2017年04月17日
孔雀楼。
2017年 4月16日(日) 曇り
南の風 やや波あり 水温22度
お天気は下り坂のようながら、なんとか今日まではセーフ。
というわけで今朝も海へ。
今冬は水納島では異例の早さでクジラの声が聴こえたのだけれど、沖縄地方を去っていくのも早かったらしく、3月中にほぼほぼみんな揃って北に帰ってしまったという。
水納島でクジラの声が頻繁に聴こえるのは例年なら3月。
ところが3月の我々はなんだかんだあって潜る機会がなかったため、我々にとってのクジラの声は、異例に早かった昨年12月が最初で最後ということになってしまった。
……かと思いきや。
今日はけっこういい感じでホエールソングが。
これはおそらく、フィリピンあたりで冬を過ごしていたザトウさんたちなのだろう。
潜っている最中にBGMでクジラの歌声があると、それだけでなんだか心が豊かになる。
すると余裕の心が視野を広くし、こういうウミウシも自然に目に入ってくる。
ホシゾラウミウシ。
春の潮干狩りシーズンでは、年によっては人が歩いて渡れるくらいの水溜まりでチラホラ見られるウミウシだ。
ところがダイビング中に出会うのは稀で(@水納島)、過去に1、2度ゲストに案内したことがあるかないかくらいで、撮ったのは初めてのこと。
今さらながらの初登場である(多分)。
今さらながらといえば。
先だってはキレンジャーの能力を酷評してしまったワタシなのだけど、どうやら酷評すべきはワタシの理解力のほうだったらしい。
というのも、ここまでずっと、リーフ際の浅いところで自然光のみで撮っていたら……
こんな感じになっていたのだ。
脳内で補正される肉眼の景色と比べても遥かに赤味が足りないから、それをカメラの能力なのだと理解したワタシは大いに不満だったわけである。
でもひょっとすると操作次第で能力を発揮するのかも……
と、どういうわけかこの日安全停止中に突然思い至り、あれこれいじくってみたら……
おお、失われていた赤味が補正されている!!
そうそう、浅いところで自然光でこれくらい撮れてくれれば、ワタクシなんの文句もございませんです。
<そんなの取説読めばすぐわかるじゃん!
…と、取説マニアの方はおっしゃることだろう。
でもコンデジくらい、取説など読まずともだいたいわかるでしょ、フツー。
……わかんなかったけど。
でもその取説も不思議といえば不思議なのだ。
だって、水深30メートルまでOKなんていうカメラといえば、そもそも「通常の使用」は水中でしょう?
だったら「水中写真の撮り方」的なことを、まずは最初にワタシのような豆腐脳でもわかるように書いてくれればいいじゃないのさ。
ところが取説のなかで水中使用に関して特記されていることといえば、使用前の防水チェック、使用後のカメラのクリーニングについて述べられいるのみ。
その他は基本的に陸上使用がノーマルであることを前提にしている説明になっていて、ひょっとすると取説をちゃんと読んでもわからないかも>オレ。
ひょっとしたら…とこの日水中で突如思い至ったのは、ひとえに昨シーズン中にこのカメラをいろいろ試行錯誤されていたゲストの姿を思い出したからこそ。
ワタシの脳内記憶回路は、水圧がかかって初めて全ラインが接続するらしい……。
取説はともかく、そんなわけで今さらながらではあるけれど、カメラとしてのキレンジャーの評価をもう少し格上げすることにした。
なんであれ、モノゴトをキチンと理解していないヤツ(ワタシのことね)の批評ほどやっかいなものはない。
皆様におかれましては、くれぐれもワタクシの無知なるが故のイチャモンに惑わされることのなきよう……。
さて。
話は13日に遡る。
ケンタロー宅は宜野湾市。
メインイベント指定の中華料理店はその近所。
そして中南部でこなす必要がある唯一の所用は北谷町。
となれば。
ミハマセブンプレックスで映画を観れば、わざわざ混雑激しい那覇まで足を延ばさずとも、宜野湾以北ですべて事足りるはず。
ところが。
現在本島中南部に4か所あるシネコンのうちで、我々の目当ての映画を上映しているのは、シネマライカム、シネマQ、そしてサザンプレックスの3か所。
よりによってなんでミハマだけ無いの????
