2025年02月13日
天空のロウバイ。
2025年 2月12日(水) 晴れ
そよ風 海況不明
今回の上京中、何度も西武池袋線を利用している間、そして元加治駅周辺の沿線からしばしば通過する姿を見ていたこともあって、滞在中に一度は乗ってみたいと思っていた電車がある。
それは……
ラビュー。
西武鉄道が世界に誇る、新世代鉄道車両である。
ただしそれは「特急」でのみ運用されており、元加治駅からホイホイ気安く乗ることはできない。
であれば…
そうだ、秩父へ行こう!
…ということになった。
でもラビューに乗るだけが目的じゃつまらないから、秩父で何かないかいな…と考えていたところ、オタマサ実家の弟嫁から、魅力的なサジェスチョンをいただいた。
これ。
天橋立の展望広場のように、足元がアクリルで眼下丸見えでお股がヒュン、となるから天空の狼狽…
…ではなくて、西武秩父駅からさらに先になる宝登山では、毎年この時期に蝋梅が咲き誇るというのだ。
咲き始めの桜こそ目にしていたけれど、ピークに不在となってしまい、今年は楽しむことができなかったオキナワの桜。
ではその代わりに、関東屈指の規模という宝登山山頂の蝋梅を愛でることにしよう。
というわけで、三たび飯能駅にやってきた我々。
ほどなく、秩父行特急ちちぶが池袋から到着。
ホームに表示される発車予定を通知する電光掲示板で、わざわざ「この車両はラビューです」と表示されていたくらいだから、この車両目当ての方々もけっこういらっしゃるのだろう。
ただの特急なのに何がどうラビューなのかというと、なんといってもひと目で際立つ窓の大きさ。
せいぜい胸のあたりくらいまでがフツーの窓が、膝くらいのところまで広がっているワイドビュー。
ただそれだけで、かつて丸八真綿のCMに出ていた三船敏郎がつぶやいていたノリで
「うーん…乗ってみたい」
と思っていた次第なんだけど、それがついに実現。
そして、外から見ているだけじゃわからなかった御手洗いも…
洗面所も…
一昔前の西武線では考えられなかったほどに近代化されていた(結局一度も使わなかったけど)。
その他、車両前方に表示されている停車駅案内の隣には、運転席付近にあるっぽいカメラが写すリアルタイム動画がずっと流れていたのが面白かった。
そんなラビューで揺られること約40分、いくつものトンネルを抜けながら国道299号と並走しているうちに、ようやく西武秩父駅に到着。
宝登山へ行くには、ここから秩父鉄道略して「ちちてつ」に乗り換えなければならない。
乗り換えといっても同じ駅舎ではなく、西武秩父駅から徒歩5分ほどにあるちちてつ駅まで歩いて行く。
ここで迷うわけにはいかないからある程度場所の見当はつけていたんだけど、シニアハイカーがたくさんいるおかげでその道のりはとてもわかりやすかった。
で、西武秩父駅に隣接しているちちてつの駅は…
「御花畑」という、最初は冗談かと思ったほどになんともメルヘンな駅名。
ちちてつもそのあたりは自覚しているのだろう、構外で表示している駅名は…
…近頃流行りのレトロでモダンなフォントだったのが笑えた。
1時間に1~2本しかないちちてつなので、駅に着いたからといってすぐさま電車が来るわけではなく、シニアハイカーを中心としたお客さんがだんだんホームに増えてきたところで、ようやくちちてつ登場。
駅名のフォントがレトロなら、車両もたっぷりレトロなちちてつ、けれど車内に液晶画面をやたらと設け、大して必要でもない映像を垂れ流しまくっている都心のJRをはじめとする近代車両よりも、よほど落ち着く車両ともいえる。
さて、我々が目指す宝登山の最寄り駅は長瀞駅。
途中止まった駅で乗り降りする乗客は数えるほどしかいなかったのに対し、長瀞駅についた電車から降りるお客さんは…
