2024年06月08日
ヒメスズメダイの求愛ダンス。
2024年 6月7日(金) ぐずついた天気
北東のち南東の風 少し波あり 水温23度
今日も梅雨っぽいぐずついた天気ではあったのだけど、夕刻には晴れ間が見えて、束の間世界は輝いた。
その輝きに誘われてフラフラと散歩をしていたら、突然オタマサが
「シーサーがいる!」
とぞのたまいき。
なんのことやら…と目を向けると、あらホントだ、シーサーがいた。
周りに糸が見えるからすぐに正体がバレてしまうだろうけど、これだったら「クモは苦手…」という方でも大丈夫なのでは?
これは暖かい季節になると活発になる(おそらく)チブサトゲグモで、体つきは1センチにも満たないくらいなんだけど、トゲトゲしている腹部がやたらと固い。
夏場ともなればそこらじゅうでこのクモがクモの巣を張るようになるから、放っておくと我が家のデッキ上などはこのクモの巣だらけになってしまうほど。
ただ、たくさん観られるそれらのチブサトゲグモたちは、どれも同じように白い点はあっても全体はたいてい黒っぽく、色味はかなり地味地味ジミー。
腹部の色味のバリエーションはかなり豊富とはいっても、ここまでオレンジ色のものにはなかなか会えないはず。
しかもおあつらえ向きに頭を下にするポジションでクモの巣の真ん中にいるものだから、腹部が獅子の顔に、そしてコンパクトにまとまっているクモの脚がホントにシーサーの脚のように見えるのだった。
桟橋にたどり着くと、沖合を見慣れぬ船が航行していた。
はて、どこの船じゃらほい?
肉眼ではもちろん見えなかったけれど、後刻画像を拡大してみたらば…
おお、波照間のフェリーだ。
沖縄県内にはこのクラスの旅客船のためのドックが無いから、本土まで出向いてドック入りしていたのだろう。
波照間のみなさん、もうすぐフェリーが復帰しますよ。
雨が上がって薄日がさす桟橋には他に誰もおらず、なんとも清々しい。
思いっきり「途中」であることをアピールしている工事現場すら美しく見える。
4月下旬から始まるはずだった港大改修工事は、まだまったく手付かずのままながら、このところチョコチョコ島に来てはチョコチョコ測量をしたりしている請負業者スタッフさんに昨日伺ってみたところ、変更を余儀なくされた工法の検討はすでに終わり、あとは資材の手配を待つだけなのだそうな。
砂留め用に石材が必要とかで、それの手配は早ければ今月半ばに、遅ければ今月末になるとのこと。
すなわち早ければ今月半ば過ぎから、遅ければ来月初めから大規模な工事が始まる、ということになりそうだ。
この風景も、そろそろ見納め。
今年はアジサシの飛来が遅く、先月下旬になってようやく姿を見かけるようになったのだけど、6月になっても依然十数羽が飛んでいる程度でしかない。
この日の夕刻など、本来なら洋上でにぎやかにエサゲットをしていてもおかしくないのに、どこにもまったく姿が見えなかった。
昨夏は港にドドンと作業台船が停泊しっぱなしで、連日タグボートや重機がゴォーゴォーと唸りまくっていたのだもの、そりゃこんなところで子育てをしようなどとは思わないだろうなぁ…。
これから数年続く港の大規模工事で、長い間夏の代名詞だったアジサシたちは、ついに水納島から絶滅……となってしまうか?
