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2024年03月16日
Mare Primaverile。
2024年 3月15日(金) 晴れのち曇り
北東の風 うねりあり 水温21度
ひとくちに「曇り」予報といっても、大きく分けて2タイプある。
時々晴れ間も出そうな曇りと、逆に雨がパラつきそうな曇りの2タイプだ。
ヤフーの天気予報のマークでは、この両者を雲一つの白い雲マーク、濃いグレーの雲が2つ重なるマークで表している。
で、この日の日中は白い雲1つだけ。
ということは、日差しが出るかも…
…と期待していたところ、日差しどころか午前中はほぼほぼ「晴れ」になってくれた。
さっそく海へ。
ローテーションで荒れ模様となっている今月、なおかつ先日の激時化のあとだけに水温はあくまでも低く、同じ21度でも肌に刺さる冷たさ。
そんな水温でも、早くもキンギョハナダイのチビチビたちが、根に姿を現し始めていた。
このところ盛んに求愛泳ぎをしているハナダイたち、オスたちの頑張りはけっして空振りではなく、ちゃんと成果を出しているらしい。
ハナゴイに始まって、このところケラマハナダイ、キンギョハナダイと紹介してきたからには、水納島の海における砂底のハナダイビッグ3のもう1つを…
…というわけで、この日はカシワハナダイに注目してみた。
他のハナダイ類同様、カシワハナダイも昔に比べるとずいぶん数を減らしているんだけど、ちょくちょくワタシが言っているこのテの話なんて、その「昔」をご存知ない方々には比較のしようも無い=現状を観ても嘆く要素など何も無い、ということになる。
精神的には、なんともうらやましいかぎり。
そんな若い皆さんに、90年代の水納島の砂地の根の様子を見せてあげたい。
水はどこまでも透き通り、まるでPLフィルターを使って撮った空の写真のように深く濃い紺碧の水に包まれた白い砂底に点在する根には、各種ハナダイ類の花吹雪…。
それが当たり前となった体で今のゲンジツに戻ってきたら、心あるガイドさんたちはきっとショック死することだろう。
もっとも、今バリバリ活躍している皆さんが前期高齢者くらいになる頃には、ひょっとすると同じようなことを口にしているかもしれない。
減ってしまってはいるけれど、それでも20メートル以深まで行けばそれなりにいるカシワハナダイ。
ノーマルカラーを肉眼で観ると、オスもメスも地味地味ジミーに見えるのだけど、婚姻色に輝いているオスは、肉眼でも、いや、肉眼で観るほうがより美しい。
光を当てた際の↑このような美しさとは違い、肉眼では背中に白く輝くラインが浮かび、全体的にもっと青白く輝いているように見えるのだ。
例えて言うなら、ジオンのモビルスーツ部隊が白いモビルスーツに遭遇してしまった際に感じるような…
< 例えになってないって。
ちなみにオスの平常時は↓こんな感じ。
ケラマハナダイのオスで言うなら、これは体色を薄くしているショボショボモードのときに相当するのだろうか。
ちなみにメスは↓こういう感じ。
ショボショボモードのオスに似ているけれど、腹ビレの前縁が赤くなく、背ビレ前端にポッチリマークが無い。
光を当てれば赤味が強く見えるものの、海中では茶色に見えるから、彼女にとっては幸いなことに、ファンダイバーにはあまり注目されない。
同じくケラマハナダイに例えると、色を濃くした状態、すなわちブイブイモードに相当するっぽいのが↓この状態(別個体です)と思われる。
他のハナダイ類と同じく、カシワハナダイのオスも、この低水温の季節からお盛んになっているので、オスが複数匹いれば、そこかしこで青白い輝きが急降下泳ぎを繰り広げている。
まるでスパークが走っているかのようなその輝きを目にすれば、どうせならその輝く色味を撮りたいところ。
ところが、遠目にはゴキゲンにメス相手に青白ボディをスパークさせているオスなのに、無遠慮に近寄ってカメラを向けると当然ながらイヤがり、たちまちノーマルカラーに戻ってやる気モードから後退してしまう。
やる気モードから後退すると岩陰に避難することが多いのだけど、そこでは婚姻色を発することはなく、せいぜいブイブイモードで気張っているだけになる。
ことほどさように、目立ちはしてもなかなか撮らせてはもらえない興奮モード。
ところがこの日訪れた根にいたオスのうちの1匹は、カシワハナダイでは珍しく、近寄っても興奮モードのままで居続けてくれる時間が長い。
おかげで…
…何度も撮らせてもらったものの、この色味の時にヒレ全開のチャンスは訪れなかった。
↑このオス、胸ビレの先に色がついているように見える。
こんなところに色がつくバージョンがあったっけ?
…と思ったら、これは
…ケガをしていたのだった。
折に触れお知らせしているように、近年はこのように傷を負っているハナダイ類を見かける頻度が激増している。
それはともかく、こうしてやや後ろ側から光が当たると、興奮モード時の体色はえもいわれぬほんのりした色合いになることを知った。
これぞまさしくケガの功名。
< 座布団1枚!
興奮モード時の色といえば、このやる気全開興奮モードの際には尾ビレだけ真っ赤に染まっているんだけど、どういう心境の時なのか、尾ビレが↓こうなっていることもある。
後縁だけ赤く、真ん中は薄くなっている状態。
↑これは過去に撮った写真で、たまたま彼だけに見られる個体差なのか、一般的に同じようになるのか、たまに写真を観るたびに「今度確認してみよう」と思うのだけど、もちろんながらそんなことを記憶し続けていられるはずもなし。
この日もまったく気にしていなかったところ、オスの中に実際に見せてくれるものがいてくれた。
カシワハナダイのオスは、興奮モード時に尾ビレの色も自在に変えているようでございます。
やる気モード全開になってくれているおかげで、美しく青白きカシワの姿を堪能することができたこの根では、ユカタハタまでなにやらアヤシイ動きを見せていた。
リーフ際に戻ってみれば、久しぶりに出会ったタコまでイチャついているではないか。
ワモンダコ交接ちう。
まだまだローテーションで時化が繰り返されてはいるけれど、そこはやっぱり春の海、どうやらいよいよ恋する季節の始まりのようだ。