2024年03月23日

花2題。

2024年 3月22日(金) 晴れ

南東の風 波あり

 午前中は秘密基地で諸々の作業をし、昼過ぎに島に戻る予定にしていたこの日、気づかぬうちに携帯電話に着信があったらしく、青いLEDがピコピコ点滅していた。
 
 たしかめてみると、水納海運からだった。
 
 気象予報的に午後から危うくなる恐れはないし、そもそも我々は自分たちのボートで来ているから連絡が入ると同時に戦慄が走ることもなかったものの、電話で伺った話はなかなかオオゴトだった。
 
 我々が現在島に居ると思っていた事務の方が、島から出る予定はあるかと問うので、今現在本島にいる旨伝えると、では帰る予定は?と尋ねてくる。
 
 どういうこと?
 
 なんとなんとこの日の朝、連絡船のエンジントラブルにより運航できず、この日はお客さんを運んでいないという。 
 
 どうしても島に戻らねばならないヒト、本島に出なきゃならないヒのためにボートをチャーターしたそうで、そのための連絡だったのだ。
 
 自分たちのボートで出てきているから心配御無用と伝えつつ、復旧の見込みを訊ねてみると、このあと専門のスタッフが来て原因を調査&修理することになっているという。
 
 3週間に渡るドックから先日ようやく戻ってきたばかりだというのに、なにやってんだか作業スタッフ…。
 
 まぁ自動車でも、車検に出したら不調になったという話はよくあることだから、ようするにいじくったらリスクを覚悟しなければならないということなのだろう。
 
 美容のためにあっちゃこっちゃいじくるヒトだらけになっているけど、きっとリスクもあるのだろうなぁ。
 
 それはともかく、そろそろ4月になろうという頃にエンジントラブルで欠航だなんて、大丈夫か連絡船…
 
 …と思ったら、1時前に船長から連絡があり、復旧したので午後から通常運航とのこと。
 
 よかったよかった。
 
 話は変わる。
 
 年がら年中花が咲いているイメージがある亜熱帯にも、季節ごとに咲く花がちゃんとある。
 
 メジャーどころは園芸でも観光地でもその名を轟かせている一方、人知れずそっと咲いては散っていく野辺の花もある。
 
 ハマウドの花もそのひとつ。
 
 ウドの大木のウドがその名に付くだけあって、けっこう大きく育つ海岸植物、ハマウド。
 

 下生えの小ぶりな状態からスクスクニョキニョキ育ち、この季節に雪を頂いたように花を咲かせる。
 

 ひとつひとつの花はとっても小さいけれど、それがモコモコと密集し、そのモコモコもまた大集合するため、全体が白く見える。
 
 この時はこれから咲く花と終わりを迎える花の端境期だったこともあり、全体的に黄色っぽく見えていたけれど、ほんの数日前にジョギングで通りかかったオタマサによると、ホントに真っ白に見えていたそうだ。
 
 ハマウドも食用に利用することが可能のようながら、昔の島の皆さんが食べたという話は聞いたことがないし、我々も試したことはない。
 
 なのでその味は不明ながら、少なくともその小さな花々は、ハナムグリにとって御馳走のようだ。
 

 花といえば。
 
 先日カメさんたちのエサ採りをかねて昼の散歩をしていた際、クワの葉の奥の藪からかぐわしい香りが漂ってきた。
 
 いわゆるひとつのシトラスの香り、その香りの元に目を向けると、こんな花が咲いていた。
 

 咲いてから時間が経つと花弁がクルッ…と巻くのが特徴らしい、小さな白い花。
 
 でも同じ木でありながら、花は白だけとは限らないようだ。
 

 さらに時間が経つと、色が変わっていくのだろうか?
 
 木自体はけっこう立派に育っているのにこれまでまったくその存在に気がつかなかったのは、藪の奥の奥に生えているから。
 
 現在切り開かれまくりの牛小屋方面といえど、依然として藪の中のままにもかかわらず今回気がつくことができたのは、かぐわしくも爽やかなその香りのおかげだ。
 
 はてさて、この木なんの木気になる木。
 
 さっそくグーグル先生に伺ったところ、たちまち正解を教えてくれた。
 
 その名もトベラ。
 
 けっこう日本の広範囲に渡って分布しているトベラは園芸方面でもけっこうメジャーな植物だそうで、庭木や街路樹、公園などでも広く利用されているという。
 
 昆虫のような語感もあるその名は、扉に由来しているのだそうだ。
 
 節分の日に戸に飾るイワシと同じく、このトベラも節分の際に魔除け鬼除けのために戸、すなわち扉にはさむ飾る習慣があったことから、トビラ→トベラと転訛したそうな。
 
 鬼相手にイワシというのもいまひとつピンとこなかったけど、こんなかぐわしい香りの植物を利用したら、かえって鬼がやってくるんじゃ?
 
 …と思ったら、それは大きな誤解だった。
 
 扉にはさむのは花ではなく、枝葉なのだ。
 
 花はシトラスの香りだというのに、枝を折ったり葉を割いたりすると、鬼も退散するほどの悪臭を放つというのである。
 
 最も凄まじいのは根だそうで、そういったものを扉にはさみこんでおけば、いかな鬼でも入り込めない…ということらしい。
 
 このエリアがまだ藪のままでいるのは、トベラのおかげで重機も入り込めなかったからとか?
 
 ちなみにこのトベラ、学名は Pittosporum tobira だそうで、「トビラ」がそのままラテン語名になっている。
 
 なんで学名がトビラで、和名は訛ったトベラなんだろう?
 
 さらにちなみに、沖縄で「トービーラー」というとまったく違う生き物になるので、発音にはくれぐれもご注意ください。 
  


Posted by クロワッサン at 07:41Comments(2)日々の徒然山川草木