またやっちまったぜ…。
こういう場合、特に映画はなんでもいいという方なら場所を優先するのだろうけれど、現在公開されている映画の中で観たいと思うのはただそれ一本だけだったから、わざわざシネマQまで行くことになってしまったのだった。
もっとも、那覇の名店「ゴカルナ」さんに行き当たったのは、考えてみればそのおかげともいえる。
やっぱり世の中、禍福は糾える縄の如し。
というわけでホテルストークに泊まって以来のおもろまちで映画を観終わり、おもろまちからパイプラインをただひたすら北上してケンタロー宅に到着。
主はまだ仕事中のところ、カヨ夫人に甘えてシャワーまでお借りし、万全の生ビール待機態勢でいるところにケンタロー氏帰宅。
いざ、超久しぶりの中華料理店へ!!
お店はこちら。
昔から58号線沿いにこの店ありと知られている、孔雀楼。
ここだけ切り取って見れば、ブレードランナーか攻殻機動隊か横浜中華街かといった風情だけど、このお向かいは片側3車線の立派な国道58号が通っているフツーの宜野湾市。
宜野湾市周辺は学生の頃から慣れ親しんだ街で、基本的に生活圏内だった。
でもどこに行くにも車に乗っていた当時のこと、このあたりの国道沿いを歩いてプラプラしたことなど過去に無く、今回ケンタロー宅からこのお店までの国道沿いを歩いたのはおそらく人生初だ。
これまで運転中に車窓からさんざん眺めてきた場所なのに、テケテケ歩いてみると、これまでまったく知らなかった魅力的なディテールが見えてくる。
なんとまぁ、魅惑的にもアヤシゲな店が多いことか。
この孔雀楼だって、見方によってはけっこうアヤシイかも。
少なくとも、車でピューッと走って目にするだけなら、ふとしたはずみで訪れてみようなんて思うことはまずないだろう。
しかし我々はすでに久しぶりの中華にウキウキモードだから、二の足を踏むはずもなし。
逸る心を抑えつつ入店すると、そこはホテルのレセプションのようだった。
学生の頃に一度だけ入ったことがあるようなないようなオボロゲな記憶の中では、食事をしたのはたしか1階のフロアだったような気がするのだけど、この日そこから案内されたのは、幅の広い階段を登った先にある2階のフロアだった。
受付といい階段といいフロアといい……
ジャッキー・チェンの映画みたい♪
この1階ロビーから階段へと続く場所の様子を目にするだけでも、ここに来る価値あり。
ただし一見さんでこのエントランスだと、値札のない寿司屋に入ったときなみにたじろぐこと必至である。
老舗ではありながらも平日のディナータイムに満員御礼というわけではないようで、落ち着いた雰囲気のフロアには中華料理店ならではの円卓が並んでいる。
さあてメニューを拝見。
なにをさておいても生ビールをお願いするのはもちろんとして、綺羅星のごとき中華のメニュー、いったい何を頼めばいいのやら。
そうそう何度も来られない我々のためにケンタロー夫妻がオーダーの主導権を譲ってくれるのは有難いものの、だからといって食べ慣れないものがズラリと並ぶなかからコレといったメニューは瞬殺決定できるはずはない。
この店の看板メニューらしき北京ダックに後ろ髪をひかれながらも、ここはおとなしく前菜から順にいろいろ決めていった。
そんななかでとっても食べてみたくなったのが、蒸し鶏の中華料理風の品。
なんか、中華といえば蒸し鶏というイメージがある。
さっそくオーダーしてみたところ……
「すみません、本日は蒸し鶏はご用意できないんです……」
へ?
