2024年06月21日
そばとコウモリとピカチュウと。
2024年 6月20日(木) 晴れ!
南の風 おだやか 水温23度~25度
梅雨が明けた!
見えている出口になかなか近づかない長いトンネルが、この日ついに出口だけ残して消えてくれた。
青空って素晴らしい…
…暑いけど。
梅雨明け早々の海を堪能したあと、買い出しのため本島へ。
ダイビングを終えてからの出発だったため、名護に着いた頃には正午を少し過ぎていた。
早お昼の時間帯ならどこでもたいてい空いているけれど、昼時となると観光客に名が通っているお店の前には「わ」や「れ」ナンバーの車が停まっているだろうから、できることなら「地元客御用達」のお店がいい。
そこでこの日は、7年ぶりに丸隆そばにお邪魔した。
正午過ぎでもけっして店頭に行列ができているわけではなく、かといってガラ空きというわけでもなく、適度の入りでそのほとんどが老若男女の地元客(「れ」ナンバーも停まってはいたけど)、ハイテクタッチパネル券売機も昔ながらの券売機もない、今時なんとも心落ち着くお店だ。
丸隆そばについてはこちらをご参照いただくとして、このリンク先で紹介している際はマイブームだった野菜そばをいただいたのだけど、その後は訪れるたびにワタシは本ソーキそば、オタマサはてびちそばという組み合わせであることを今知った。
完全なるワンパターンながら、この日もやっぱりワタシはソーキそば。

そしてオタマサも、相も変わらずてびちそば。

てびちラブなオタマサ曰く、てびちそばといえば新山食堂か丸隆そば、という個人的ランキングが成立しているそうな。
そして驚くべきことに、どちらも1杯750円!
7年前からそれぞれ150円、80円と値上がりはしているとはいえ、この名護市街地の老舗では軒並み800円台を超えている本ソーキそばが、いまだ750円でいただけるとは…。
しかもしっかり煮込まれたソーキやてびち、そしてスープも麺も、そのお味は記憶よりも遥かに美味しい♪
特筆すべきことに、こちらには一般客用メニューのほかに、「高校生メニュー」なるものがあって、同じものがそれぞれ200円くらいお安く設定されているのだ。
近隣の高校生たちが学生服姿でこのお店を普段使いしているのは昔もよく見かけたけれど、なるほど、価格面でしっかり学生支援をしていたのだなぁ、丸隆そば。
こども食堂への支援を求める広告などをよく目にするけれど、大事なのは各お店ごとのこういった心意気だよなぁ、やっぱり。
地元客に愛されるお店は、内部留保を優先させ続ける経団連企業の経営陣とは基本的な心根が違うのである。
期待以上に充足したランチをいただいてから買い物を済ませ、秘密基地に戻っていた夕刻には、少し散歩することにした。
散歩道には、梅雨明けの空が広がっている。

このとってつけたような南国演出は海洋博記念公園のあたりだから。
普段このあたりの海洋博公園ゲート前の道を車で通過することはあまりないのだけれど、たまに通ってみると、いつもなんとも気分がいい。
公園用に整備されているということでは昔も今も変わらないから、心地よく感じるのはその変わらない感からくるノスタルジィなのだろう…と朧げに思っていたところ、この日散歩をしていて、その大きな理由がわかってしまった。
頭上を横切る電線がまったく無いのだ(街路灯用に1本チョロッとあるところもあるけれど)。
ずーっと工事をし続けているわりには一向に地中化しない電線を見るにつけ、これは予算を消費するためのけっして終わることのないエンドレス工事なのかとばかり思っていたら、場所によってはちゃんと「電線の地中化」が完了しているところもあるのだなぁ。
ただし海洋博前は頭上に電線は無いけれど、一歩筋を入ると…

…害鳥駆除用の罠ですか?ってなくらいに縦横無尽に各種線が空を横切っている。
従来の電線や電話線に加え、このところは各通信業者の光ファイバーの線が次々に増設されているから、そこかしこの電柱がこのような有様になっているのだ。
本部と名護を繋ぐ伊豆味の道なんて、一方では「電線の地中化工事をしています」という看板を掲げて工事をしておきながら、一方では老朽化に伴うものなのかなんなのか、新しい電柱を次々に立て、それらにもやはり各社のファーバーが、オーケストラの五線譜のようになっていたりもする。
電柱を立てかえるのであればまだしも、いかなる線の役にも立っていない旧電柱をそのまま立てっぱなしにしているところも多く、この日の散歩道でも、まるで廃線の周囲に繁茂する竹林のごとく電柱だらけになっているところもあった。

