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2025年03月24日

茨のたっちゃん・リターンズ。

2025年 3月23日(日) 晴れ

無風のち南の風 おだやか 水温21度

 水納丸が戻ってきてからこっち、奇跡のような好天続きになっている。
 
 その分放射冷却は凄まじいのだけれど、本土でキビシイ冬を過ごされている方は、気温2ケタもあって何を言っておるのだ、と憤慨されているかもしれない。 
 
 でも放射冷却ってのはホントに冷却機能としては高性能で、昨日ワタシが寒さに震えていた朝方なんて、南城市で氷が張ったほどなんですぜ。
 
 気温10度で氷が張るのはなぜか。
 
 それが放射冷却。
 
 寒いんですって、マジで。
 
 今日は引き続き好天ながらもその放射冷却はあるのかないのかわからないくらいで、おまけに南西の風でベタ凪ぎ、これで海に行かずにいつ行くの?ってくらいのベストコンディションだった。
 
 これで4日連続で潜ることができる!
 
 ところが。
 
 9時過ぎには出動準備に入り、さあそろそろウェットスーツを着ようかという頃に、電話がかかってきた。
 
 リョウセイさんからだ。
 
 「今日午前中にビーチ清掃あるから出てね」
 
 へ?
 
 ビーチ清掃というのは、水納ビーチで営業許可を受けている3社(有限会社水納ビーチも含む)が中心となって、シーズン中に水納ビーチで営業をしている各業者さんたちがシーズン開幕前に海水浴場エリアの清掃を行う毎年恒例の催しだ。
 
 ビーチで商売をしているわけではなくとも、とにもかくにも島の玄関口ってことで、以前は水納ビーチスタッフ以外の島のみなさんもわりと参加していたものだったのだけど、高齢化という寄る年波には抗えず、今では班長のほかに我々が都合がつけば…というくらいになっている。 
 
 今年の清掃活動主催当番であるオーシャンスタイルのオギドーさんは、きっともっと前からリョウセイさんには伝えていたのだろう。
 
 当方はそもそもビーチで営業しているわけじゃなし、昨今の流れからするとわざわざオギドーさんが我々に伝える筋の話でもない。
 
 そもそもリョウセイさんに伝えていれば、島内には伝わっているはず…
 
 …とオギドーさんが考えるのは当然だ。
 
 ああしかし、ギリギリの男リョウセイさんは、参加メンバーが乗船している連絡船到着5分前のお電話なのだった。 
 
 とはいえ連絡船到着5分前にかかってきた電話で知らされた清掃作業に参加する義理など、たとえ本島に出かける用時が無くたってまったくない…
 
 …と、いつもだったら考えるところ。
 
 しかし今年は、いわゆるひとつの「例の件」で世間をお騒がせした我々は、しかもこと本部町界隈に限って言えば、当時のナカイ君よりも時のヒトになっていたことは間違いない。
 
 となれば、お騒がせしたお詫びと、とりあえず元気にしているというご挨拶をシーズン前にみなさんにする機会として、これ以上の場があるだろうか。
 
 というわけで、「さあこれから潜りに行こう!」モードから急遽「掃除しよう!」モードに切り替え、ビーチに向かったのだった。
 
 シーズン中は一部のビーチ業者さんたちが継続的に掃除してくれているから、台風直後でもないかぎり砂浜に大量のゴミが集積している状態をご覧になる機会はそれほどないけれど、ただ風が吹くだけの長い冬が終わる頃には、砂浜の上にはとんでもない量のゴミが溜まっている。
 
 「海水浴場」であるがために、大雨の際などに洋上に流れ出る大小様々な流木その他自然由来のものまで除去しなきゃならないのももちろん手間ではあっても、それらはともかくも「自然」のなせるワザだから仕方がない。
 
 それに対し、毎度のことながらウンザリするのが、ヒトのなせるワザのゴミたち。
 
 マイクロプラスチックだなんだと、世界では(クラシカルアイの)目に見えないレベルのゴミが自然に及ぼす害も深刻になっているけれど、これだけのゴミの量を見たら、話はまったくそれ以前のモンダイであることがよくわかる。
 
 それはまるで、救国の宰相ならぬ亡国の災相たちを初めとする政官の方々が全身全霊をかけてニッポンを滅ぼそうとしている今、「南海トラフ地震が発生したら…」などと被害予想ばかりしているようなものだ。
 
 で、これまた毎度のことながら、集まるゴミのなかで漢字表記だけのペットボトルや各種容器の多いことといったら。
 
 大量のペットボトルのゴミ群のうち、日本国内で売られているペットボトルは、おそらく50本に1本くらいの割合ではなかろうか(※個人の実感です)。
 
 それでもこのようにたまにみんなで掃除をするエリアだからなんとかもちこたえているけれど、人口減少に加速度がついている今の世の中、人の手が行き届かない海岸のほうが圧倒的に多くなっているだろうから、日本全体の海岸で考えたら、溜まり続けるゴミの量はほぼ絶望的といっていい。
 
 自衛隊を八重山の離島に配備したり、賞味期限切れ気味のミサイルを増税してまで購入する以前に、喫緊の「水際対策」が必要なんじゃなかろうか…。
 
 まだなんとか人の手で持ちこたえている水納ビーチは、参加したみなさんのおかげで、半日の作業で見違えるようにきれいになったのだった。
 
 午前中だけで済んだのは、コロナ禍中の数年と違って軽石除去作業が無いし、桟橋の東側は水納港関連で絶賛工事中だから、いつもの半分の量で済んだおかげだったりする。
 
 ちょうどいつもの早お昼時間に終わったから昼食を摂り、そのあと仕切り直しで海へGO!
 