他の鶏肉メニューはOKなのに、蒸し鶏は不可なんですか??
よりにもよって、綺羅星のごとき数々の料理の中で、この日不可なのは蒸し鶏料理だけなのだった。
またやっちまったぜ……。
無理だと言われてゴネるつもりはないけれど、なぜに蒸し鶏だけがダメだったのか、素朴な疑問としてそこんところを詳しくうかがってみたいところである。
さてさて、気を取り直して中華三昧。
いやはや、やっぱ美味いわ、中華料理!!
しまった、もっと景気よくテーブル状に料理が並んでいる時を選んで撮ればよかった……。
前菜の盛り合わせのチャーシューもクラゲも美味しかったし、小龍包もしっかり仕事をしてくれていたけど、ケンタロー夫妻オススメの餃子がステキで、なんと皮から作っているこの店オリジナルなのだとか。
そのムチムチしつつコシがある皮に包まれた中身は、聞くところによると豚の皮から取った出汁を冷ましてできる煮こごりをミンチにし、他の具材と混ぜられているという。
だから焼きあがった餃子をいただくと、小龍包級のジューシー感、そしてとろけた煮こごりが拡散波動砲級に増幅させる旨味!!
井の頭五郎風にひとことで言うなら……
これは…美味い!!
餃子作りは羽が肝心だとか、本場中国の餃子は水餃子が基本だとか、そんな小うるさいウンチクは、この餃子を一口いただけば3万光年彼方に葬り去られることだろう。
中華料理風あんかけの白身魚が、これまたダークホース的に美味かった。
魚一匹丸ごと出てくる大雑把な料理かと思いきや、ふた口サイズの切り身で調理されていて、その味付けが中華ならではというか家で再現不可的で、なにげないこういう料理に中華料理らしさが迸っている。
その他、ご飯系しめメニューの炒飯シリーズからチョイスした高菜炒飯も素晴らしかった。
高菜炒飯といいながら高菜はあくまでもサブキャラで、主人公は炒飯の上にドンと盛られたシラス炒め。
これを混ぜながらいただくと、香ばしさとほどよい塩加減で炒飯の旨さが激増するのだ。
シラスといえば、ともすれば我々はいかにナマの美味しいモノを手に入れるか、ということに目が行ってしまう。
しかし中華の世界ではやはり、「いかに火を通すか」ということが主眼になるのだなぁ。
豪奢な建物に豪華なエントランス、そして香港映画に出てくるような内装から受けるイメージは限りなく高級店だというのに、中身はフツーに家族で来て楽しく美味しくリーズナブルに本格中華を楽しめるステキな庶民の店、ピーコックこと孔雀楼。
地元の方々に愛され続けてきた理由が、ようやく今わかった。
メニューは豊富だし北京ダックも食べてみたいし、これは再訪決定だ。
ケンタロー夫妻の迷惑は顧みず、毎年恒例の行事にしようっと。
さて。
普段も旅先でも歩き回ってばかりいる我々にとっては、ケンタロー宅からほんの目と鼻の先にある孔雀楼。
しかし四十代半ばにして医者から「あなたの心臓は80代です」と言われたこともあるケンタローにとっては、この徒歩行は生死にかかわる八甲田山級の一大アドベンチャーだった。
なんとか無事に店にたどり着けたのはよかったものの、アルコールも入ってお腹もくちて、このあと生きたまま家まで帰りつくことができるのだろうか。
……という一抹の不安を解消すべく、周到なことにケンタローは、なんと中間地点バラン星を用意していたのだった。
あの浮沈戦艦ですら帰り道では見向きもしなかった中間地点バラン星を復路に用意するあたり、80代の心臓も伊達ではない。
その中間地点バラン星とは……
あ、ここで紙数が尽きてしまった。
続きはまた明日。
ごきげんよう、さようなら。