陸は立派な道路で埋め尽くされるであろう近い将来、その頃の空は電線に覆われつくしているかもしれない沖縄県である。
さてそんな散歩道でのこと。
梅雨明けとともに姿を消してしまうだろうか…と思っていたら、まだアカショウビンの声が聴こえていた。
すると、目の前を横切る赤いボディ。
近くの林に止まったその姿は、まぎれもないアカショウビン!
ああしかし。
いつもならサッと取り出すコンデジは、最初からバッテリー切れのため使えず、安物スマホの描写力では望遠系が役に立たず…。
でも肉眼でしっかり楽しめる距離だったから、日を浴びて赤く輝く嘴を見納めておいた。
そのすぐあとに、空を横切る大きな姿が。
オオコウモリだ!
すぐそばの樹上で、数頭がぶら下がっていた。

ただぶら下がっているだけってイメージがある日中のオオコウモリながら、すでにそこらを飛び回っているものもいる夕刻のこと、樹上でもけっこう活発に動いていた。
この木に生っている実を食べているらしく、さすが哺乳類、その動きは妙にサルっぽい。
でもひとたび羽を広げれば、サルっぽさはたちまち消え去った。
洞窟に住まう小型コウモリたちは、餌をゲットするために音波を発信して周囲の状況を把握するそうだけど、フルーツ食のオオコウモリたちにはその機能はないんですよね?
となると、けっこう大きめの体で空を飛ぶオオコウモリたちにとって、そこらじゅうが電線だらけになっていくなんてのは、迷惑この上ない変化なのだろうなぁ…。
話は変わる。
この日は出かける予定だったのだけど、どうやら梅雨明けっぽい空を前にしてただ出掛けるだけってのは非常にもったいない。
そこで、朝早めに海へGO!
せっかく梅雨は明けたというのに、ここにきて先日来の大雨由来の本島周辺の濁り水がドドッと押し寄せてきていて、洋上から見る海の色は普段の渡久地港の色と変わるところがないほど。
それでもとてつもなく濁っているのは表層だけで、中はまぁまぁってところだ。
その表層に近い水深だからあいにく濁っているリーフ際では、ベニモンヘビギンポのオスがやる気モードになっていた(↓実際の天地は逆です)。

つい先日は目にするだけで終わってしまったこのやる気モード、このテのヘビギンポ系の繁殖期って春限定と思えばこそ、これまでは4月から5月にかけてちょこちょこチェックしていたというのに、6月も20日になってまだ観られるものなんでしたっけ?
今季はシモフリ父ちゃんの出現のおかげでヘビギンポのやる気モードチェックを怠っていたから、意外な時期に鑑賞できてよかったよかった。
さて、この日の目的は、先日チラ見えで終わったスミツキアトヒキテンジクダイの卵を、卵フガフガシーンとともに記録に残そうというもの。
実はその後何度か再訪しようとしたのだけれど、なぜだかその根にたどりつけないままでいた。
なんでだろう…と首をひねること数日、ついに理由がわかった。
ポイントを間違えていたのだ。
エヘッ♪ (猿飛びえっちゃん風に)
で、この日は仕切り直しで正しいポイントにエントリーし、先だっての根を訪れてみた。
するとスミツキアトヒキテンジクダイは…
…オールGone(涙)。
あんなにたくさん集まっていたのに、1匹もいなくなるとはなぁ…。
あの繁殖ローテーションの時だけの期間限定住まいだったのだろうか。
けっこう深めの根までわざわざやってきたのに、完全肩透かし状態でガックリきかけたその時。
根の間の砂底に、思いがけないクリーチャーの姿が!

ピ・カ・チュウ!
なんとなんと、ウデフリツノザヤウミウシが、それも2センチほどもある、水納島で出会った中では過去最大級のピカチュウが。
もっとも、過去最大級といっても、水納島での「過去」はたった1度、5ミリほどの激チビだけだけど。
砂底に転がっている貝殻がお気に召したらしく、最初からこのように貝殻の縁でモゾモゾ動いていたピカチュウは、やがて貝殻に収まって居心地良さげにしていた。

できることならこの貝殻ごと持って帰ってしまいたいところながら、こういうシアワセの出会いは一期一会だからこそでもある。
スミツキアトヒキテンジクダイには完全にフラれてしまったとはいえ、むしろ前回同様たくさんいて卵を保育していたら、ピカチュウには気が付かなかったかもしれない。
このピカチュウは、いわばスミツキアトヒキテンジクダイたちの置き土産ってところかな。
1匹もいなかったスミツキアトヒキテンジクダイさん、ありがとう。