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2024年07月03日

アジサシに見限られた島。

2024年 7月2日(火) 晴れ午後スコール

南西の風 波あり 水温25度~28度

 今年は変なタイミングで台風が来なかったおかげで、海の中は順調に「夏」になっている…
 
 …という話をこのところ再三繰り返しているけれど、一方で陸上というか洋上では、「夏」に欠かせない者たちの姿が観られず、今夏は画竜点睛を欠く状態になっている。
 
 何が欠けているのか。
 
 それはアジサシたち。
 
 今年も先遣隊が3羽ほど来るには来たものの、例年に食らべてかなり遅い5月22日で、6月になってようやくベニ、エリグロ合わせて30羽ほどの団体様がやってきた…
 
 …と思ったら彼らの滞在はごく短期間で、その後は4~5羽が航路脇の赤灯台に止まっているのがせいぜい。
 
 そんな日がしばらく続き、そしてここ数日はまったく姿をみせなくなってしまった。
 
 6月下旬に航路脇の赤灯台のいつもの休憩所で交尾行動をしているカップルを見たものの、6月下旬に交尾をしていたのでは遅すぎるから、序列モンダイ的なマウンティングのようなものだったのだろうか。
 
 近年のアジサシたちは昔に比べて来るのは遅く、去るのは早いということがずっと続いており、昨年は夏場の全体的な数も滅法少なくなっていた。
 
 昨年は子育ての大事な時期に港で大浚渫工事が始まってしまったんだもの、繁殖地として安心できる環境ではないとつくづく思ったことだろう。
 
 今年先遣隊が到着したのは、まだ工事関係車両が到着する前の静かな時期だったのに、それでも滞在先として「不可」の烙印が押されたらしい
 
 きっと「そろそろ工事始まるってよ…」という情報がアジサシたちの間で流れていたに違いない。
 
 どんなに立派な港ができようと、どれほど大勢のお客さんが訪れようと、毎年たくさん観られたアジサシたちが寄りつかなくなってしまうような島に、いかほどの魅力があるというのだろう…。
 
 というわけでいささか精彩を欠く「夏」ではあるんだけど、本日もやっぱり海へGO!
 
 突然ですが、モンダイです。
 
 ↓この3匹のうち、仲間はずれは誰?
 
アジサシに見限られた島。

 賢明なる皆さまにこのようなサルでもわかるモンダイなど失礼極まるってところだろうけれど、全然わかんないという方は失礼ながらお逝きなさい。
 
 ニザダイ(ハギ)の仲間たちには子供の頃に小型キンチャクダイ類の真似をして世渡りをしているらしいものたちがいくつかいて、上の写真の仲間はずれ君ことモンツキハギもそのひとつ。
 
 オトナになると黄色味などまったく無くなるのに、子供の頃はヘラルドコガネヤッコのチビチビとそっくりな色味をしている。
 
アジサシに見限られた島。

 ヘラルドコガネヤッコのチビは毒を持っているわけじゃなし、そっくりな姿でいるからといって何か得することがあるのだろうか。
 
 おそらく両者は求めるエサが異なり、エサのうえでの競合他者が多いモンツキハギにとっては、食べるものが異なるヘラルドコガネヤッコのふりをしていれば競合相手と見られず、暮らしやすくなるのではなかろうか。
 
 ヘラルドコガネヤッコたちは、このようにモンツキハギが寄り添っていてもけっして嫌がる素振りは見せず、むしろ仲間に入れているかのように一緒に混ざり合って泳いでいることが多い。
 
 同じようにヘラルドコガネヤッコの真似をしているっぽいニザダイの仲間に、クログチニザがいる。
 
 これもオトナになると黄色味とは無縁になるハギながら、子供の頃のノーマルカラーは真っ黄っ黄。
 
アジサシに見限られた島。

 これで6~7センチくらいあるけど、クログチニザは20センチ超になるハギだから、まだまだコドモもコドモ。
 
 でもオトナのヘラルドコガネヤッコとほぼ同サイズということもあって…
 
アジサシに見限られた島。

 …やはりちょくちょく行動を共にしている。
 
 特定の1匹とかペアについてまわるのではなく、行く先々でヘラルドコガネヤッコがいたらとりあえず寄り添う…という感じで、これまたエサのうえでの競合他者からの排除圧力を緩和させる知恵と思われる。
 
