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2025年04月20日

共に生きない共生ハゼたち。

2025年 4月19日(土) 晴れ

南東の風 波あり 水温21度

 昨日の雨がウソのような快晴の一日になった。
 
 風はやや強めに吹いてはいたけれど、南東からなので暖かく、春ならこれで充分ってくらいの海日和だ。
 
 もっとも、今日は土曜なので燃やすゴミの日だから、連絡船の到着を待ってゴミを出してからしか海には行けない。
 
 土曜日だけに、スタートが遅くなると主要ポイントにはボートだらけになっているかな…
 
 …と諦めていたところ、案に相違して洋上には1~2隻停まっているだけだった。
 
 庶民はいよいよ困窮極まり、もはやダイビング旅行にも出掛けられなくなっているのだろうか。
 
 いや、もちろん限られた富裕層は変わらず旅行しているだろうけれど、富裕層はわざわざ本部町なんかにダイビングをしに来ないってことか…。

 あ、みんな万博に行ってんのか!
 
 ダイビングボートは少な目ながら、連絡船から降り立つ日帰り客はわりと多く、その半分以上がアジアンインバウンダー。
 
 彼らがいなければ、ビーチは閑古鳥を使ってヒッチコックが「鳥」を撮れるほどだったかもしれない。
 
 ともかくそんなわけで洋上は空いていたから、ちょいとばかり訪ねてみたいと思っていたところに行くことができた。
 
 ミナミダテハゼのペアサーチだ。
 
 一昨日は意外にもハチマキダテハゼがペアになっていたので、ひょっとしたらミナミダテハゼも…
 
 …と柳の下のハゼを狙った次第。
 
 よく似ているヒメダテハゼが、なんの変哲もない礫混じりのごく浅い砂底から深いところまでそこら中にいるのに対し、ミナミダテハゼはわりと深めの根の近くを好むらしく、そこらじゅうにいるという実感はない。
 
 でも根の近くをサーチすると、わりとたやすく出会うことができ、この日訪れたところもそのひとつ。
 
 前日が大雨だっただけに、水温は相変わらず中高年ダイバーにキビシイ20度のままだろうなぁ…と覚悟してドボンと飛び込んだところ、意外にも水が痛くない。
 
 10分ほどしてダイコンが落ち着いたところで水温表示を見てみれば、さらに意外なことに安定的に21度になっているではないか。
 
 20度でも21度でも寒いことに変わりはないけれど、冷たい水が肌を刺す痛みが無いだけでも、勇気百倍やる気全開。
 
 これならハゼを観ようという気にもなる。
 
 でも目当てのミナミダテハゼは、残念ながらというか当然ながらというか、とにかくみんな独り身だった。
 
 ただ、異性と一緒にはいなかったかわりに、異生物と一緒になっているものがいた。
 
共に生きない共生ハゼたち。

 言うまでもなく黒い物体は、水温が低い季節にヒメダテハゼに寄生していることが多いスミゾメキヌハダウミウシ。
 
 なので最初このハゼもヒメダテハゼかと思ったのだけど、ヒメダテハゼにしては大きいし、帯模様は細いけれど尾ビレの付け根にまで模様がしっかり入っているし…
 
 ってことは…
 
 …ミナミダテハゼってこと?
 
 自信がなくなったので、このすぐそばでやはりスミゾメキヌハダウミウシに寄生されていた、明らかにヒメダテハゼとわかる子と比較してみよう。
 
共に生きない共生ハゼたち。

 やはり帯模様の斜め度合いが全然違う(気がする)。
 
 ということは。
 
 ミナミダテハゼにスミゾメキヌハダウミウシが寄生している?
 
 そんなシーンを見るのは人生初!
 
 ペアを求めていて、異色の組み合わせを初めて観ることができたのだった。
 
 < これまではヒメダテハゼと思い込んでいただけなんじゃねーの?
 