…やたらと多かった。
その装いからして、みなさんもやはり目的地は宝登山なのだろう。
その昔オタマサ実家で暮らしていたときには、何度か車で連れてきてもらった長瀞。
でも電車できたのは初めてだから、駅舎も人生初。
駅舎に掲げられている駅名表示も、御花畑駅とは違って味わい深いものだった。
駅舎内も素朴にステキで、昔懐かしい昭和の香りが漂っている。
スマホやネットが無くとも、津々浦々の駅がおおむねこんな感じだった頃のニッポンのほうが、よほどそこで暮らす人々はシアワセだったんじゃなかろうか…。
駅前にはバスが行き来するロータリーがあって、周辺にはいかにも昭和の観光地っぽい商店が並び、その先にまっすぐ伸びる道は、宝登山神社の参道だ。
なので立派な鳥居が立っている。
駅前から宝登山の麓までは歩いて15分ほどとそれほど遠くはないのだけれど、歩いて行くのがつらい方用に、駅前から往復するシャトルバスも運行していた。
とりあえず我々は、15分の道のりをテケテケ歩く。
ハイカーファッションの方々のなかには、麓から山頂まで登山をするヒトもいらっしゃる。
一方で、登山をしている時間はないし、そのような装いでもない方々もいる。
そんなアナタに…
…ロープウェイ。
歩いて登れば1時間ほどかかる山頂まであっという間に連れて行ってくれるゴンドラは2台あって、それぞれバンビとモンキーという名がつけられていた。
10時以降は15分ごとに運行しているロープウェーは定員50名だから、ハイカー多しといえども乗り切れないということはなく、バンビちゃんは長瀞の町を見下ろしながらグングン山頂を目指す(↓これは帰りに撮ったものです)。
このロープウェー、歩けば1時間かかるところをものの5分ほどで山頂まで連れて行ってくれるありがたい乗り物ではあるんだけど、往復10分ほどの乗車券は、1人1200円と来たもんだ。
天空のロウバイを見る前に、料金に狼狽しちまったぜ。
ま、ようするに山頂からヒトの足元を見ているのですな。
山頂に到着すると、すぐ先にウワサに名高い蝋梅園がある。
咲き始めてからけっこう経っているとはいっても、すべての木々が満開ってわけじゃなかったけれど、それでも青空に生えるキレンジャーたち。
近代日本の植林は、欧米とは違ってとにかく杉杉檜って具合いに植えまくったものだから、昭和以降日本の山々はすっかり杉だらけになってしまっていた。
宝登山もやはり杉だらけになったいたそうなのだけど、その杉を切り開いて蝋梅園にしたおかげで山頂は見晴らしがよく、キレンジャー越しに秩父盆地や武甲山が見渡せる。
ちなみに蝋梅とは、文字どおり花が蝋のような質感に見えることからつけられた名前で、いくつかタイプがあるようながら、その名にピッタリな様子の花はこんな感じ。
それらが大集合してキレンジャー化している景観は、たしかに見応え充分だ。
ただ、ご覧いただいている皆様におかれてもすでにお気づきのことだろうけれど、これが亜熱帯のオキナワのように冬でも地面が緑の草草に覆われていればまだしも、なにぶん本土の冬枯れの地表では、青空をバックにしないかぎり黄色い花々が目立たないこと甚だしい。
その点わずかに咲き始めている紅梅系たちは…
…そこだけポッと灯ったぼんぼりのような華やかさが。
そんな蝋梅園の先に、宝登山山頂があった。
標高497.1メートルの登頂成功!
…ロープウェーだけど。
それにしても、なんとも惜しいその標高。
あとわずか2.9メートルあれば、ピッタリ500メートルだというのに…。
このポールの天辺がちょうどそれくらいかな?
(つづく)
Posted by クロワッサン at 08:25│Comments(0)
│観光