 小型ヤッコ類の真似をして世渡りするということにおいては、クログチニザはモンツキハギよりも遥かにこだわりがあり、幼魚タイプには↓こういう色をしているものもいる。
 
アジサシに見限られた島。

 ナメラヤッコのそっくりさんタイプ。
 
 ナメラヤッコのそっくりさんだから、ついていく小型ヤッコももちろん…
 
アジサシに見限られた島。

 …ナメラヤッコだ。
 
 水納島ではヘラルドコガネヤッコに似ているキレンジャーが圧倒的に多く、これはヘラルドコガネヤッコとナメラヤッコの個体数の差に準じているのだろう。
 
 ところで。
 
 ヘラルドコガネタイプにしろナメラヤッコタイプにしろ、これまで観たことがあるクログチニザのコドモは、小型ヤッコのオトナサイズくらいに育っているものばかり。
 
 そういえば、5センチ以下のクログチニザ・チビターレって、観たことないなぁ…
 
 …とボンヤリ考えていたことを思い出したのは、昨日の海の中でのことだった。
 
 ヘラルドコガネヤッコの中途半端サイズのチビか…とうっかり見過ごしてしまいそうなくらいヘラルドにそっくりな、4センチほどのクログチニザチビチビと遭遇したのだ。
 
 おお、これは撮りたいッ!
 
 ああしかし、その時は別目的で潜っていたため撮るすべがない。
 
 そして迎えた本日。
 
 再会を期し、前日の遭遇現場まで遠路はるばる泳いでいったはいいものの、たしかここで観たはず…と記憶している場所周辺で観られる黄色い魚といえば、どれもこれも大小様々なヘラルドコガネヤッコばかり。
 
 ああ、1日にしていなくなってしまったか…。
 
 まぁそのかわり、先に紹介したモンツキハギやクログチニザ・チョイチビとは出会えたから、エッホエッホとはるばるボートから遠く離れたところまで来た甲斐は…
 
 …無いよなぁ、やっぱり。
 
 と、やや徒労感に見舞われつつボートのすぐ近くまで戻り、そろそろ安全停止をしてエキジットするか…と思ったその時!
 
 まったくもって大正デモクラシー…じゃなかった、灯台下暗し、ボート係留用のブイの付け根すぐそばに、クログチニザチビターレの姿が。
 
アジサシに見限られた島。

 4センチ弱のクログチニザ、人生最小記録更新だ。
 
 口先のフォルムがかなり違って見えるけど、ラウンドテールで黄色いハギの幼魚をワタシはクログチニザ以外に知らないので、クログチニザ認定してます。
 
 前日に出会った子とほぼ同サイズながら、さすがにこのチビが相当離れた距離を移動してきたとは考えにくいから、きっと別個体なのだろう。
 
 ここでもやはり、おりにふれヘラルドコガネヤッコのチビと行動を共にしていた。
 
アジサシに見限られた島。

 こうして見比べれば、体側の縞々模様が無いことやその他でヘラルドコガネヤッコではないってことが一目瞭然ながら、遠目にチラッ…と観ただけでは、一瞬で区別する自信がない…
 
 …というか、前日は三度見してようやくクログチニザだと確信できたくらいだから、ヘラルドコガネヤッコを探し求めてでもいないかぎり、遠目から注視することはこれまできっとなかったはず。
 
 でまたこのチビターレ、相当警戒心が強いときたもんだ。
 
 単独でいるからなのか、前日出会った子もこの日のチビも、ともにちょっとカメラを向けただけでたちまち石の下に逃げ込んでしまう始末。
 
 これほど警戒心が強いと、こちらがクログチニザだと気がつく前に隠れてしまうに違いない。
 
 これまで長い間クログチニザ・チビターレに出会えなかった理由が、ようやくわかったのだった。
 
 あ、そうそう、蛇足ながら、放っておくと忘れてしまいそうなので、備忘録として残しておかなければならない話がひとつ。
 
 冬の間すっかりナリを潜めていたクロスジギンポ・エレンガンテが、7月に声を聴いたのか、とうとう出現!
 
アジサシに見限られた島。

 やっぱエレンガンテ、夏季限定バージョンなのだなぁ…。 


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Posted by クロワッサン at 06:29│Comments(0)水納島の海
 
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