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2023年09月16日

乗り越える魚たち。

2023年 9月15日(金) 晴れ

南東の風 ベタ凪ぎのち少し波あり 水温27度~29度

 午後になると風が出てきて洋上にも白波が出てきたけれど、昨日今日と午前中は真夏もかくやというベタ凪ぎ。
 
 ノーストレスの海況で、脳味噌までとろけてしまいそうだ。
 
 脳味噌がとろけるのを防いでくれているのは、今日も夜明け過ぎからガンガン掘りまくっている浚渫工事だったりするけれど。
 
 でも工事も工期がここまで長引くと、そこに作業台船がある、というのがだんだん当たり前になってきて、風に運ばれてくるタグボートやユンボの排ガスさえ無ければひとつの風景になっている感がある。
 
 実際朝桟橋に到着する大勢の日帰り観光学生たちの初っ端の一言を聞いていると、到着するなりビーチ側の海を見ては、景色の美しさ、海のきれいさに感嘆する若者言葉が連発されている気配がある。
 
 子供の頃から世の中にイヤなモノがありすぎて、すでに作業台船など目に入らないのか、脳が存在を打ち消してしまっているのか。
 
 それはそれである意味サバイバル技術なのかもしれない…。
 
 そんな学生日帰り客の人数も昨日あたりからガクンと減り始め、ビーチはコロナ禍中の真夏くらいのほどよい人数に。
 
 ベタ凪ぎの海は真夏でも、季節はしっかり秋になっているのだ。
 
 そうやって季節が移ろい変わっていくなかで、その後の彼らはどうしているだろう?
 
 彼らとは、かつて何度か紹介したハンディキャッパ―フィッシュたちのこと。
 
 リーフ際で健気にフツーの暮らしを続けていた、ツインテールこと尾ビレ欠損ネッタイスズメダイは、見るからにハンディ激大な状況にもかかわらず、この日も健在だった。
 
乗り越える魚たち。

 見るからに大変そうな状況…とわかるのは、スズメダイ類がそもそもどういうフォルムをしているかということをご存知の方に限られてしまうので、わかりやすく健常ネッタイスズメダイのフォルムと比較してみると…
 
乗り越える魚たち。

 左奥でボヤッとしているのが、健常フォルムのネッタイスズメダイ。
 
 もうどう考えてもツインテールは不便そうでしょう?
 
 初遭遇時はまだ傷痕も生々しく、切断部分からは肉も見えていたというのに、まるで最初からこういう形状だったかのように修復されている。
 
 尾ビレを失った当初こそかなり不便だったろうけれど、初遭遇当時からわりと大きかったこのハンディキャッパ―ネッタイの周りには現在小柄なネッタイスズメダイたちも増えていて、そんな若手に対してこのハンディキャッパ―は厳しく接している…
 
 …というか、フツーにえらそうにしている。
 
 広い範囲を遊泳する暮らしではないだけに、尾ビレの欠損は致命的ではなかったらしい。
 
 動きを観ているとオスっぽいから、次回の繁殖シーズンにはメスを相手に熱烈ラブアタックなんてシーンも観られるかもしれない。
 
 一方、同じように尾ビレを失ってしまっていたハンディキャッパ―オウゴンニジギンポも、ほぼ同じ場所で健在だった。
 
乗り越える魚たち。
撮影:オタマサ

 ネッタイスズメダイと違い、オウゴンニジギンポはひとつのサンゴ群体の周りだけが生活圏内というわけではない、ということはわかっちゃいたけれど、思いのほか行動範囲が広く、サーチしても出会えない日のほうが多いハンディキャッパ―ギンポ。 
 
乗り越える魚たち。
撮影:オタマサ

 初遭遇当初とそのひと月後が↓こんな感じだった尾ビレ。
 
 久しぶりに会ってみれば、尾ビレがかなり再生していた。
 
乗り越える魚たち。
撮影:オタマサ

 ただし損傷があまりにも酷かったからか、再生している尾ビレはいささか取って付けた感があり、そのために泳ぎ方にはいささかぎこちなさが。
 
 
 
 それでも広い範囲を暮らしの場にしているようだから、けっこう遊泳しているのだろう。
 
 泳げるとなれば、もちろん食事もフツーに摂っている。
 
 
 
 欠損当初こそ相当不便だったろうけれど、その後省エネルギー摂餌テクニックをしっかり身に着けたらしく、海底付近では頻繁に何かをゲットしていた。
 
 このあたりでの生活には、まったく支障はないらしい。
 
 とにかく死ぬまで懸命に生きる魚たちのこと、この程度の試練など試練のうちには入らないのかもしれない。
 
 逞しき彼らに乾杯。


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Posted by クロワッサン at 05:55│Comments(0)水納島の海
 
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