2024年03月27日

名護岳登山・後編。

2024年 3月26日(火) 雨

南西のち北の風 荒れ模様

 午前中に前線が通過し、その後北風が強めに吹く予報が出ていたこともあり、連絡船は前日のうちにこの日の運航を朝イチ便のみと決めていた。
 
 朝イチ便が島から出て行ってしばらくすると、予報どおり前線通過。
 
 通過時のひと雨だけで済むかと思いきや、その後しつこく雨が降り続くまま、風は冬の風に変わった。
 
 という予報が先日から出ていたからこそ、昨日のチャンスを逃さなかったクロワッサン登山隊。
 
 無事登頂を果たした我々だというのに、いまだ目的が達せられていないという、その目的とは?
 
 実は昨年、とある方から名護岳にかなり興味深い植物が観られるというお話を伺っていたのだ。
 
 それも、奥深い山中の人跡未踏級の場所ではなく、登山道沿いにフツーに観られるという。
 
 そのような植物など沖縄県内で観られるとは思っていなかったこともあり、オタマサは随分食いついてお話を伺い、いつの日か名護岳までその植物探査に乗り出そう!と心に決めていたのである。
 
 それもあっての、ホワイトデー記念登山の目的地となった名護岳。
 
 しかし本部富士に比べれば遥かに時間がかかる頂上に達するも、道中その植物の姿はなかった。
 
 そもそも登山ルート自体、地図を見ながら歩いているはずのオタマサが頭の中で描いていたコースと全然違っていたりする。
 
 「このあと沢伝いに歩くルートになるから、きっとそのあたりで観られるはず」
 
 と言いながら登っていたところ、頂上まで大まかに2ルートある登山ルートのうち地図上左側のルートに沢があるのに、我々が昇っているのは右側のルートなのだから、途中に沢などあるはずはなかったのだ。
 
 それに気がついたのは頂上まであとひと息という地点の、その後頂上まではもう一度降りてまた登らなければならないという意味で、ほとんど詐欺のようなプチ頂上的ピークのところ。
 
 とはいえ、そもそも沢付近で観られるものなのだろうか。
 
 名前から想起されるイメージからすると、ジメジメしたところに生えていそう、と勝手に思い込んでいるだけなのでは…。
 
 ワタシもその植物の名前は知ってはいても、どういうところでどのような塩梅で観られるものなのかということについてはまったく知らなかったし、そもそも姿かたちもうろ覚えだから、事前に名護岳で件の植物をご覧になっている方々のサイトをチェックしてはいた。
 
 その際拝見した画像を見るかぎりでは、もっと日当たりがあって乾燥しているっぽい場所のようで、うっそうと木々が茂る沢近辺というイメージとは全然かけ離れている。
 
 また、周辺を木々に囲まれ、落ち葉が降り積もるような場所でもなさそうだった。
 
 となると、フツーに登山道を歩いていたのでは見つからないんじゃ?
 
 しかしそこはオタマサのこと、思い込んだらリセット無しで、行くが女のド根性。
 
 そもそもオタマサなど「観たい!」と言っていたわりにはほぼほぼノーリサーチで、いくらなんでもそれではナンだからせめて現地での様子くらいは見ておけば…
 
 と、ワタシが勧めて初めて多少チェックをした程度でしかない。
 
 というわけで、地図は読めないわ、目的の植物の居場所の見当もつかないわ、という状況のまま、クロワッサン登山隊は頂上から下山を開始したのであった。
 
 本来行きにたどるはずだったルートで下山し始めると、ようやく件の沢伝いルートにたどり着いた。
 

 細い沢を渡るところには、沈下橋的なコンクリート製の構造物がある。
 

 たしかに周辺はジメジメしているし、コケ類シダ類ならワーイワーイ!ともろ手を挙げてヨロコビそうな環境ではある。
 
 でもネット上の画像を見たかぎりでは、こういう場所ではなかったんだけどなぁ…。
 
 というワタシの声には聞く耳持たず、下映えの下などをチェックするオタマサ。
 
 目当ての植物は、ポツンポツンと一人寂しく野辺に佇んでいるわけではなく、まるで分裂増殖していくソフトコーラルのように、ひとッところにたくさん生息している雰囲気だった。
 
 なので、ひっそり何かの陰に…というイメージでもなかったけどなぁ…。
 
 なんとなく見つからなそうな気配が濃厚だったけれど、そこは非日常の環境のこと、やはりこういうところで眺めるヒカゲヘゴはかなり雰囲気がある。
 

 そうこうするうちにやがて沢伝いルートが終わり、いったん車道に出ることとなった。
 
 この車道をそのまま歩いて行ってもスタート地点まで帰れるようながら、どうせだったら山の中を歩いてみたいので、車道から再び山中にヒョイと入れるルートをたどることにした。
 
 その時!
 