いろいろと見納めが多い水納島である。
さて。
朝は朝で雨は降っておらず、薄日もさすほどだったので、ちょいとばかり遠出して岩場のポイントに行ってきた。
先月出会ったヒナギンポの婚姻色、もっと色づいて活発に求愛行動をしていないかな…と期待して訪れてみたものの、あいにく前回と変わらぬ色味で、動きも特に変化は無かった。
そのかわり、さすがこの季節、砂地のポイントのリーフ際に比べやたらと多いミノカエルウオ系のギンポたちが、そこかしこでアマゾンライダー化していた。
オスの婚姻色だ。
普段は逃げ隠れがやたらと素早いミノカエルウオも、目立とうとしているこういう時にはたとえ逃げてもすぐ元に戻ってくる。
また、身を晒すために目立つカラーリングになっているわけだから、↓こういうところでキバっていたりもする。
キバっているように見えるのは、若いヒメニセモチノウオがクリーニングサービスをしていたからかもしれないんだけど、あいにくそのシャッターチャンスを逃してしまった。
でももうひとつのチャンスはかろうじて。
ミノカエルウオの求愛ジャンプ。
目立つ場所に鎮座するだけではなく、わざわざ高くジャンプして己の存在を付近のメスにアピールする、オスたちの涙ぐましい努力。
すぐに逃げ隠れする普段の様子からは想像もできない変身ぶりだ。
再び元の場所に着地して、今にもジャンプしそうだったから、今度は動画で撮ろうと待機していたところ、ミノカエルウオ・アマゾンはつれなくその場を去ってしまったのだった。
この季節は冬場とは違い、このように誰かがどこかで何かしらの目立つ動きをしているもの。
それらはすべて、メスの気を引くためのオスたちの動きで、目的が目的だけにかなりアクティブだから、たとえ知らなくてもひと目で「おや?」と気づくことが多い。
この日は意外な魚がその「おや?」な動きを見せていた。
ヒメスズメダイだ。
その名のとおり小柄なスズメダイで、潮通しのいいリーフエッジ付近を好む彼らは、砂地のポイントのリーフエッジでもフツーに会えはするけれど、リーフが長く沖に伸びる岩場のポイントのほうが圧倒的に数が多い。
そんなヒメスズメダイたちが、浅いリーフ上のそこかしこで見せていた「おや?」、このような何の変哲もない画像では何が「おや?」なのかまったくわからないところ、動画でご覧いただけば一目瞭然。
急速垂直上昇しては素早く元に戻る、逆Uの字スイミングを繰り返していたのだ。
動画では2匹くらいしか入っていないけど、このリーフ上のそこかしこでヒメスズメダイたちが同じような動きをしているものだから、なんだかお祭り騒ぎのようににぎやかになっていた。
垂直上昇する前後には、逆立ち状態になってプルプル震えたりもしていた彼ら、この様子はどうみてもメスに対するアピール泳ぎ、いわば求愛ダンスに違いない。
でも、アピールしているらしきオスが、アオバスズメダイなどのようにその気になったメスを伴って産卵床に…という動きがこのあとに続かない。
はて、どうしているんだろう…?
憑りつかれたようにずっと観ていたところ、メスを連れ込みはしないものの、逆Uの字スイミングの合間合間に、岩肌に穿たれている穴に入り込んではまた出てくるという動きを繰り返していた。
そして時々その穴に別のもう1匹が入っては、瞬時に出てきたりもする。
いったい穴の中で何がおこなわれているのか、観られないから詳細は不明ながら、おそらくそこに産み付けられている卵をオスがケアしている、そしてたまにメスが産卵している…ということなのかな?
ちゃんとケアしているからだろう、一度巣穴に入ると、1分近く出てこない(↓この動画でも冒頭に穴に入ったあとなかなか出てきませんので、その間傍らにいるヒナギンポをご覧ください…眼しか動かないけど)。
ヒメスズメダイもけっこう付き合いが長いというのに、ダンスといい岩穴へ入り込む様子といい、このような動きを見せるだなんてことはまったく知らなかった。
世間ではとっくの昔に認識されている行動なのだろうか?
たとえ世間が知っていようとも、ワタシがまったく知らないことが他にいくらでもあるのは当たり前。
冬場や真夏には観られない活発な動きをいろいろな魚が見せてくれるこの季節、それらを観るためにも、少々の雨で二の足を踏んでいてはもったいない…
…と思いはすれど、本降り状態でさあ海に行こう!という気にはなかなかならないんだよなぁ、これが。