そこでタコ主任に訊いてみるオタマサ。
セイウチのヒゲってよく抜けるものなの?
「うーん、どうかなぁ………」
知らないらしい。
そこへ、先ほどまでセイウチ君たちに餌を挙げていたスタッフの方が出てこられたので、すぐさま訊いてくれるタコ主任。
するとその方曰く、セイウチのヒゲは滅多に抜けるものではないという。せいぜい運悪く折れたものが1本、年に1度くらいのわりで観られるかどうかという程度なのだとか。
オタマサの野望、破れたり。
2005年に鳥羽水族館にやってきたセイウチたち、年に1本あるかどうかということはすなわち2頭合わせてこれまで24本あるかどうかという貴重なヒゲ、オタマサに回ってくる日が来ないことだけはたしかである。
2005年といえば、我々が最後に鳥羽水族館を訪れた年で、当時はコビトカバのあやめちゃんはいたけれど、セイウチはまだ入館していなかったはず。
そうか、あのあとやって来たのか。
そんな12年前のセイウチ君たちの様子も掲示されてあった。
哺乳類に進化したモスラですか??
いやはや、大きくなったものである。
現在の鳥羽水族館には、そんな巨大セイウチのショータイムがあるという。
展示水槽に面した屋外の広場にブルーシートを引き、それを取り巻くように観客席が設けられ、その真ん中に巨大セイウチが登場、数々の芸を披露したり、超至近距離でセイウチと触れ合えたりするというのだ。
何かあったら小さなお子様など圧死しそうなくらいのものだけど、どうやら何かが起こる危険性はないらしい。
うーん、観てみたいぜセイウチショー(鳥羽水族館 セイウチ で画像検索すると、その様子をご覧いただけます)。
その他、スナドリネコがいたりクリオネがいたりガメ公と同じケヅメリクガメの大きい子がいたりした中で、この日個人的に最も際立って印象深かった生き物がこれ。
ドクターフィッシュ。
近頃はいろんなところで展示されるようになっているようだから、ご存知の方も多いことだろう。
ヒトの角質を食べてくれるということで、いわゆるスキンケアに一役買ってくれるこの魚、展示しているところによっては、足湯のように足をつけることができたり、水に手を浸けるなら指一本だけと制限しているところもあるようだけど、鳥羽水族館の場合はこのようなルールになっている。
足はつけないでね!と明記されているこの表示がそこかしこにあるにもかかわらず、堂々と素足を浸けているお客さんがよくいるらしい。
そういうヒトは、たとえ「ここにはピラニアもいます」と大書されていても、手や足を浸けるんだろう。
ところでこの大量のドクターフィッシュ、餌は来館者の角質のみなの?それとも餌は餌で別にちゃんと与えているの?
タコ主任に問うてみた。
すると、
「うーん、どうかなぁ……」
タコ主任、毎日忙しげに働いているようながら、どうやら水族館のことはあまり知らないらしい………。
やがて時刻が5時10分前になると、館内には寂しげな音楽が流れ始めた。
閉館時刻が迫っている。
かつては太陽系最大級と謳っていたほどに大きな水族館を、ほんの1時間で観て回るなんてどだい無理な話だから、一部抜粋局所限定で楽しませてもらった。
目の前に美ら海水族館があるにもかかわらず、「水族館」を訪れるのは随分久しぶりの我々。久しぶりに来てみると、やっぱり水族館って面白い。
次回はもっとゆっくり時間をかけて、もちろんセイウチのショーも楽しませてもらおうっと。
さあて、水族館を見学したあとは、いよいよ酒だ、海の幸だ!!