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2024年08月15日

単細胞の中の多細胞。

2024年 8月14日(水) 晴れ

西の風 少し波あり 水温29度~31度

 このあと少しぐずつきそうな週間天気予報になっているものの、今日のところはなんとか雲が多いくらいでとどまっていた。
 
 輝く太陽を望む方々には物足りない曇り空は、暑さに苛まれている人々には恵みの遮熱クラウド。
 
 おかげで桟橋上もボート上もとっても涼しかった。
 
 そんな1日だけの涼しさとは関係ないと思うのだけど、ここ数日で表層の水温が若干下がっている…という声が上がり始めている。
 
 6月下旬から7月上旬にかけての狂ったような猛暑は過去のものとなり、異常高水温をもたらすほどではないし、このあとお天気がぐずつくようなら、浅所のサンゴたちもひと息つけるのでは。
 
 今月になってからは平年同様日々の最高気温は32度前後で推移している沖縄だから、猛暑で苛まれている奄美地方あたりに比べれば、サンゴにとっては過ごしやすい環境が戻りつつあるのかもしれない。
 
 となると、白化し始めるのは前代未聞級に早かったサンゴたちながら、このままなんとか水温が下がり始めるまで踏ん張りきれるか。
 
 もし踏ん張れたら、ワタシはたちまち白化詐欺扱いされてしまいそうだ…。
 
 それにもめげず、本日も白化ナウ。
 
単細胞の中の多細胞。

単細胞の中の多細胞。

 …と言いつつ、そーゆー目で観るとさほど白化していないように見えてしまうかも。
 
 ここは防波堤の真裏のポイントで、どういうわけか他のリーフ上と違ってソフトコーラルの割合が多いところなんだけど、リーフ上まで足を延ばしても、白化の進行具合が他所よりも遅い気がしていたところ。
 
 ひょっとして、防波堤が生み出す潮流がひと役買っているんだろうか?
 
 ところでサンゴの白化というのは、サンゴのポリプそれぞれが体内に宿している褐虫藻が外に出てしまうために色が薄くなり、全部出てしまうと真っ白になる現象のこと。
 
 これは褐虫藻が能動的に出ていくわけではなく、もっぱら高水温に起因するストレスにサンゴが耐えかね、「もう褐虫藻なんて宿していられない!」とばかり、サンゴが自ら褐虫藻を追い出してしまう仕組み…ということになっている。
 
 サンゴの中を暮らしの場とするものもいるくらいだから、藻の世界もかなり奥深そうだ。
 
 日本語で「藻」とつく生き物には、ワカメやコンブでお馴染みの「海藻」というものたちもいる。
 
 その海藻のひとつに、オオバロニアというものがいることをご存知の方も、きっとダイバーには多いと思われる(ご存知ない方はこちらをご参照ください)。
 
 リンク先で紹介しているように、単細胞生物であるこの海藻は直径2センチ前後がもっぱらで、順光で見ると黒真珠が落ちているように見えないこともない。
 
単細胞の中の多細胞。

 でも、同じところにいる同じものを、同じアングルから違う方法で撮ってみると…
 
単細胞の中の多細胞。

 …まったく別物になる。
 
 せいぜいこれくらいが、ワタシにとってのオオバロニアでの遊びだった。

 ところが。
 
 世の中の変態社会化は凄まじく、なんとなんと、このオオバロニアの中で暮らすウミウシの存在が明らかになっているというのだ。
 
 その名もバロニアモウミウシ。
 
 オタマサが暇さえあればしょっちゅう撮っている、オオアリモウミウシの仲間たちとそっくりな色形のウミウシだというソヤツは、オオバロニアの中にいるために、ヒトの目に触れる機会はまずないそうだ。
 
 そんな貴重な情報を教えてくださったのは、毎日8時間近くを海中世界で過ごす変態社会にお住いの方。
 
 で、その話を教えてくださったその日のうちに、彼がもたらしてくれたのがこちら。
 
単細胞の中の多細胞。

 おお、バロニアモウミウシ!!
 
 なんとなんと、その存在を教えていただいたその日のうちに、実物に出会えるとは!

 スーパー変態社会在住バロニアモウミウシ伝道師、ありがとうございます!
 
 もっとも、誤解のないように念のために言っておくと、ワタシが撮った上の写真はバケツから取り出した死サンゴ片についているオオバロニアの中の様子を、テーブルの上で背後からLEDライトを当てて撮ったもの。
 
 オオバロニアの中にいるウミウシが外から見えるくらいだから、オオバロニアはもうすっかりクリアーになっている。
 
単細胞の中の多細胞。

 本来であれば黒真珠に見えるくらい濃緑色の玉なのに、いったいなぜ?
 
 スーパー変態社会人バロニアモウミウシ伝道師によると、このウミウシはオオバロニアの中に入って細胞エキスを食いつくすそうで、前日にこのオオバロニアをチェックした際にはまだ緑色だったものが、早くもこの日このように透明になっていたという。
 
 どうやらバロニアモウミウシは、宿主と共に生きていこうというつもりはさらさらないらしく、食べるだけ食べて宿主を滅ぼすものであるらしい。
 
 で、食べ尽くしたあとはどうなるんだろう?
 
 というか、この単細胞海藻からどうやって出入りしているんだろう?
 
 イチジクの実に入り込む蟻んこやある種のハチのように、ヒミツの出入口でもあるのだろうか。
 
 サンゴの体内に入る藻がいるなんて…と褐虫藻の存在を初めて知った時には驚いたものだったけど、まさか藻の中に入ってモグモグし続けるウミウシがいるとはなぁ…。
 
 ちなみに、すっかりクリアになったオオバロニアの中にいるバロニアモウミウシ、バケツの中でそのままにしておいた。
 
 一夜明ければ、ひょっとして外に出ているかも…
 
 …という期待とは裏腹に、ひと晩経っても以前オオバロニアの中にいたまま。
 
 このあと放置しておくと、再びオオバロニアの中が濃緑色になり、ウミウシは居ながらにしてエンドレス食べ放題…
 
 …なんてことはさすがにないですよね? 

 ともかくそういうわけで、単細胞生物の細胞の中に多細胞生物がいるという、我が盆百脳の算数では理解しがたい不思議的クリーチャー、バロニアモウミウシと会えた夜なのだった。


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Posted by クロワッサン at 07:35│Comments(0)水納島の海
 
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