 そうかも…。
 
 覚悟していたとおり、結局ミナミダテハゼのペアは観られなかったけれど、↓このハゼたちはそこかしこでペアになっていた。
 
共に生きない共生ハゼたち。

 ご存知オニハゼ。
 
 反対方向を向いているからペア感がいまいちながら、お互いが違う方向を見ている方が警戒エリアを広く保てますからね。
 
 同じ砂底にいる他の共生ハゼたちがみなチョンガー暮らしをしているなか、オニハゼだけは安定的にそこらじゅうでペアになっていた。
 
 20世紀の伊豆の海でもフツーに出会えたくらいに温帯に適応しているオニハゼのこと、この程度の低水温などまったく意に介さないのだろう。
 
 ただしオニハゼは、数が多いわりには警戒心がやたらと強く、水温が高い夏場であっても、しかもけっこう離れていても、カメラを向けるとすぐさまオスが、もしくはオスメス同時に巣穴に引っ込んでしまう。
 
 なのでこのペアもダメ元でカメラを向けてみたのだけれど、オニハゼとは思えぬほどにフレンドリーで、ついでにニシキテッポウエビまで誘い出してくれたほど。
 
 こうして見比べてみると、オスとメスで背ビレの立派度合いが異なっていることがわかる。
 
 やっぱ背ビレが立派なほうがオスのようだ(このあと先に引っ込んだ)。
 
共に生きない共生ハゼたち。

 …などと知ったかぶりつつ、実はオニハゼを画像記録に残すのは実に4年ぶりのこと。
 
 その4年前も3年ぶりだったのだから、いかにオニハゼがつれないヒトであるかおわかりいただけよう。
 
 リーフ際に戻ってくると、クビアカハゼもペアになっていたのでちょっとばかり驚いた。
 
共に生きない共生ハゼたち。

 オニハゼと違いクビアカハゼは南方系のハゼだから、この低水温の季節に恋のスイッチオンとはならないと思うのだけど、すでにペアとして暮らしているのか、行きがかり上一緒にいただけなのか、どっちなんだろう(彼ら以外はみな単独だった)。
 
 聞くところによると、共生ハゼと呼ばれるハゼたちには通年ペアでいるものと、繁殖のときだけペアになるものがいるそうで、なかにはホントに産卵の際のわずかな逢瀬だけという種類もいるという。
 
 言われてみると、ヤシャハゼやヒレネジなどのようにペアでいることがフツーのものがたくさんいる一方で、オドリハゼやヤマブキハゼ、クロホシハゼなど、水納島でもフツーに会えるのにペアでいるところは一度も見たことがない共生ハゼもけっこういる。
 
 一方、夏の間はいつもペアで暮らしていたヒレネジ君も、今の季節はいつ見ても独り身だ。
 
共に生きない共生ハゼたち。

 これは先ほどのウミウシ付きミナミダテハゼのすぐ近くにいるヒレネジ君で、ここ2年ほどずっと同じところに居てくれているから、これまでに訪れたであろう多くのダイバーに福音をもたらしていると思われる。
 
 この子もこの2年間の夏場はたいていペアでいるのに、今の季節はいつも独りぼっち。
 
 でも初夏にはもうチビチビが出現し始める彼らのこと、となるといったいいつからペアでいることが常態になるんだろう?
 
 実は今の時期のオスは、巣穴の中で卵を守っているとか?
 
 でも、少し離れたところにいたヤシャハゼは、オスが1匹で外に出ていた。
 
共に生きない共生ハゼたち。

 共生ハゼたちがペアでいる場合、例外なく真っ先にオスが逃げるから、夏場に1匹だけ外にいるのはたいていの場合オスが先に逃げ込んだあと外に残っているメスである。
 
 ところで、当店のゲストだった方で、何をもってこのヤシャハゼがオスであると認定しているのかわからない…なんて方はよもやいらっしゃりますまいね?
 
 オスが単独でいるのか、それともオスメス交代で卵守りをしているのか、はたまたヤシャハゼやヒレネジたちも季節限定ペアなのか、どうなんでしょう。

 テッポウエビとは共生しても繁殖パートナーとは共生しないってのも、なんだか現代風だなぁ、共生ハゼたちの社会も…。


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Posted by クロワッサン at 07:15│Comments(0)水納島の海
 
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