2018年11月19日
一本のネジにも五分の魂。
2018年 11月18日(日) 晴れ
東の風 うねりあり 水温25度
うねりが残っているために朝の空気は潮騒のざわめきを運んできてはいたけれど、日の出からお天気は上々、久しぶりの海日和だ。
さっそく海へと繰り出してみると、水温は体感26度くらいの25度。
10月末の一時期よりも温かいのはどういうわけだ。
この日はとあるダークサイドな使命が主目的だったものの、岩陰に魅力的なお魚がいたのでお近づきになってみた。
ご存知、アカククリの若魚。
みなさんが会いたいと望んで止まないホントの「赤くくり」状態の幼魚にはそうそう会えないけれど(水納島での過去2回の遭遇はいずれも桟橋脇)、このサイズの若魚には比較的ちょくちょく会え……
…ていたのはいつ頃までだったか。
昨年9月に出会った若魚は、かなり久しぶりだった。
今回の子のほうが一回りほど小さめで、より「赤くくり」感を残している。
いつでもどこにでも居るとなると有難みが薄れてしまうから、こういう子が年に2、3匹居てくれるとシアワセなんだけどなぁ…。
もっとも、これまでずっと会えなかったアカククリの若魚と2年続けて会えたというのは、傾向としては朗報かも。
来年あたり、アカククリ若魚の連打になったりして。
あ、アカククリがオトナになるとどうなるのかご存知ない方は、こちらをご覧ください。
ところで、以前はチラホラ見られたのに近年になってすっかり会えなくなった魚はアカククリの若魚にかぎったことではなく、マイナー過ぎて誰も注目はしていないだろうと思われる魚がこちら。
大昔の図鑑では「ヨコシマクロダイの色彩変異」扱いだったものが、ちょっと前に出た図鑑で「ヨコシマクロダイの近似種」、すなわち別の種類扱いになった魚だ。
写真の子は4センチほどの幼魚で、まだフィルムで撮っていた頃のもの。
その後は2010年に、もう少し成長した段階の若魚と出会ったことがあるのみで…
近年は幼魚も若魚もまったく目にしていない。
ちなみに本家ヨコシマクロダイの幼魚はこんな感じ。
なんだ、まったく一緒じゃん……
……という方はこの際逝ってよし。
もっと成長して若魚になるとこんな感じ。
もっと大きくなると不発弾のような色になって、時にはタマンの群れに混じって多数が群れていたり、2、3匹で中層に浮いていたりしている。
地方名ではダルマと呼ばれ、けっこう刺身もいけるらしい。
それはさておき、ヨコシマクロダイ近似種、当時も数は少なかったとはいえ、けっして居ないわけじゃなかったのに、今ではまったく出会えなくなってしまった。
知らず知らずのうちに、気がついたころには居なくなっているというのは、なにげに不気味なことではある。
おりしも隣のパソコンでかつて撮った自らの写真を久しぶりに見返していたオタマサが、
「昔のほうが生き物の種類が多かったねぇ…」
とつぶやいていた。
ひとつの種類の個体数が減っているのも憂うべきことながら、種類が減っていくというのは、環境的な多様性が狭まっていることが大きな要因になっているのだろう。
本島沿岸の内湾域という理想的な揺りかごで幼少期を過ごしていられたであろう様々な魚たちが、最も影響を受けているように思われる。
その揺りかごが、埋め立てその他でことごとく消失していまっているからにほかならない。
かつての水納島では当たり前に観られたコンゴウフグのオトナがほぼ絶滅してしまったのも、まず間違いなく同じ理由と思われる。
その昔、今は亡き千石正一先生が何かで↓こういった意味のことを書いていた。
ジャンボジェット機は、ネジの1本が外れたくらいなら問題なく飛んでいられる。
2本、3本外れても飛んでいられる。
ひょっとすると、10本20本外れても大丈夫かもしれない。
でもそれが100本200本となると……
限界点は、ある日突然訪れるのだ。
ヨコシマクロダイの近似種が観られなくなったこと自体は、ネジの1本程度のことかもしれない。
でも気がついたころには……。
すでにもう、ネジは65本くらい外れてしまっているかもしれない。
為政者に「想定外でした」「遺憾に思う」の一言で片づけられてしまう前に、みんなが気付かなければならない大事なことなのである。
もちろん、ジェット機が飛び続けている間に。
フエフキダイの仲間は興味ないんだよねぇ…なんて言っている場合ではないのだ。
Posted by クロワッサン at 09:34│Comments(0)
│水納島の海