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2024年10月12日

背に腹は代えられない。

2024年 10月11日(金) 晴れ

北の風 うねりあるもおだやか 水温27度

 本日は朝から秋晴れ!
 
 いやはや、なんと爽やかな朝だろう。
 
 白秋を生きる我々ジジババとしては、このくらいの季節がまこと過ごしやすい…。
 
 魚たちも実は真夏よりも初夏や今くらいが過ごしやすいらしく、高水温が続いていた真夏にはお盛んではなかったのに、あちこちでいろんな魚がやる気モードになっている。
 
 あまりダイバーが入らない場所のリーフエッジ付近では、クギベラのメスたちがあり得ないほどの数で大集合していた。
 
背に腹は代えられない。

 この画面内だけで27匹ほど、そして画面に入りきらないところにも集まっていたから、少なくとも40匹はいたと思われる。
 
 彼女たちを統べているのは、一番上にいる1匹のオス。
 
 そう、たった1匹でこんなにもたくさんのメスたちのお相手をしているのだ。
 
 ベラ類なので、なかにはメスの色形でいながら実はオスという、非力バージョンのオスもいるため、そういう邪魔者を発見しては、どこまでも果てしなく追い払いつつ、またメスたちの集まりに戻ってきては、セッセと産卵誘発泳ぎをするオス。
 
 ご存知のとおりクギベラはペア産卵方式のため、産卵・放精はオスメス1匹ずつでの仕儀となる。
 
 ということは、この1匹のオスは、ここに集まっているメスたちすべてと「ペア産卵」を行うわけで、メス1匹につき産卵は1回だとしても(複数回しているフシもある…)、少なくとも40回は放精しなければならないことになる。
 
 なんという絶倫!
 
 途中で赤玉が出たりしないんだろうか…。
 
 さすがに40回もの産卵を撮り続けるわけにはいかなかったけれど、そんなクギベラオスの苦行にも似た絶倫ぶりを動画で…。
 
 
 
 このあたりのリーフエッジのサンゴはほぼほぼ壊滅してしまっているけれど、とりあえずクギベラたちの「やる気」にはまったく影響していないらしい…。
 
 サンゴの白化といえば、この日午前中に再訪してみた中の瀬はこういう塩梅だった。
 
背に腹は代えられない。

 かなり死んでしまっているものたちが多いんだけど、生き残っているものたちがこれくらいの割合でいるものだから、それらが淡い色を発してくれるおかげで浅場はまだまだ明るい。
 
 この場所は水納島の砂地のポイントでいうならリーフエッジ部分がダラダラと棚上に沖まで伸びているようなところで、サンゴの生存率は水納島の砂地のポイントのリーフエッジと似たような感じ…といったところ。
 
 生存率は同じくらいでもなにしろ広大で量が多いから、生きているサンゴの総量は遥かに多い。
 
 その生き残り方も、やはりサンゴ群体ごとの耐性の違いなのだろう、同じ種類と思われるミドリイシが隣り合っているところでは…
 
背に腹は代えられない。

 一方は完死、一方はしっかりサバイバルしていたりする。
 
 おそらく現在生き残っているものたちは、度重なる白化を経験して耐性を持つに至った遺伝子を持つものたちなのだろう。
 
 7月に通りすがりの男性ダイバーさんが裏側を覗きこんでいた↓このサンゴも…
 
背に腹は代えられない。

 しっかり耐性を持つに至っていたらしく、かなり色を淡くしつつも、今なお健在だ。
 
背に腹は代えられない。

 98年の大規模白化の際には、このような生き残り方はまずなかったことを思えば、激減したとはいえ現在のサンゴの生存率は耐性獲得の賜物と考えてよさそうだ。

 この様子なら次世代の供給源を断たれることはなさそうだから、サンゴ礁の復活までそれほど時を要しないかもしれない。
 
 ところどころ程度ではありながらもこのようにミドリイシ類がしっかり生き残ってくれているので、ミドリイシ類のポリプが暮らしに欠かせないテングカワハギたちもまだ頑張っている。
 
 それでも、白化前のサンゴだらけだった当時と比べれば、エサ不足は否めないのかもしれない。
 
 サンゴからサンゴへ、エサとなるポリプを求めて団体様で渡り歩くテングカワハギの若者たちを観ていたときのこと。
 
 ミドリイシオンリーというゼータクは言えなくなっているのはわかるにしても、そこまで切羽詰まっているわけではないのだろうと思っていたら、なんとなんとテングカワハギの若衆たちは、すでに完死して藻が生えまくっているテーブルサンゴをつつき始めたではないか。
 
背に腹は代えられない。

 背に腹は代えられないといっても、そりゃいくらなんでもヤケクソすぎるんじゃ……。
 
 ひょっとするとテングカワハギたちも代を重ねるごとに白化に対する耐性を身につけ、いざとなったら藻を食って生き延びられる遺伝子を備えていたりして。
 
背に腹は代えられない。

 となれば、もうこれでサンゴ壊滅に伴うテングカワハギの絶滅を心配する必要はない…
 
 …わけないか。


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Posted by クロワッサン at 06:54│Comments(0)水納島の海
 
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