 ただでさえお天気がいいうえに、午前中に体が温まりまくっていたおかげで、冷たい水によるダメージもさほどのことはなく、むしろ連日の好天のおかげでとうとう表層50センチが温く感じられるようになっているほどだったので、海中では快適に過ごせた。
 
 そんな快適さがイソギンチャクたちにも伝わっているのだろうか、昨夏真っ白になって以来、昨年中はずっと白かった↓このアラビアハタゴイソギンチャクが…
 
茨のたっちゃん・リターンズ。

 …少しだけ復活し始めていた。
 
茨のたっちゃん・リターンズ。

 うっすらと茶色っぽくなってきているのがおわかりいただけるだろうか。
 
 褐虫藻が戻ってこようとしているらしい触手を拡大してみると…
 
茨のたっちゃん・リターンズ。

 …このように斑状になっている。
 
 サンゴにはソッコーで戻るのに対し、イソギンチャクにはなかなか戻らない褐虫藻たち、ひょっとしてイソギンチャク業界には転売ヤーが介在しているのかもしれない。
 
 このたびようやく備蓄藻が放出されて、遅ればせながら元に戻りつつある…といったところなのかも。
 
 住人のセジロクマノミたちはホッと胸を撫で下ろしていることだろうけれど、同じ住人のなかには「チッ…」と舌打ちしている者もいる。
 
 この方(矢印の先)。
 
茨のたっちゃん・リターンズ。

 このアラビアハタゴイソギンチャクにたどり着いたはいいものの、先住者のセジロクマノミたちに虐げられ、日中はイソギンチャクの外にしか居住権が無いクマノミ
 
 セジロクマノミが住めなくなるくらいまでもっともっとイソギンチャクが弱ってしまえば…と下剋上のチャンスをうかがっていたであろうに、復活の兆しが見え始めたとあっては、引き続き日陰者生活を送るしかないクマノミなのだった。
 
 もっとも、ここに5匹いたはずのセジロクマノミは、4匹に減少していた。
 
 イソギンチャクが弱っていた頃に何かあったのだろう。
 
 シメシメ…と思っているかもしれないクマノミ。
 
 しかし触手の間をよく観ると…
 
茨のたっちゃん・リターンズ。

 …1センチに満たない激チビの姿が。
 
 他のクマノミ類ではこれくらいのチビには市民権は与えられず、先住者の目につくやすぐさま追い払われるから、外縁部でイジけていることが多いのに、セジロクマノミの場合は大家族主義なのか、こんな小さいみぎりからイソギンチャクのどこにいてもおとがめなしという様子だった。
 
 このチビチビが育てば、またメンバーは5匹になる。
 
 それにしても、23度にならないと産卵を始めないはずのセジロクマノミだというのに、今1センチ未満の激チビが登場するってことは…
 
 …いったいこのチビ、どこからやって来たんだろう?
 
 そうやってワタシがリーフエッジでセジロクマノミと戯れていた時、オタマサは自身2度目となるレアフィッシュ(@水納島)と遭遇していた(以下の写真すべて撮影:オタマサ)。
 
茨のたっちゃん・リターンズ。

 茨のたっちゃんことイバラタツ。
 
 前回オタマサが初遭遇したのは2021年の10月のことで、初遭遇にアドレナリンを出したまではよかったのだけど、あいにく携えていたデジイチの具合いが思わしくなく、フォーカスノブを回しても動作しなくなっていたのだった。
 
 そのためせっかくの初遭遇というのに、引いた画角でしか撮れないという、地団駄マグニチュード8級の悔しさを味わうことに。
 
 今回出会った子は前回よりも小さく3センチほどだそうで、幸いフォーカスノブも絶好調だったおかげで、ようやくちゃんと撮れたオタマサ。
 
 ちなみにこのたっちゃんは、この低水温の季節ならではの(水温が上がってくると、溶けて無くなる)頼りない海藻についていたそうな。
 
茨のたっちゃん・リターンズ。

 この季節にはこのような海藻のほか、ガヤ類などが砂底からニョキニョキ出ているんだけど、それらになにかがついていたとしても見づらい見えないクラシカルアイでは目を皿のようにし続けるのがしんどいため、ワタシはよほど妖しいオーラでも発していないかぎりチェックしたりしない。
 
 その点クラシカルアイではあっても依然視野上下左右30度の範囲だけは集中力をキープできるオタマサは、来る日も来る日も砂底を徘徊してはこのような海藻その他の付着生物を物色しているのだった。
 
 この茨のたっちゃんとの遭遇も、オタマサにしてみればいわば必然なのである(逆に真上をマンタが通っていても気づかないのは間違いないけど)。


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Posted by クロワッサン at 07:56│Comments(0)水納島の海日々の作業
 
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