 そうそう、画像で観たのはこういう乾燥して開けた感じのイメージだったんだよ、その植物が写っていたのは。
 
 探すんだったらきっとこういう場所のはずよ、沢ではなくて…
 
 …と言いながら、山道の法面にふと目をやると、
 
 発見!
 
 ゴールまであとわずか、ほぼほぼ散策も終盤となり、今回は目的達成ならずだったか…と諦めかけていたところへ、9回裏に飛び出たサヨナラ満塁ホームラン級の大逆転が待っていた。
 
 こんなところに群生してました、その植物たち。
 

 なんだか人けの無い神社の賽銭箱に投げ入れられている10円玉のような雰囲気ながら、この植物こそ、知る人ぞ知るコモウセンゴケである。
 
 食虫植物というジャンルでもお馴染みのモウセンゴケの親戚、コモウセンゴケ。

 ※追記
 恥ずかしながら我々は…というかオタマサは、その名前からずっとコケ植物であると思い込んでいたのだった。
 コケ植物=ジメジメしたところ…ということで沢伝いを要チェック、ということだったのである。
 なので序盤から目的の正体をボカすために「植物」と書いてあるところは、ホントは「コケ植物」と書いていたのだけれど、重大なる誤解のご指摘を受け、ここに訂正した次第です。
 ※追記終わり
 
 その姿をグッとクローズアップしてみよう。
 

 なにやらオニヒトデの赤ちゃんのようにも見えるけれど、このトゲトゲのように見えるものの先には…
 

 …露が玉になっている。
 
 食虫植物と称されるものには、フタをして閉じ込めるもの、葉と葉を合わせて檻のようにしてしまうものなどいろいろあるなか、このモウセンゴケの仲間たちは、このようにトゲ状の先からネバネバした液体を分泌し、そうとは知らずに立ち寄ってきた小さな虫たちをくっつけて身動きできないようにしてしまうという。
 
 この玉の露がどれくらいネバネバしているかというと…
 

 こんなに糸を引くくらいネバネバ。
 
 小さな虫だと抵抗できなくなるのも無理はない。
 
 撮っているときにはまったく気づいていなかったのだけど、後刻PC画面で画像を見ていたところ、実際に捕獲されている小さな虫も写っていた。
 

 アリかなにかかな?
 
 ところで、見事に赤い色をしているコモウセンゴケながら、これは気温が低い季節の色味だそうで、夏場は緑色をしているそうな。
 
 また、それぞれのミニミニオニヒトデからは、それぞれ1本ずつ花芽がピンと出ていた。
 

 どうせだったら咲いているところも観たかったなぁ…
 
 …と思っていたら、
 

 咲いているものもあった。
 
 なんとも可憐な花だこと…。
 
 それにしてもコモウセンゴケ、オタマサによるとその昔尾瀬で観たモウセンゴケは、遊歩道から眺めるようになっていることもあり、天然自然の生息状態であったらしい。

 ところがここのコモウセンゴケときたら、なんとも無造作にテキトーに生育している。
 
 というか、法面だからこのように無事でいられるだけで、路上のものなんて大勢の登山者に繰り返し踏みしだかれているからだろう、無残な姿を晒していたほど。
 
 県内じゃけっこう珍し系の植物のような気がするのに、ほぼほぼ路上の雑草と同じ扱いらしい…。
 
 ともかくそんなわけで、慧眼なるワタシの起死回生の発見により、登山の目的はここで見事に達せられたのであった。
 

 バレンタインデーの返礼がなんちゃって登山だなんて、ショボい、ケチ臭い、安上り、と、いらざるところでブツブツ文句を言っている方がいらっしゃるかもしれないけれど、このヨロコビの顔を見ればグゥの音も出まい。
 
 チャレンジ1度目にして、鮮やかに期待に応えてくれたコモウセンゴケに乾杯。
 

 私も見たい!という方へ。
 
 なにもわざわざ頂上まで行く必要はありません。
 ホント、拍子抜けするくらいの場所で観られますから。 
  


Posted by クロワッサン at 06:43Comments(4)観光山川草木