2024年06月30日

虫のいい話。

2024年 6月29日(土) 晴れ夕刻にわか雨

南西の風 波あり 水温24度~27度

  ここ数日はいい天気過ぎるあまり、午後になるとどこかしらでにわか雨が降るようになっている。
 
 島から本島を眺めると、恩納村あたりに雨を降らせている雲が、ジワジワと本島沿いに北上していく様子が見えるのだけど、たまに外側にはみ出た雲の塊が水納島の上空を通りかかり、島にもにわか雨を降らせる。
 
 そして夕涼み時のにわか雨は、打ち水のように空気を涼風に変えてくれる。
 
 夏ですねぇ…。
 
 さてさて、土曜日で洋上が小型船舶博覧会のごとき様相になっているなか(ああ、コロナ禍中が懐かしい…)、本日も海へGO!
 
 この日はボートを停めた場所は昨日とは異なるところだったにもかかわらず、今日もまたシシ神ウマヅラと遭遇した。
 
 海底に転がるウミエラの半死骸に執着してパクついていたシシ神ウマヅラを観ていたところ、ある重大なジジツに気がついた。
 
 シシ神ウマヅラは……
 
虫のいい話。

 …女神だったのだ。
 
 ↑この画像だけ見るとオス同士が張り合っているようにも見えるけれど、これはむしろ奥側のノーマルタイプがシシ神ウマヅラにすり寄っているところ。
 
 追い払うでもなくつっかかるでもなく、長い第1背ビレをピコピコ…と意味ありげに小刻みに動かす様子は、どう見ても言い寄っているようにしか見えない。
 
 しばらくはエサのほうに執着していたシシ神ウマヅラだったけれど、やがてノーマルタイプをリードする形で、あっちへ泳ぎ、こっちへ泳ぎ、ノーマルタイプはずっとそれについていく。
 
 その様子は、カワハギ類で観られる産卵前の産卵床探しそのものではないか。
 
 カワハギ類の産卵は、これまでテングカワハギ、ノコギリハギ、ヌリワケカワハギ、そしてハクセイハギで観察したことがあるんだけど、いずれの場合もメスがオスをリードする形で産卵床を物色し、やがてここと決めたところで産卵・放精に至る。
 
 この日はリーフエッジ付近でもリーフ際でも、各種ベラ類が憑りつかれたような狂乱産卵ショー状態だっただけに、半月ながらもお月様が引き寄せる何かがあったのかもしれない。
 
 だとすれば、このまま観ていればシシ神ウマヅラの産卵シーンが観られるかも!
 
 …と期待してずーっとオスのあとからつき従っていたところ、ああなんてことだ、時間も空気の残量も、それ以上の観察を許してはくれなかったのだった。
 
 というわけで残念ながら産卵という決定的シーンをもって証明することはできなかったけれど、ともなくシシ神ウマヅラはメス、すなわち女神であることは間違いなさそうだ。

虫のいい話。

 シシ神ウマヅラの観察を続けることができなかったのは、この魚を観に行っていたため。
 
虫のいい話。

 ソウリュウスカシテンジクダイではないか…とワタシが勝手に推定しているスカテン似のテンジクダイ。
 
 初見だった2022年以後は、その姿が観られなくなっている…と思っていたところ、先日通りすがりのダイバーTさんが、「今年もいるみたいですよ」と教えてくださったのだった。
 
 それは10日以上も前のことなのに、この日ようやく現地を訪れることができた。
 
 ちなみに背後でウジャ…となっているのはクロスジスカシテンジクダイで、以前も比較してみたように、彼らの尾ビレにはその名のとおり黒スジがある。
 
虫のいい話。

 若魚だとこの黒スジが薄いんだけど、それでもスジ模様があるのは明らかだ。
 
虫のいい話。

 暫定ソウリュウはこのようなスジではなくて尾ビレの上下端に点ポチ模様で、クロスジスカシテンジクダイよりも茶色味が淡い。
 
 その淡い茶色味でも、スカテン(と認定している魚)たちに比べれは遥かに茶色く、体高が若干低いから、これまた明らかに別の魚だとわかる(スカテンとはほとんど混ざらない)。
 
 なので、たとえソウリュウではなかったとしても、別の誰かであることは間違いない。
 
 で、その暫定ソウリュウが口内保育をしていたので、なんとか卵を写せないものかと粘っていたところ、あいにく卵フガフガシーンは見せてくれなかったものの…
 
虫のいい話。

 …かすかに開いた口の中に、うっすらと卵の粒々が。
 
 しかしこのあとには、チラ見え卵を遥かに上回る衝撃シーンが待っていた。
 
 ここにはザ・スカテン(とこれまで思い続けている魚)と、クロスジスカシテンジクダイ+キンメモドキ、そして暫定ソウリュウスカシテンジクダイにクロホシイシモチといったメンバーが群れなしているんだけど、いずれでもない模様をしているテンジクダイに気がついた。
 
 いったい誰だ?
 
 すかさずカメラが捉えたその姿は…
 
虫のいい話。

 …寄生虫付き暫定ソウリュウ!
 
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 おそらくタイノエの仲間と思われる寄生虫が、すまし顔でさりげなく暫定ソウリュウの体に貼りついていたのだ。
 
虫のいい話。

 さらにアップ。
 
虫のいい話。

 ヒエ~~~!
 
 ワタシのような正常感覚の持ち主なら思わず
 
 お股ヒュン…
 
 …となるところ、このテのクリーチャーが大好きな変態さんたちなら、思わずヨダレがダラリとなるシーンに違いない。
 
 タイノエといえば、コショウダイその他、もっともっと大きな魚のほっぺたあたりについているわりと大きな虫だから…
 
虫のいい話。

 …こんなに小さいものを観るのは初めてのこと(このアジアコショウダイ若魚についている虫は、暫定ソウリュウと同じくらいの体長)。
 
 あんまりうれしくないけど、人生最小級ではある。
 
 それにしても、ほとんど透明になって目立たないようにしているスカテン類の体表でこんだけ目立ってしまったら、他の魚に食ってくださいと言っているようなもの。
 
 小さなタイノエさん的には宿主ごと食われちゃっても不都合はないのだろうか。
 
 食べられたらその魚の口の中でウオノエになるとか?
 
 < それはない。
 
 逆に小魚にとっては、他の魚が嫌がって食べようとしなくなる魔除けの御札のような存在だったりして。
 
 < それもない。
 
 とまぁそんなわけで、この小さな虫に目を奪われてしまったがために、このあとに続くシシ神ウマヅラ観察の肝心なときにエアーも時間も残ってはいなかったのだった。
 
 ま、元々限られている時間の中で、どっちもじっくり観ようだなんて、それこそ「虫のいい話」ってことか。 


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Posted by クロワッサン at 07:10│Comments(0)水納島の海
 
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