2024年02月18日
30周年突入記念。
2024年 2月17日(土) 晴れ
北の風 少し波あり
この日からついに、我々の水納島在住が30年目に突入することとなった。
え?以前30周年記念Tシャツを作ったんじゃ?
と思われたうっかり八兵衛さんがいらっしゃるかもしれないから説明しておくと、あれは「ダイビングサービス・クロワッサンアイランド」の創立30周年でござんす。
過去に何度も触れているように、その昔石坂浩二主演の金田一耕助シリーズの「犬神家の一族」だったか「悪魔の手毬唄」だったっけかのなかで、石坂金田一が捜査の過程で20年前の重要事実を知るシーンがある。
その際に発する石坂金田一の
「20年前!」
といういささか大仰なセリフを聞いた若き日のワタシは、20年とはなんと長い月日の積み重ねであることか…と思ったものだった。
ところが今や、水納島で暮らし始めてから30年目…。
我々が島に引っ越してきたのは、丸29年前のことなのだ。
「29年前!」
我が事ながら、思わず石坂金田一になってしまった。
そんな30周年突入記念の本日は、海神様もお天気の神様も祝福してくれて、絶好の海日和とあいなった。
絶好の海日和とはすなわち、抜群のバージ接岸日和でもある。
そう、この日に順延されていたバージ接岸が、とうとう予定どおり行われることになったのだ。
オーシャンスタイルさんの島内倉庫の基礎用コンクリートを積んだ生コン車は、都合3台が水納島に上陸。
バージが到着する前にいち早く島に渡ってきていたオーシャンオギドーさんに確認してみたところ、ありがたくも申し訳ないことに、生コンを頂戴できるタイミングがきたら「合図するよ!」と言ってくださったので、あとは準備万端整え、合図を待つばかりとなっていた。
ところがいざ生コン車が到着すると…
「ゴメンなさいッ!1台あたり4.5立米積んでくるよう注文してたのに、3立米ずつしか積んできてないッ!」
なんと!
困るくらい余るほど頼んであったはずのものが、本来必要な分でさえギリギリ足りるかどうか…という。
そんな非常事態にうちの事まで心配してもらったらかえって申し訳ないから、どうぞお気になさらず…。
というわけで、もしなんとかなりそうだったら、また合図しにきてくれることになった。
でもまぁ、お裾分けは無理そうだなぁ…。
バージで渡らなきゃならないところに注文どおりの量を運んでこないってのもまたいかにもオキナワらしい話ではあるけれど、事情に詳しい班長ヤスシさんによると、生コン車が海上輸送されてくる場合、その積載量には陸路よりもかなり低めの制限が設けられるのだとか(海上で揺れるから)。
というか、それならそれで最初から施主に言っといてあげなよ、生コン業者…
…と外野のワタシが言っても始まらない。
かくなるうえは、明日にでも本島に渡り、セメントと砂を買ってきてコネコネしてオール人力でモルタルを練るしかあるまい。
ところで今回のバージの主役は、実はオーシャンスタイルさんではなく、こちらの事業が主体になっている。

名著「水納島再訪」の表紙にもチラ…と写っている、島の水道タンク。
瀬底島経由で海底を走る水道管からいったんここに溜められた水が、島内各家庭に行き渡るようになっている。
そのタンクの維持管理に欠かせない螺旋階段が甚だしく老朽化しており、土台のコンクリートに至っては亀裂どころか爆裂状態で、次のストロング台風で倒壊するんじゃなかろうか…という有様になっていた。
その螺旋階段の土台部分のコンクリート改修から、螺旋階段の解体、そして再建という一連の工事が、来月21日までの予定で施工されているのだ(定めてある工期までには絶対終わらないと思うけど)。
で、そのための車両や資材や何やかやを島に上陸させるべく、バージ出動の予定が立てられたところ、なにぶん狭い社会のこと、「そういうことなら!」と、オーシャンスタイルさんとタツヤさんがそれぞれ別件で便乗ということにあいなった次第。
ちなみにタツヤさんは何の件なのかというと、ご実家の解体&新築。
そのためにはまず家屋内の家具を一時避難させる必要があるため、この日プレハブ住宅様のコンテナをバージで運び込んできたのだ。

その昔現我が家のプレハブを運んできたときと同じく、業務を請け負った業者さんは「ダイジョーブよぉ」と事前に言っていたに違いないけど、実際に来てみるとあまりの電線の多さに困り果てていたことだろう。
それでもそこはプロ、この狭き門を見事にクリアして、プレハブを下ろす作業を完了していた。
一方、水道水タンク大改修工事のための資材は、なにぶん現場までのルートに大型車が通れるところが無いために、小分けにしてユンボその他で現場まで運んでいる様子だった。
しかしながら、螺旋階段解体用の足場材等の資材はすべて、いったん我が家の前に安置、そしてひととおりこの日の作業を終えた両業者の重機や車両も、夕刻には我が家の前に。
誰もいない使わない学校のグランドに全部置けばいいのに…(心の声)。
というわけでこの日の日中はあっちゃこっちゃで工事祭りが開催されていて、本来小さな島には無縁のはずの工事の騒音塗れの一日となってしまった。
そんななか、突如朗報が!
ギリギリかヘタをしたら足りないくらいと思われたオーシャンスタイルさんの基礎用コンクリートが、なんとか足りたうえに多少余分が出たそうで、お裾分けをいただけることに!
わざわざスタッフさんが知らせに来てくださったので、おっとり刀ですぐさま駆けつけ、軽トラに載せてあったトロ舟に生コン車から生コンを注いでもらった。
はたして当方の用をなすほどの量かどうかギリギリのような気もするものの、たとえ足りなくともあとから継ぎ足したって大して困らないんだから、とにかく感謝感謝。
こうしてこの日無事生コンを流し終えたオーシャンさんの基礎は…

…まるで鏡のようにツルッツル。
一方、お裾分けをいただいてダダダダ…と流し込み、ウリャッウリャッとテキトーにコテでならした当家の生コンは…

…デッコボコのガッタガタ。
でもどうせステップの下になるところだし、水溜まりにさえならなければいいのだ。
お声掛けいただいたおかげで昼までには作業を終えることができ、あとは乾くのを待つばかり。
あ、30周年突入記念に何か刻印しておけばよかった…?
午後になって、おちおち読書もしていられないくらい、隣家の騒音がいよいよ激しくなってきた。
そこで騒音避難を兼ねて、プラプラ散歩することにした。
現場を少し離れるだけで、さすが小さな島、喧騒とは無縁になる。
ヒミツのビーチまで足を延ばし、テケテケ戻ってきたあと、状況視察とばかり隣家に立ち寄ってみたところ、お茶タイムの休憩時間なのか、作業のみなさんが休憩していた。
そんな休憩中の作業サーの1人が、ワタシの名を呼びつつ笑顔で語りかけてきた。
あれ?
あれれ???
フルゲンさん?
そう、その昔水納ビーチが㈲水納ビーチとイエローディック改めMMCさんたちだけの世界だった頃(クロワッサンはあくまでも隙間産業)、MMCの番頭さん的存在として大活躍され、当時毎秋開催されていたビーチの打ち上げ大パーティの際には、共催業者のスタッフとして、宴席の司会をも勤めておられたフルゲンさんではないか。
MMCを去られた後もしばらく本部町内にいらっしゃるような話を人伝に聞いていたけれど、その後本部町を離れていたそうな。
ものすごく久しぶりの再会だ。
かつてジェットに乗ってブイブイ言わせていたなんて想像できないほどに、プロフェッショナルな装いのフルゲンさんに、
「2人とも変わらないねぇ!」
と言われる我々。
どちらかというと我々の場合、単に成長していないだけともいうんですけど…。
往時、酒席を共にする機会があったわけでも、プライベートでよく会っていたわけでもなく、そういったおつきあいの履歴はまったくないものの、(個人的に)島の最もいい時代を共に過ごしていたという不思議な連帯感だろうか、まるで旧友に再会したかのような感慨を抱くことができたのだった。
そんな懐かしい方が携わっている仕事の音となると、同じ騒音でも聴こえ方がまったく異なってくるこの不思議。
おかげで夕刻まで、家でのんびり過ごすことができたのだった。
ともかくそういうわけで、これからしばらく我が家の近隣を含めた島のあちこちでは、仲本仲本仲本工事になりそうでござんす。